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次元災害で異世界へ  作者: 真草康
ダンジョン編
90/181

87. ダンジョン決戦 1


 目標と寸分たがわぬ場所に出た。


<身体強化><トリプルスフィア>『並列思考』『加速』『レーダー』『隠形』


 目の前の大広間は直径八五メル程度で、ボコボコとした岩肌丸出しだ。

 地面にはわずかだけど草と、そして苔が生えている。

 そこいらじゅうから大きく岩が飛び出している。

 天井は七~八メルほどだが、天井も所々にい飛び出た岩がぶら下がっている。


 大広間は一六○匹程度のオーガ系の魔獣に埋め尽くされ、ボランドリーさんにニガッテさん、そして冒険者たちの合計一八人が壁際に追い詰められている。

 三人は重傷のようだ。

 大きな岩に囲まれた場所で、その岩を盾にして何とかしのいでいるといったところだ。

 ケガ人も多数で、いつ全滅してもおかしくない状況だ。

 そしてダンジョンの中からか、この岩場の空間の外が良く認識できない。

 かろうじて四つの通路の先が認識できる程度だ。


 凶暴そうな(?)オーガ系の魔獣は手に手に武骨だが金属製のような武器を持ち、強さはほとんどが“50”から“70”ほどで、数匹が“80”前後だ。

 でも、四頭身程度の体に、本来のいかつい顔も、デフォルメされたような顔で、どことなく愛嬌がある。

 まあ、顔がでかい。


 有角人のニガッテさんと明確に違うところは理性と知性なのは当然だが、オーガは凶暴な顔で口から突き出した大きな牙、赤黒い固そうな肌、頭から首、そして背中に伸びる剛毛のタテガミ、真っ黒く鋭く伸びた爪と見た目でも間違えることなんてありえない。

 それと一般のオーガの身長は二.五メル前後だが、上位種のオーガは三メル以上もある。


 それと僕は食べたことはないけど、肉は筋張ってて固くて臭いんだって。

 素材としてもほとんど価値が無く、魔獣石だけと価値が低いし強いしと、ハズレ魔獣として有名だ。

 でも本で見たより丸っこいし、デフォルメオーガは新種か?


<ハイパーエクスプロージョン>

<ハイパーエクスプロージョン>

<ハイパーエクスプロージョン>


 閉鎖空間で火魔法は事故の元だし、酸欠も気になる。と、思ったけど水蒸気と爆風が大広間の大気をかき回す。

 オワーップ。チョットやり過ぎた。


 オーガが大騒ぎを始める。

 ボランドリーさんたちから意識が外れればまずはOKだ。

 混雑する岩場の中にテレポートして飛び込むのはまず無理だったので、攪乱戦法だ。


 あ、ワンダースリーのみんなに相談もなくやっちゃった。失敗。


「オーガが変⁉」

 白くややかすんだ視界の中、ボコシラさんが不思議そうに、デフォルメオーガの群れに飛び込んでいった。


<スカイウォーク>

 僕も黒銀槍に魔法力を流してから、違う場所、つながりを求めて、その方向に飛び込んでいった。

 初ダンジョン。

 知らないうちに某RPG曲を鼻歌で奏でていたが、記憶の外だ。


 単独行動のオーガの首に黒銀槍を突き刺し、<ボルテックス>


 次を突き刺し、<ボルテックス>


 オォーット、スカイウォークを突き破って斧みたいなものが飛んできた。

<スカイウォーク>


 突き刺して<ボルテックス>

 突き刺して<ボルテックス>

 隠形が効いてるみたいだし、デフォルメオーガの雄たけびも総合(強さ)に格段の開きがあるから、何ともない。

 ただうるさいだけだ。


 デフォルメオーガは、看破で見ると“オーガ”となている。

 なんだか本当にゲームの世界みたいだ。


<スカイウォーク>

 突き刺して<ボルテックス>


 ボコシラさんは本当にオーガのど真ん中に飛び込んで、レイピアで次々と突き、わずかな魔法を流して体内――顔・胸(心臓)・首など――から焼き殺していた。


 プコチカさんは縦横無尽に飛び回って、冒険者たちに襲い掛かるオーガたちを、イリュージョンの魔法やフラッシュなどを巧みに使い、鞭とショートソードで時にはけん制し、そして時には確実に仕留めていた。


 ノコージさんは守りを固めてから、大きな魔法石のステッキを目の前に掲げ、光魔法で鋭い光線魔法を練り上げ、それを数本束ねて、オーガを的確に倒していた。

 魔法の練り上げに時間が掛かっているけど、ノコージさんも確実だ。


 そう、それらが僕の頭の中で意識するたびに移動しながら映し出されていた。

 もちろんケガをしてもなお、先頭に立つボランドリーさんとニガッテさんを見ることも可能と、自由自在だ。


 空間認識は指定領域の空間の状態・状況、および何があるかを大雑把な感覚で捉える。いうなればデフォルメしたオモチャに置き換えてみるような感覚だ。

 それが今見ている脳内映像はピンポイントのドローン映像のようなものだ。

 全体認識で気になる場所をピンポイントで見られるなんて、ここまでくると周囲の認識がチートだ。

 ただし、ダンジョンの外が見られないし、テレポートもダメみたいだ。

 ここがダンジョンのどの辺なのかも認識できない。

 ここが見えていたのもテレポートで飛べたのもニュートのおかげだったみたいだ。


 飛び掛かってきたオーガをユトリで避け、横から一刺しして<ボルテックス>で仕留める。


 個人情報を見ても、スキルに載っていないから、きっと明日になれば表示されるだろう。

 あれ、魔法の残量が“400”を切った。使用量が多い。多分このスキルの所為だろう。要注意だ。


 四人で倒したオーガは約二五匹。

 まだ一三五匹も残っている。


 そしていた。

 岩場の陰に。

「大丈夫だった」

『遅いよ』

「ごめん。これでも頑張ったんだから」

 グッタリと力のないニュートを拾い上げる。

 以前の手のひらサイズから、なんだか二回りほど小さくなっている。


 自分で魔法力を吸う力も無さそうだ。

 魔法力を“10”ほど分けてあげる。

 まだグッタリしているけど、しばらくは大丈夫そうだ…と思う。

「つかまっててね」

『……わかった』

 肩に乗せるが、大丈夫だろうか。


「行くよ」

<スカイウォーク>


 突き刺して<ボルテックス>


 避けて、突き刺して<ボルテックス>


<スカイウォーク>

 突き刺して<ボルテックス>


 肩のニュートが気になって、討伐が今一歩だ。

 作戦変更。


 今度はオーガがまとまってる場所のほぼ真上に魔法陣を出現させて、

<ハイパーサンダー>

 ハイパーボルテックスに風魔法のフローコントロールを加えた、レベル10の個人魔法(マクロ)だ。

 さすがに電気(ボルテックス)は、フローコントロールでも完全制御は不可能だ。

 当然のごとく周辺にも落雷する。


 魔法陣を少し調整して、もう一丁。

<ハイパーサンダー>


 レーダーでは、これで三匹のオーガを仕留めたことになる。

 そして戦闘不能らしきオーガが三匹で、軽傷が二匹だ。

 鉄菱(ひし)を、次々に投げつけ、軽傷の二匹をけん制しながら、重傷三匹の急所を次々に刺突する。

 そして軽傷二匹も倒そうとしたら、別のオーガが駆けつけてきた。

 急いで逃げる。

 かなりの手間だ。


 残り約一〇〇匹となったところで、ノコージさんの攻撃が止んだ。

 集光光線(ビーム)攻撃はどうやら燃費が悪いようだ。

 小ビン入りの魔法力の回復薬を飲んでいる。

 レーダー越しに鑑定してみると“高級魔力回復薬エクセリックマジックヒーラー”だ。

 魔法回復効果(大)、効力発揮に数十分。瞑想休憩と併用で数分。

 効果(大)って、どれほど回復する薬なんだろう。


 ノコージさんは、しばらく隠れるみたいだ。


 ボランドリーさんたちを守るボコシラさんと、狩り続けるプコチカさんは抜け出せそうにないから、僕がフォローに向かう。

 魔法専門といっても総合(強さ)が“100”以上あれば、オーガなんかに後れを取るとは思えないけど、念のためだ。


 手を上げて、サインを送る。

 ノコージさんもステッキを持つ手を上げ、返礼してくれた。


 マジックアイテムか? ノコージさんの気配が消えた。


 とはいえ、ここを離れがたい。

 それと、ここで守ってるだけじゃダメだよね。

 お、向こうから来てくれそうだ。

 そりゃー、目立つところにボーッと突っ立ってたらそうなるか。


 三個の鉄菱(ひし)に魔法力を込め、

<ハイパーストリーム>


 ハイパーストリーム、投てき用にカタパルトとハイスピードフローコントロールを合成した個人魔法でレベル8の風魔法だ。


 もう一回、

<ハイパーストリーム>

 一匹を倒して、もう一匹は戦闘不能だ。 


「おーい、こっちだー」

 おお、来る来る。一、二、三、四匹か。

<ハイパーストリーム>…<ハイパーストリーム>…<ハイパーストリーム>…<ハイパーストリーム>

 右・左・右上・左上、と四匹に四方向から鉄菱(ひし)三個セットを飛ばす。


 二匹撃破で、一匹は半死で虫の息ってところだ。

 最後の一匹も動くには厳しい重傷だ。

 周囲を確認して、さっきの戦闘不能の一匹を含めた三匹に駆け寄って止めを刺す。


「おーい、こっちだー」

 今度は、一、二の三匹か。

<ハイパーストリーム>…<ハイパーストリーム>…<ハイパーストリーム>

 あ、一匹に避けられた。くそ!

 まあ、でも戦闘能力はかなり奪えたみたいだ。


 ボランドリーさんたちの周辺も、プコチカさんの活躍でやや落ち着いてきたみたいだ。

 残り約八五匹と約半数になった。ボコシラさんガンバルなー。

 だけど強いオーガはまだ残っているから不気味だ。

 本格的な戦闘はこれからだろう。

 でも、まだ回復しないのかなー。数分って何分なんだろー。


「おーい、こっちだー。間抜けー」

 今度は、二匹か…。

 チッ、一匹逃げた。


 今度は、三匹か…。

 二匹逃げた。

 チョット疲れたか、集中力が途切れている。


 気分一新。

 大きく深呼吸。

 今度は、三匹か…。


 魔法の残量が“200”チョットと、心もとなくなってきたけど、まだいける。

 それと、僕に向かうオーガがだんだんと増えてきた。

 集中、集中。


<ハイパーストリーム>…<ハイパーストリーム>…<ハイパーストリーム>

 攪乱で鉄菱(ひし)を飛ばす。

 そうはいっても、一匹は仕留めた。


 もう一回。

<ハイパーストリーム>…<ハイパーストリーム>…<ハイパーストリーム>

 もう一匹。


 もう一回。

<ハイパーストリーム>…<ハイパーストリーム>…<ハイパーストリーム>

 更に一匹。


 やっとノコージさんが復帰。

 遅いよー、と思ったら、ボコシラさんがボランドリーさんたちの避難所に入って、魔法力の復活に入ったようだ。


「ノコージさん飛びますよ」

 ノコージさんの手を持って

<テレポート>


 無事ボランドリーさんたちと合流する。


 あ、コノヤロー。

<ハイパーストリーム>…<ハイパーストリーム>…<ハイパーストリーム>


 岩陰に潜む、オーガ三匹を撃破。


「ボランドリーさん、これをみんなに」

 ルルド(マジック)キャンディーを三〇〇個程度プレゼントだ。

 それと、果物にビスケットに、ルルド水だ。

 でもフェイクバグでそれなりの物を持ってるそうだ。

「セージ、よく来てくれた。礼を言う。

 ノコージか、早かったな」


 一八人にマジックキャンディーが配られた。

 全員傷を負っているし、その内の三人がやはり重傷者だ。

 早速、治療が開始される。


 血だらけのニガッテさんは、その多くが返り血で、まだ戦えるようだけど。

 左肩にヒビが入っていて切り傷がそれなるにある。…これがニガッテさんにすれば軽傷か。

<メガリライブセル><メガヒーリング>

 三本角の凄みのある顔で二コリとほほ笑まないでよ。ちょっと怖い。


「ストロングオーガ(強さ80前後)六匹、サイクロプスオーガ(強さ70~80程度)二匹、ビッグオーガ(強さ60~70程度)一八匹、通常のオーガ(強さ50~60程度)四八匹で、その内の四匹は戦闘不能です」

 残ってる数が多い。何匹か増えているみたいだ。

 サイクロプスオーガって確か居なかったはずだ。

 それとヤッパリというか、オーガたちは愛嬌のあるデフォルメオーガたちだ。


「野郎ども、残り七○匹チョットだそうだ。気合を入れろ!」

「「「…「おーっ!」…」」」

 雄たけびが上がる。


「ボランドリーさん、オーガ増えてるみたいです」

 耳元で、コッソリと伝えた。


 ニガッテさん以外にも二人を治療すると、ほぼ魔法切れだ。

 燃費の悪い映像を消したいけど、消す方法が無い。どうしよう。


 残った魔法力を全てニュートにあげて、ハチミツルルドキャンディー四つを口に放り込む。

 小っちゃいニュートは、ずいぶんと元気になったみたいだ。


 ハチミツハチミツルルドキャンディーは、効果が一割程度アップしているが、一ビンでできたのはたったの二六個だった。

 一回試してここぞって時のために取っておいたものだ。

 だから残りは一八個だ。

 今回の効果は“131”まで回復した。通常のルルドキャンディーだと体調にもよるけど“120”程度がMAXだった。

 それと苦いんだけど、甘みもあって、ルルドキャンディーよりも食べやすい。


 と思ったら、体調を更に持ち直したニュートに魔法を全部吸われた。あっという間に。

 勘弁してくれー。久々の…気持ち悪。

『ご、ごめん』

「ごめんじゃないよ…」

 慌ててもう一度、ハチミツルルドキャンディー四つを口に放り込もうとしたら、一個をニュートに取られた。

 それをうまそうに食べだすニュートだ。


 しかたなく、もう一個追加で出して、四個を頬張る。

 お腹もいっぱいになりそうだよ。

 残り一三個だけど、まあ、ルルドキャンディーはまだまだあるから。


「セージ、お前は充分働いた。しばらく休んでろ!」

 気分が多少良くなったんだけど、ボランドリーさんの有無を言わせぬ迫力で戦力外通知を受けてしまった。


 そこに、ボーーン、と爆発音ともに地響きがあった。

 ノコージさんの爆発魔法に、数匹のオーガが吹き飛んだ。


「「「…「うおおぉーーっ!」…」」」

 先ほど以上の歓声が上がる。


「ねえ、ニュート、何かあれば起こしてね」

『うん、いいよ』

 お言葉に甘え“瞑想魔素認識法”で魔法力の回復をはかる。

 できれば一時間でもいいから眠りにつきたいところだけど、これだけうるさいと瞑想もままならない。


「おい、セージスタ。オマエも魔法力の回復か」

 プコチカさんも休憩みたいだ。

「はい」

「魔法回復薬は持ってるのか」

「ルルド…えー、マジックキャンディーを食べたところです」

「効果は」

「今四つ食べ柄“130”」

 そう、さっそく減ってるんだ。脳内ビュースキルの所為で。

「オマエじゃ足りないだろう」

「うん」

「瞑想はできるか」

「瞑想魔素認識法なら」


 プコチカさんが一瞬悩んで、

「これを飲め」と渡してきたのは“高級魔力回復薬エクセリックマジックヒーラー”だ。

「エ、エクセリックマジックヒーラー…」

「おっ、知ってれば話が早い。

 回復したら全員を外に運べるか」

「できません」

「じゃあ、どうやってここに飛べたんだ」

「ニュート見えますか?」

 セージスタが自分の肩を指さすが、魔素の塊りがあるようにも見えるが、何も見えない。

「ニュート? なんだそりゃ」

妖精(フェアリー)何ですけど、そのニュートに呼ばれてです」

「そうか、まあいい。回復するぞ」

 プコチカさんは何となく納得したようだ。


 プコチカさんが、一人用のテントを出して魔法を込めると、岩のようになる。

「周囲に同化して、魔素や魔法力の放出を遮ってくれる、簡易休憩テントだ。

 それなりの強さもある」

 触ってみると、まるで岩だ。

 セイントアミュレットで防魔獣効果もある便利テントだ。


「じゃあ、やるぞ」と、さっさとテントに入ってしまった。

 僕が慌ててその後を追う。

 テントの中は外の喧騒が嘘のように静かだ。完全防音じゃないけど、耳を澄まさなくっちゃ聞けない程度だ。


 プコチカさんは一気にエクセリックマジックヒーラーを飲むと、あっという間に瞑想に突入した。

 これも一流の技なんだろう。


 魔法力や魔素の流れを見たら、人の十数倍の量と流れだ。


 僕も端に座ってエクセリックマジックヒーラーを飲む。

 かすかな苦みがあるけど、ルルドキャンディーよりずっとまし、気にならない程度の物だ。


“瞑想魔素認識法”に入る。

 体がポカポカと温まる。

 お風呂に使ってる気分だ。

 そのまま気を失いそうだ……


謝罪と訂正


申し訳ありません。

人物紹介で、ダラケート元伯爵を元侯爵としていました。

元伯爵が正しいです。


ホンタース王子をそそのかした人物です。


後程訂正いたします。


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