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呪文を唱えよう

 というわけで、私は大きく息を吸って、呪文を唱えた。



「プラズマルク・ラスター!!」



 1文字違ったら権利が発生しそうな言葉でした。いろんな意味で間違えたらまずい。いや、異世界だからいいのか?


 でもこの呪文、ほんとに効く!

 凝り固まって黒く見えている、煙状の瘴気がものすごい勢いで私の胸元、前世界ではつつましく隠れていた鎖骨の真ん中付近に吸い込まれていく!

(ちなみに鎖骨が見えていたのに驚いて「鎖骨が生まれた!」と叫んだのは秘密。丸い体型アルアルだよね)

 でもま、口じゃなくてよかった。ビジュアル的にもよかった。ホラーになるとこだったよ。


 吸引力が落ちないサイクロン並みにぐいぐいいく私をその場にいた皆さんはビックリして見つめている。

 まあ、そうよね。逆だったら私も見るよ。私の視線に気が付いてそっと顔をそむけたのに気づいたけど、気にしなくていいよ。


 すごい勢いで黒い霧が晴れていく。

 瘴気をたっぷり吸い、空気がおいしくなったころ、吸引は止まった。結構時間がかかったので途中で寝ちゃうかと思ったよ。

 見渡せば真っ黒だった小屋も木目が美しい丸太小屋になっていて、サンナスビさんの頭も照りが戻っている。

 あの真っ黒いのが瘴気なんだ、と急に実感した。

 煤だって吸い込み続けたら病気になるのだから、瘴気だったらもっと危険だろう。すぐに体に影響が出ているところを見ると、何とかしたいと聖女を召喚したくなるのもわかる。

 とはいえ普通に誘拐なので、できれば自分たちで何とかしてほしかったなあ。


「呼吸が楽になった気がする」

「目が痛くなくなった!」

「頭が軽くなったぞ!」


 1.2.3おじさんたちが驚いた顔できょろきょろしている。ちょっと瘴気に当てられただけだったから呪文で解決したのね。よかったよ。


 呪文だけでほんとうに大丈夫なのかなと正直思っていたのでほっとした。

 だってさ、そこにいたらいいんだとか言われても、ねえ。

 そりゃ1週間くらい熱海の温泉に浸かってゆっくりしたいとか言っていたけど、それはあくまでも期限が決まっているからであり、ずっと何もすることがないってのは生殺しと同じだと思う。

 日々まじめに働いて生活の糧を得ていた私としては、ただダラダラする生活は難しいのだよ。


 そんなことをぼんやり思っていたのだけど、カチョさんたちは口々に私を褒めてくれた。

 特に何かしたわけではないのでちょっと困る。


 そうしていると、鎖骨の付け根がもそもそし始めた。

 触ってみると固いなにかの感触。つるんとしてすべすべだけど、私の肌ではない。

 なんだこりゃ、と思ったら、内側から何かが抜ける感じがし、鎖骨の下で止まった。


「おおっ!」


 カチョさんが驚きの声をあげる。

 自分では見えないので触ってみると、胸に大きなしこりができていた。

 一瞬怖い病気かと思ったが、すぐに瘴気が結晶化して魔法石になったのだと気づいた。

 これ、ちゃんと取れるんだよね?

 このまま瘴気を吸い続けて、でかくなっていつかは私が魔法石にとかじゃないよね?

 そのうちどんどんでかくなった私が魔法石の中で「王子様に助けてもらうんだ」とか言いながら眠り続けるとかそういう落ちはないよね!??

 と、心配していたら、あっさりと石は落ちた。心配して損したよ。


「大きい……」


 拾い上げた魔法石を見て、カチョさんたちは呆然としている。

 私は手の中の魔法石を見た。

 綺麗、と言いたいところだけど正直悩ましい。

 夜の闇を固めたような暗い青に金色の粉みたいなのが舞っている。大きさは私の手のひらより少し小さいくらいかな。重たいかと思ったら意外に軽い。ただ、手触りがスーパーボールみたいなのがなんとも。固いんだか柔らかいんだか、微妙な感触に心なしがっかりする。

 宝石っていうからダイヤみたいなのかと思ったら。やはり瘴気なのねえ。


 カチョさんは魔法石を預かりたがったけれど、初仕事で何かあったら心配だからと言って断った。

 だって、瘴気なんだよ?心配じゃないか。

 カチョさんは少し不満そうだけど、こればっかりは譲れないからね。


 その後、このあたりの瘴気がなくなったことを確認した。ニタカさんが何やら手をかざしている。聞いてみたら「鑑定」しているのだとか。


「鑑定ってのはいろいろ調べることができる能力でしてな。知識でも鑑定はできますが、やはり能力持ちにはかなわないのです」


 サンナスビさんが教えてくれた。

 能力か。鑑定いいなあ。私も使えるかな。

 聞いてみたら、イチフジさんが戻ったらギルドで能力査定してもらいましょうと提案してくれた。冒険者ギルドと国教会には能力を調べる装置があるんだとか。後で詳しく聞こう。


 鑑定の結果、小屋の周りは安全と出た。明日からでも仕事に出られそうだとのこと。

 役に立ててよかった。


「じゃ、お試しはこのくらいにして、一時帰りましょう」


 カチョさんも嬉々としている。

 そして、私たちは和やかに帰路に就いた。



 はずだった。

 そう、どこからか間欠泉のように瘴気が噴出したのを見るまでは。







読んでいただいてありがとうございます。

そして、初めてブクマが付きました!!ありがとうございます。幸せです。続けられるように頑張ります。

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