第1話 連絡
今日も翔太からメールが来てない…
「なんでメールしてこないのよっ!翔太のばかっ!」
携帯に向かって大声で怒鳴ってベッドに寄りかかる。
今年の春に就職したばかりの社会人1年生。
井上菜摘。
身長150cm。
体形は太くもなく、細くもなく標準体重を保っている。
いつでも結婚できるように伸ばした栗色のロングヘア。
日本人らしい黄色肌。
目は大きくはないけど、太めに引いたアイラインのおかげでややパッチリに見せてる。
ちょっとぽてっとした唇に派手な口紅は似合わないから、薄いピンク色のリップを塗ってる。
服装はは黒を中心としたTシャツ+パンツスタイル。
アクセントにスカーフを巻いてみたり、ベルト付けてみたり。
派手な色も柄もほとんど着ないから、友達にはシンプルだねって言われる。
翔太も同じく社会人1年生。
神崎翔太。
身長はー確か174cm。
細身で、つんつんショートヘア。
面長でちょっとつぶらな瞳をしてる。
いつもジーパンにポロシャツか爽やかなカッターシャツを着てる。
いわゆる男の定番スタイル。
現在、私の彼氏。
「あームカつく」
カフェオレ片手に、顔をしかめながら親指で携帯のボタンををいじる。
カチカチカチカチ…
なんで翔太からメールが来ないのかというと、お察しの通りケンカしたから…です。
先週のこと。
翔太の仕事が忙しくて、2週間ぶりに会えることになった日。
「なかなか時間取れなくてごめんな!ちょっと遅れるかもしれないけど、絶対行くから、いつものとこで待ってて」
ってメールくれて、私嬉しくって、会社でも
「今日は彼とデートなんですっっ」
って言い触らしてて、浮かれきってたの。
就業時間が終わって、デートまでの合間に、新しく買ったフルーティな匂いがする香水ふって、いつもなら使わないパープルのアイシャドウを目元に塗って
「いい匂いー!よぉし、メイクもバッチリ☆」
スーツのシャツだけ淡いブルーに変えて、小さなマリンブルーの石がついてるネックレスを付けて、足取りも軽く会社を後にした。
早く来ないかな。
いっぱい話したいことあるんだ。
そうだ、今度ドライブしよって言わなきゃ。
あ、そういえば来月は翔太の誕生日だ。
何が欲しいか聞かなくっちゃ。
うん、よしよし。
なぁんて考えながら、駅前のベンチで翔太のこと待ち続けること45分。
翔太からの連絡なし。
「おっかしいなぁー確か19時に待ち合わせって言ってたのに…まさか残業?」
嫌ぁな予感。
まさかね、だって必ず来るって言ってたし。
「あっ、もしかしてメールどこかで停まってて届いてない?」
カバンから携帯を出して、センターへ問い合わせる。
『メールは届いていません』
「んー?もう1時間経つのにーなんでー」
さすがに口をとがらせて、ちょっとイラッ。
もぉぉぉぉぉ!
仕事の邪魔になったらいけないと思ってたけど、電話しちゃえっ!
トゥルル…トゥルル…
翔太ー早く出てー!
もう待ちくたびれたー!
「もしもし…」
沈んだ小声が耳に響く。
「あ、翔太?菜摘だけど…今、大丈夫?残業なの?」
私は、会いたい気持ちが飛び出るかのように興奮気味に言葉が出る。
それなのに翔太は、ちょっと間が空いて
「…ごめん。今日も仕事長引いて遅くなりそうなんだ。何時になるかわからないから帰ってて」
冷静で、淡々とこう言った。
私は朝からずっと楽しみにしていた、ハッピーな時間が音を立てて崩れていく気がして、次の瞬間。
「何それっ!来れないんだったら来れないって連絡くらいすればっ!ずっと待ってたのにっ!」
全てが怒りと悲しみに変わった。
「ごめん。行けるはずだったんだけど、急に仕事が入って…」
「もういいっ!翔太のばかっ!」
私は怒りに任せて電話を切った。
携帯が壊れるんじゃないかってくらい力いっばいに通話ボタンを押したんだ。
その日を境に翔太からの連絡はない。
<つづく>
どうでしたか?正直、連載を始めても他に書きたい事があると手に付かなくなる性分なので心配です。是非感想を下さい!