8 月と人間
『スープの森』で、マーガレットが亡くなった四日後にジェンキンズが亡くなった話は、実話をもとにしています。
十年以上前に聞いた話が忘れられず、今回それを思い出しながら書きました。
一日だけ忌引きした人が四日後にまた一日だけ忌引きを取ったので、「一日じゃいろいろ無理だったんだな」と思ったら違いました。
「じいさんとばあさんは違う病気だったから、違う病院に入っていたんですよ。なのに、ばあさんが亡くなったら何も知らないはずのじいさんが急に弱って四日後に亡くなったんです」
「何十年も連れ添った夫婦だったから、離れがたかったのかしらね」
「俺が見る限り、仲の悪い夫婦だったけどねえ」
その人は身も蓋もないことを言っていましたが、夫婦のことは親子でもわからないものだから。
真実は旅立った老夫婦のみぞ知る、です。
月の満ち欠けが関係していたのかもしれませんし。
大病院の産婦人科の看護師さんが「今夜は満月だから、たぶん徹夜」と言っていたのも忘れられません。
満月の日はお産が多いと、当然のことのようにベテランの看護師さんがおっしゃったのです。
それを聞いた私は「うそん!」と思ったけど、本当でした。
その夜、分娩室は満杯で、待機室も満杯で、同室の女性は
「私はどこにも入れなくて、待機室の前の廊下に移動させられたベッドで産んだ。四人目だったからあっという間だった」
と笑ってましたっけ。
なんで月の満ち欠けがお産に関係するんだろうね。
クリスマス島のカニが、満月の夜に一斉に海で放卵するのと同じ理屈なのかな。潮の満ち引きに、人間も影響されてるのだろうか。
サンゴも満月の夜に卵を放出するってBBCのドキュメンタリーでやってたような。
今日は『スープの森』を書きながら並行して別作品の加筆作業してます。
スープが終わったら『間借り暮らし』を書きます。
『ビクトリア』は、ここを間違ったらだめな分岐点なので、慌てずゆっくり考えて書きます。
どの話もゴールは決めていますが途中の道は決めていないのです。
追い詰められてた件は、怒涛の勢いで書きあげました。三日間、ひたすら頑張りました。自分へのご褒美にケーキ屋さんの渋皮栗入りフィナンシェを買って食べました。
ではまた。




