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踊れ、夜の剣士たちよ(2)

侵入者の男の背中が見えた。

夜の街を縫うように駆けている。


男は手ぶらだが、私は剣を持っている。 必然、その分だけ足が遅くなる。

もし全速力を出されたら追い付けないかもしれない。


私は壁を蹴って民家の屋根に上がった。

どうせ距離が縮まれば追跡に気付かれる。

しかし、上から追うことで視界に入ることを避け、少しの猶予を稼ぐ。


男が角を曲がって行く。

それに合わせて屋根から屋根へと飛び移ったが、同時に男の姿が下から飛び出してきた。


「っ!」 慌てて急停止し、剣を構える。

屋根の上で対峙するように向かい合うと、男は言った。


「やれやれ。 今日は終わりだって言ったろ?」

「そちらの都合は知らん。 お前は丸腰だ。 このチャンスを逃すわけにはいかない」

「……別に戦えないってわけじゃないんだぜ」

そういうと男は右手を前に突き出した。


「炎よ」

呟くと手の周りから渦を巻くように激しく炎が生み出される。

「魔法だと!?」

これにはさすがにかなりの驚きがあった。

「飛べ!」


命令を受けた炎が眩しく燃え盛りながら屋根の上を薙ぎ払った。

私は一つ後方の屋根に大きく飛び移って難を逃れた。


何かの焼ける匂いが鼻をつく。

放出された炎は用事が済むとあっという間に収束して消えてしまった。

屋根の上はまだちらちらと燻る赤い光が見えたが、火事にはなっていないようだ。


魔法使いが魔法以外の技術を持つことはほとんどない。

魔法の習得に全ての時間を費やすからだ。


ここまで剣の腕が立ち、さらに魔法も使える人間を見たのは初めてだった。

並の使い手ではない。


「もし、これ以上追ってくるならこの街を火の海にする」

男は続けた。

「そうなったら衛兵が出てくる。 お前たちも困るんじゃないか?」


その通りだった。

こちらの事情は把握されている。

今は誰に王の息がかかっているか分からない。

衛兵と関わるなどもってのほかだ。


「だから、今日は終わりだ。 俺が終わりって言ったんだから終わりだ」

男はさらに続けた。

「安心しなよ。 あんたらがここにいるのは俺しか知らない。 国境を抜けてアクアリオに向かうんだろ? それも俺しか知らない。 誰にも言う気はない。お前らは俺の追撃だけ気にしてりゃいいんだ」


「一体……、何なのだお前は」

「ハンターだ」

再び男は言った。


「国境でまた会おうぜ」

私は去ろうとする相手を引き留めた。

「待て……、なぜ隠さない。 なぜ嘘をつかない」


男はまた斬り合っていた時と同じ笑みを浮かべた。

「面白れぇから」


「俺はやりたいようにやってきたし、それで生き残ってきた。 死ぬまでそうする」

そう言うと男はこちらを向いたまま屋根から飛び降りた。


私は屋根を飛び移り、男が降りた場所を見下ろしたが、もうそこに男の気配はなかった。

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