268 本物であってくれ
少し前、私服の警官がうちに来た。何も描いてない真っ白なワゴン車が門の前に停まってて。
「〇〇警察署のものです。お隣のことで少しお話を聞かせてください」と。
若くて清潔感溢れる人。
そこから隣の住人について外見とか、いつ在宅してるか、とか、最後に見たのはいつか、とか聞かれた。
身長は自分くらいか、もっと高いか低いか、とか。車の種類と色は?とか。住んでいるのは一人か、家族がいるか、とか。
正直に「ずーっと留守だったから引っ越したのかと思っていたけど、最近また夜はいるみたいで、玄関前の電気が煌々とついてるから、私が室内にいてもお隣さんが家に帰っていることだけはわかる。だけど日本語が不自由みたいだから挨拶しかしたことはない。愛想のいいご夫婦」と答えたんだけど。
なにごと?
あと、私服だし車も警察とわからない仕様だから「警察署、ですか?」と私が怪しんだら、パカッと身分証みたいなのを開いて見せてくれたけど、私には本物と偽物の区別はつかないわなあと後から思った。
頼む。本物の警察官であってくれ。偽物じゃありませんように。
私が正直に答えたばかりに、隣の善良そうな夫婦に被害が出ませんように。
警察官の名前も聞いたけど秒で忘れた。「何も知りません」と言うべきだったかなあと、今になって思ってる。




