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段々と、昼間の暖かさよりも日暮れからの寒さを強く感じることが増えてきた、とある秋の日。
夕食のあと、昼間の失敗から、わたしは真っすぐ寝室へと送られた。
バケツの水を被ったことで、体調が悪化することを心配してだった。
だけどわたしには、どうしても今日中に話しておきたいことがあって。
大事な話があるから、とベッドを降りようとしたところで、寒さを理由にわたしは執事に押し留められた。
「お話でしたら、このままで伺います」
幼い頃から体が弱く、原因不明の高熱に浮かされることも多いので、常に周りの人間は手を焼いてきた。
特に、わたし付きの執事であるクリスは10年ずっと仕えてくれた分、気苦労が絶えなかったと思う。
(余計な心配をさせたいわけじゃない、でも)
彼に聴いてもらおうとしている話は、自分の答えこそ出ているものの、内容は混乱していて上手く話せるか自信がなかった。
(向かい合って話す方が少しでも伝わりやすいかと思ったけど、)
迷ったものの結局は、彼の眉間に寄った皺に気圧されて。
わたしはベッドから上半身を起こしつつも、羽織ったカーディガンのボタンは全て留められて、腰まで毛布を掛けた状態で座って話をすることになった。