12話 夢は叶う
放課後になった。今日の授業がいつもよりわかりやすかったのは、あの二人のおかげかな。
「そーま! 朝やってたところ、バッチリ出てたね!」
羽依さんが得意げな表情で言う。
「うんうん、羽依さんと真桜さんのおかげだよ。過去一で授業がわかりやすかった!」
「そーま、正直ちょっと授業ついていけるのかなって思ってたからさ。よかったよ~」
「うっ……やっぱ傍から見てもヤバそうに見えてた?」
「隣で見てるとね、すぐわかるよ。『あ、ちんぷんかんぷんなんだな』って」
「あうっ……お恥ずかしい……」
「ううん、まだ4月だもん。全然大丈夫! 毎日ビシビシいくからね!」
そう言って、また指を前にビシッと突き出す羽依さん。なんか、そのポーズ気に入ったみたいだな。
「それにしても、羽依さんも真桜さんもすごいよね」
「私はもう、これ以上は伸びないと思うよ。受験はうまいこと上位に入れたけどね~」
「え、なんで?」
「独学だからね~。塾とか予備校に通ってる子たちには、たぶん勝てないと思う」
「むう~、そうなのか……」
「わかんないけどね。でも、やっぱり効率よくやるには、そういうところに行ったほうが有利なんじゃないかなって」
「羽依さんは、予備校に通う予定ないの?」
「今のところはないよ。1番を目指してるわけでもないしね~。」
「それで2位ってすごくない!?」
「受験の時はちょっと無理して頑張ったからね〜。絶対入りたかったから。」
たまにちょっとだけ見せる暗い表情。
「それに、お母さんにあまり負担かけたくないのも大きいかな。今だって結構高い私立の高校に通わせてもらってるし。でも、その分授業のレベルも高いからね。この高校で上位キープしてたら、どこの大学でも行けると思うよ~」
「そっか、羽依さん、いろいろ考えてるんだな。俺なんて、大学のことなんて全然考えてなかったよ」
「そーまは、どうしてこの高校に来たの?」
「都内で一人暮らししたかったからだよ」
「へ~。一人暮らしが目的だったんだ。それで、一人で何するつもりだったの?」
「部屋に彼女を連れてきて、イチャイチャするのが俺の夢なんだ」
「え? そーま、彼女いるの?」
「いないよ?」
「……え? じゃあ、いもしない彼女のために頑張って勉強して、一人暮らし始めたの?」
「……うん」
「あはははははははははっ!! うえぇぇげほっ、げほっ、あはっ、うえ、げほっ!!」
およそ美少女がしないような笑い方をしながら、羽依さんが転げ回りそうになってる。
「そ、そーま……面白すぎる……だめ……おなか痛い……いたすぎる……しんじゃう……!」
「ちょっと笑いすぎじゃない!? 俺の夢なんだけど……」
「あはははははははは……ごめんって言いたくない! あははははは!」
「もう! 知らないんだから!」
ツンデレ風に言って、俺は羽依さんを置いて歩き出す。
「ちょっ、待てよ!」
古いイケメン風に羽依さんが追いかけてくる。
俺の夢……笑われちゃった……くすん……。