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次元災害で異世界へ  作者: 真草康
友人レベルアップ編
75/181

73. レベルアップいってみよー


 学校の帰りに僕の家にミクちゃんやライカちゃんが家に寄った。

 どこの家庭でも何かしらの後始末で追われていたので、二人が僕の家に来るのはモンスタースタンピード以降初めてだ。

 魔法と剣の訓練もちょこっとだけやって僕の部屋に移動した。


 ちなみにミリア姉とロビンちゃんは生徒会で帰宅が遅い。

 モンスタースタンピードで生徒会が制限されていたのが、本格的に再稼働し始めて忙しんだそうだ。

 ライカちゃんの姉のモーラナちゃんは家でお手伝い兼、魔法の練習だということで、ママさんと一緒に帰宅した。


「ミクちゃんとライカちゃんもヤッパリ強くなりたい?」

 僕はお菓子を食べながら二人に訊ねてみた。

「それは強くなりたいって思うわよ」

「できればですけど、そうですね」

 予想通りの回答だよね。


「一昨年の暮れにミクちゃんにやったことを、もう一度やってみようかなって」

 おととしの暮れにミリア姉にミクちゃんとロビンちゃんと一緒に狩りをした時に、魔法補助と体内への魔素と魔法力の活性化のことだ。

 ミクちゃんのスキルが一気にアップして、あまりの効果にそれ以来やっていなかったことだ。

 まあ、チョットだけだけど、ライカちゃんの魔法力の流れが詰まっているところも、内緒で直しちゃって入るんだけど。


「うん、いいよ。お願いします」

 ニコニコと笑顔のミクちゃんがペコリとお辞儀をする。

「……」

 打って変わって意味不明、首をかしげるなライカちゃんだ。

「本当に良いの? 危ないかもしれないよ」

「セージちゃんだもん。だいじょうぶ、だいじょうぶ」

 ミクちゃんが、はい、と嬉しそうに両手を差し出してくる。

 チョットハズイけど、その手をシッカリと握る。


「ライカちゃんは見ててね。

 ミクちゃんは深呼吸して。

 大きく息を吸ってー、吐いてー、もう一回息を吸ってー、吐いてー、で目をつむって」

 ミクちゃんがその通りにする。


 ミクちゃんの魔法力や魔素に同調して淀みを無くし、活性化させる。

 右手を放してミクの顔にかざし、魔法力の波動を強化していく。


<補助:生体スキル補助Ⅲ><魔素感知:3>

 魔力眼は取得済みだから今度は魔素感知にしてみた。


 生体スキル補助はかなり精神集中が必要だ。


 すべてのスキルを補助できるわけじゃない。

 相手と僕、相手とスキルの相性もあるし、補助しやすいスキルは魔素や魔法力の感知系だ。

 スキルの中でも“並列思考”や“加速”、“記憶強化”に“速読”などの脳というか思考に依存するスキルは補助不可能とされている。

 無理をして補助しようとすると、精神干渉で相手にダメージを与える可能性がある。


 文献でお目にかかったことはないけど“空間認識”と“情報操作”も論外だろう。


 微妙なのが“隠形”、“鑑定”、“看破”に僕の持ってない“索敵”だけど、嘘か誠か、これらは自力で取得した方がスキルの伸びが早いと文献に書かれていた。


 僕は持っていないけど、視覚強化や味覚強化などの感覚強化も補助が可能だそうだ。


 筋力強化も可能だそうだけど、過度な酷使によって筋繊維の断裂などの恐れがあるそうで、補助は控えた方が良いとされる。


 耐性も補助が可能だけど、効果は薄く、短時間になってしまうそうだ。


 あとは剣技などの技術系や技能系、経験値的スキルも無理だ。


 ミクちゃんの体内の魔法力と同調したまま、もう一度観察して、魔法力と魔素も更に活性化させる。淀みはほぼ完全に無くなっている。

 これ以上の活性化は無理そうと思う、二歩程度手前で終わったとして、ミクちゃんの手を離す。


 それらのことが、以前より格段にスムーズに、そして短時間で行えた。

 気を付けたことは僕の魔法力の干渉をできるだけ抑制して、ミクちゃん自身の体内魔法力で行うことだ。


「もう、眼を開けていいよ」


 ミクちゃんがユックリと目を開けて、ウワーッ、と歓声を上げる。

「すごいねー。

 今まで見えていたものがもっとよく見えて、感じられるようになった」

「多分魔法の威力も上がったはず」

「うん。なんとなくわかる。魔素や魔法力がすごくスムーズに感じ取れるもの」

「長続きしないけどね」

「そうなんだー」

「でも、何度もやっていれば魔法のレベルや威力がアップすると思うよ」

 セージは初めての試みにも、確信のようなものを持っていた。

「ありがとう」


「ライカちゃんはどうする」

「やってみたい」


 いよいよこれからが本番だ。


 ミクちゃん以外に活性化した人はいない。

 体内の詰まりをチョットだけ取って流れを良くしたのはミリア姉に、ロビンちゃんとオルジ兄に、ライカちゃんにモラーナちゃんだけだ。それもほとんど内緒でだ。


 補助魔法で魔力眼や魔素感知を補助したのもミリア姉に、ロビンちゃんとオルジ兄だけと、こちらはライカちゃんにモラーナちゃんにはやっていない。


 ミクちゃん以外は本格的な同調をして活性化させるのは今回が始めてだ。


「それじゃあ、やってみるよ」


 ライカちゃんに深呼吸をしてもらい、慎重に同調してみた。

 思っていた通りスムーズにできてしまった。

 ちょっと時間が掛かったけど、淀みは丁寧に除去した。

 徐々に活性化させていく。

 この辺でいいかな。


<補助:生体スキル補助Ⅱ><魔素感知:2><補助:生体スキル補助Ⅱ><魔力眼:2>

 ライカちゃんの魔法量の関係で、補助魔法はワンランクを下げた。ただしスキルは二つにしてみた。


「すごーい…」

 目を開けたライカちゃんが目を見張り、思わず声を漏らしていた。


「できるだけでいいんだけど、今の状態を意識して、保つようにしてね」

「うん、わかった。本当にありがとう。

 ……それとセージちゃんって、本当にすごかったんだ」

 僕をしみじみと観察したライカちゃんが感嘆を漏らす。


 てれるなー。

 そりゃー、数十倍の魔法量を保持してるから、見る人が見れば一目瞭然だ。


 ライカちゃんの状態を幾つものスキルで確認して、確信する。

 今更だけど、僕って魔法を使わなくても、魔法の干渉が行なえるんだ。

 これでライカちゃんが強くなれるのなら、僕の実験は成功だと言える。

 まあ、これから何回も同じことをやらなくっちゃいけないかわからないけど、目標は魔法核と魔法回路が“3”になることだ。


 本当だったら、これで魔獣を狩れたら一気にレベルアップができるんだけど、テレポートで連れていけないことはないけど、それは無理だよね。


  ◇ ◇ ◇


 二月八日青曜日。

「おはよう」

「「「…おはよう…」」」

 教室に入るとミクちゃんとライカちゃんはすでに来ていた。

 そして僕にキラキラした瞳を向けてきた。

 チョット腰が引けてしまったのは、内緒のことだ。

「セージちゃんチョット」

「そうそう」

 相手は違うけど、昨日に引き続き廊下に連れ出されてしまった。

 そこからちょっと離れた校舎の端に移動する。


「『個人情報』『セージちゃんに開示』。

 見て、とうとうなったの」


----------------------------------------------------

【ミクリーナ・ウインダムス】

 種族:人族

 性別:女

 年齢:6


【基礎能力】

 総合:20

 体力:22

 魔法:37


【魔法スキル】

 魔法核:3 魔法回路:3

 生活魔法:1 火魔法:1 水魔法:3 土魔法:2 風魔法:2 光魔法:1


【体技スキル】

 剣技:2 片手剣:2 水泳:2 槍技:1


【特殊スキル】

 隠形:0 魔力眼:2 魔素感知:1

----------------------------------------------------


「ああ、やったね」

 なかなか上がらなかった魔法核と魔法回路が“3”になっていた。

 ミクちゃんの個人情報を見たのは一回だけだけど、随分アップしたのがみてとれる。

 魔力眼や魔素感知も昨日の影響かな。それだと嬉しいけど。


「あと、わたしからもだけど、お母さんからセージちゃんに、魔法回路のコピーをよろしくって」

「了解、できるだけ早い方がいいから今日また寄る?」

「うん」


「セージちゃん、私も報告があります」

「ライカちゃんも」

「私は個人情報はママの言いつけがあって見せられないけど、魔素感知が個人情報に現れたの。

 昨日みたいには見えないし感じられないけど、それでも魔素や魔法力を感じられるようになったの。

 それとチョットだけ強くなりました。

 どうもありがとうございます」

「おめでとう。

 それだと続けた方がいいよね。ライカちゃんも、ミクちゃんと一緒にまた寄っていく」

「できればお願いします」

 錬金を目指すライカちゃんには、魔素感知や魔力眼が有るか無いかで魔法の効率が格段に違うはずだ。

 そりゃあ、うれしいよね。


 ミクちゃんは早々に魔法核と魔法回路が“3”になると思ってたけど、翌日とは。

 ライカちゃんはまだまだかかりそうだけど、確かな手ごたえがあった。


  ◇ ◇ ◇


 今日の授業は、まずは算数で二桁の足し算と引き算だ。

 例題だけでなく、班に分かれて正十面体(0~9)のさいころを二つ使って、二桁の数字を作っては計算したりもして、工夫してやったりもするんだけど。

 進歩したっていえば進歩してけど、全然やる気が起きない。


 二時限目は国語で、金文に似た表音文字と表意文字の勉強と音読だ。

 これから文章の勉強も行っていくみたいだけど、やっぱり基礎勉強だ。


 三・四時限目は一年のAの二クラス合同の体育だ。

 体操着に胸当て、肘に膝当て、ヘッドギアと魔獣との戦闘を意識した装いだ。

 もちろん防具は革製の軽量のものだし、学校で販売されたものじゃなく、完全に自前で用意したものを使用しても良い。


 体育では体力分けされた。

 体力分けは先週、もとい、先々週の体力測定。

 かけっこや瞬発力、遠投に、面白いのはアスレチックコースが作られていて、そこで計測された結果による。


 手抜きの僕が一位で、二位はミクちゃんだ。

 僅差の三位のルードちゃんは悔しがっていた。

 さすがに魔法核と魔法回路がレベル2となると、基礎レベルの違いから一段強さが違う。それはエルフだとしてもだ。

 そしてこちらも僅差の四位から五位の二人が、一A二の獣人男子と、獣人女子の二名だ。

 確か魔法レベルでは半獣人のパルマちゃんやビットちゃんに少々劣っていたはずだ。

 そして七位が、半猫人のパルマちゃんと同しく半兎人のビットちゃんの二人だ。

 九位は一A二のシエーサン(男子)と魔法では記憶に無い生徒だった。

 一〇位がライカちゃんだ。


「先生俺は!」のギジョーダンで、ルイーズ先生が答えてくれた。

「一一位です。頑張りましょう」

 圏外のギジョーダンがメチャクチャ悔しがっていた。


 そして盾に剣など、自分の得意な物を持っての戦闘訓練だ。

 こちらも基本自前の物が前提だが、春ごろまでは貸し出しもされる。


 僕やミクちゃんみたく自宅で戦闘訓練を行っている家庭も多いから、体操着以外の格好は半分がそろってて、残りの半分がまちまちといったところだ。


 僕たち体力がAランクの生徒が集められた。

 見ると格好はまちまちの生徒が多い。

 要は自宅で戦闘訓練を受けている生徒がほとんどってことだ。

「自宅で戦闘訓練を受けたことが無い人は、向こうのクラスに入ってください」

 ルイーズ先生がBランクを指さす。

 移動した生徒は、ほんの数人だ。


「セージスタ君、いつもはどんな訓練をしていますか。

 できれば参考に見せてもらえますか」

「はい、いいですけど練習相手を指名してもいいですか」

「ええ、かまいません」

「それじゃあ、ミクちゃんとライカちゃんで」

「ふ、二人ですか」

「はい」


 僕はミクちゃんとライカちゃんに、お願いね、と言って、アイテムボックスに左手の盾を放り込んで小太刀の木刀と交換した。

 右手にはすでに小太刀の木刀を持ってるから二刀流だ。


 対するミクちゃんはショートスピアにカイトシールド、ライカちゃんは片手剣(ショートソード)にカイトシールドだ。


「それでは、はじめてください」

 ルイーズ先生、なんだか疲れているみたい。


「「「お願いします」」」


 ミクちゃんの鋭い突貫を、体さばきでヒョイッと避ける。

 続けて切りつけてくるライカちゃんのショートソードを左の小太刀で受けて、避けられるように右の小太刀で盾をガンと切りつける。

 ライカちゃんが衝撃で数歩下がったところに、ミクちゃんがショースピアで後ろから背中を突いてくる。

 周囲から悲鳴が上がるが、余裕でひらりとかわしてシュートスピアをカンと弾く。

 そして同様に盾をガンと切りつける。

 並列(マルチ)思考に加速があるから楽勝だ。

 これで身体強化を使ったら完全にチートだ。といってもそのままでも身体強化のレベル3程度の力が出てしまっている。

 それにしてもミクちゃんは強くなった。

 ライカちゃんも見違えるように体の切れが良くなった。


 もう一度、今度はライカちゃんからの攻撃だ。

 ライカちゃんのシールドバッシュに合わせるように、ミクちゃんが突きを入れてくる。

 小太刀でライカちゃんの盾の重心に左の小太刀で突きを入れ、ミクちゃんのショートスピアに右手の小太刀を絡ませて弾く。


 四度の攻撃を受けたら「それまで」とルイーズ先生の声が響いた。

 汗をかくミクちゃんとライカちゃんに、平然としている僕が動きを止める。


「「「ありがとうございました」」」

 三人で礼をする。


「どうもありがとう。

 それとみんなには参考にならないことがよくわかりました」


 周囲のみんなはポカーンとあきれていた。

 ルイーズ先生からは、どことなく頼むんじゃなかったって雰囲気がにじみ出ている。


 ルイーズ先生がチョット思案して、

「それだとギジョーダン君とシエーサン君で模擬戦をお願いできるかしら」

 さすがに半獣人だと参考になりにくいと思ったようだ。


 僕からすれば隙だらけだし、無駄が多いしだけど、二人の戦闘は白熱していて、結構見ごたえがあった。

 見ているみんなも手に汗握って観戦していたし。


「それまで。

 どうもありがとう」


 その後に全員の模擬戦が行われた。


 僕はクラスメイトの模擬戦を横目で見ながら、三年生と四年生の体育も観察した。

 四年生――ミリア姉やロビンちゃんがいないからBかCクラス、多分農村()クラスではない――も模擬戦が行われていたけどミクちゃんの方が強そうだった。


 Bランクの方は槍と剣に分かれ、切り降ろしや突き、それに盾の防御の基本の型を教え込まれている。


「セージ君ニャ、一勝負だニャ」

「私も一緒です」

 みんなから敬遠されがちな、パルマちゃんとビットちゃんとの二対一の試合を申し込まれる。


「逃げるニャー」

「ッリャー!」

「逃げないと当たるでしょ」

「そうだ、当たれニャ」

 半猫人のパルマちゃんは俊敏で小回りが利く、半兎人のビットちゃんは瞬発力とジャンプで、おもしろい攻撃を仕掛けてきて楽しかった。

 剣や槍の戦闘能力だけなら、二人ともミクちゃん以上だ。

 他の生徒から煙たがられるはずだ。

「ちゃんと勝負しろニャー」

「これでもですかー」

「まだまだ早くなるよー」

 そもそも【基礎能力】値が全然違うんだから。

 僕が本気で戦闘したら全然受けられないよ。

 だから受けと逃げるのが一番だ。まあ、時々手、否、木刀も出すけど。


「サンチョ先生、セージスタ君の実力を見ていただけませんか?」

「いやいや、ボクじゃ見られませんよ」

 ルイーズ先生の勧めに、男性の先生が首を必死に振っていた。


 ちなみにエルフのルードちゃんは、剣や槍にはあまり興味は無いようだ。

「弓矢の練習をしたいのですが」

「弓矢で戦てはダメですか」

 何かにつけ、異を唱え、不満を漏らしていた。


 僕は一A二の獣人男子と女子二名のチームにも試合を申し込まれ、戦った。

 一A二の獣人三名は、真の獣人で、顔つきも獣っぽい。

 さすが獣人、体の切れがいいんだけど、基礎レベルの差で僕の圧勝なことは言うまでもない。


「おい、ギジョーダン、やってみるか」

「ば、バカやろう。お、俺とやるなんて一〇年はえーよ」

 ギジョーダンは逃げ出した。

 笑っちゃ悪いよね。


  ◇ ◇ ◇


 お迎えと一緒に五人(僕、ミリア姉、ミクちゃん、ロビンちゃん、ライカちゃん)で帰宅すると、ミクちゃんやロビンちゃのママさんのマールさんが来ていた。

 僕とミクちゃんはそのままママに呼ばれて、マールさんと一緒にお話しタイムとなる。


 挨拶早々、マールさんから感謝された。

「セージ君、またミクに力を貸して? 与えてくれてありがとう」

「セージ、それは危険ではないのですか」


「はい、大丈夫だと思います」

「見せていただけますか」


「はい、ミクちゃん手を出して」

「うん、お願いします」


 ミクちゃんが、僕がお願いするまでもなく、気持ちを落ち着けて、深呼吸をしながら目をつむる。


 僕は意識を集中して、ミクちゃん体内の魔法力や魔素を見極め、同調させていく。

 そして体内の魔法力と魔素を活性化させる。


 時間にして二~三分ほどだ。


 ミクちゃんも慣れたものと言えるかわからないけど、そっと目を開ける。

 僕が手を離すと、チョット残念そうな顔をする。


「えー、それで終わりなのですか?」

「はい」

「たった、それだけで何をしたのですか」

「ミクちゃんの体内魔素と魔法力に同調して活性化しただけです」

「そのようなことが可能なのですか」

「はい。でも多分ですが、僕との相性もあるし、僕としばらく一緒にいて、僕が相手の魔素や魔法力をよく知らないとできないと思うんだ。

 それと活性化できるのは一時的なものなので、あとは本人の努力次第です。

 だからミクちゃんがレベルアップしたのはミクちゃんの努力だと思います」

「危なくはないのですか」

「無いと思います。

 あくまでもミクちゃんの体内の魔素と魔法力の活性化だけで、僕の魔法力をミクちゃんに流し込んだりしてないから」

「セージ君は、特殊な才能が有るんですね」

「そうなんですか? 自分じゃよくわかんないし」

 嘘です。

 周囲と比較してみても僕の魔法の起動速度、魔法の威力、習得速度。

 どれを取っても異常過ぎです。


「セージはいつからそのようなことが、ああ、以前のみんなでいった狩りですね。

 それとももっと以前からですか」

「うーん……、ママが言ってる狩りって、一昨年の暮れのことだよね。

 だとするとその頃。

 ただ、そのあとにも僕がレベルアップしたから、以前より安定してコントロールできるようになったんだ」

「そうですね」

 ママが一瞬だけど苦悩を帯びた表情を浮かべる。

 きっとデミワイバーンなんかを倒したことを思い出したんだ。

「どうかされたのですか」

「いいえ、なんでもありません。

 ミクちゃんは気持ち悪くなったりはしませんか?

 おかしな感じとかはありませんか?」

「ううん、全然。やってもらうと気持ちがよくって、調子が良くなります」

「それはよかったですね」

 ママがミクちゃんにニッコリとほほ笑むと、ミクちゃんもお返しとばかりにニッコリと笑う。


 ママが改まって真剣な表情で僕に向かう。

「ところでセージは、どうしてまたそんなことをやろうと思ったのですか」

「この前のモンスタースタンピードで、ウインダムスのおじいちゃんが言ってたことを思い出したんだ」

 ママとマールさんが、何? といった表情になる。


「大災厄の時に僕みたいに能力の高い人がいっぱい生まれるってこと。

 それなら、僕も仲間をいっぱい作ればいいんじゃないかなって思ったんだ」


 その後話し合って、むやみにやらないことを誓った。


 ママからはミリア姉の事、マールさんからはロビンちゃんのことを訊ねられたから、たぶんできるって答えた。

 ママやマールさん本人はって訊かれたけど、ある程度活性化して魔法力の高い人には効果があるかわかりませんとしか答えられなかった。

 ママやマールさんにはこれといった淀みは見られないし、変な流れも無い。

 これはやってみなけりゃわからないよね。


 ライカちゃんやモラーナちゃんの事を話したら、マールさんがポラッタ夫妻(ライカちゃんの両親)にも一度話をしてみるそうだ。


「それではミクに魔法陣の複写をお願いします」

 お話は一旦お開きになった。


 僕はミクちゃんを引き連れて、練習場にいるライカちゃんを迎えに行く。

「これからミクちゃんに魔法陣の複写をしてもらうんだけど、一緒に見る?」

「うん、みたい」

「え、いいの?」

 ライカちゃんの嬉しそうな返事に、ミクちゃんが戸惑てしまう。

「うん、大丈夫だよ」

 以前は僕が魔法回路を他の人に見せるのを嫌って、複写するミクちゃんに他言無用ってお願いしてたのを覚えてくれてたんだ。


「なんでミリア姉とロビンちゃんまで付いてくるのさ」

「いいじゃない」「セージの非常識さの見学よ」

 まあ、これからできる範囲だけどオープンにしていく予定だから、いいけど。


 僕の部屋にはお茶とお菓子はすでにスタンバイ済みだ。

「それじゃあ、まずは火魔法からだね」

 僕は小火球いっぱい(エニーファイアー)花火(ファイアーワークス)火壁(ファイアーウォール)冷却(コールド)の四つの魔法陣を呼び出し、『開示』した。


「ちっちゃい」

「うん。ある一定以上のレベルになると魔法回路(マジックサーキット)のサイズを変更できるんだよ。

『スパーフレア』、これがレベル8の火魔法だよ」


 縦横四〇センチメルの魔法陣四枚の横に、縦横九〇センチメルの魔法陣が出現する。


「ねえ、ファイアーワークスって何? 知らないんだけど」

「実験用に作られた魔法陣で、綺麗な炎の花を咲かせる観賞用の魔法だよ」


 その後もワイワイガヤガヤと、水(九枚)・土(四枚)・風(五枚)・光(八枚)に複合魔法(九枚)と、身体魔法(二枚)、無属性魔法(七枚)をミクちゃんがどんどんと複写していった。

 複写した合計は四八枚と多く、レベル1とレベル2を複写した枚数より二枚多かった。

 まあ、あくまでも現時点でだし、ヒーナ先生から複写した光魔法は複写外だし。


 学校の契約で複写できるレベル3の魔法陣は、複合魔法は基本じゃ無い――特別料金で数枚だ――し、無属性魔法はマルチシールドの一枚だけだ。

 各属性の魔法陣も少ないから、僕から複写する半分程度のはずだ。


 その後に四人の体内魔素と魔法力を活性化させて、魔力眼と魔素感知を補助した。

 そうしたところ、ミリア姉とロビンちゃんが「おーっ」と雄たけびを上げ、魔法練習場に、「「行くぞー」」で、向かうことになった。

 もちろんママとマールさんの許可済みだ。


 そしてお試しにとママとマールさんに活性化と魔力眼と魔素感知を補助してみた。

 思っていた通り活性化はあまり効果は無かったけど、魔力眼と魔素感知には驚かれた。


 パパにエルガさんとリエッタさん、ヒーナ先生、それにホーホリー夫妻にも魔力眼と魔素感知を補助してあげるとメチャクチャ感謝された。


 ただし魔法の苦手なパパは持続時間も短く効果が薄かった。


 しばらくすればスキルが発現するだろうと思いたい。


  ◇ ◇ ◇


 翌日僕宛に、マールさんからミスリル硬鋼下級()のインゴットが一〇個届いた。

 それとは別に、お礼のミスリル硬鋼上級()のインゴットが二個届いて、一人ではしゃいでいた。

 今回のお礼にミスリル硬鋼のインゴットをお願いしたら、武器の生成も可能かと訊かれ、多分と答えた結果だ。


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