9 加護と蛇
※この物語は不定期投稿です。
今回は短め。次回は戦闘回になる予定、予定です。
──スキル《 川の精霊の加護Ⅰ 》を獲得しました。
「え?」
加護を手に入れたことに驚き呆然と立ち尽くしているボクに精霊が水をかけてきたことでボクは正気へと戻ることができた。
気のせい、だろうか。ボクの目にはぼんやりと水が動物の形を成した何かが居た。いや何かではなく気配が精霊なので精霊なのだが……。
考え事をしていると水を顔にかけられる。また水が蛇のように絡み付いてきた。
「うわっと!?」
よくよく見ると川の精霊のようで蛇のような形だったようだ。未だぼんやりとしか見えないが何となくもっと遊んでと強請っているように見えた。
「はいはい、まだまだ時間には余裕があるから遊ぼうか」
そう言って川の精霊の頭部と思わしき場所を撫でてみると喜んでいるように見える。
さすがにTRPの全貌を知ってるわけではないため何とも言えないがおそらく縁が深まった結果、貰えたのが加護なのだろう。精霊的には親愛の証的なものなのかもしれない。
効果は水流の影響を少なくすること。確かに若干だが水の流れが弱くなっているように感じ取れる。
考えに没頭しそうになるところで冷気を感じ、顔を傾けると頭があった位置に水弾が発射されていた。
驚き腕を見るが既に川の精霊の姿はなく、上流の方には水弾を途方もない数浮かんでおり、精霊がふふんと自慢げに笑っているような気がした。
なるほど、今回は本気でやるってことか……。
「容赦無いね。だが気に入った、回避ゲーは得意だからね全弾避けてやるさ」
ボクの言葉を皮切りに水弾がマシンガンの如く放たれる。宣言通り一発も当たらず避けていると真っ直ぐ向かってくるかと思いきや曲線状に飛んでくる水弾。
飛ぶ途中で急に軌道を変える水弾。ボクを追ってくるホーミング水弾。回避した足元から放たれた強襲水弾。
足場が悪い川中で全て回避していると最終的に全方位から水弾が襲い掛かってくることとなる。次第に弾速も上がり、おそらく当たればダメージを受けるほどにまで発展していた。
「くふ、ふははは」
ボクは不思議と笑みを浮かべていた。楽しい、とても楽しい。川の精霊からもそのような感情が伝わってくる。テンションのボルテージが上がるにつれてまるで心が一つとなったかのように感じた。同時に縁とは、繋がりとはこう言うものだと直感的に理解できる。
「さすがにボクも疲れてきた。どうだい? 最後どでかいのを打っ放つってのは」
繋がりから肯定の念を感じ取ると水弾がぽちゃんとすべて戻り、代わりに濃い魔力を感じる。多分あれだとこの町が沈む気がするんだけど。
そう念を送れば興奮し過ぎてたことに気がついたのか、魔力は急速に萎んでいき、それは放たれた。
思わず乾いた笑いが溢れた。そして避けられないことを悟る。誰だってそう感じるだろう。何せ──。
「こりゃ無理だ」
──水で出来た巨大な水龍が口をかっ開き、喰らい付いてきたのだから。
数瞬で喰われ、全身が凍えるように冷えた。などということはなく、思ったよりも温かい。きっと精霊が気を利かせてくれたのだろうと理解する前にそのままボクは川原へと優しく落とされる。
「へぶっ」
疲れからか、なんとなく寝転び、朝の柔らかな陽気を浴びて体を乾かしていると川の精霊が気を使ってくれたのか、体に付着していた水を抜き取ってくれた。
「生身で龍は流石に無理」
そう文句を溢すとからからと笑っている気がした。
そして先程よりも大分精霊の姿が見えやすくなっている。遊ぶと言う行為は間違っていなかったようだ。
木陰で休み体の疲れをとった後、ボクは服とレザーアーマーを装着する。
律儀にも待っていてくれた川の精霊に礼を言いつつ別れを切り出す前に話すことがあると伝えると不思議そうに鎌首をもたげる。
「まず一つ目は毎朝、この遊びをやらかないかなっていうお誘い」
これに精霊も水遊びが楽しかったのか、嬉しそうに頷く。
「次にきみって名前とかある?」
これには体を横に振り、否定してくる。
「そっか、じゃあミズチって呼んでもいいかな。友達を種族名で呼ぶのはちょっとね。安直だけど良い名前じゃない?」
相当驚いたのだろう。繋がりから驚愕の念が伝わってくる。なにやら悩んでいる様子だったが最後には肯定してくれた。
「よろしくっ、ミズチ」
ミズチは首に絡みついて、よろしくとでも言うかのようにしゅるると舌を出すのであった。
【Tips:精霊の属性】
精霊には火水風地光闇からなる基本属性に加えて派生属性が存在します。火ならば熱。水ならば川のように属性の特徴の一面を切り取った属性です。
基本属性の万能さには劣りますがその分、派生属性は自身が司る属性に特化しており、川属性ならば放射系の威力が上がるなど特徴にあった特性が存在します。
正直設定を溜め込み過ぎて混乱してる上、ただでさえ遅い筆が親指の疲労により、さらに遅くなってます。書きたいのに書けないのは割と辛い。
あとステータスは今日お休み。代わりに遊びと言う名の訓練で発生していたインフォタイム。一々挟むのは面倒なので一旦ここでやらせてもらいます。
《スキル【回避】を習得した》
《スキル【身軽】を習得した》
《スキル【軽業】を習得した》
《スキル【見切り】を習得した》
《スキル【悪路闊歩】を習得した》
《スキル【寒冷耐性】を習得した》
《称号【神回避】により、経験点を5点獲得した》
《称号【回避上手】により、経験点を5点獲得した》
《称号【回避上手】が称号【回避中級者】になった。経験点を5点獲得した》
《称号【回避中級者】が称号【回避上級者】になった。経験点を5点獲得した》
《称号【回避上級者】が称号【回避の達人】になった。経験点を5点獲得した》
《称号【精霊の友】により、経験点を5点獲得した》
《パラメーター【筋力】がレベル2になった。》
《パラメーター【体力】がレベル3になった。》
《パラメーター【魔力】がレベル2になった。》
《パラメーター【技力】がレベル3になった。》
《パラメーター【速力】がレベル4になった。》
本来ならこんなにぽんぽんスキルや称号はとれませんし、パラメーターもかなり上がりづらいです。
ライムの場合は相手が精霊という上位者であったこと、ほぼ戦闘と同じような集中と濃密な経験をしたこと、長時間に及んだこと、本人の技術によってここまで上がりました。
この子、3時間もやっていたので本当頭おかしいです。




