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次元災害で異世界へ  作者: 真草康
友人レベルアップ編
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79. ルードティリアの事情


 二月二一日黄曜日。


 騒々しい学校が終わって帰宅。

 今日からまた小型近距離電話(ミニミニフォン)の作成再開。リベンジだ。


 昨日もそうだけどN・W魔研の仕事があるからって、ライカちゃんとモラーナちゃんには断りを入れているから、レベルアップは無し。自宅に直帰している。


 ミクちゃんは来たがっていてけど、邪魔だからってマールさんに「帰りますよ」と学校で別れた。


「ただいま」と帰宅して、着替えてN・W魔研に顔を出す。

「セージくーん、待ってたよー」

 ピンクのツナギ姿のチョット照れ気味のエルガさんがいた。

 さすがに二日も落ち込んじゃいない。

 リンドバーグ叔父GJだ。

 リエッタさんが「どうぞ」と暖かい紅茶を淹れてくれる。


「早速だけど、これをどうするかって考えたんだけど、ボクはちょっといい案が浮かばなくってね」

 そう、回路がメチャクチャこんがらがっている。

 手当たり次第につなげて、ジャンパー線だらけだ。


「最初っから作成した方がいいんじゃないのかな。

 それと送信と受信の回路を分けて干渉しないようにすれば。

 えーと、それと変な音、ノイズが乗りにくくできないの? そうすれば完璧じゃないかな。

 あー、あと部品の均一化だよね。僕も頑張るね」


「ヤッパリそうだよね。これを手直ししてもダメかー。

 それにしても送受信を回路分けするっていい発想だね」

 ええ、日本じゃ常識です。

「前から思ってたんだけど、そうすれば回路も追いかけやすいかなって」

「うん、そうだね。早速その案を入れて作り直すか。

 あとはノイズ対策もあるけど、…うーーん…、エネルギーロス対策だなー……、いや、効率化か…いやいや…こうじゃない…」

 エルガさんが呟きながら、熟慮モードに移行して、会話が止まった。

 そしておもむろに紙に回路を描きだした。


 さすが“発想力”スキル。

 ちょっとしたヒントでそれ以上のこともひらめいたみたいだ。


 僕は電導魔石の均一化を頑張ろうかと、N・W魔研を後にしようかと思った時に、

「セージ君、お客様みたいだけど(・・・・・)

 トントンとノックがあり、護衛(メイド)のナナラさんが僕を呼びに来た。

 アラフォーのベテランさんで、パパやママは頼りにしている人だ。


 いつもなら家宰のドルホさんや、メイド長のモルガさんが対応するんだけど、モンスタースタンピードでの破壊の影響、大きな託児所が半壊して修理の間、近所の子供たちを預かることになったのだが、それが徐々に増えて、託児所のママさんたちと一緒に、ママとモルガさんに一般のメイドさんたちも奮闘中といったありさまだ。

 家宰のドルホさんも大きな子供たちの先生をやっているほどだ。

 まあ、ママは家のことやパパのサポートもあるから、託児所と行ったり来たりだけど。

 あと噂を聞きつけて、ヒーナ先生を頼って、治療に訪れる人もいるほどだ。

 僕が治療したらまずいってことで、治療はしてないけど、たまに“ホーリークリーン”――水と光の複合魔法でレベル3――を掛ける程度のお手伝いはしている。それでも充分驚かれるけど。


みたいだけど(・・・・・)?」

 ナナラさんの説明が、なんだか要領を得ない。

「なんでも学校の友達だって、それがエルフの女の子で…」

「あ、ああー、ルードちゃんね」

 めんどくさいのが来たなー。


「知り合いではあるのね」

「うん、おんなじ班」

「で?」

「うーん、僕の部屋…じゃなくって、どこか空いてる?」

「それじゃあ、応接室で」

「それでお願いします」

「付き添いは?」

「多分、僕だけで大丈夫」

「お強いですもんね、フフフ」

 なんだかチョットからかわれた気分。


「ルードちゃんどうしたの」

 僕は玄関に行ってルードちゃんを迎える。

「アンタ、やっぱりいいとこのお坊ちゃんだったのね」

「そんなことはないと思うよ。あ、こっちね」

 と応接室に向かう。


 応接室に入る。

 なんか気まずい。


 どうぞ、と席を勧めて対面で座る。

 ちょうどそこにメイドのナナラさんがお菓子と飲み物を持ってくる。

 どうぞ、と勧めて、メイドが僕の後ろに立つ。

 あれ? いいって言ったのに。

 チョット振り向いて、出てって、と目で合図。

 失礼しました、ってやっと出ていった。


「適当に気楽にしてね。

 っで、僕のとこに来たって」

 なんか僕ガチガチなんですけど。


「ええ、そうよ。ウチを強くして」

 想像はしてたけど、ビンゴだ。

 でもまあ、こうも堂々と僕の家まで来てって思うんだけど。


「そういうのって、家の人か、学校に頼むんじゃないの」

「なんでもいいからウチを強くして、お願い」

「ごめん……って僕が謝ることないよね。できないから」

 睨みながら拝まれるって、なんか腰が引ける。困るから。


「どうしたら強くしてくれる。ウチでできることなら何でもするから」

 だーかーらー、拝まれても困るんだけど。

「あのねー、どう言えばわかってもらえるの?」

「どうやって強くなったの?」


 転生して、魂の世界で魂魄管理者(女神様)に逢ってだよ。

「さあ、どうしてだろうね」

 顔が引きつりそうって、引きつってるよね、これ。


「教えなさいよ」

「どうして僕が教える必要があるの」

 感情でグイグイ来られると、こっちも負けじと突っぱねる程度しかできないけど、完全にアウェーの気分。めっちゃ、苦手だ。


「いいから教えなさいよ」

「だからどうして」

「ウチは強くならないといけないの。だから教えなさいよ」

 あーもう、めんどくさい。

「勝手に言ってるんなら、もう帰って! サ・ヨ・ウ・ナ・ラ!」

「待ちなさいよ!」

 僕が応接室の扉を開けると、メイドさんが待ち構えたように立っていた。

 まあ、レーダーで知ってたけど。


「話は終わったので、帰るそうです」

「はい、かしこまりました」

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ」

「お客様、どうぞお引き取りください」

「待ちなさいってば!」

「どうぞ、こちらです」

「……」

「セージ様もお見送りを」

 すました態度でシレッとよくもまあ。

 さすがにナナラさんにはかなわない。

 しかたないから玄関まで一緒に行きました。


「それじゃー」

「また来るから」

「あのねー、もう取り次いでもらわないから」

「……」

 ルードちゃんが僕をキッとにらんでから、振り向いて走って帰っていった。

「またのお越しをお待ちしております」

 ナナラさんが、走り去っていくルードちゃんに慇懃(いんぎん)に頭を下げる。

 僕、取り次がないでって言ったよね。


「泣いていましたね」

「え、そう?」

「ええ、泣いてましたよ」

「そ、そうなんだ…」

 悪いことをしてないんだけど、なんだか罪悪感が…。

 でも、意味不明だ。


  ◇ ◇ ◇


 こんな気分で電導魔石を作っても、いいものができるわけがない。

 チョット気分展開にぶちかましてくるかって、

<メガテレポート>

 城壁の外のちょっとした茂みの中の空き地で、一坪にも満たないいつもの場所だ。

 テレポートⅣができるようになって、一気に飛べるようになって、重宝している場所だ。

 レーダーで周囲をと思ったが……うわっ。

 チクリと刺されたのと地面に転がったのが一緒だった。


 神経毒を持つデストロイビーに刺された。

 しまった。いつもなら武器を手に持っているんだけど…。

 ゴロリと転がって逃げるが、体が重い。

 頭がボーッとする。

<ヒーリング>

 身体魔法の自己治癒(老廃物排出、解毒、細胞治癒)魔法だ。


 これで少しは動けそうだ。

 それでもまだ頭がボーッとしている。体がだるい。

 もう一度地面を転がって起き上がる。

 頭を振る。

<メガキュア><メガリライブセル>

 これでだいぶましになった。

 オッと危ない。

 まだ頭が重いし、ふらつく。


 黒銀槍を取り出し、ヤーッと刺すが、足元がふらつき手元が狂った。

 それでもなんとかデストロイビーの羽にかすったようで、動きが鈍くなる。


 精神を集中…クラってくる。

 もう一度見定めて、突きは止め、黒銀槍を振り回して、デストロイビーを叩き落す。

 そして突き刺して終わった。


 脂汗のようなべたつく汗が空中から引き出していた。

 気持ち悪い。

<メガキュア><メガリライブセル>

<ホーリークリーン>

 これでやっと一息ついた。

 深呼吸して、

<メガキュア><メガリライブセル>

 随分と楽になった。


 毒耐性“4”があっても毒を完全に無力化できるわけじゃない。

 どんな時でも魔獣相手は気を抜いちゃダメだ。注意散漫なんてもっての外だ。

 安易にテレポートしてたけど、こんなことがあるんだってギガ反省。

 今までのことを思い出して冷や汗が噴き出した。


<メガキュア><メガリライブセル>


 あ、ハチミツ入りのルルド水をどうしよう。

 ルルドに沈めたハチミツを入れ魔法力を込めたビンのことを思い出す。


<メガキュア><メガリライブセル>

 これで体の毒が全部抜けたようだ。


 魔獣石を回収した。

 レーダーの最大距離で確認しながら<テレポート>で小刻みに飛んで部屋に帰った。


 夕食時にパパから、「異界宮(ダンジョン)の調査は来週の赤曜日に実施される」と教えられた。

 そして「セージは同行不可だ。勉強をしろ」ってボランドリーさんから連絡があったそうだ。ガッカリ。


 こんな状態で電導魔石の作成なんて不可能だ。

 適当に魔法を使って就寝した。


  ◇ ◇ ◇


 二月二二日緑曜日。


 学校では終日、メガテレポートを飛ぶための方法が無いか考えていた。

 まあ、そんなに直ぐに解決策が見つかるもんじゃないことは重々承知だ。

 挙句の果てに、新しいスキルが手に入らないかと妄想していた。


 帰宅後“面会謝絶”の札をドアの外に掛けて、自室にこもって電導魔石の作成を開始した。


 ベッドの上でリラックス。

 まずは、久々の“瞑想魔素認識法”で気持ちを落ち着けるとともに、魔素の感覚を鋭敏にする。


 感覚が鋭くなたのか、以前より格段に違うのは当たり前だけど、改めて落ち着いて感じ取ってみてみると、魔素の粒粒が鮮やかに、そして新鮮に感じられた。

 見ていて飽きない。そんな感じだ。

 しばらくそんな風に気持ちを落ち着けて、魔素と一緒に戯れていると、自分自身もフワフワと魔素になったようだ。


 どのくらい時間がたったのだろう。


 空間認識に部屋の前でうろうろするナナラさんがいた。


 瞑想をやめ、部屋のドアを開ける。

「やっと出てきましたね」

「どうしたの?」

「奥様がお呼びです」

「はーい」

 心当たりが有るような、無いような。

 そして連れていかれたのが応接室。ボランドリーさんでも来たんだろうか?


「失礼しまー……す」

 何故かルードちゃんがいました。それもママと一緒に。

「セージはここに掛けて、ルードティリアちゃんの話を聞いてあげて。

 ルードティリアちゃんは、いいわね」

「…はい」

 ルードちゃんが、僕を真っ直ぐ見て「昨日はごめんなさい」と頭を下げた。

 随分と殊勝だ。

 ママと何を話したんだろう?


「えー、ウチの話をちゃんと聞いて、できれば手伝ってくれると有難い…です」

 なんだかルードちゃんがガチガチです。言葉もたどたどしい。


「ウチの父さんと母さんは魔大陸、デビルズの出身なんだ」

 え、本当⁉ かなりビックリ。

「大災厄でモンスタースタンピードがあって、村がつぶれて村人が散り散りになったてのは、父さんからも母さんからも聞いたんだ…です」

 ここで笑っちゃ悪いよね。


「父さんと母さんいつかは魔大陸の元の村に帰るんだって頑張てたんだけど。

 去年母さんがエルフの“魔失病”に掛かっちゃったんだ」

「魔失病?」

「エルフ特有の病気で、体に湿疹ができて発熱と悪寒を繰り返して、徐々に魔法力が衰えていく病気だそうよ」

 僕がママを見ると、ママが教えてくれた。


 ママの顔がそれ以上訊くなって、首を左右に振ったことから、その後は容易に想像がつく。

「私もたった今ルードティリアちゃんから聞いたところよ」

 そ、そうなんだ。


「それでウチ、ルルドの泉に行って水を汲んできたいんだ。

 あとは神寿樹しんじゅきも必要なんだ」

「ルルドの泉って、あそこじゃないよね」

「そう。いつものところじゃなく、モモガン森林のズーット奥、キュベレー山脈に有るとされる幻の泉とされるルルドの泉ことだそうよ」


 エルガさんはルルドの泉は世界各地の魔素濃度が高いところに有るって教えてくれたけど、そんな場所にあるんだ。

 確か神寿樹しんじゅきに福魔草ってのもモモガン森林やボティス密林の奥に有るってのも、エルガさんに聞いた覚えがある。

 いずれも効果の高いリバイブウォーターじゃない、魔活水の元だ。

 福魔草はメッチャ苦いだっけか? 海中の青花サンゴも回復薬の元だったっけ?

 もう一回確認してみるか。


「それでルードちゃんのママさんが直るの?

 パパさん、お父さんは?」

「父さんは治るって言ってる。

 ただ父さんは、怪我をして……」

「ご友人とキュベレー山脈に向かって、怪我を負って断念されたそうよ」

「ウチが取ってくるの!」

 気持ちは分かるけど、そりゃー無理ゲーだ。

 モモガン森林の奥っていったらランクBの冒険者案件だ。

 ボランドリーさんレベルだ。


「今はマジックキャンディーで、症状を押さえているそうなんだけど、いつまで持つかは分からないそうよ」

 きょ、驚愕の事実…!

 そりゃー、効果は薄いけど、曲がりなりにもルルド水を聖水にして、魔法の治癒効果を込め、圧縮したのがマジックキャンディーだ。

 似ちゃあいろっていえば似てるのか…?


「モモガン森林の奥に行くには最低でランクBの冒険者じゃないと無理だよ。

 それにランクBの冒険者になるには何十年もかかるよ」

 僕の知ってるランクBは、冒険者ギルドマスターのボランドリーさんと、保安部長で有角人のニガッテさんだ。


「セージは強いんでしょ。ランクB?」

「僕はランクEだよ」

「うそ……。だって先生より強いんでしょ」

「先生より強いかはわからないけど、年齢的にランクEなんだ、多分だけど」

「そ、そうなんだ、それじゃあ、強さでいったら、ランクBくらいはあるの?」

「……わからないかな」

「否定しないってことは、強いってことよね。

 お願いウチを強くして! …クダサイ!」


「ねえ、ルードティリアちゃん、それでもしも、もしもだけどセージがルードティリアちゃんを強くしたとして、ルードティリアちゃんはセージに何をしてくれるの?」

「…えー、ナンデモ…、今は、何もできないけど、セージが困ったことや頼みごとがあればなんでもする…します」

「それでルードティリアちゃんはいつまでにどれだけ強くなりたいの」

「できるだけ早く。そのランクBの冒険者に」

「ルルドのお水と神寿樹を誰かに取ってきてもらうのはどうなの」

「神寿樹は取って二日以内じゃなくっちゃ、ダメなんだって。できれば早ければ早いほど効果があるって父さん言ってた」

 二日以内ってボティス密林で頑張れば何とかなるかな。

 冒険者ギルド経由だと、受け渡しにも時間が掛かるから無理があるか。

「あと、多分だけど、お金がありません。

 父さん怪我しちゃったし。

 今はエルフの友達に助けてもらっているの」


 マジックキャンディーの購入も厳しいってことか。


「ルードティリアちゃん」

「はい」

「貴方は自分でメチャクチャ無理をお願いしていることは理解している」

「えー、は、はい」


 死が直結しているバルハライド(この世界)、子供の精神的な成熟速度が半端じゃない。

 前世の記憶を取り戻した僕は例外として、学校でも同級生の多くが、日本だったら小学校の高学年や、中学生みたいな考えをしている。

 でも、こういった無茶苦茶な考え方をするのも確かだ。

 色々とアンバランスなんだ。

 でも気持ちは良くとは言わないけど、理解できる。

 そのルードちゃんが悔しそうに返事をした。

 何度も何度も煩悶(はんもん)したんだろうな。


「…でもウチが強くならなくっちゃいけないの…」

 涙を流していた。


「ねえ、ルードちゃん」

「な、なによ、(グスッ)」

「魔法、錬金と付与は持ってる?」

「なんでアンタに…(グスッ)…教えないといけないのよ」

「いいから教えて」

「何、それがあれば、強くしてくれるの。(グスッ)

 錬金はあるけど付与はないわよ」

「それじゃあ、補助は?」

「(グスッ)あるわよ、でもどっちも鍛えてないから(グスッ)レベルは“0”よ!」

「補助があるってことは、訓練すれば付与は使えそうだね」

 付与魔法も補助魔法は、付与魔素に補助魔素とも言うけど、どちらも同じ“干渉魔素”のことだ。

 使用方法、作用方法が違うだけで、どちらかが使えるともう片方もほぼ使えるようになる。


「ねえママ、ルードちゃんを僕の助手で雇っちゃダメかな」

「セージ、雇うってことは責任が発生するのよ。

 その人の生活に責任が出るのよ」

「それじゃあ、見習いってことで」

「セージ…いいえ、続けなさい」

「後、お母さんはマジックキャンディーをどのくらい食べてるの」

「毎日二個。結構するのよね」

 確か三個セットで五SH(シェル)と、日本円で二千五百だ。

 ルードちゃんも何とか泣き止んだようで、意味不明に首をかしげている。


「毎日学校が終わったら僕の助手見習いで、ノルンバック・ウインダムス魔獣対策魔道具研究所。略してN・W魔研を手伝うこと。

 報酬は毎日マジックキャンディーを四つ、いや、六つってことでどう?」

「六つも! そんなにいいの? 高いんだよ」

「セージ、六つに二SH(シェル)ね」

「はーい。

 どうそれで?」

「やる。やります」

「ルードティリアちゃん。ただし、やるからにはシッカリと働いてもらいます。言葉遣いも直してもらいます。

 それとこれは絶対条件、お父様を連れてらっしゃい。ちゃんと契約しますから」


「それじゃあ、まずは支度金? あ、支度キャンディーとしてこれを持って帰ってね」

 僕はアイテムボックスから、ルルドキャンディー(マジックキャンディー)を一〇個取り出してルードちゃんに差し出した。


「こんなにもらっていいの?」

「これN・W魔研の商品だから」

「ルードティリアちゃん、働き始めたら見たり聞いたりしたことは、たとえお父様でも内緒ですからね」

 ルードちゃんが、え、これもって顔をする。

「マジックキャンディーはN・W魔研の商品で、公のことですから内緒ではありませんから、お父様に伝えることは問題ありません」

 はい、とホッとする


「色々なものを作っていますから、秘密なことがいっぱいあります。

 見習いとして勤めたら、そういった内緒のことを見たり、覚えていくことになります。

 内緒のことが守れないと、やめてもらうことになりますからね」

「はい。わかりました」


 後出しになるのは嫌なので、ルードちゃんには一つだけお願いした。いや、二つか。


  ◇ ◇ ◇


 夕食後、僕は電導魔石の均一化を気持ちよく頑張れた。気持ち小っちゃくもできたし。

 四六個作って、ダメだったのが一七個だった。

 エルガさんも、確認するね、と張り切って受け取ってくれた。


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