四話
そんなこんなで一年が過ぎ、遂にマリア嬢が入学してくる年となった。特殊魔法持ちが現れたと噂になり、入学式ではかなり注目されていた。そして入学式後の一月もたたずに、早速周りの男子生徒に馴れ馴れしく接してシンパを作り、ライル様とも仲良くなったようだ。
そんな様子を見て、いつも通り悲しげな演技をした上で、マリア嬢のあの態度は決して褒められたものではない事や、彼女の花魔法の真実(何も無い荒野を一瞬で花畑するとかはできない事)などを噂として流した。すると、マリア嬢のシンパはどんどん離れていき、《花の乙女》とか持ち上げられる事も無くなった。
どうやら花魔法について、具体的な事を知らず、ただ特殊魔法というだけで凄いんだろうと思い込んでた人が多かったらしい。マリア嬢の態度もライル様が許してるんだから大丈夫だろうとか、緩々な思考もあったみたいだ。なるほど、前回のあの持ち上げられ方はそのせいだったのか……。ともかく、これで第二目的である、マリア嬢の影響力を小さくすることができただろう。
また、ライル様への意趣返しとして、ライル様がうちの商会から代金も払わず商品を勝手に持っていく行為について、父と陛下の間で相談してもらった。今までは将来婿入りするし、子供だからと目をつぶっていたが、将来のためにも、今後商品を持って行った場合は請求が行くことにしてもらった。
前回は、自分の欲しい物に加え、マリア嬢への贈り物として高額なアクセサリーとかをタダでばんばん持ってかれていたからね。浮気相手への貢ぎ物のために我が家を使われるとかお断りだ!
案の定、自由に商品を持っていけなくなったライル様は、カンカンに怒って私に文句を言いに来た。しかも、笑っちゃうことに、人目のある学食内でマリア嬢と連れ立って言いにきたのだ。
もちろん私は、可哀想な令嬢を演じる為、泣きそうな顔で震えつつ『その件については、陛下からきちんと説明があったかと……。』と言い返した。ライル様は、それでもギャーギャー言っていたが、教師が来て注意されたため引き下がって行った。
さて、ライル様が退場した後は、私の独壇場だ。周りが聞き耳立てている中、友人達に今までライル様が商品をお金を払わず持って行く事があった事や、父と陛下が、将来商いを家業とする我が家をライル様が継ぐにあたり、そんな態度だといけないと考えた事。成人した今、正常な金銭感覚を理解するため、そして第二王子として分配された予算内で自らの経費を管理するためにも、商品を買ったら代金を払うという当たり前の事する様に言われている事を話した。
当たり前の事に戻しただけなのに、まさかあんなに激昂するなんてと泣きながら話し、もしかしてマリア嬢へのプレゼントなどを我が家でタダで見繕おうとしていたかもしれないと大袈裟に驚いて見せれば、即座に噂は広まり、ライル様とマリア嬢の評判はさらに下がった。すでに上位貴族から下位貴族まで揃って彼らを軽蔑するようになっていた。
もちろん、学食内の事は陛下にも伝わり、ライル様は1週間ほどの謹慎をくらっていた。いい気味だ。