一話
流行りに乗って書いてみてしまいました。
生温い目で見ていただければ幸いです。
春の初めの爽やかな朝
私、ベリル伯爵家の一人娘であるエリファは、まるで真夏の熱帯夜のように、汗びっしょりになって飛び起きた。
何故そんなことになったのか、それは私に将来起きる悲劇の未来と前世の記憶が一気に蘇ったからである。
まず、悲劇の未来だが、私より一歳年上の婚約者、この国の第二王子である真っ赤な髪が特徴的なライル様が王立学園の最終学年(三年生)の時に、花魔法という特殊魔法持ちの男爵家のマリア嬢(一年生)と浮気し、卒業式前日に行われる生徒と教師のみの学園内パーティ、通称卒業パーティーで私に真実の恋を理由に婚約破棄を告げるのだ。
更にはライル様の側近候補である生徒も交えて、マリア嬢を私がイジメたと全く事実無根の断罪までする。多くの人の前で冤罪に罵詈雑言を浴びせられ、引っ込み思案な性格だった当時の私はパニックになり、パーティー会場を飛び出てしまう。そして、会場近くの階段で足を踏み外して落下、そこで意識を失った。かなりの高さから落ちていたようだから、恐らくそこで儚くなったのだろう。
今考えてもとんでもないことである。だって、ライル様はうちに婿入りする立場だったのだ。しかも、王家からの願いでの政略結婚。なのに浮気かつ、我が家の両親や陛下達のいない卒業パーティで独断での断罪に婚約破棄……いや、全くありえない。
ちなみに何で伯爵家に王家から打診が来たかというと、うちが複数の商会を経営する大のお金持ちにして、外国にもぶっとい人脈を持つ、影響力の高い家だという事。さらに、私が生まれて少しした後、王家が経済難になり、私と第二王子との結婚により、家から王家に経済援助するという名目を作るため、などの理由があった。
まあ、家の祖先は平民の商家で、数代前に国の経済に貢献をしたと男爵位を陞爵された新興貴族であり、その後商いを大きくして、どんどん位を上げていき、二代前に伯爵になった経緯がある。そのため古い貴族からは成金貴族と嫌われていたので、第二王子との婚約も周りが煩かったらしいが。
そういえば、学園に入る数年前から、だんだんライル様が冷たくなって行った時から不安はあったのだ。あの時は、自分が何かしてしまったのかと思っていたが、卒業パーティーでの罵詈雑言の中に、成金伯爵家風情が金の力を振り翳して無理やり婚約者に納まっただの何だの言っていたから、何処かで私達の政略結婚の経緯を勘違いか何かしたのだろう。
陛下などに確認すればすぐに分かる事を確認もせず、あんな馬鹿な真似をしたのだから、ライル様の王族としての資質はお察しである。浮気に至っては言語道断だし。
次に私の前世だが、日本の普通のOLだった。家庭菜園やら手作りリンス・石鹸やらを趣味にしていただけの一般人。確かカフェで一息ついて居たら、ガスかなんかの爆発が起きて、カフェごと吹っ飛んだ後、意識が無くなったので、こちらも儚くなったのだろう。
色々考えていたら、メイドが朝の支度にやって来て、汗びっしょりな私を発見してしまい大騒ぎになってしまった。ひとまず、診察やらなんやらを受つつ、記憶を整理しておく。ぶっちゃけ、あんな未来を迎えたくないので、何とかしなければ……。