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次元災害で異世界へ  作者: 真草康
友人レベルアップ編
80/181

78. 小型近距離電話試作機(ミニミニフォンアルファ)


 二月一八日黒曜日。


 魔獣をたくさん倒したおかげか、ジャイアントホグウィードの群生を大量に焼き払ったおかげか、微妙に強くなっていた。

 魔法量は“691”まで増えた。


 そして【技能スキル】が新たに発生して“精密加工”の“0”が発生していた。

 これって電増魔石などの細かな作業のおかげだよね。


 そしてララ草原にまた来てしまった。

 僕がボティス密林でホイポイ・マスターの調査や修理をこなしているときに、ミリア姉やロビンちゃんが、レベルアップを目指して再度企画してた。

 二人の熱望で、ミクちゃんにライカちゃんにモラーナちゃんも一緒だ。


 その他のメンバーはママにヒーナ先生とアランさん、ウインダムス家からはマールさんに護衛のレイベさんとカフナさん、ポラッタ家からはパパさんのゴランダルさんと、ママさんのモーティエさんだ。

 ポラッタ家は専属の護衛がいるわけじゃないから、どうしてもパパさんとママさんが護衛を兼ねる。


 子供ばっかで危なくないかといえば、子供とはいえミリア姉の総合(強さ)が“23”、ロビンちゃんはどうやら“21”、ミクちゃんが“20”と、ララ草原に来る、狩りや活動制限のある見習いとれるF級冒険者(ランクF)の上位の部類だ。

 ミリア姉は駆け出し冒険者(ランクE)とされる上級魔法学校の卒業生レベル――強さ“25”前後――にほぼなっているともいえる。

 ライカちゃんにモラーナちゃんは多分だけど“18”程度じゃないかな。

 ちなみに、“お手伝い”と呼ばれて冒険者扱いをされないランクGが更にその下にいるが、それはオーラン市内でのみ活動可能だから論外だ。


 僕はすでにランクEの赤いカードを所持している。

 そして対抗心に燃えるミリア姉とロビンちゃんも、どうやらランクFの赤いカードを狙っているみたいだ。


 ミリア姉はララ草原じゃ、ボティス密林からはぐれ出てきたそこそこ強い魔獣でも倒さなきゃ、ほとんどレベルアップできないだけど。

 まあ、それより先に戦闘技術を上げて素早い動きの動物系とも戦闘できるようになるのが課題か。


 ファントムキャット、イリュージョンキャット、ミラージュキャット、ゴーストキャットなどの幻覚や錯覚などを起こす魔獣には一発で引っかかってしまうだろうし、毒があったり一撃必殺がある魔獣は終始気が抜けない。

 あと相性もあるだろう。

 ミリア姉には身体魔法があるといっても、チョット無理そうな気がする。

 身体強化が無いロビンちゃんは無理ゲーだろう。


 ミクちゃんもそうだけど、まずは戦闘技術の向上と身体強化魔法の習得に務めるべきだろう。


 今日の目的は、みんなが強くなりたいってことの延長線でもあるが、近々開催が予定される魔法学校の年間行事に魔法展覧武会、特別発表を許される魔法優秀者に向けての、特にミリア姉やロビンちゃんの熱望がすごかったってことだ。

 あまりの熱望にパパやママが心配になって本来の実力をよく認識させるってこともあるし、ミリア姉やロビンちゃんは、学校でチョット天狗になっているんじゃないかってことも心配だったのもある。

 パパやママたちは激論をしたらしいんだけど、それらのことが相まっての狩りだ。


 ララ草原の中央より、かなりオーラン市寄りで狩りを行う。

 パパの忠告――ミクちゃんやロビンちゃんのおじいちゃんのウインダムス議員からもあったみたい――、その忠告に従ってオーラン市に近い場所だ。


 要は第一防衛拠点でもあった土壁のちょっと外だ。

 そして土壁にはいまだに若干の警備兵も駐留しているから安心ってのもある。

 まあ、僕の秘密もあるってことだから護衛を雇うこともできないから仕方がないし、土壁べったりで、警備兵からもろ見えも困るから微妙な距離だけど。


 体内の魔素と魔法力の活性化と、魔力眼と魔素感知の補助を行って狩りの開始だ。


 今日は僕が直接サポートせずに、ミリア姉とアランさん、ミクちゃんにはレイベさん、ロビンちゃんにはカフナさん、ライカちゃんとモラーナちゃんにはゴランダルさんとモーティエさんがそれぞれ付いての狩りだ。

 僕は補助が切れた時に再度、補助するために適当にみんなを見て回り、時にはチョットだけお手伝いだ。

 あとは、想定外の魔獣の対応だ。強いの来ないかな。

 ママとマールさんにはヒーナ先生が付いているから安心だ。そして救護班でもある。


 まずは心配なのがポラッタ家だ。

 ゴランダルさんとモーティエさんが強さもそうだけど戦闘スキルが低い。

 二人を軽く見た感じ“30”程度――マナー違反の看破は使っていない――だ。

 一昨年の秋、我が家に着たばかりで狩りを一回もしたことが無かったエルガリータ(エルガ)さんが“28”だったから、生産職や研究職はそんなところのようだ。

 まあ、そのエルガさんも現在は“32”と、お情けで若手冒険者(ランクD)――本来は“35”程度から――になってるが。


 ヒーナ先生の強さが“33”と警護としては低めだが、特異な光魔法がそれを補っている。

 H・W魔研の所員でもありホイポイ・マスターのメモリーパッケージの交換要員のガーランド・ホーホリーさんとリエッタさん、アランとそれにデトナーさんが“50”以上だ。

 マルナさんが“50”弱で、レイベさんが一番弱く“43”だ。

 ちなみにカフナさんは“40”ほどと、レイベさんよりやや弱いのはメモリーパッケージの交換に付き合うか、付き合わないかの差だ。


 ライカちゃんとモラーナちゃんに付いて回る。


 非力なのもあって、どうも逃げ腰であと一歩が踏み出せず、メガギリスを仕留めきれない。


 僕ってなんだろう。

 ヤッパ、チートなのかって思わなくもないが、流石、上級魔法学校で狩りを許可する総合(強さ)が“25”前後とされているのは伊達じゃない。

 そうするとミリア姉はある程度放置でも、狩りは可能だけど、他の四人は難しいか。

 ママにはできるだけ手伝わないように、と言われて納得していたけど。前言撤回。方向転換。


「ライカちゃん、一人じゃ難しい」

「うん、怖くいし、魔獣は強いし……」

「じゃあ、もう一回、この前のことやってみようか」

「え、いいの」


 それから三順して各自三匹づつ狩りをして終了となった。

 まあ、ミリア姉は小物三匹、ロビンちゃんとミクちゃんは小物一匹づつを別に狩ったけど。


 そして狩りが終了した。

 ママやマールさんには、にらまれるし呆れられちゃったけど、仕方がなよね


  ◇ ◇ ◇


「おかえり、できたよー」

 夕方帰宅すると、相変わらずのツナギ姿――今日はライトグリーン――に真っ赤なメガネのエルガさんが、歓喜でお出迎えしてくれた。

 リエッタさんは、少々疲れ気味のようだ。


 鎧装備は魔導車の中で脱いでいる。

 エルガさんにボヨヨーーンと抱きかかえられて、…って感触が更に加速、もとい、爆誕している。

 久しぶりの感触に酔いしれる。


 N・W魔研のエルガさんのおもちゃ箱と化した作業室の机の上に、二台の武骨で四角い機械が鎮座していた。

「これが小型近距離電話(ミニミニフォン)・アルファだよ」

 ギランダー帝国の小型マジカルフォンより、いくぶん小型にだ。

 これならバッグに入れられるし、魔導車に簡単に搭載できる。

 まあ、ネーミングがスルーしよう。

 アルファってことは、試作機か。


 リエッタさんが準備していたバッグに一台のミニミニフォン・アルファを入れ、更に充魔電装置を抱えて、部屋の外に出ていく。

「こっちは常設機、設置型のものだから、常時受信状態になっているんだ」

 よく見ると残りのミニミニフォン・アルファにはケーブルが接続されていて、魔力と電気が外部から供給されているみたいだ。


 道理で小さいはずだ。


 しばらくすると、ミニミニフォン・アルファが点滅して音が鳴った。

「ハロー」

『ハロー、聞こえますか、リエッタです』

 マイクをつかんでエルガさんが話しかけると、リエッタさんの声が流れてきた。

 少々ノイズが乗っているけど、それは通常の近距離電話マジカルフォンでも似たようなものだ。

「こちら素敵なエルガです。声はよく聞こえてるよ」

『こちらもよくきこえてます』

 その後に他愛のない会話をしながらテストを繰り返した。

 僕的にはGJだった。


 エルガさん的にはもう一回り小型の物を作りたいようで、さっそく電増魔石の「お願い。機能はこのままで、もうチョットちっちゃくしてね」

 無理無理、と思いつつも。

「やってみるけど期待しないでね」

「セージ君なら大丈夫よ」

 ムギューッと攻撃をしばらく堪能。

 パンパンパン、窒息します。


「お願いねー」

「ガ、ガンバリマス」


 夕食前に速攻で三〇個を作成した。


「セージ君ありがとう」

「……」

 パンパンパン、窒息します。


 あと、電波による通信だと思っていたけど、なんだか完全な電波じゃないみたい。

 魔法力交じりの電波、言うならば魔電波みたいな感じのものだ。

 魔力にももちろん波長が合って、送受信の二つの波長を使用する。

 波長は無数にあるし、一対一やグループ通信用に遠距離通信の時空電話(ディスタンスフォン)と同様に、近距離電話(マジカルフォン)にも簡易版ながらも小さなシンクロ装置が付いているそうだ。

 そのシンクロ装置はまだ組み込んでいないそうだ。


  ◇ ◇ ◇


 二月一九日赤曜日。

「セージやったわよ」

 どや顔のミリア姉は【基礎能力】の総合が“24”となっていた。

 身体強化もできるから押しも押されぬ、上級魔法学校の冒険者資格が取れるレベルだ。

 まあ、戦闘技術がまだまだだけど。

 それでも舞い上がるほど歓喜していた。

 僕ができるのはここまでだとも伝えてある。

「あとは私が何とでもするわよ」って言っているけど、わかっているのか?


「「「おはよう」」」

 笑顔のミクちゃんは“23”、ロビンちゃんも同じく“23”になったそうだ。

 ミクちゃんには、そろそろ打ち止めだってことは伝えた。そしてロビンちゃんにも伝言を頼んだ。


 笑顔のライカちゃんは、モラーナちゃんと一緒で“21”になったそうだ。それにいくつかの魔法属性も取得したんだって。

 とても喜んでいたし、感謝もされた。

 メガギリス程度なら、一人でも倒せるレベルだ。


 一時限目のクラス学習は、先週潰れた教科に割り当てられる。

 今日は国語だった。

 二時限目も国語だから、連続だ。

 表音文字の練習と、表意文字の基礎練習とあまり変わり映えしない。


 社会は今日はオーラン市の漁業についてだ。

 漁師さんが魚や弱い海魔獣を取って、漁業ギルドの市場で販売、僕たちの口に入るまでだ。

 イラスト入りで本当に概要、大雑把なイメージ作りだ。

 次回も漁業の学習のようだ。


 魔法学を終え、

「お、お弁当忘れた人は、いませんかー」

 半兎人のビットちゃんの発言に手を上げる人はいない。

「ビットが忘れニャければ、誰も忘れニャいニャ」

「ママが冷凍肉が安いって喜んでたからきっと今日は」

 ビットちゃんの瞳がキラキラしている。ウサギって肉食だっけ?

「アタシのお弁当も肉三種盛だニャ」

 パルマちゃんが早くもよだれが溢れそうだ。

 クラスで昼食を摂ることに決まったようだ。


 どうしても女の子五人の中に僕一人ってなってしまている。

 まあ、クラスで浮いてる僕。

 チョット偉そうなエルフのルードちゃん。

 半獣人ということで疎外感を感じているパルマちゃんとビットちゃん。

 それとミクちゃんとライカちゃんと素直ないい子が僕たち一班だ。

 他に浮いている理由は、僕を筆頭にミクちゃん、ルードちゃん、ライカちゃんが一年生での魔法技能のトップだってのもある。

 絡んでくる三バカ以外は、普段は遠巻き状態と、気になるけど近づきたくないって状態が続いている。


「セ、セーチャンの、ハンバーグは相変わらずおいしそうですね」

「チッチッチッ、肉は噛み応えだニャ。ハンバーグは軟弱だニャ」

 今日はミニハンバーグの香辛料を効かせたケチャップ煮だ。

 ビットちゃんの論評に、パルマちゃんが異を唱えるが、えーと、よだれを拭きましょう。


 午後の合同魔法練習の時に。

「どうやって二人の魔法を強くしたの。ウチにも教えなさい」

 ルードちゃんがミクちゃんとライカちゃんの魔法を見て、僕に詰め寄ってきた。

 何で分かった?

「どうして僕なの?」

「二人が同時って、それしか考えられないでしょう」

 あ、そうか。

「きっと、いい家庭教師に恵まれたんだね」

「そんなわけないでしょう」

「ぼ、僕、図書館」

 その他大勢に取り囲まれそうんなったんで、緊急退避しました。


 そして図書館で発見した。

 書かれていたのは“フェアリーとの遭遇~妖精・精霊の伝言~”っていう本だった。

 フェアリーが語った内容を翻訳? 解説? した本だ。

 次元って言葉も、高次元って言葉も載っていた。

 高次元粒子が魔素で、高次元エネルギーが魔法力だとも書かれていた。

 よくこんな専門書が初等の魔法学校あるなって思うけど、ジャンルはお伽話や創作に分類されていた。

 購入したのは勘違いか? 

 たまたま妖精の本でもあればって探していて目についた本だ。


  ◇ ◇ ◇


 久しぶりに霧雨のような雨だけど、雨が降って、ほこりっぽかった市街がサッパリした。

 外はいまだにサラサラと霧のような雨が降っている。


 ミニミニフォン・アルファの社内のお披露目は、僕とミクちゃんの帰宅した夕方に行われた。

 ミリア姉とロビンちゃんは相変わらずの生徒会だ。


 エルガさんにリエッタさんに僕。

 パパにママ、マールさんにミクちゃん、ホーホリー夫妻にデトナーさんにアランさん、それとレイベさん、相談役兼顧問のウインダムス議員――ミクちゃんのおじいさん――だけが居ないけどノルンバック・ウインダムス魔獣対策魔道具研究所(N・W魔研)の総勢だ。


 現状の業務はホイポイ・マスターによるボティス密林のメモリーパッケージの交換とそのデータの解析業務。

 ポチットムービーとルルド(マジック)キャンディーの販売と、もうかっている。

 製造に関してはエルガさんにリエッタさん、そして僕の負担が大きいけど、最近は錬金魔法保持者のデトナーさんとアランさんも手伝ってくれている。

 ホーホリー夫妻とレイベさんは冒険者ギルドや販売店との営業を受け持ってくれている。

 パパにママ、マールさんは運営と経理だ。

 ミクちゃんは僕の助手という位置づけだ。

 魔法の才能はあるから、所員も無下にすることもなく、マスコット的な存在だ。


 現在過去の記憶を思い出しているのは僕だけだ。もちろん僕の強いる範囲でだし、記憶バンがあるから人に相談も不可能だ。

 不安もあるけど、どこかで魂の世界で約束した仲間がいるって思えるだけで安心感がある。まあ、そんなことを思うのはすごくまれなんだけど。

 現在は、ミクちゃんがそうならいいんだけどと思っている。もちろん他にもライカちゃんや、年齢的には二つ上のモラーナちゃん。魂魄管理者(女神様)が仲間は三年以内に生まれるって言ってたから、ミリア姉とロビンちゃんも候補なんだけど。

 そんなこんなで、ミクちゃんは、なんとなくだけど僕の精神安定剤になってる気がする。


 ミニミニフォン・アルファの社内での評判はメチャクチャよかった。

「まだ、安定してないし、距離の確認ができてないよ」

 早速、魔導車に積んで、ララ草原との通信テストを行うことになった。


 通常の近距離電話マジカルフォンの最大送受信距離が二七キロってところだ。

 もちろん大気の状態でも距離は変化するし、ニ七キロ以上でも、ある程度の通信はできるが、明瞭に通信ができる距離がニ七キロってことだ。

 ギランダー帝国の小型マジカルフォンはアンテナも小さいので一五キロ、一般のアンテナに切り替えると二二キロだ。

 出力を一般の物と一緒にすると、それが三〇キロになるそうだ。

 今回のミニミニフォンの最終目標は一五キロだ。

 ただ、まだ安定してなくって、最長距離は二キロから三キロが良いところじゃないかってのがエルガさんの予想だ。

 予想通りなら、城壁の外と会話ができるってことだ。


  ◇ ◇ ◇


 二月二〇日青曜日。


 今頃ミニミニフォン・アルファで会話してるんだろうな、って上の空で授業を受けていた。

「セージスタ君、この問題の答えは幾つですか」

 今日は一時限目は算数だ。

 あれ、本も出してないや。

 チラリと隣のミクちゃんの教科書を覗くと、問題を鉛筆で指していた。


 5+16=


「21です」

「はー、教科書も出してなくってよくもまあ…」

 ルイーズ先生が黒板に向かって、チョークでいくつかの式を書いた。


 18×23=

 158÷12=


「これがわかりますか」


「えーと、414と、13とあまりが2です。もしくは13と1/6です」

 さすがに割り算で小数点までは必要ないだろう。

 元日本人の九九に、並列思考と速読、それに記憶強化と加速って思考系のスキルが四つもあるんだ。

 この程度の暗算は何とでもなるわ。


「えー、即答ですか。ちょっと待ってください」

 ルイーズ先生が黒板で筆算を始める。


 どうやら終わったようだ。

 こっちを向いたルイーズ先生が、えー、ゴホンとが空咳をする。

「授業があまりにもやさし過ぎるからっていって、ボーッとしないように。

 いいですね」

「はーい」


「せんせー、その式は何ですか?

 それとセージスタ君が六分の一って言ってたのは何ですか」

「この式は掛け算と割り算と言って、皆さんが来年になると習う計算式です。

 六分の一は分数と言って、掛け算と割り算を習いながらお勉強することです。

 皆さんは足し算と引き算をシッカリと覚えましょうね」

「「…「はーい」…」」


  ◇ ◇ ◇


「爆発魔人、勉強ができるからっていい気になるなよ」

 早速三バカの筆頭、ギジョーダンが噛みついてきた。

「魔法もです」

「剣術もね」

 ミクちゃん、ライカちゃん、フォローGJ。

 ギジョーダンから、グギギ…と歯ぎしりが聞こえてきそうだ。

「おぼえてろよー」

 戦わずして勝った。…と言えるのか?


  ◇ ◇ ◇


 帰宅。

「ただいまー」そしてN・W魔研に「どうだったのー」と勢い込んで駆け込んだ。


「セージくーん」

 ダークグリーンのツナギ姿のエルガさんが、ドーン、といった感じで落ち込んでいた。トーンも低い。そして目が座っている。

 リエッタさんを見ると、

「五五〇メルでした」


 そうなるとあそことは通話できそうか、

「じゃあ、冒険者ギルドとの通話はできますね」

「あー、それは……」

 僕の一言で、エルガさんのドーンが、ズドーンとなてしまった。


「えー、冒険者ギルドはここから五五八メルです」

 リエッタさんが耳元でコッソリとささやいてくれた。

 それじゃあ、冒険者ギルドとの通信テストもやってみたってことか。


「ご、ご…(モガッ)」

「なにも言わない方が、…ねっ」

 謝ろうとしたら口をふさがれ、再度のささやき。


 リエッタさんはすでに紅茶で出来上がっていた。

 なんでもティー・ロワイヤル――あったかい紅茶に、角砂糖を乗せたティースプーンにブランデーを注ぎ、火をつけて角砂糖が溶けたら紅茶に入れてかき混ぜれば出来上がり。

 それをティーカップは小さいは、スプーンは大きいはで、結構な量を飲んでいるそうな。

 作業テーブル上の皿の上には、僕謹製の燻製肉が綺麗に切って並べられていたと思われるその残りが乗っている。

 あとはビスケットに、果物が幾つか。

 リエッタさん、お疲れ様です。


 N・W魔研の所員のミクちゃんも付き合ってくれたのだが、愚痴られるは、落ち込まれるは、抱き着かれるは(それはGJ)、泣かれるは、チョット大変だった。


 ちなみにこの日はママの誕生日。

 落ち込むエルガさんと一緒に、豪華な夕食で「ママ大好き」でお祝いをした。

 今一盛り上がらないし、エルガさんをとがめることもできないしと、パパもお手上げ状態の、別の意味で記憶に残るママの誕生日だ。

 ちなみにエルガさんの相手は、リンドバーグ叔父さんの担当になってしまった。


 夕食後、心機一転、やるぞーと気炎を吐いて、魔法を使い切って……寝た。

 あー、疲れた。


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