47.片刃使いは珍しいですか
大闘技大会予選初日。
大会に出場しない学生は休み、だとありがたいのだろうが、残念ながら朝と終了後のクラスミーティングがあるため登校が必要で、暇な大会開催中は観客という名の賑やかし要員になる。もちろん教室でサボる奴もいるので、定期的に教師が見回るそうだ。
さて、そんな退屈な時間のあれこれは出場者な俺には関係なく、指定されたエリアへ出向いていた。広いグラウンドがいくつにも分割されて、全学院共有だそうだ。他に室内会場もあるそうだ。
大会は、子どもと大人が一緒に争う意味はないので、初学院、中学院、大学院の3部門に別れて実施される。予選もブロックごとにトーナメント戦になっていて、ブロックごとに会場が割り当てられている。
試合は10分1本勝負。時間切れは審判を務める教師の判定になるが、それ以前に戦闘続行不可に追い込むかギブアップすれば終了だ。
俺の初戦は所属ブロック4組目で、3年生が相手になった。異なる学年同士で戦わせることで、年長者が勝ち進めるようにしてあるのだと思われる。まぁ、同年代に負けてやる気はサラッサラない。
エリアスたちは俺の応援に来てくれているらしい。広いグラウンドのほぼど真ん中が試合場になってしまったので、グラウンドの外周にある応援席なんか全然見えないけども。
試合のない間はひたすら待機だ。試合フィールドの周りを囲んで前の試合を見守る。魔術と違って流れ弾の恐れがないので、見ている方は身の危険もない。
時間いっぱいまで攻防が続く試合はなくて、だいたいは年長者が後輩をあっさり下していた。なので、試合スピードも速い。
「次。3学年Dクラス、ガリア。2学年Eクラス、リツ。前へ」
試合の進行も審判の教師が担当らしい。呼ばれたので前に出たのは、ドイトタイプの大柄の生徒だった。ドイトなら完全に守り一択で徹底してるんだが、彼はバスタードソードを持っている。体格を生かして壁に徹するのではなく、あくまでアタッカーらしい。
そのデカい木剣、当たったら痛そうだな。当たらなきゃ良いだけだが。
今回の大会、俺にとっては実は有利なルールがある。学院生なら誰でも可能な強化魔術は、試合開始の合図があってから掛けること、というのだ。実戦においてあらかじめ掛けておくなんてことはできないのだから、その速度も実力のうちに数えるとの考え方らしい。
つまり、試合開始直後は誰も彼も棒立ちから始まるのだ。魔術をかけるスピードが早かった方が先制するのが当然であるそうで。
ということは。その強化魔術が元々使えない俺は、試合開始直後に速攻ができるということだ。これを有利と言わず何とするか。
試合開始位置にそれぞれついて、審判教師の合図を待つ。
その隙に、相手が俺を見てふんと鼻を鳴らした。
「チビっ子が小剣提げて精一杯背伸びのつもりか?」
……えー。なに、精神攻撃のつもりなのか、これ。ガキンチョなのか、高3にもなって。あ、違った。中学院3年生の癖に。
「しかも片刃かよ。そんなに重いモンが持てねぇならいっそダガーにでもしとけや」
ごめん、何言ってるのか理解できないんだが。この文脈だと、両刃が重くて持てないからさらに半分にして片刃、って意味なのか。
用途が違うだけなんだけどなぁ。
「ガリア。私語は慎むように」
先生も、口撃時間は与えないようにお願いしたいものです。
「では。はじめ!」
両者とも構える時間を設けず、試合開始となる。ここは手を煩わされた教師の意地悪かな。今までの試合では構えろの合図もあったしな。
まぁ、どんな格好からでも、攻撃開始は可能なので。
「な、あ、し、勝負あり! 勝者リツ!」
手足バラバラに投げ出してベチャっと地面に潰れた生徒を見下ろして、ドモリながら状況をゆっくり把握した審判から勝利判定をもらった。試合時間5秒で済んだ。
身体強化してなきゃ、2発ぶっ叩かれただけでこのざまだ。魔術使用中に身を守れないなら実戦に耐えられないぞ。
「強化に頼りすぎなんじゃないですか? センパイ」
ま、聞こえてないだろうけど。
ギャラリーがざわめいているが、気にしないでおこう。この世界の一般的な戦い方と違っている自覚はあるのだ。目新しいだけだとはおもうけどな。
試合場に一礼して、ギャラリーの中に引っ込んだ、つもりだったんだが。周りから人がささっと捌けてしまったので、俺の周りだけぽっかり空間ができてしまった。
ちょっと。寂しいんですが。イジメですか。




