16話 ハーレム王
「蒼真、基礎力アップしたわね。随分と出来てるじゃない。」
真桜さんが作ってくれた、簡単なテストを解いてみた。我ながらスラスラ解けた気がする。
「そーま、最近授業中もついて行けてる感じするもんね。」
「うん。授業がわかるかどうかで、こんなにモチベーションが変わるとは思わなかったよ。正直、このまま予習なしで授業受け続けてたら、進級も危なかったかも……。」
そう考えるとぞっとする。
「違いがわかったのは良い気づきね。私も蒼真に教えることは無駄になってないわ。」
「質問のセンスが良いんだよね、そーま。私も解釈違いとか気付けてるよ。」
3人で予習をするようになってから、目に見えて学力が向上した。1時間足らずの勉強時間だけど、トップクラスの二人に教えてもらいながら進めると、理解度が全然違う。
羽依さんと真桜さんの二人もすごく仲良くなったみたい。GWは二人で買い物に行くらしい。美少女で才女な二人のお出かけか。……ナンパとかされるんじゃないか?
「羽依に最近、告白してくる子がいなくなったわね。」
「一巡した感じなのかな~。よくわかんないけど。真桜がバリア貼ってくれてるのも大きいのかな。」
単独行動が減った羽依さんに、虫が近寄りにくくなったのかもしれない。
真桜さんの”よらば切る”オーラすごいもんな…
「迷惑がってたしね。よく知らないのに『付き合って』って言えるの、すごい神経だと思う。」
「ほんとさ…おかげで男の人のイメージなんて全員不審者だよ、もう。」
「じゃあ蒼真も不審者ね。まあ鮭男だから仕方ないか」
ぷぷぷと真桜がニヤける。
「え、それまだ続いてるの!?」
「最近のあだ名は『ハーレム王』だったかしら。」
学年成績1位2位は、容姿もトップクラス。その二人と一緒に予習している俺は「いつかころす」リストに入るのも当然のこと。
「まあ…言いたいやつには言わせておけば良いんだよ。」
「そうね。その考えはとても正しいわ。蒼真が負い目を感じる必要はどこにもない。」
「そうだよ~。人の目なんて気にしても仕方ないし、噂なんて何もしてなくても立つもんだし。」
そう言ってちょっと暗い顔をする羽依さん。きっと中学の時に何かあったのかな。
「羽依とは、色々ゆっくり話したいこともあるし。GWの買い物楽しみにしてるわ。」
「うん!真桜とお買い物楽しみ~!夏物の服と、水着なんかも見たいな~」
「蒼真はGW、実家に帰るんだっけ。」
「うん。でも全部じゃないよ。親が、俺の飯に飢えてるらしい。」
「そーまの手料理、美味しいもんね。」
「いいなあ。私も食べてみたい。」
珍しく素直に真桜さんが言う。ちょっとびっくり。
「いいよ~。真桜、今日暇だったらさ、お店休みだから、そーまの家で3人でご飯食べようよ。」
「ちょっ! 俺の意見!? ……いや、予定はないけどさ……。」
「蒼真は私にご飯食べてもらいたい?」
じっと顔をのぞき込んでくる真桜。切れ長の目が、すべてを見透かすような視線を送ってくる。 美形なその顔で見つめられると、正直しんどい。
「あーたべてもらいたいなー。まおさんとういさんに、おれのつくったごはんたべてもらいたいなー」
「完璧よ、蒼真。」
「じゃあ教室もどろっか~。」
二人がキャッキャとしながら戻っていくのを見つめつつ、ふと思う。
「ハーレム王ってより、女王たちの下僕じゃね?」