ある晴れた夜下がり
のんびり更新していきますのでよろしくお願いします。
ある晴れた、夜下がり。
いつものように道を歩いていた、はずなんだけど。
気が付いたら真っ暗な森の中、ポツンとたたずんでいた。
駅までの近道で明かりの少ない公園を突っ切るけど、これはない。
なにかおおきな境界みたいなものを通った感じでもなく、いつものように帰っていただけなんだけどなあ。
とりあえずスマホ、と荷物をあさろうとして、何も持っていないことに気づく。
あらやだ、どっかに落としたのかな?
お財布とかいろいろ入ってるから戻って探さなくては。
といっても、どこにどうやって戻ったらいいのやら。
まずここがどこなのかからスタートなんだけど、その手掛かりをどうやって見つけたらいいかなあ。
私は途方に暮れた。
というか、実のところ「これは夢だな」と思っていた。
だって、現実感のなさが半端ない。
それに夢ならいろいろと理解できる。夢なら何でもありだもんね。
街灯がない夜は真っ暗だ。鼻をつままれてもわからない。
このまま座って朝を待ったほうがいいのか。
それとも少しでも歩いてどこか落ち着ける場所を探したほうがいいのか。
ぼーっと突っ立っていると、どこからともなくたくさんの人の気配がわいた。
目をやれば、オレンジ色の光がいくつか踊っている。
「聖女様だ!」
「今になって!? 信じられん!」
「まさか本当に来てくれるとは!!」
複数のおじさん声がこちらに向かってやってきた。
なんだなんだと思っているうちに囲まれる。
それぞれ、なんというか、埃っぽいにおいをさせたおじさんたちは、こちらがビックリする間もなく、その場で平伏した。
「「「ありがとうございます!!!」」」
リアル五体投地は、なんというか、とてもシュール。
私より年上のおじさんたちが、茨城のご老公に会ったときみたいになってる。
どっきり企画かなと思ったけどこんなおばちゃんをひっかけたところで面白いことないだろうし。
何か言ったほうがいいのかなと思ったとき、ふと、気づいた。
最近読んだばかりの物語(可愛い女の子が異世界に転移し、聖女様になっていろんな奇跡を起こす話)を思い出す。
いや、まさか、そんなことは……。
「ひょっとして、召喚されちゃった?」
平べったくなったままのおじさんたちが大きく頷く。
マジか……。
異世界転移って本当にあるのか……。
っていうか、私が聖女枠って全方面に申し訳ないんだけどいいのかよ。
私は思わず頭を抱えたのだった。
読んでいただいてありがとうございます。