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次元災害で異世界へ  作者: 真草康
ダンジョン編
88/181

85. 魔法展覧武会 2


『はーい、みなさーん。お昼は美味しかったですか。食べ過ぎてはいませんか。

 魔法展覧武会、午後のプログラムを説明しまーす。


 最初は見どころ満載の、特別選抜者の魔法発表です。

 今年はどんな魔法が見られるか楽しみです。

 なんでも、珍しい企画が用意されているみたいです。ワクワクです。


 一人二分の持ち時間での発表となります』


 準備と片付けを考慮すると一人三分半となり、ユトリを見てプログラム上は選抜者が二〇人で一時間半となっている。

 特別選抜者といってもそこは初等学校だ。普通で考えればそれほど魔法を放てる訳じゃない。


『それが終わると、特別選抜者は最終競技の模擬戦に向けて休憩、英気を養てもらいます。


 その間は選抜者による魔法発表となります。

 見どころが満載の最上級生、五年生の素晴らしい魔法をご堪能くださいね。


 そして最後に特別選抜者の六位から一位の模擬戦闘となります。

 えー、内緒なんですけど、なんでも今年は特別な対戦者をお招きしたそうです。

 期待度ドドーンと一二〇%。興奮ものです』


 グランドをおおう防御結界は、昼休憩に再確認されている。

 毎年このためにグランドに特別設けられる防御結界で、今年は特別に強固、レベル12の魔法でも耐えられる。誰の生徒、もとい、所為とは言わないが。

 校長と相談して、大会責任者の魔法課筆頭主任のルデン先生が市と掛け合って張った防御結界だ。

「ルデン先生、やり過ぎじゃないかね」と校長に言わしめたものだ。


『最初は六位のルードティリア・ナルア・フィフティーナさん、一年です。

 エルフのルードティリアさんは、魔法が得意で、入学試験の時にレベル2の合成魔法を撃ったんだそうです。

 驚きです。うらやましいですね』


 グランドの中央に立つルードちゃん。

 僕、ミクちゃん、ライカちゃん、モラーナちゃんがサポートで、グランドの四隅に向かう。

 標的を三本づつ立てて、避難する。

 僕が他の三人を確認して、合図を送る。

 ルードちゃんが四隅を確認して、OKを出す。


『準備がいいみたいなので、初めていただきましょう。一年、ルードティリアさんです。

 皆さん拍手をお願いしまーす』


 会場が拍手に包まれる。


『自然眼』『魔力眼』


 自然眼。別名エルフ眼とも呼ばれるエルフ独特の大気の様々な状態・状況を視認するスキルだ。

 これがあるから弓矢が得意とされる。

 魔力眼はまだ取得したばかりでレベルは“0”だ。

 それでも、風魔法の制度は格段にアップした。


 精神統一して弓矢を引く、魔法を乗せる。

 グランドの中央から各標的までおおよそ六〇メル。

 魔法の乗らない弓矢にでも、殺傷力を持つ距離は優に一〇〇メルを越す。

 軍隊同士の弓矢の打ち合いだと、四五度の角度で放てば三〇〇メルや四〇〇メルでも殺傷力がある。ただし、ピンポイントで狙うなどは不可能だが。


「<エアコントロール>」

 矢を射る。

 矢は大きく湾曲して、的の中心に当たる。


 拍手喝采。


『ルデン先生、今の魔法は?』

『風魔法レベル2の、エアコントロールですね。

 速度はありませんが気流をコントロールすることに長けた魔法です』


 ルードちゃんが弓矢を構えると拍手が途絶える。

 そして三連射。

「<エアコントロール>」


「<エアコントロール>」


「<エアコントロール>」

 三か所の隅の的に、右から、左から、大きく上からと三通りの湾曲で、的を射抜く。


 拍手喝采。


『素晴らしいですね。見ているこっちまで緊張してしまいます』


 ルードちゃんは深呼吸して、今度は二本の矢をつがえる。

 拍手が途絶える。


<エアリアルコントロール>

 二つに分かれた矢は、それぞれの的を射抜く。

 内緒の魔法は、声に出さない。


 拍手喝采。


『すごいですね。あんなことができるんですね』

『上級者の技ですね。決して魔法学校の技ではありません。

 ボクも見たことが無い魔法のですね』

『え、新魔法ですか。驚きです』

『いや、どこかで発表されているかもしれませんし、それよりエルフ伝統の魔法じゃないでしょうか』

『そうですね。失礼しました。それにしてもすごいですね』


 エアリアルコントロール。

 セージが、ルードちゃんに頼まれて作成した、レベル2をチョットだけ超えた、いうなればレベル2.2の魔法だ。

 もちろん参考はルードちゃんのパパさんのラーダルットさんから『複写』させてもらった魔法だ。

 ラーダルットさんにも、ルードちゃんを通して『複写』もらった。


 セージ()との特訓で、魔法核と魔法回路が成長したことで使えるようになった魔法で、作るのに苦労したんだ。

 それとルードちゃんのママさんから借りてきた、エルフ伝来の魔宝石のネックレスの力も借りている。

 極端な精神集中が必要で難しい魔法だ。それと自然眼と魔力眼があるからできる魔法だ。


 ルードちゃんの額から汗が垂れる。

 それをぬぐって、反対側を向いて、

<エアリアルコントロール>

 二つに分かれた矢は、それぞれの的を射抜く。


 拍手喝采。


 ここで弓を地面に置く。

 汗をぬぐって、ルルドキャンディーを食べて、顔をしかめる。


「<ロック><ハイウインド>」

 左右の手にそれぞれのレベル2の魔法を出現させる。


 魔法核と魔法回路がレベル2のルードにとっては、非常に負荷がかかり、精神をすり減らす魔法だ。

 通常で考えれば合成してレベル2が順当な魔法で、無理をしてレベル2とレベル1の合成だ。


 精神集中、精神集中。

 飛べ! と岩を飛ばす。


「<ロック><エアコントロール>」

 目の前でその魔法を合成させて、

 精神集中、精神集中。

 飛べ! と岩を飛ばす。


 汗をぬぐう。

「<ロック><ハイウインド>」

 精神集中、精神集中。

 飛べ!


 汗をぬぐう。

 精神集中。

「<ロック><エアコントロール>」

 精神集中、精神集中。

 飛べ!


 残った四枚の的を複合魔法で粉砕してルードちゃんの魔法発表が、拍手喝采、拍手満載で終了した。


『すごかったですねー。

 これが六位って思わせる発表でした』

『レベル2どうしの合成魔法です。

 お手本とでもいうべきものです』

『だそうです。ルードティリアさんに、もう一度盛大な拍手をー』


  ◇ ◇ ◇


『次は、ペア発表となります。

 ペア発表は毎年ありますので、ご覧になっている方も今年もあるんだって思ったかもしれませんが、今年は四年生で二位で生徒副会長のミリアーナ・ノルンバックさんと、同じく四年生で四位で生徒会会計のロビナータ・ウインダムスさんです。

 二人ともレベル3の魔法が使えるそうなんです。

 このオーラン魔法学校でも、レベル3どうしのペア発表は初めてのことなんだそうです。

 ルデン先生、見どころはどんなところでしょう』


『ミリアーナさんとロビナータさんはともに四年生の筆頭で、入学当初からライバルとして張り…(ウホン)、競いあってきた間柄です。

 ここ最近は仲も良く、一気に魔法が強力になって安定したので、見ごたえがあると思います』


『そうなんですか、って、わたしも二人の仲の良さ(テヘッ)…は、生徒会室でよく見かけていました。

 期待大です。

 準備ができたみたいなので、それではお楽しみください。

 ミリアーナさんとロビナータさんに拍手をー』


 グランドのあちらこちらに的を設置した。

 それらのパシリは僕とミクちゃんと、ポラッタ姉妹にルードちゃんだ。


 二人なので持ち時間は四分だ。


 拍手の中、背中合わせの二人は、胸のネックレスの魔霊石を握りしめる。

『魔力眼』『魔素感知』

『魔力眼』『魔素感知』

 スキルを発動する。


 両手を広げる。

「<ビッグジェル><ジェットストリーム>」

「<ビッグジェル><ジェットストリーム>」

 ともにレベル3の水魔法と、風魔法を左右の手にそれぞれ出現させた二人の最大魔法が対極に飛ぶ。

 ルードちゃんと魔法のサイズも速度も違う。

 明らかに二人の方が上だ。


『盛大な魔法、目にも止まらない速さです。驚きました』

『ビッグジェル、ジェットストリーム、ともにレベル3です。

 初等学校で魔法レベル3の合成魔法にお目にかかるのは、滅多にみられるものではありません』

『そ、そうなんですね。

 わたしも初めて見ましたー。興奮モノデス』


 火・水・土・風魔法で、ミリアは火魔法が使えない。ロビンは土魔法が使えないが、その他は全てレベル3となっている。

 まあ他にも使える属性はあるが、連携して見せられるものは身体強化以外は無い…かな。


<身体強化>

<アクティブセル>

 腰に差したレイピアを抜いて、周囲が驚くほどの速度で走り、五連突きで、的五つを一瞬で木っ端みじんにする。


『これだけの身体強化があれば、上級魔法学校でも、狩りの許可が降りますね』

『それほどですか』

 実際はミリアが身体魔法が“2”で、ロビンは“1”だ。

 身体強化はレベル2から――後は体内魔素と魔法力の込める量と運用で更に上げることが可能だ――なので、ミリアしか使っていない。

 ロビンは細胞強化(アクティブセル)だ。

 生徒を発奮する上でのルデン先生のリップサービスだ。


 レイピアを腰に戻して、お互い向き合う。

 距離は四〇メル程度だ。

「<マルチシールド>」

「<マルチシールド>」

 レベル4のスフィアシールドと違って、レベル3のマルチシールドは向いた方向、指定した方向を魔法と物理攻撃から防御するシールドだ。


「<ウォーター><フローコントロール>」

「<ファイアー><フローコントロール>」


 二つの魔法が中間地点でぶつかって消滅する。


『フローコントロールって聞いたことありませんが?』

『研究室で使われる魔法だね。低速でユックリとしか物を飛ばせないが複雑な動きが可能です』

『そうなんですか。初めて見ました。

 ヤッパリ、セージスタ君が作った魔法陣なんでしょうか』

『研究開発しているところだとポピューラーだから、知ってる人や持ってる人は多いですね。

 特別に作ってってほどの魔法陣じゃないですね』

『そうなんですか』

『それを言うなら、先ほどのルードティリアさんの弓矢をいっぺんに二本コントロールした魔法の方が珍しいと思うよ』

『あれって、エルフ伝統の魔法じゃないかってことでしたよね。

 秘伝の魔法だったりして』

『さあ、そこまでは分からないな』


「<マッドボール><フローコントロール>」

「<ファイアー><フローコントロール>」


 空中でぶつかった泥団子と、火球だが、レベル2の泥団子が勝つのは自明の理だ。


 泥団子がロビンのマルチシールドのぶつかって、はじけ飛ぶ。

 そしてロビンがムッとする。


『何ですか、あの泥団子⁉』

『これは又珍しい骨董魔法をよくもまあ』

『それほどですか』

『ボクも詳しくは知らないんだが、昔いろいろな遊びを考案するのが流行ったそうで、その中で確か“マッドボール”という魔法があったって記憶がある』

『記憶があるって、その魔法は知らないんですか』

『見るのも初めてだな』

『皆さん。泥団子は“マッドボール”といって骨董魔法だそうです』


「<マッドボール><フローコントロール>」

「<ファイアー><フローコントロール>」


 再度の空中激突で泥団子が、ロビンに向かって飛ぶ。


「<フローコントロール>」


 ロビンの魔法に、泥団子がUターンして、ミリアのマルチシールドではじけ飛ぶ。


『おお、また高度な魔法を』

『え、何が高度なんですか』

『相手の魔法コントロールを奪い取って、自分の魔法でコントロールするのは非常に難しい技術です』

『地味ですが、そうなんですか』

『魔法コントロールを上げるには、最適な方法の一つとされています。

 ただしそれなりの魔法レベルが必要で、魔法の才能がある人で、上級魔法学校の高学年で習う魔法技術です』

『皆さん聞きました。地味、地味ですが、上級魔法学校の高等技術だそうです』


 グランドでは、ミリアが撃った泥団子を、ロビンが投げ返す。

 その間にミリアが追加で泥団子を投げつける。

 お互いが、泥団子のコントロールを奪っては、魔法で投げ返しあっていた。

 要は、二つの泥団子をお互いが落とさずに、魔法でキャッチボールをしていた。


『マロンさん、地味地味言わない。これは上級者には見ごたえのある魔法だよ。

 相手の魔法量や魔素量を見極める特殊なスキルがあってこそ、できる魔法技術です』

『はい。すみません。…え、ってことは二人とも何らかのスキルも発動してるってことですか』

『そうだと思います』


 ミリアとロビンは、レイピアに魔法を流して、泥団子を切って捨てる。

 再度中央で背を向け、ルルドキャンディーを口に放り込む。


「<ロック><フローコントロール>」

「<ビッグファイアー><フローコントロール>」


「<ビッグウォーター><フローコントロール>」

「<ビッグウォーター><フローコントロール>」


「<ロック><フローコントロール>」

「<ビッグファイアー><フローコントロール>」


「<ロック><フローコントロール>」

「<ビッグファイアー><フローコントロール>」


 最初の魔法よりもマシマシ技術で、盛大なフィナーレを飾る。


『普通の魔法より、威力を高めた魔法です。これも難しい魔法技術ですが、いざという時に役に立つ魔法技術です』

『いざという時って、魔獣との戦闘でしょうか』

『上級魔法学校で再度聞いてみてください』

『はい、わかりました』

『ミリアーナさんと、ロビナータさんでした。

 もう一度盛大な拍手をお願いします』


  ◇ ◇ ◇


『えー、次は学園史上初めてだそうですが、四人による魔法発表です。

 一位で一年のセージスタ・ノルンバック君、三位の同じく一年のでミクリーナ・ウインダムスさん、五位で一年のライカ・ポラッタさんの皆さん一A一クラスの仲良しだそうです。

 それと七位で三年のモラーナ・ポラッタさんは、ライカさんのお姉さんでもあります。


 えーと、この際ですから申し上げますと、一位のセージスタ君と二位のミリアナさんが姉弟で、三位のミクリーナさんと四位のロビナータさんが姉妹です。

 あ、午前に言いましたっけ。


 あとは六位のルードティリアさんも同じく一A一クラスで、皆さん同じ班だそうで、水水大戦争では一緒に戦ったチームメイトでもあります。


 そういうことで、上位七名は姉弟(姉妹)で友人ということだそうです』


 マロンが期待したほど、周囲はそれほど驚いていなかった。


『それでルデン先生、副題の“キラキラプテラン”ってなんでしょう』

『さあ、ボクにもわからないな』


『あ、セージスタ君から手が上がりました。なにも用意していないようですが、いいんでしょうね。

 それではお願いしまーす。

 皆さん拍手をー』


「<スカイウォーク>」


『何ですか?』

『時空魔法で空中に足場を作り魔法です。

 グランドの地面すれすれに円形に真っ平な足場を造り出しました。

 これだけの規模のスカイウォークは初めて見ました』

『空中の足場…デスカ。ロマンがありますね』


『え、えー、…あ、あれって…』

『アイテムボックスですね。相当な容量のようですね』


 セージはアイテムボックスから、木で作られた大きな物から小さなもの、金属でできた車輪や長い棒から針金、切った革や布などを取り出す。


 セージは、ミクちゃん・ライカちゃん・モラーナちゃんに、出番前に体内の活性化と、魔力眼と魔素感知の補助を行っている。

 それとミクちゃん・ライカちゃん・モラーナちゃんの三人は身体魔法の<アクティブセル>も行っている。


 セージはミクちゃんと木の枠を持ち上げると、ライカちゃんとモラーナちゃんが錬金魔法で車輪をハメ、<接着>で軸を固定する。

 セージが大物を支え、ミクちゃんが小物を支え、ライカちゃんとモラーナちゃんが錬金で木や金属を手早く<接着>していく。

 指定の長さで切って番号付けをして、場所ごとに分けて並べてあるからプラモデルの作成と一緒で簡単だ。

 一人に魔法の負荷がかからないように、難しい箇所や魔法量が必要なところは全部僕が受け持っている。


 ちなみに魔録霊石の付いた二〇センチメル程度のステッキをみんなには持たせている。


 魔録霊石とは魔法を記録させて魔法を流せば誰でもが魔法を放てる魔石の一種だ。

 上位には陣宝石もあるが、セージが購入した魔録霊石はサイズも小さく七ミリメル程度で、最高でレベル3の魔法を記録できるものだ。

 魔法陣を記録させるわけではなく、付与魔法で発動状態の魔法を記憶させ、魔法力を流すとその魔法が再現されるというものだ。

 ただし使うにはいくつかの条件があって、記録された魔法を操るだけのスキルが要求される。

 要はそのレベルの魔法核と魔法回路を所持していて、尚且つ魔法力のコントロールも要求される。

 魔法力のコントロールの能力によって、記録された魔法を若干だが操ることができる。

 みんな練習して、かなり操れるようになっているんだ。


 ミクちゃんの二本のステッキには錬金の“接着”と“成型Ⅱ”を付与している。

 ライカちゃんとモラーナちゃんの二本のステッキには、…後のお楽しみだ。


 僕の貯めていたお金で、どんなことができるか、お試しに用意したステッキで、これからも時と所と場合(TPO)で違った魔法を付与してみたいと思って購入したものだ。

 購入にはマールさんに頼んで、ウインダムス総合商社から社員価格で買えたから随分とお買い得だったと思う。しかもいいものを選んでくれたみたい。


『先生何をしているのでしょう』

『えー、全員が身体魔法で強化しているから、あれだけ簡単に重い物を持てるのですが、ボクの専門外だ。ドワトール先生頼みます』


 人当たりの良さそうなおじいちゃん先生のドワトール先生は、錬金や付与や補助魔法を受け持つ先生で、ライカちゃんやモラーナちゃんがいつもお世話になっている先生だ。


『まさか魔法展覧武会(ここ)で、錬金魔法を主題にする生徒が現れるとは驚きです。

 あれらは錬金の“接着”、“木加工”、“成型Ⅱ”、“着色”を基本に組み立て作業を行っています。

 あれだけの大きさの作成は、おおもとの加工もキッチリとした寸法で行わなければいけませんが、きっと彼らのことですから、自分たちの手で加工してきたんだと思いますよ』


『めったにお目に掛かれない時空魔法に、錬金魔法、そして作業には身体魔法ですか。

 見ていても、簡単そうに行っているので、えー地味で、難しい魔法って見えないですね。

 …と、お話を伺っているうちに、何やら出来上がりそうです』


『三輪車のようですが』


『頭に羽が付きましたねー』


『三輪車のプテランですかねー? 走りそうですが、何処が“キラキラプテラン”何でしょう? 地味ですが』


 ミクちゃんたちは二つ目のルルドキャンディーを口にして、

「「「「<イリュージョン>」」」」

 今度はステッキを使うのは、ライカちゃんとモラーナちゃんだ。

 ミクちゃんの光魔法もずいぶんと上達して、安定している。


『あ、何ですか、ド派手なデコレーションは』

『光魔法のイリュージョン、幻影を見せる魔法ですな』

『初等教育の魔法学校じゃあー、全部レアな魔法ばかりじゃないですかー』

『そうだね』『そうなるな』

『……』


 ラメ入りの“キラキラプテラン”の完成だ。


「「「「<ファイアーワークス>」」」」

 ドドーン。パッ…パッ。


『きれいな魔法ですね。あれも光魔法ですか』

花火(ファイアーワークス)で、またレアな魔法を引っ張り出してきたもんだ』

『お祭りでよく使われるものも基本は一緒で、家族が受け継ぎ、様々な工夫したものじゃ。

 大本はあの魔法なんじゃよ』

 ルデン先生の解説に、ドワトール先生が補足する。

『へー、そうなんですね。そう聞くと、感慨深いものがありますねー。

 あ、乗り込みましたね。本当に乗れるんですねー』


<ハイパーフローコントロール>

 四人乗りのキラキラプテランは思い。もとい、非常に重い。

 真っ平らなスカイウォークの上だそしても一人で動かせるもんじゃない。

 流体制御をMAXにした個人魔法で動かしている。

 僕はこの制御で手いっぱいなので、花火は三人に任せている。


 ここまで派手になったのは、ステッキの購入でママとマールさんに相談したのがきっかけで、

「やるならやるで、精いっぱいやりなさい」

「中途半端はダメです。見にくる皆さんに楽しんでもらえるような工夫をなさい」

 四人で手を振ってますが、……めっちゃハズイんですが……。

 四人とも顔が引きつってます。


『よくあの翼が折れないですねー』

『ドワトール先生、何らかの魔法で軽くしていませんか』

『多分じゃが、レビュテーションを弱目にあちらこちらに付与しているようじゃな』

『レビュテーションと言いますと?』

『風魔法のレベル4で、別名“空中浮遊”とも呼ばれています』

『レベル4ですかー』


 アナウンスが続く中、グランドを一周する。

 最後に盛大な、

<ハイパーファイアーワークス>

 花火を打ち上げてフィナーレだ。


『キラキラプテランで一周して、ドッパーンで発表は終わりのようです。

 綺麗でし…た……って、せんせー! あ、あんなに大きいものがアイテムボックスに入るんですかー?』

『まあ、見た通り入るんだろうね』

『セージスタ君のレベルが“10”とか噂されとるが本当みたいじゃな』

『……“10”…ですか』

『マロンさん、(しめ)(しめ)を忘れないように』

『あ、そうでした。

 セージスタ君、ミクリーナさん、ライカさん、モラーナさんに盛大な拍手をー。

 皆さん珍しい魔法をどうもありがとうございましたー』


  ◇ ◇ ◇


 続いて二〇位から、八位の生徒会長までの発表が行われた。


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