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次元災害で異世界へ  作者: 真草康
キュベレー山脈編
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92. エルガさんの相談事


 四月七日赤曜日。

 帰宅したら、ボランドリーさんが呼んでいるってことで冒険者ギルドに来た。

「セージよく来てくれた。この前はありがとうな」


 どうやら僕のダンジョン救出に、お金が出るんだって。

 ただ、冒険者ランクEの僕に対しては出せるお金をが少ないそうなんだってことで、僕の冒険者ランクが“C”になってしまった。カードの色は“緑”だ。


 ポチットムービーのデータ提供も買い取りとしてくれて、合計一〇〇〇SH(シェル)と日本円で五〇万円だ。

 ボランドリーさん曰くこれでも安いくらいだそうだ。

 一八人を四人で救ったってことだけど・・・・。少ないのか? よくわからん。


 あとママとガーランドさんが一緒に来ていて、

「ポチットムービーの有能性を認識した。

 市への説明も楽だった」

 ということで、ポチットムービーの購入交渉もあった。

 パパからの後押しもあったってことだけど、市への状況説明に大変役に立ったそうだ。

 もちろん冒険者ギルド内への説明でもだ。


 同行したパーティーから聞き込みを行うにも、映像を見せながだと、お互いの勘違いや齟齬(そご)が解消されるのが早かったそうだ。


 さすが映像だ。


 打ち合わせの結果、試しに五台を納入することとなった。

 調査依頼の時にはポチットムービーを所持しているパーティー優先としたり、パーティーに貸し出したりなども話題に上った。

 もちろん最初は七沢滝ダンジョンで使用するそうだ。


 営業会話には僕は参加しなかったけど、日本でのブラック企業に勤めていた時の事を思い出して、チョット暗い気持ちになったことは内緒のことだ。


 帰宅したらミクちゃんたちは僕の家に残っていて、何があったの、何で呼ばれたのって囲まれたしまった。

 正直に話すと、ホッとされるも、

「なんでセージがランクCなのよ!」

「私たちがいつ追いつけるのよ!」

 ミリア姉とロビンちゃんの不満は、笑ってスルーした。

 もちろん、そんなミリア姉とロビンちゃんもネタ的な意味合いで面白がっているってのが本当みたいで、魔法展覧武会で拍車が掛かってしまったようだ。

 いったい、どこに行くんだろう。


  ◇ ◇ ◇


 あらためて帰宅すると、エルガさんから小型近距離電話(ミニミニフォン)試作品Ⅳ(デルタ)が完成したそうだ。

 リエッタさんとデトナーさんとアランさんに付き合ってもらって、目標の一五キロの通信が行なえたそうだ。

 最長一七キロの通信が可能なんだそうだ。


 小型近距離電話(ミニミニフォン)試作品Ⅳ(デルタ)のサイズも二回りほど小さくなって、小型の魔充電装置ボルテックスチャージと合わせてバッグやリュックに入りそうだ。


 エルガさんもある程度納得していて、これに小さなシンクロ装置を取り付け、単独の小型の魔充電装置ボルテックスチャージを分解して組み込んでと、やることはまだまだあるが、これで小型近距離電話(ミニミニフォン)も完成に向かうそうなんだけど、エルガさんから相談事があった。


 それとは別に電界効果型トランジスターもどきの電増魔石の製造を開始した。


  ◇ ◇ ◇


 四月九日黄曜日から始まった期末試験。

 試験は毎日一、二時限目にペーパー試験――国語・算数・社会・生き物・魔法学習――がある。

 その他の時限に、クラス単位で連続二時限の実技試験――魔法・体育・音楽・図画工作――が行われる。それはクラス単位でどこに割り当てられるかまちまちだ。

 あとの次元は基本自主学習だ。


 二年生から五年生も科目や科目数に違いは有れど、似たり寄ったりな状態だ。


 魔法や体育は魔法展覧武会での評価もあるので、軽い確認程度で終わった。


 ちなみに花の絵も良く描けたと思うし、歌もいい感じで歌えたと思う。


  ◇ ◇ ◇


 四月一二日の黒曜日、久しぶりにみんなと狩りに出かけた。場所はいつものララ草原だ。

 いつもと違うのはルードちゃんとパパさんのラーダルットさんが参加したことだ。ケガも完治している。


 ルードちゃんはメッチャ張り切っていたけど、キュベレー山脈に行くにしても、その前にラーダルットさんと一緒に狩りを確認したかったってのが本音だ。


 張り切っていたルードちゃんを手伝って、一匹狩り――大縞ムカデをショートスピアで――をして興奮していた。

 もちろん活性化と補助も行ってだ。


 ラーダルットさんの弓の精度はさすがで、ララ草原では百発百中といったところだ。

 総合(強さ)は“50”弱といったところじゃないだろうか。


 ミクちゃんにライカちゃん、ミリア姉とロビンちゃん、それにモラーナちゃんも含んで、僕が直接手伝って、みんなは二匹や三匹は倒した。

 さらにミリア姉だけでなく、弱い魔獣は全員自分一人で倒していた。


  ◇ ◇ ◇


 僕もキュベレー山脈に行く準備として、図書館でキュベレー山脈に関する本を読みあさった。

 魔素濃度が高い魔素だまりが多くあって、魔獣だけでなく、険しく危険な場所が多い。

 地図も大雑把なものしかない。

 そしてキュベレー山脈には無数とも言われる多くの泉がある。


 水脈の地下の状態は不明だが、浄化された魔素を膨大に含んだ湧き水が出る泉が真のルルドの泉で、キュベレー山脈の気まぐれといわれていて、どの泉がルルドの泉か行ってみなければわからない。

 時にはルルドに泉が無い時期もあって、巡り合うのは運だそうだが、濃厚な魔素だまり付近の泉がルルドの泉の可能性が強いって書いていた本が一冊だけあった。


 神寿樹のことも本も読んだし、エルガさんからも話を聞いた。

 生えている場所は日当たりのよい魔素濃度の濃い場所で、しかも魔素に流れがないといけない。魔素濃度が薄い場所だと神寿樹は枯れてしまうため、栽培は不可能。

 本に神寿樹の写真が幾つか載っていた。

 葉っぱはツバキ科のつやつやした感じだがかなり大きい。

 樹皮はごつごつとしていている。

 必要なのはその樹皮で樹液が漏れ出ている付近が最適なのだそうだ。

 そして樹皮ははがすのも細心の注意が必要で、はがすと劣化が進み、効能が落ちていく。


 魔失病の秘薬、“妖精の慈愛”を作るには採取した二日以内の樹皮が必要だ。

 魔法力にも反応するためアイテムボックスに入れるのもはばかられ、保存方法も確立されてない。

 一般の薬でも五日以内の樹皮が必要なため、幻の素材とされる。


  ◇ ◇ ◇


 四月一七日白曜日の昨日で一学期が終わった。

 五月七日の赤曜日が二学期の始まりで、二週間の春休みだ。


 一応僕が一年生の主席らしいんだけど、魔法実技関係は僕とミクちゃん、ライカちゃん、ルードちゃんは実技は全員満点だと思うんだ。

 ペーパー試験もルードちゃんは分からないけど、僕を含めてミクちゃんとライカちゃんも満点だと思う。

 そうなると音楽と図画工作でミクちゃんとライカちゃんにルードちゃんの方がいい点のはずなんだけど。

 ミクちゃんは音程も安定していてキレイな歌声だった。まあ、絵の才能はごく普通だろう。

 ライカちゃんはパパさんやママさんに錬金を鍛えられた所為か、物を見る目が肥えているのか、デッサン力があり、独特の配色で印象的な絵を描いていた。

 そしてエルフって多彩なんだと思ったのがルードちゃんで、綺麗な歌声に素敵な絵を描いたんだ。

 僕が首席でいいのか? あってるの?

 それとも魔法実技で加点ってことなのか?

 一〇段階評価の通知表にはそんなこと書かれてなかったけど。


 ちなみにセージは知らないだけだった。

 通知表には別欄で、魔法核レベル“13”、魔法回路レベル“13”、取得属性魔法数“11”――生活魔法込みの全12種類で、闇魔法だけ無しとされている――という欄があって、それが加点要素だということを。


  ◇ ◇ ◇


 今日はエルガさんとリエッタさんの三人で、内緒のお出かけだ。

 まあ、パパとママには内緒じゃないけど。誰に内緒かって決まってるでしょう。

「気をつけていってらっしゃい」

 ママもある意味諦めたみたい。

 僕も決して心配を掛けたいわけじゃないけど、やっぱ僕が頑張らなきゃって思ってしまっている。


<テレポート>二回でモモガン森林手前の小さな集落モラン村に到着。

 オーラン市周辺を探索した結果、ここまでは来られるようになった。というか、もう一回モモガン森林手前に<テレポート>で到着。

 徒歩でモモガン森林に踏み込んでいく。

 久しぶりのモモガン森林だ。


 リエッタさんはすでに自前のミスリル硬鋼Lのショートスピアがあるけど、新たにエルガさんにもミスリル硬鋼Lのショートスピアを武器としてあげた。

 それとミスリル硬鋼Lの大きめのナイフは二人にだ。

 全て魔法力を大目に流すと発熱しながら高周波ブレードになるように付与済みだ。


 レーダーの距離も伸びたし、さすがに大きな群れは厄介なので猿の集団を気を付けながらモモガン森林に分け入っていく。

 このような場所では浮遊眼よりヤッパ、レーダだ。

 とはいっても気になることがあると浮遊眼で確認している。何かと便利で重宝している。

 リエッタさんも気を付けてくれていて、あまり深入りはしないことにしている。


 リエッタさんの現在の総合(強さ)は“51”と、ランクC級冒険者の強さだ。

 研究に、開発にとN・W魔研にこもりっきりのエルガさんは“32”と、一昨年の暮れに狩りに出ていたころから変化していない。冒険者としてはランクEの上といったところだ。

 ただし二人ともランクDの冒険者だ。


「デミメガホッグ見つけたよ」

 僕は<テレポート>で、デミメガホッグを視認できて、ある程度の距離を取った位置に二人を一緒に運ぶ。

 メガホッグにしてはかなり小ぶりなのがデミメガホッグだ。

 それでも体長は二.二メルほどで、体重は七〇〇キロはあるだろうか。


<身体強化><トリプルスフィア>『並列思考』『加速』

 戦闘準備を整える。


「あれをボクが…」

「うん、大丈夫だよ」

 目を見張り愕然とするエルガさんに、僕が気楽に答える。

 強さは“51”と平均“50”とされるデミメガホッグにしてはやや強めだ。

 リエッタさんも緊張している。


 メガホッグが僕たちに気付いた。

「<スカイウォーク>、二人は上に乗っててね」

 二人も魔力眼と魔素感知のスキルがあるから、チョット高めに出現させたスカイウォークに乗るのに何も問題はない。


 ドドドドドド……とメガホッグが突進してくる。

 いくら僕が強くてもぶつかれば、体重差で跳ね飛ばされてしまう。

「<ハイパーアドヒジョンウォール>…<ハイパーアドヒジョンウォール>…<ハイパーアドヒジョンウォール>」

 背後に粘着壁を三枚出現させる。

 個人魔法化で、粘着性を強化した捕縛用の魔法だ。


 メガホッグの動きが、かなりゆっくりに見える。

 タイミングを見て、ハッとスカイウォークに飛び乗る。


 ブモーーン。

 デミメガホッグが粘着壁に突っ込んで身動きができなくなる。

 僕の魔法も個人魔法(マクロ)化したとはいえ粘着性が増し、強固になったもんだ。


「<ハイパーアドヒジョンシート>…<ハイパーアドヒジョンシート>」

 念のため上からも粘着シートを掛ける。

 口をふさいで、威嚇を防ぐ意味もある。


「<スカイウォーク>」

 もがきながらも身動きのできないデミメガホッグの真上にスカイウォークを発動。

 エルガさんを促す。


 スフィアシールドを張ったエルガさんが決意の表情で、ショートスピアに魔法力を目いっぱい流し込んで、エイッと首筋を突く。

 身体魔法を持たないエルガさんの突きは、デミメガホッグの首が太いこともあって中途半端で、もう一度、エイッと突き刺す必要があった。

 暴れるデミメガホッグに振り回されながらもショートスピアに力と魔法力を込めて、何とか倒した。


 エルガさんからの相談事、小型近距離電話(ミニミニフォン)の作成で限界を感じていたんだって。

 相談はエルガさんの魔法核と魔法回路、そして総合の成長だ。

 できるかどうかわからなかったけど、僕は色々と考え、エルガさんとリエッタさんに逆に相談してみたんだ。

 その結果、一番効率的そうなのがこの方法だった。

 魔獣は二人で倒したんだから経験値は多少減るも、全ダメージを与えたエルガさんがかなりの物を得られるはずだ。

 まあ、結果は明日にならないとわからないけど。


 やる気満々だったエルガさんも、さすがにデミメガホッグを仕留めて顔が青い。随分と緊張したんだろう。


 あと“思念同調”の所為なのか、魔獣の悪意のこもった怒りがなんとなく伝わってくる。

 ニュートのいうように動物と仲良くなれそうな気がしないんだけど。


 一休み。


 その後にエルガさんはブラックベア(強さ“46”と“49”)を二匹、リエッタさんは本当のメガホッグ(強さ“61”)にレッドキャップベア(強さ“54”)を倒した。

 弱い魔獣は魔法を使いながら自分一人だけで倒したりもした。


 僕も魔獣を倒したけど、果物にナッツに香辛料と採取も忘れてない。


 エルガさんが疲労がかなり溜まったところで帰宅した。


 翌日、エルガさんは【基礎能力】の総合が“44”となって、魔法核と魔法回路が“4”からギリギリ“6”となって大喜びしていた。

 これで大手を振ってランクD冒険者だ。

 ただし、属性魔法は“4”と“5”なので、鍛えないといけない。それにしたって魔法核と魔法回路が“6”だから、魔法陣は『複写』できるし、魔法力マシマシで放つことも可能だから成長は時間の問題だ。

 あとは身体魔法が“0”となって、発現した。

 魔法の総量も増えたし、これで開発や研究がやりやすくなったことだろう。

 ちなみにレイベさんと一緒か、チョット上になっちゃかもしれない。もちろん戦えばレイベさんの方が圧倒的に強い。あくまでも数値上のことだ。

 パパやママにも内緒だ。……あれっ、でもこれでボティス密林に通えるってことは、その内にバレるってことじゃ…。

 まあ、その時にはパパママに押し付けちゃえばいいか。


 とにかく魔法回路を『複写』させてあげた。以前のお返しだ。


 ちなみにリエッタさんも総合が“55”で魔法核と魔法回路が“7”となって喜んでいた。


 エルガさんには申し訳なかったけど、相談して不安もあった。

 それでも、こういうことでもレベルアップができるんだと、別の意味でほくそ笑んでしまった。

 それとキュベレー山脈に行く前にもう一度モモガン森林に行ってみたかったんだ。


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