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第23話 豪華な屋敷

 セリスよりもミューズに恐れをなす町の住人たち。

 まぁそれは俺もなんだけど……


 特に案内人は顔面蒼白となり、跼天蹐地になっている。

 気持ちはよく分るよ。

 でも案内はしっかりと頼む。


「つ、着きました……ここでございます」


 彼に案内されたのはボロボロの建物ばかりが立ち並ぶ中で、唯一豪華な建築物。

 こんな場所に立っているものだから、異常さまでも感じてしまう。

 そんな建物であった。


「ご苦労さん。じゃあ見つかる前にさっさと逃げなよ」


「え……」


「案内したのがバレたら困るんだろ? だったら早くここから離れろ。後はこっちの問題だから」


「は、はぁ……」


 男はキョトンとしながら離れて行く。

 俺は彼が去るのを見届け、そして建物の玄関を叩く。


「すいませーん。盗まれた金を取り返しに来たんですけどー」


「おい。それで『すいません。お返しします』なんて流れになるとでも思っているのか?」


「なったらなったらで楽でいいよな」


「まぁありえないな」


「……なんだか、フェイトさんたちといたら勇気が湧いてきます。私もうあまり怖くありません」


「俺は逆に君が怖いよ。お願いだから暴走しないでね」


「あはは……魔力のコントロールは苦手ですから……ですが、フェイトさんからいただいたペンダントがあるから大丈夫です!」


 本当かよ……

 彼女は俺があげたペンダントを見下ろし、そして嬉しそうに笑う。

 笑ったと思ったら、魔力が集中し出す。

 

「ミ、ミューズ……怖くないのはいいが気を引きしめてくれ。ここからは敵の本拠地。油断してたら痛い目に遭うぞ」


「そうでしたね……すいません。気を引き締めます!」


 ミューズの魔力が散開する。

 俺とセリスはホッとし、そして彼女が真剣な表情を浮かべている間に中へと入ることにした。

 だって返事がないのだから。

 だからと言って不法侵入はいかがなものか。

 しかし相手は悪党。

 それぐらいは構わないでしょう。


 扉を開くと、中もまた豪勢な造りとなっていた。

 数々の絵画に品の無い金の壺。

 ここに住んでるのは一体どんな奴なんだよ……


「なんだ貴様らは」


 一人の男が姿を現せる。

 目は鋭いがブクブク太った肉体。

 髪は七三分けで、ツヤツヤしている。

 首からは金色のネックレスをたらしており、指輪もいくつもはめていた。


 なるほど。

 これがこの辺り一帯のボスってわけか。

 しかしこんな弱そうな奴に、何故皆怯えているのだ?

 ハッキリ言って、恐怖心を抱く理由が分からない。


「お前か。子供たちに金を盗ませているのは」


「女……?」


 セリスの声を聞き、男は一瞬怪訝そうな顔をする。

 だがすぐに醜悪な笑みを浮かべ、とぼけ始めた。


「盗みなんて知らないなー。うちには子供なんていないし、お前らの勘違いじゃないのか?」


「勘違いだけでこんなところに来るかよ。この辺りの人ら全員がお前って言ってたぜ。ちなみに、そいつらには痛い目にあわせて吐かせた。お前も痛い目に遭いたくなけりゃ、さっさと吐いた方がいいぞ」


「なるほどな……だが、どこに証拠がある? 俺が盗みをさせたなんて証拠が」


 男は全く動じる気配を見せず堂々としていた。

 さっきのはハッタリだったけど……そうか。

 どこまでいってもとぼけるつもりだな。


「町の奴らの目が証拠だろ。往生際が悪いぞ、貴様」


「だから、そいつらは俺がやったと言っていたのか? 『子供たちに命じて盗ませた』と言っているんだろ? 要するに、俺自身は盗みをしていないし、盗ませたという証拠もない。往生際もクソもねえんだよ」


 ニヤニヤした顔でこちらを小バカにする態度。

 なんというか、ゲイツたちのことを思い出す。

 よし。勝手ながら断言しよう。

 こいつが犯人だ。

 たとえ違っても悪党の親分格。

 謝る必要も皆無。


「なら、痛い目に遭ってもらうしかないな」


「暴力的な奴だ……こちらは話し合いで済まそうと思ってるってのによ」


「こっちだって話し合いで済むなら済ませたいっての。でも白状するつもりもないなら、殴って金を取り戻すしかないだろ」


「だから、俺は何も知らねえって言ってるだろ。どこのどいつか知らねえが、そいつらはどうしても俺を犯人に仕立て上げたいだけなんだろ? お前たちみたいに」


「あー!!」


「ん? どうした、ミューズ?」


 ミューズが突然大声を上げ、左右から伸びている左側の廊下の方を指さす。

 そこには男の子二人の姿があり、ミューズはそのうちの右手の子を凝視しながら言う。


「あの子です! あの子が犯人です! 私のお金を盗んだのは、あの子なんです!」


「へー……ってことは、証拠が出て来たってことだな」


 男はクツクツと笑うだけで、焦りもしない。


「証拠? あの子供が盗みをしたとして、俺となんの関係がある? あいつはうちに勝手に忍び込んで来たんだよ」


「言い訳が苦しすぎるだろ! もっとマシな言い訳なかったのかよ」


「おい」


 男がクィッと首を動かすと、ガラの悪い男が四人ほど現れ、そして子供を玄関の方に連れ出す。

 連れ出したと思うと、突然暴行を始めた。


「お前ら! 何やってんだよ!」


 小さな子供二人が大きな大人に酷い目に遭わされ、血まみれになっていく。


「こいつらが家に盗みに入ったから痛めつけてんだよ。お前らが言う、証拠になるだろ? 俺たちは他人だってな!」


「知り合いだろうが他人だろうが、お前が金を盗ませてるとかどうでもいい! 絶対にぶっ飛ばす!」


 子供相手にこんな酷いことを平然とやってのけるこの男に、俺は怒りを爆発させた。

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