17話 下僕
昼休みは大体、購買でパンを買って済ませている。バイトがない日は自炊して、翌日の弁当を作るのが習慣になりつつある。
親友と呼べるくらいの関係になりつつある高峰隼と、二人で昼を食べることが多い。
「蒼真はいいよな~。毎朝美女二人と予習できてさ」
隼が心底羨ましそうに言ってくる。
「隼も来いよ。男一人だからハーレム王とか言われちゃうんだし。」
「ハーレム王ってより姫たちの下僕だもんな!いや、俺も行きたいけど朝練があるからなあ……」
隼はサッカー部に入った。中学から続けているらしく、この進学校でもサッカー部はわりと力が入っていて、推薦枠で有力選手が入ってくるようだ。その中で、隼は一般入試でこの高校を選んだ。
「部活と勉強の両立ってすごいよな。ちょっと俺には真似できないよ。」
「サッカーだけやってたいけどな~。でも、将来のこと考えるとやっぱ勉強も大事だよな」
そう言って遠くを見つめる隼。
いわゆる爽やかイケメンな雰囲気で、同級生や上級生にもファンがいるらしい。ただ、今のところ彼女は作らず、部活と勉強に専念するつもりらしい。
最も好きな子ができたら話は別。隼は"来るもの拒まず"じゃなくて、追うタイプだそうな。
「隼も将来のこととか考えてるの?」
「うーん、親が官僚目指せって言ってくるんだよな。同じ道を進めってさ。そうなるにはやっぱ東大か……正直、癪に障るけど、言ってることは分かるんだよ。いや、でも難易度高すぎるだろ……」
親の期待がベリーハードだ。うちはそんなこと言ってこないからな。放任主義にもほどがある。
ちなみに隼の入試の順位は5位だったらしい。トップで入学できなかったことに両親から責められたらしい。いや…鬼か。
「部活好きにやらせてもらってるからまだマシだよ。成績落ちたら辞めろと言われそうだから勉強も手を抜けないんだよなあ……マジ睡眠時間たりねー」
「いや~、なんていうか、ご愁傷さま?」
「蒼真こそすげーよ。一人暮らしでバイトしながら、朝ジョギングして早朝予習とか、見た目によらずタフだよな。」
「なんかみんな俺のこと貧弱扱いしてるよな。確かに痩せてはいるけどさ」
「肉食え肉!なんていうか、線が細いんだよな。体幹鍛えるといいぞ。良い筋トレ教えてやるよ。」
「おお!それ聞きたい!」
その後、隼が筋トレメニューを考案してくれた。主に下半身の強化がメインらしい。さすがサッカー部、脚が命ってことか。
「足腰鍛えりゃバイトも楽になるぞ。」
「さんきゅ!今日から実践するよ。」
体力パラメーターも1上がっちゃいそう。