306 古い友人に引かれた話
20年来の友人に「実は小説書いてるんだ」とカミングアウトした。
友人は私が20年間ブログを書いていたことを知っていて、それらを全部読んでいたから驚かなかった。
「あ、そうなんだ」という反応。
そのあとはしばらく今期のドラマの話などをしてから、「本で出せるといいよね」と言ってくれたので「出した」と答えたら「え」と。
「もう出した。出していただいた」
「ええ? じゃあなんでこんな家に住んでるの?」
こんな家って言うな。気に入っているのに。
そこから質問をたくさんされて、ペンネームだけは言わないで正直に全部答えた。
「ストーリーはどうやって考えるの?」
「生活しているときに、ふっとワクワクする場面が絵で浮かんだら、それを絶対に手放さない。その場面にまでの物語とその先の結末まで考える。ていうか、起きている間はずーっと物語を考えてる。小説をパソコンで書きながら、他の話を考えている時もある。1日15時間ぐらいは、いや、もっとかな、妄想してる」と答えた。
友人は絶対に引いていた。
「いつから?」
「もう5年くらい。実は小説を全く書かない日は5年間で10日くらいだった。お話を書くのはとんでもなく楽しいんだよね」
「……」
怖い人を見たみたいな顔をしていた。20年来の友人なのに。
妄想に浸り続け、それを文字にし続けているのって、少し変かもね。
なろうにはそんな作家さんがたくさんいるから気にしてなかったけど。
まあいいや。
好きなことに好きなだけ自分の時間を使えるようになった今、人にどう思われても、もういいんだ。
友人が「記念にサイン本をちょうだいよ」と言ったけど、「ごめん、ペンネームは教えられないから」と言って断った。
彼女、私が小説家になったことを信じたかな。それとも「ついにこの人やばいことになった」と思ったかな。どっちだろ。




