14 星が舞う花畑
大変長らくお待たせしました。別に失踪はしてませんのでご安心を。
設定練ってたらいつのまにか一ヶ月くらい経ってただけなので……やる気が、コメントが欲しい……。
「終わった、か」
ブラスラが消え去るのを見届けると横になる。ボクにとって取るに足らない戦いだがこの身体にとっては初の強敵だ。視界に表示されるゲージの類はHPを除いたすべてが三割を切っている。
中でもスタミナポイント、SPの消費は激しく後数分戦っていたらシステム的な問題で倒れていたかもしれない。
余裕そうに見えた勝負も薄氷を渡っているようなものだったのだ。
仰向けだから空が見える。蒼穹に浮かぶ雲は縦巻き状となっており、夏の入道雲にも見えた。
ボクは雲というものが大好きだ。とくに見た目も好きだ。まるで青空というキャンパスに落とされた白いインク。一つ一つ形が違って悠々と浮く姿はボクの理想に近しい。
こうしているとああ、世界は平和だと根拠もない自信が湧いてくるのは何故なのだろうか。
自分ながら変なこと考えてるなと苦笑しつつ起き上がる。正面を睨むように見ると。
「さて、そこにいるのは誰だい? 少なくともボクの知り合いではないね。もっとこう、なんだろうね。そう、自然を凝固したみたいだ」
口ではこんなことを言っていても正体については看破していた。これに似た気配をボクは知っているからね。
木の裏から顔を出したのはまだ10歳にも満たない少女。気配からしておそらくは森の精霊だろう。
「バレていたのです?」
「こんなナリでも数えきれないくらい冒険をしてきたんだ。ちょっと苦手だけど気配察知は心得てるよ」
髪の毛からは精霊の特徴であるきらきらと輝く粒子が舞っている。人型の精霊は動物型よりも基本的に知性が高く、力が強い傾向にある。それ故なのか、人型精霊は莫大な自然の力、霊力を漏れ出すのだ。
「気配察知……確か人間の魔力操作の技術だった気がするです。魔力操作はすっごく難しいと聞くので凄いです!」
「はは、ありがとね」
中身は違うのだろうけど子供から褒められるのは中々にくすぐったいなあ。
「それで君は?」
「レティは森の精霊で名前はレティアスです。気軽にレティと呼んでもいいのです」
「ボクの名前はライム。よろしくレティ」
「よろしくです」
可愛らしい子だな。子供は見ててほんわかするからいいよね。すごく癒される。
「それで何か用かな」
さすがに用がないなんてことはないとは思うがその言葉に一瞬顔にはてなを浮かべたが思い至ったのか、妙に違和感のないドレスから何かを取り出す。
「思い出したのです。森に住まう精霊代表としてエイネルのオトシゴを討伐してくれたお礼を渡しに来たのです」
そう言い彼女が手渡してきたものは見る位置によって七色に輝く水晶だった。手のひらサイズほどのそれからは濃い霊力を感じ取れる。
「これは?」
「精霊結晶です」
「へ? それって凄い貴重品なんじゃ?」
精霊結晶。精霊が死に辺り、長い時をかけることで精霊に宿っていた霊力が結晶化した物体である。膨大な霊力を含んでいるため、地脈活性化や土地の再生などに使われる。また微小精霊が沢山居る場所に置いておけば新たな精霊が生まれる精霊の卵でもある。
用途は数多く存在するが精霊が死ぬことは全くないため時々鉱山から発見されるくらいだったはず。あまり当てにはならないけど前作だと数十から数百は普通だったな。
「大丈夫なのです。これはレティたちが力を少しづつ注ぎ込んで作ったものなので実質タダなのです」
作れるのかよ。まあそりゃあ精霊の力が結晶化したものなんだからやろうと思えば出来なくはないだろうが……。
手元にある精霊結晶はかなりでかい。手のひらサイズもあったら大物も大物で小指の爪程度のが極たまにでてくるんだけどそれでも大きい方という。
いや、とんでもないお宝貰っちゃった。売れはするけどボクは精霊術士だから契約ってのもありだね。
「ありがたく頂戴するよ」
丁寧にストレージに仕舞う。こんな貴重品を外に出してたら盗賊やらPKに狙われるからね。まあ割とマイナーなアイテムだから気付くかは分からないけど。
「ところでなんですぐ出てこなかったの?」
「レティは人見知りなのでちょっと出て行きにくかったのです」
恥ずかしがるように顔を赤く染めるレティは本当に子供のように見え、可愛らしい。子供のようにとは言ってもボクがブラスラを倒さなかったらレティが倒す予定だったというかなりの武闘派だからとんでもない。
◇
ボクはレティに連れられ森の中を進んでいた。森の精霊の力で本来なら歩きづらい森も歩きやすくなっている。
「ところで今、何処に向かってるのかな」
理由もなく唐突にレティについてきて欲しいのですと言われ、抵抗する間も無く手を引かれてきたため問うことができなかったのだ。
「レティたちの住処。霊域です」
霊域。地脈、要は霊力の源が世界の表層に強く現れた場所でそこでは植物がとてつもない早さで成長し、味や品質もよくなる農家垂涎の土地。他にも霊獣が生まれることもある。
「……なんでそこに連れて行かれてるのボク」
ブラスラを倒したとは言え、ただ倒しただけだ。あの程度の敵は割といる。ワイバーンなんて山奥にいれば大抵いるくらいなので精霊結晶だけでも破格の報酬なのだ。
それだけならまだしも霊域に連れられるのは意味がわからない。先程述べた特徴は戦争に使える。食料が尽きず、ポーションの原料である薬草が尽きず使えるのはかなり有利だろう。まあ代わりに霊域は山の奥深くや海底などに存在しているのだが。
「普段なら連れていかないのです。レティの目は人格を見抜けるのでライムは問題ないと判断したのです」
「え、いやそれだけ? ボクが霊域を利用するとか考えてないの?」
するとレティは心底不思議そうな顔で告げた。
「ライムはそんなことしないですよ?」
「え?」
「だってオトシゴのあの子を可哀想だと思っていたのです。それだけで信用に値するのです」
この信頼の源がブラスラにあることは分かったけど結局あいつなんだったんだろう。単なるタールスライムじゃなさそうだし。
そう考えていたボクに対してレティさんはとんでもない爆弾を落とした。
「それに霊域周辺には魔変種の幻霧鈴蘭を植えてるので大丈夫なのです」
「今、幻霧鈴蘭って言った?」
「言ったのです」
マジで? あの秘境にしか生えなくて絶滅危惧されてるほど数少ない幻霧鈴蘭? 花から幻覚を見せる毒を霧のように撒き散らしてて実は魔物なんじゃねぇの? とか言われてた幻霧鈴蘭なのか。
しかも魔変種。魔力によって変質したやつとか絶対凶悪なのじゃん。そりゃ誰招いても余裕なはずだよ。
何せ、幻霧鈴蘭は幻霧毒に加えて生体毒も散布して、毒で倒れた動物を吸収する魔物みたいな肉食植物だ。手を出すわけがない。
なんとなくレティに近づき手を握る。幻覚見せられてパクリンチョなんて間抜けな死に方はしたくないからね。別に怖いわけじゃないから。
数分も歩けば件の霊域に到着したようで、視界が開ける。
「おおっ」
そこは花畑。色とりどりの花々が咲き誇り、何処か神秘さすら感じさせる。それだけでなく、あちらこちらに幻臨蝶が飛び回り、妖精らしき小人が精霊と遊んでいる姿もあった。
妖精の羽光や精霊の粒子が舞っており、まるで星が舞っているかのようだった。昼間でもいい景色だがきっと夜は夜で絶景なのだろう。
それは正に楽園とでも言うべき光景であった。空気も違う気がするのだが暖かく包み込んでくれるような包容力を感じさせる不思議なものだ。
「ようこそ霊域ティル・ナ・ノーグへ」
ボクに振り向きそう笑う森の精霊の姿はあまりにも幻想的な景色であった。
【Tips:霊域】
霊力は地脈に流れる森羅万象の源となります。地脈が世界の表層にあることで発生する特殊な土地であり、植物成長速度増加や収穫量の増加など様々な恩恵を与えます。さらに特定条件を満たした魔物が霊獣と呼ばれる存在に昇華されることもありますが人類が霊獣に至った、というケースは歴史全体で見ても一桁しかありません。
今回の投稿に伴い、スキルの表示などを改稿しました。より読みやすくなったと思います。
次回からソロモンパートとなるので現在のライムステータスを置いておきます。
こっちもだいぶ整理しましたがもっと短くならないかな……。
◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇
【名 前】ライム
【経験点】55
【所持金】1250ギル
《能力パラメーター》
【HP(69/69)】
【MP(30/30)】
【SP(14/50)】
【EP(21/115)】
【総合力(23)】
【筋力(3)】
【体力(5)】
【魔力(3)】
【技力(5)】
【速力(7)】
【物理攻撃力(15)】
【魔力影響力(15)】
【物理防御力(0)】
【魔力抵抗力(0)】
【重量制限(8/30)】
【ストレージ(10/10)】 〈個数〉
《 ユニオンカード 》 1/1
《 丈夫な縄 》 1/99
《 草原兎のもも肉 》 1/99
《 草原猪の毛皮 》 2/99
《 草原猪のバラ肉 》 3/99
《 草原猪のヒレ肉 》 1/99
《 草原猪のモツ 》 1/99
《 草原猪の魔石 》 1/99
《 ウェットスーツ 》 1/99
《 精霊結晶 》 1/99
《装備》
【武器:アイアンダガー】
【性能:攻撃25 影響0 防御0 抵抗0】
【特性:頑丈Ⅰ】
【防具:レザーアーマー】
【性能:攻撃0 影響0 防御20 抵抗5】
【特性:柔軟Ⅰ】
【服装:異界渡りの服装】
【性能:攻撃0 影響0 防御0 抵抗0】
《スキル》
〈特殊〉
《 狂鬼 》
〈加護〉
《 川の精霊の加護Ⅲ 》
〈知識〉
《 解剖学Ⅰ 》
《 研究心Ⅱ 》
〈術技〉
《 手技Ⅳ 》
《 精霊術Ⅱ 》
〈心得〉
《 解体Ⅰ 》(討伐時に死体が残る)
《 弱点看破Ⅱ 》(相手の弱点を見破る)
《 回避Ⅳ 》(回避行動に補正をかける)
《 身軽Ⅲ 》(体が動かしやすくなる)
《 軽業Ⅲ 》(体術に補正をかける)
《 悪路踏破Ⅱ 》(悪路をある程度歩けるようきなる)
〈耐性〉
《 寒冷耐性Ⅰ 》(環境や一部状態になりにくい)
《アーツ》 〈消費〉
《 手技 : 魔力放出Ⅲ 》 MP/m 1
《 手技 : 硬化鉄甲Ⅱ 》 MP/A 3
《 手技 : 障壁Ⅰ 》 MP/A 3
《 手技 : 魔撃砲Ⅰ 》 MP/A 7
《 契約術:ラピスの刻印Ⅰ 》 MP/A 5
《 下位召喚Ⅰ 》 MP/A
《 研究心 : 解析Ⅰ 》 SP/A 1
※A=アクティブ m=ミニッツ
《称号》
【戦闘中級者】
【不意打ち上等】
【突撃の裏切り】
【外道行為】
【不可視の襲撃者】
【繊細な狙い】
【狂気の娘】
【鬼畜行為】
【慈悲者】
【必殺解体人】
【神回避】
【回避の達人】
【精霊の友】
【依頼達成】
【魔操の技巧者】
【無傷の勝者】
【大物狩り】
【オトシゴ討伐者】
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【魔操初心者】→【魔操中級者】→【魔操上級者】→【魔操の技巧者】




