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次元災害で異世界へ  作者: 真草康
モンスタースタンピード編
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68. 強化デミワイバーン


 第一防衛場所である土壁の戦闘。


 ビッグプテラン一匹に、プテラン五匹、地上にはギガントベア五匹、メガホッグ三匹、オーガが一匹、サイクロプスオーガ二匹が元気で残っている。

 魔獣は小物も含めて総数八〇〇匹。


 対して防衛部隊は二三〇〇人いた兵士ので戦えるのは一〇〇〇人程度といったところだ。

 それらが“マジックキャンディー”で息を吹き返す。

 死者二〇〇人い負傷者六五〇人で、魔法力の枯渇の戦闘不能者が三五〇人いたのだが。

 魔法力の枯渇の一八〇人も復活を果たす。

 そして半数の魔導砲が、武装魔導車も三分の二が破壊され修理不能だが、残りは魔石を補充すれば動作可能だということだ。

 土壁にもいくつもの亀裂が入り、かなりボロボロになったがいまだ健在だ。

 俄然、活気と勇気が湧き上がり、防衛戦が復活、活発になる。


「魔導砲、ってー!」

 再び火を噴く各種魔導砲、だが、大雨で威力は今一歩だ。

 特大魔導砲でもこの大雨で、小型や中型魔獣は倒せても、強さが“60”前後のプテランなどの強い鳥魔獣は傷つける程度だ。

 強さ“50”程度でも何発もの砲撃が必要だ。


「魔導槍、よく狙えー……ってー!」

 バーン、と飛び出した魔導槍の束が、二匹のギガントベアに突き刺さる。

 そこにギガファイアーキャノンやメガファイアーキャノンが何発も炸裂してギガントベア二匹の止めを刺す。

「「「「おっしゃーっ!」」」」

 久々の快挙に、気勢が上がる。


 そして待望の雨が弱まってきた。


「今だ、総攻撃だー!」

 次々に強力な魔獣たちを撃破していく。


 さすがのビッグプテランやプテランもギガファイアーキャノンやメガファイアーキャノンの砲撃に地に落ちた。


 その後の一五分で魔獣の掃討が完了した。


 魔獣石の確保だけは急がないといけない。

 その作業に従事する者。


 ボティス密林を警戒する者。


「オーラン市の援護に向かうぞ!」

 そして、動ける魔導車に乗って、戦闘中のオーラン市に向かう者たちがいた。


  ◇ ◇ ◇


 大雨の中、第二防衛場所の城壁では、ドーン、バーン、ギャワー、と砲撃と魔法による戦闘が続いていた。


 ホッグ系とウルフ系の地上魔獣二二〇匹の攻撃を受け、最初に三〇匹の鳥魔獣の市街への侵入を市街に許してしまった。


 その後に鳥魔獣一三五〇匹の襲撃を受けてしまった。

 城壁に押し寄せてきた鳥魔獣は、三匹のデミワイバーン、二五匹のビッグプテラン、七○匹のプテランなど強敵ともいえる鳥魔獣が盛りだくさんと、まったくもってありがたくなかった。


 防御の要でもある巨大なセイントアミュレットの柱を含む多くの柱が破壊されてしまった。

 二度目の大規模な市内への魔獣の侵入から始まって、その後もバラバラと侵入を許してしまった。

 その結果、デミワイバーン一匹と、合計するとビッグプテランの五匹、プテラン一二匹にも市街に侵入させてしまった。

 その他にも強めの魔獣の多く――総計すると二五〇匹程――の侵入を許してしまっていた。


 城壁ではビッグプテランやプテランを含む相当数の鳥魔獣を仕留めた。

 現在の敵は二匹のデミワイバーンと、ビッグプテランが六匹、かなり減ったその他の鳥魔獣で総計は二三〇匹を切ったところか。


 魔導砲などの武器の半数が修理不能になってしまったが、迎撃体制の指揮は高く、全員気力を振り絞って頑張っていた。

 セイントアミュレットの柱も仮設とはいえある程度は復旧している。


 ただどうしてもデミワイバーンへ有効な攻撃を与えることができず、焦りが出てきてしまっているところだ。決して諦念や、弱気になったわけじゃない。

 どうしたらデミワイバーンにに有効打が与えられるかって考えていたら、雨が小降りになってきた。


「もう、ひと踏ん張りだー」

 司令官の声に気力が湧き上がる。

 これで行けるんじゃないかってみんなが思った。


 砲撃が果敢になる。……が、デミワイバーンには有効打を与えることができない。


 それでも気力を振りしぼり、全員で果敢に魔獣に攻撃を加えていく。

 雨がやんでくれればという思いも強くなる。


 戦闘が続いていると、第一防衛場所からの応援が来る。

 大型武装魔導車二両と、武装魔導車三両だ。

 激戦のためだろうが、どの車両もあちらこちらに焼け焦げがある。

 第二防衛場所には武装魔導車がほとんど無い――市街地での応戦のため――からありがたい支援だ。

 そして雨が止んだ。ただし空模様は今にもまた降り出しそうな雰囲気だ。


「ここだー! 一気に叩き込めー!」

 司令官の声に再度の気力が湧き上がる。


 雨によって弱められていたブラストキャノンが、ブラストストーンキャノンが一〇〇%の威力でうなり飛ぶ。

 特大魔導砲や大魔導砲にプテランが傷つき、鳥魔獣が大きな傷を負う。

 さすがに最後まで残った鳥魔獣は強いものだけだ。

 一撃で亡くなる鳥魔獣がほとんどいない。


 ボーーン。


 偶然、小型の魔導ネットが一匹のデミワイバーンの翼に引っかかる。

 飛行が乱れたデミワイバーンをギガブラストキャノンに連射が爆発とともに炎に包む。

「魔法防御により、効果軽微」

 魔法解析に長けた索敵者の声が響く。

 微々たるものだが初めての有効打を与える。


「まずは魔導ネットが絡んだアイツに大型魔導砲を集中する!

 その他の魔導砲は残った鳥魔獣の掃討と、もう一匹のデミワイバーンに弾幕を張れー!」


 雨が上がれば本来の魔導砲、それぞれのブレスとキャノンの威力が戻る。

 さすがにデミワイバーンやビッグプテランには通常の魔導砲では怪我を負わせることはできないが、衝撃を与える程度には威力がある。

 その他の鳥魔獣には強さに応じて傷を負わせることも可能だ。


 特大魔導砲によるギガブラストキャノンやギガブラストストーンキャノン、特大型魔導槍がデミワイバーンを、ボーン、ボォン、ボーンと立て続けに襲い、アンギョワーーンと悲鳴のような鳴き声が上げながら、ヒートクラッシャーブレスがメチャクチャに吐かれる。

 体を振り回したが魔導ネットは絡んだまま、追加の魔導ネットも宙を舞う。

 とはいっても強靭な魔法防御で、微々たる効果が積み重なるにはかなりの時間が必要だ。

 それでも翼の何か所かに亀裂が見受けられる。

 体にも大型魔導槍によって幾つもの傷ができ、焼け焦げが付いている。


 弾幕を張られ続けて、上空に居続けるデミワイバーンのヒートクラッシャーブレスの攻撃で城壁の小型魔導砲が徐々にだが減っている。

 もちろん工兵による復旧も続けられている。


「デミワイバーン、魔法防御一五%ほど低下、損傷八%ほど。それと攻撃で飛翔力低下の模様」

 魔法解析に長けた索敵者の報告が響き渡り、警備兵や自警団全員が微妙な雰囲気――あれだけやってもこれだけか――が漂いだす。


 デミワイバーンは索敵者の言葉通り、魔導ネットが絡まっているとはいえ、立て続けの砲撃によって、低空飛行が続いている。

 上昇しようとするそぶりが見られるが、砲弾を受けるとガクンと高度が落ちる。

 翼の亀裂以上に、うまく飛翔できないようで砲撃から逃げ出せないようだ。

 そしてヒートクラッシャーブレスは狙いも何もかもなくメチャクチャに放たれる。


「逃がすなー! 撃ち続けろー!」

 指揮官の鼓舞に、全員が気力を奮い立たせる。


 砲撃が一段と激しくなって、そして待望の二枚目の魔導ネットが掛かると、一気に興奮とやる気がみなぎる。

 二枚目の魔導ネットは大きく、その分前足でつかむことができ、デミワイバーンが引きはがそうとする。


 もたつくデミワイバーンに、ドーン、と大型魔導槍が初めてデミワイバーンの脇腹に突き刺さる。

 デミワイバーンを取り囲むように武装魔導車も攻撃を仕掛ける。


 ギョワーォォォーーン。

 地上に落下しながら極大のヒートクラッシャーブレスがあちらこちらに吐かれる。

 その一部は城壁を数か所破壊し魔導砲が破壊され、盾で防御する戦闘奴隷の何人かが吹き飛んで死亡した。魔導砲が破壊され砲撃手も負傷する。

 仮設のセイントアミュレットの柱も新たに三本倒壊した。

 周囲の武装魔導車も二両破壊された。

 空に放射されては鳥魔獣と、そして上空のもう一匹のデミワイバーンを攻撃した。


 グギョーーーン。

 上空のデミワイバーンが怒りの咆哮を上げる。

 そして急降下して、グギョギョギョォォーン、と落下したデミワイバーンに収束したヒートクラッシャーブレスを放つ。


 ギョギョワーォォォーーン。

 苦しみを含んだ咆哮を上げ、ぐったりとする横たわるデミワイバーン。

 そこに頭から突っ込み、胸をえぐり、血を付けた顔を上げる。

 地面に力強く立つデミワイバーンに対して、胸をえぐられぐったりしたデミワイバーンは対照的だ。

 そして見る間に力を付けたのか、地面に立つデミワイバーンの体が一回り膨らんだ。


「デミワイバーンがデミワイバーンの魔獣核を取り込みました!」

 索敵者が叫ぶ。


 結果一回り半ほど巨大化したデミワイバーンを見て、索敵者が叫ぶ。

「強化デミワイバーンに変態しました!」

 続く言葉に防衛隊に衝撃が走る。


「撃てー!」

 司令官の怒声に、一斉に魔導砲が火を噴くが…。


 グギョーーーン。

 一声吠えた強化デミワイバーンの強化ヒートクラッシャーブレスにはじき返される。

 一部は当たっても、強化された振動防御に全て弾かれてしまう。


 飛び上がった強化デミワイバーンの体長は二.八メルほどで翼端は一二メルほど。

 元の体長が二.五メル、翼端が一〇メルからすると、見るからに巨大化している。

 そして、グギョォォーーーーーーーン、と強化ヒートクラッシャーブレスでいくつもの魔導砲と防御担当の戦闘奴隷の何人もが命を落とす。怪我人も多数だ。

 そして幾つものセイントアミュレットの柱も倒壊して、市街へ魔素と負の魔法力が大量に流れ込んでいく。


 もう一度、グギョーーンと鳴くと、強化デミワイバーンは城壁を超えていった。

 時間は午後三時半を過ぎた頃、また強い雨が降り出した。


 そして強化デミワイバーンを追うように残った鳥魔獣、ビッグプテラン三匹、プテラン八匹を含む残った全鳥魔獣八五匹も市街に侵入していく。


「全員市街の掃討戦に向かう!

 第二砲兵隊は、外の武装魔導車を迎え入れて、一緒に掃討戦に向かえー!

 工兵はセイントアミュレットの柱の補修急げ! 魔素の侵入を防げ!」


 最大級の非常警報がオーラン市に鳴り響き、緊急放送が繰り返された。

『緊急事態発生! 非常に凶暴で危険な魔獣が市内に侵入しました!

 住民全員、安全が確認されるまで強固な場所に避難していてください』


 激しい雨の中、出動できるすべての武装魔導車がチームを組んで市街に展開していく。

 自警団や冒険者チームにも三チーム以上での戦闘を伝える。


 索敵が得意な者も、距離的には一〇〇メルから、いいとこ二〇〇メルだ。

 それも範囲を限定してだから、空を飛ぶ魔獣の索敵は難しい。

 雨の時には索敵より魔力眼の方が索敵が有効なこともある。


 少し遅れて南門から武装魔導車が飛び込んでいき、市内に展開していった。


  ◇ ◇ ◇


 ルドルフに率いられた第三警備隊の第五小隊が南広場に戻ってきた。

 魔法学園でデミワイバーンを見失てから、何度も補給に戻っては出撃を繰り返していた。


『緊急事態発生! 非常に凶暴で危険な魔獣が市内に侵入しました!

 住民全員、安全が確認されるまで強固な場所に避難していてください』

 緊急警報とともにアナウンスが聞こえた。


 グギョーーン。

 バリバリバリ。

 デミワイバーンの強烈なヒートクラッシャーブレスによって民家が破壊されるのが、雨越しに見えた。

 穴が開き、火が出るが強烈な雨で火災は直ぐに収まるのがせめてもの幸いだ。


 で、でかい。

 ここに舞い戻ったかと思ったが、数時間前に見かけたデミワイバーンより一回りか、二回り大きい。

 ブレスも数段強烈だ。

「強化デミワイバーンだー」

 誰かの叫び声で、状況が飲み込めた。


 グギョーーン。

 バリバリバリと今度は魔導砲と仮兵舎が破壊される。

 魔導砲の反撃にあうもどこ吹く風だ。


 強化デミワイバーンは、市の中心部に向かって飛び去っていく。

 またも魔法学校か、もしくは上級学校か、はたまた市役所前か。


「できるだけ情報をくれ!」

 武器が無くっちゃ戦闘は無理だ。…っていっても、勝てるイメージが全然わかないが。

 補給を兼ねて情報を訊ね、強化デミワイバーン一匹、ビッグプテラン三匹、プテラン八匹を含む八五匹も市街に侵入したことを知る。

 強化デミワイバーンは少なくとも五チームで討伐するように、市街に出ていくときには少なくとも三チームで出るようにとも言われる。


「まずは鳥魔獣を駆逐するぞ」と、第六小隊と自警団でチームを作り出動する。


  ◇ ◇ ◇


 強化デミワイバーンは市役所屋上のセイントアミュレットの柱を、グギョーンと強化ヒートクラッシャーブレスで破壊し、その正面――北側の港を正面としている――の中央広場から砲撃を受ける。

 グギョーーン。

 バリバリバリ、と反撃で魔導砲と仮兵舎が破壊される。

 再度、そして三度、四度の強化ヒートクラッシャーブレスで全ての魔導砲や魔導車が破壊される。

 多くの兵士が命を落とす。

 そして殺害した兵士たちを悠々と食らい、満足したのか飛び立っていく。

 その後を、鳥魔獣が襲撃し、駆けつけた警備隊と激戦になる。


 強化デミワイバーンは大きく上空を一周回り、グギョーーンと咆哮を吐く。

 バリバリバリ、と魔法学校とオーラン上級学校の上空を通過しながら建物を破壊してく。

 腹が満たされたからか、見境なく強化ヒートクラッシャーブレスを吐きまくって、破壊を楽しんでいるかのようだ。


  ◇ ◇ ◇


「おい、あれか」

「そ、そうですね」

 ガーランド・ホーホリーが妻のマルナルカ(マルナ)に問いかけ、マルナが驚きながらもうなずく。

「「「「「……」」」」」

 カフナ、レイベ、N・W魔研の新入社員のデトナーにアラン、それとその他の船運社の社員も目を見張っている。

 ちなみにヒーナ先生は、冒険者ギルドで治療要員として活躍中だ。


「学校が危ないんじゃないでしょうか…」

「ミリアさんやセージ君は大丈夫でしょうか?」

「ロビンさんやミクさんも心配ですね」

「私はセージ君が、倒しちゃいましたー、ってアイテムボックスから出してきそうで怖いんですけど」

「うーん、それも無きにしも非ずか」

「まあ、戯言(ざれごと)はその辺にして、俺たちは俺たちだ」

「そうしましょう」

 キングファルコンにマルナの弓矢と、レイベの鉄菱(ひし)が飛んで戦闘が開始された。

 もちろんできる範囲で、最大限の戦闘をだ。


  ◇ ◇ ◇


 強化デミワイバーンは再度市役所の屋上の、もう一本のセイントアミュレットの柱を、グギョーンと強化ヒートクラッシャーブレスで破壊する。

 そして、戦闘中の中央広場との警備隊と魔獣もろとも強化ヒートクラッシャーブレスを吐きつけ、海岸(北)に向かって飛んでいった。


 それと呼応する様に、オーラン湾の外に首が持ち上がる。

「ミニシーサーペントだー!」

 警備艇から絶叫が上がる。

 キシャーーァ。

 ミニシーサーペントから溶解液ブレスが吐き出され、セイントアミュレットブイ三基が半分ほど溶けてしまう。

 オーラン湾を守るセイントアミュレットの効果は完全に消失してしまう。

 湾に侵入するミニシーサーペント。

 一緒に何匹もの海魔獣が湾に侵入する。


 ミニシーサーペントは体長三〇メルほどもある、ウミヘビ型の海魔獣だ。

 溶解液ブレスに流体被膜、大波の発生と凶暴さは折り紙付きだ。


 大雨に荒れ狂う湾内、そこで空と海の魔獣の戦闘が開始されるのか。


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