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次元災害で異世界へ  作者: 真草康
モンスタースタンピード編
68/181

66. オーラン市攻防

戦闘シーンが多いです。過激なシーンもありますのでご注意を。


 大きな地震の発生とともに、城壁が傷つくようなことはなかった。

 城壁内の街並みにも被害はなさそうだ。


 第一防衛場所からモンスタースタンピードの発生の報告が届く。

 それと同時に、大量の魔素と魔獣がまとう魔素と負の魔法力が河のように伸びてきて、オーラン市に流れ込んでくる。

 報告によるとセイントアミュレットのモニュメントの効果で濃度が低くなったそうだが、それでも魔素と負の魔法力で、耐性のない者だと長時間浴びていると気持ち悪くなるんじゃないかってレベルだ。

 もっとも、城壁とセイントアミュレットの柱に守られたオーラン市の濃度は更に低くなって、一般住民でも気持ち悪くなることはないだろう。

 それでも市の上空には濃厚な魔素が漂っている。


 その後も経過報告が届いていたが、とうとう来るべき報告が届いた。


『魔獣がオーラン市に向かっています。家から出ないようにしてください』

 オーラン市では警報を発し、すぐさま迎撃態勢を整えた。


 ララ草原と一緒で先ほどからパラパラと雨が降っている。


『ビッグプテラン九匹とプテラン一八匹と鳥魔獣一三〇〇匹がオーラン市に向かって飛び去った!』

 第一防衛場所から報告が届く。


 ビッグプテランとプテランに追従するように何十匹もの鳥魔獣が城壁めがけて飛んでくる。

 ララ草原を向いた南西方面の城壁では、準備万端、迎撃態勢は整っている。


魔獣血石ブラッドアミュレットをばらまけー」

 ブラッドアミュレットを撒いて城壁の南西前に鳥魔獣をできるだけ集結させて、迎撃する手はずだ。


「魔導ネット発射ー!」

 鳥魔獣の接近に、魔導ネットが発射される。


「全魔導砲発射ー!」

 中・小の魔導砲のブラストキャノンとブラストストーンキャノンが火を噴く。

 大魔導砲のメガブラストキャノン、メガブラストストーンキャノンも少し遅れて火を噴く。

 更に特大魔導砲のギガブラストキャノン、ギガブラストストーンキャノンも少し遅れて火を噴く。


 そして魔導槍と魔導矢が傷ついた鳥魔獣に止めを刺す。


 さすがに第一防衛場所を超えてきた鳥魔獣だけあって強い鳥魔獣が多い。

 小雨もあってビッグプテラン三匹とプテラン四匹が想定以上に手ごわい。


 ビッグプテランの圧縮空気による強烈な衝撃波(ソニックインパクト)ブレスは強烈で、幾つかのセイントアミュレットの柱と魔導砲が破壊される。

 ビッグプテランに比較するとプテランの攻撃は弱いが、それでもプテランから放たれるソニックインパクトブレスも強烈だ。


 砲撃は第一防衛場所の土塀と基本は同じだが、第二防衛場所の城壁は一応最終防衛線だ。

 城壁に配備された防衛隊は警備兵の三〇〇人(戦闘奴隷一五〇人含む)、自警団一五五〇人、冒険者三五〇人の計二二〇〇人だ。

 その中にはオーラン・ノルンバック船運社の砲撃船に長けた社員というか船員八人も含まれてる。ウインダムス家からも同様に自警団として参加している。

 それと自警団も戦闘奴隷を購入していて、三分の一は戦闘奴隷だ。

 尚、戦闘奴隷の多くはマリオン国が鉱山からなど一時期的に集めて、格安で供出し、それを様々なギルドが購入して自警団に割り振っているのが実情だ。


 城壁の装備は何があっても対応できるようにと、悪天候を予想してブラストファイアーの魔導砲の半数がブラストストーンファイアーに放射魔石を交換している。

 ブラストファイアーは威力と速度があるが、雨に弱い。

 ブラストストーンファイアーは威力はあるが、速度が遅いのが難点だ。ただし雨でも威力が落ちにくいという利点がある。


 初撃はうまくいったが、オーラン市は巨大で城壁も長い。

 ララ草原を望む南西方面の城壁に魔導砲を集中さている。


 砲撃手の多くが練度の低い、自警団ということもあって激戦で、しかも苦戦中だ。

 それも徐々に慣れてきて命中し始めている。

 魔導砲の命中率が上がってくると物量に勝る防衛側が、プテラン二匹を撃破したりと、徐々に戦果を上げていく。


「破壊されたセイントアミュレットを急いで修復しろー!」

 激戦で活躍するのは攻撃兵だけでなく、修理に走り回る工兵もだ。

 ビッグプテランの攻撃でセイントアミュレットの柱が破壊されるたびに工兵が修理に当たる。


 そうこうすると、陸上の魔獣が攻めてきた。

 先頭はホッグ系とウルフ系だ。

「半数は地上を狙えー!

 ビッグプテランを近づけるなー!」


 更なる激戦だ。


 手薄になった空の防御にビッグプテランがソニックインパクトブレスで魔導砲とセイントアミュレットの柱を連続で破壊する。


 雨が急に強くなった。

 視界が効かない。

 ここまで強い雨は想定外だ。


 ドンッ、メガホッグの体当たりで城壁が揺れる。

 バーン、バーンとギガブラストキャノンとメガブラストキャノンの連射でメガホッグを仕留める。


 工兵が修理をするが、市街への魔素と負の魔法力の流れ込みに、高空を飛ぶ三〇匹程度の鳥魔獣がオーラン市に侵入してしまう。


『緊急事態発生! 魔獣が城壁を破って市内に侵入しました! 至急屋内に避難してください!』

 地上に攻撃を集中した隙を突かれ、数匹の鳥魔獣に上空を越されてしまった。


 鳥魔獣が侵入した後また雨が小雨になった。


 激戦の末、鳥魔獣の数も一〇〇匹程度まで減らすことができた。

 全てを退治するのも間もなくだろう。


 四度目の物資補充を送った昼前に第一防衛場所から緊急連絡が届いた。

『ビッグプテランとプテラン五匹に数多くの鳥魔獣がオーラン市に向かった』

 そして引き続きの第二報。

『デミワイバーン三匹が、大量の鳥魔獣を引き連れてオーラン市に向かった』


 想定外のデミワイバーンの襲来に動揺が走った。

 それでも本来なら対応できるはずだったが、雨脚が急激に強くなってきた。

 砲撃で倒せるのか……。


「ブラッドアミュレットをありったけばらまけー」

 魔導装甲車が城壁前にブラッドアミュレットをまき散らす。

 これでもブラッドアミュレットの効果は想定以下だ。


 デミワイバーン率いる鳥魔獣軍団だ。ビッグプテランも二匹まで減らしていたが、それがまた二五匹程度になってしまう。プテランも同様に七○匹程に戻ってしまった。

 鳥魔獣の総計は一三〇〇匹程度だろうか。それも強さが“40”以上にもなる強い鳥魔獣が半分以上だ。

「魔導ネット発射ー!」

 魔導ネット用の魔導砲から魔導ネットが発射される。

 翼端一〇メルほどのデミワイバーンを捕縛するには巨大な魔導ネットが必要だ。


 デミワイバーンといってもワイバーンにあまり似ていない。

 恐竜の近縁種の翼竜に似ていているが、竜種ではなく鳥魔獣に含まれる。

 プテランとワイバーンのハーフのような体で、小さな前腕はあるが、尻尾は翼竜種のプテランと同様に短い。

 頭はやはりプテランに似ていてひょろ長いく頭部は後方に長く伸びている。

 首が長いので体長は二.五メルほどで、翼端はビッグプテランと同様の一〇メルほどだ。

 ただ振動魔法の防護皮膜をまとい、強力な高熱と衝撃波のブレス、ヒートクラッシャーブレスがワイバーンを彷彿とさせるために、デミワイバーンと呼ばれている。

 ビッグプテランとサイズ的にはそれほど差はないが、強さではかなりの開きがある。


 次々と舞い上がる魔導ネットだが、雨と風で流されるので照準が難しい。

 それに良いところに飛んでも簡単にかわされてしまう。


 特大魔導砲のギガブラストキャノン、ギガブラストストーンキャノンに、大魔導砲のメガブラストキャノン、メガブラストストーンキャノン、魔導槍も空を飛ぶ。

 中・小の魔導砲のブラストキャノン、ブラストストーンキャノン、魔導弓は連射で鳥魔獣を攻撃する。

 魔導砲の威力も雨で弱まっている。


 デミワイバーンのヒートクラッシャーブレスが強烈で、セイントアミュレットの柱や魔導砲が次々に破壊されていく。

 ビッグプテランの圧縮空気による強烈な衝撃波(ソニックインパクト)ブレスもまた被害を上げている。

 雨天とはいえ、上空からの爆撃は強烈だ。


 破壊されたセイントアミュレットの柱や魔導砲は工兵や技術者が修理や交換に当たっている。

 その隙にまた鳥魔獣が数匹、城壁を越した。


「ここがししのぎどころだ。ひるむなー!」

 雨あられと砲弾が飛び交い、戦闘が一段と激しくなる。


 鳥魔獣を数多く倒すも、デミワイバーンは三匹は無傷で、一二匹まで減らしたビッグプテランは三匹には傷を負わせたが、九匹はほぼ無傷といったところだ。


 最初は向かってくる鳥魔獣に各個で射撃をしていた防衛側も、デミワイバーンには弾幕を張ってけん制し、その間にビッグプテランを含む鳥魔獣を掃討する作戦に変更している。


「デミワイバーン正面来るぞー。弾幕張れー」

「ビッグプテラン右、弾幕張れー」

 その度にギガブラストキャノンとメガブラストキャノンの一斉砲撃が飛ぶ。


 全ブラストストーンキャノンと、魔導槍に魔導弓は鳥魔獣への砲撃を緩めない。


 何度か鳥魔獣のオーラン市への侵入を許したが、数は少ない。…とはいえ最初の三〇匹を含めて五〇匹程の鳥魔獣の侵入を許してしまっている。


「デミワイバーン三体正面来るぞー。弾幕張れー」

 盛大にギガブラストキャノンとギガブラストキャノンが火を噴くが、デミワイバーンのヒートクラッシャーブレスの集中攻撃に、城壁のいくつものセイントアミュレットの柱が破壊され、魔導砲も吹き飛ぶ。


「全砲門で弾幕張れー! 魔獣の侵入を許すなー!」

「工兵、修理急げー!」


 他の鳥魔獣を攻撃していた魔導砲がいっせいにデミワイバーンに向かって炸裂する。

 工兵がすかさず修理に当たるも、被害は甚大で、直ぐに修理は不可能だ。


 駆け回り、様々な対応をする警備隊や自警団員をあざ笑うかのように、ビッグプテラン三匹にプテラン五匹と多くの鳥魔獣の侵入を許してしまう。

 総数一五〇匹だ。

 それもここまで生き残った強さが“40”以上の強い鳥魔獣ばかりだ。


『緊急事態発生! 大量の魔獣が城壁を破って市内に侵入しました!

 南広場と西広場に魔獣血石(ブラッドアミュレット)を撒いて砲撃によって魔獣の駆除を行います!

 周辺の住民は屋内の安全な場所に隠れていてください』

 大音響サイレンが響き渡った。


 追加にビッグプテラン四匹にプテラン六匹が城壁を越して市街に侵入する。

 そしてデミワイバーンの一匹が悠々と城壁を乗り越えていった。


  ◇ ◇ ◇


『緊急事態発生! 魔獣が城壁を破って市内に侵入しました! 至急屋内に避難してください!』

 始めてのオーラン市への魔獣侵入だ。


 ルドルフ()率いる第三警備隊の第五小隊も大型武装魔導車に乗り込んで自警団の乗る武装魔導車とトラック魔導車二両が飛び出した。


「第五小隊出発!」

 第一防衛場所に警備隊の大部分を派遣している補填に自警団を配置しているのだが、心もとなさは否めない。

 それを振り飛ばすような気合の号令だ。

 全一ふた四小隊が出撃した。

 その中には小回りの利くトリケランやバイゴーランに騎獣した騎獣隊もいる。


 市街防衛隊は他にもいる。

 ランクCの一流冒険者パーティーに、中堅や若手のランクDがサポートについた急造チームだ。別名A小隊からP小隊までの冒険者小隊だ。

 その全一六冒険者小隊も出撃する。

 こちらも貸し出された魔導車や騎獣に乗るものも多い。


 その他に市街を警邏(けいら)する自警団だけの集団がいて、いざという時の応援もお願いできる。

 ノルンバック家やウインダムス家の腕自慢も自警団を組んで警邏に参加している。

 その中にはホーホリー夫妻やヒーナ先生、レイベさんにカフナさん、ノルンバック・ウインダムス魔獣対策魔道具研究所(N・W魔研)の新入社員のチョット冷めた感じのする美人のデトナーさん、髭にこだわりある魅力的なおじさんアランさんも参加している。

 ちなみにリエッタさんはエルガさん及び自宅の警護だ。


 想定された市外への魔獣の侵入の第一に鳥魔獣が考えられたのは当然だ。

 さすがに空に向けて魔導砲を撃って、当たらないときの砲撃が家屋や住人に被害を及ぼす恐れがあったので、市街での魔導砲の対空砲撃には無理があった。

 それで用意されたのがボウガンタイプによる小型の魔導ネットの対空砲火だ。

 迎撃方法は、各部隊で装備は違うがボウガンタイプの武器で小型の魔導ネットを撃ちだし、地上に叩き落して武装魔導車をメインにタコ殴りでおしまいだ、というものだ。


 城壁に攻めてきた鳥魔獣の中にはビッグプテランとプテランもいたが、連絡ではビッグプテランとプテランは侵入してきていない。

 鳥魔獣の総数は三〇匹。


 出動前の情報だと、鷹型のレッドホークが強さ“28”前後で熱を使う。


 ダブルヘッドホークは同じく鷹型だけどレッドホークより強力で高熱と混乱を放ち、強さは“32”前後。


 フクロウ型のサイレントオウルは隠形のような無音滑空に鋭利な翼、麻痺毒の爪で、強さは“35”前後。


 同じくフクロウ型のダークストラスは複合毒とイリュージョンに混乱まで使ってきてサイレントオウルより強くて“38”程度。


 骸骨鳥は鳴き声が不気味で錯乱状態を誘発し、特殊スキルで鋭い骨の散弾を飛ばしてくる。強さは個体によって“23”~“37”とさまざまだ。


 突撃ヒバリはララ草原でもたまに見かける高速アタックと、侵入した鳥魔獣な中ではたやすい魔獣だ。


 ただ忘れちゃいけないのが鳥魔獣の強さ補正で、言われた強さを一.二倍~一.五倍として考えないといけないってことだ。

 それと雨は要注意だ。魔導砲の威力が落ちる。


 街中で掃討戦が開始される。

 第一と第二がチームを組んで左側、そして順に右側に展開するように第三・第四、第五・第六と二小隊でチームを組んで全六チームで市街に躍り出た。

 その他にも冒険者チームが自己の判断で市街地に乗り込んでいく。


ルドルフ()率いる第五小隊はまずは、

「目標、レッドホーク!」


 自警団の魔導車の一両はトラック型で、その荷台にはクロスボウを持った冒険者が二人とその護衛の自警団員の二人の計四人が乗っている。

 強さは“40”程度って考えればいいか。

「気を緩めるなよ!」


 魔導トラックが速度を上げ、荷台の二人が次々にクロスボウを射る。

 魔導ネットが広がるが、雨のため速度がガクンと落ちてしまい、レッドホークがたやすく回避する。

「もっと近づいてだ! 俺たちは回り込んでレッドホークを追い立てる!」


 三台で取り囲もうとしたがレッドホークが屋根越しに逃げていく。ただ、入れ替わりにサイレントオウルが目の前に来た。

「サイレントオウルを追い立てるぞ! 魔導ネット、いけると思ったら各人の判断で発射ー!」


 シャッ、シャッと接近して射られる魔導ネットの二射目がサイレントオウルの羽に絡まる。

「ブラストストーンキャノン発射ー!」

 ボンッ、と高熱のストーン散弾に撃たれ、サイレントオウルが弱る。

 そこに魔導車を止め駆け寄った警備兵や自警団がタコ殴りで仕留める。


「よし、次だ!」

 魔獣石だけは取り出し、次の鳥魔獣へと向かう。

 別の鳥魔獣に魔獣石を食われると、強力な魔獣になる可能性があるのでここは手が抜けないところだ。


 とうとう雨が降ってきたかと思ったら、豪雨となった。

 視界が悪い。


 二匹目は逃げたレッドホークを自警団が上手く追い立ててくれて、それを撃退した。

 三匹目もレッドホークを自警団と一緒に撃退中に……。


『緊急事態発生! 大量の魔獣が城壁を破って市内に侵入しました!

 南広場と西広場に魔獣血石(ブラッドアミュレット)を撒いて砲撃によって魔獣の駆除を行います!

 周辺の住民は屋内の安全な場所に隠れていてください』

 ワンランク上の警報が響き渡った。

 南広場と西広場は最終迎撃場所で強力な魔導砲が設置されている。

 他にも市役所前の中央広場や海岸に港に漁港にもある程度の強力な魔導砲を設置されているが、その他の広場などは、いざという時のため程度で数も少ない。


 ここに至って迎撃側も魔導車による対空砲劇の許可を出す。

 南広場に向けて魔導砲が放たれるのが合図だ。

 市街で激しい対空砲火が起こり鳥魔獣も負けじと手当たり次第に破壊を行う。


 後で知ったことだが、城壁の巨大なセイントアミュレットの柱を含む多くの柱が立て続けに破壊され、新たにビッグプテラン三匹にプテラン五匹と、総数一二〇匹程度の多くの鳥魔獣がオーラン市外へと侵入した。

 そしてあろうことかデミワイバーンまで侵入を許してしまった。


 デミワイバーンは個体差があるが“100”前後ってことらしい。ふざけるなってレベルだ。

 ビッグプテランの強さが“80”で、プテランが“60”と言われている。

 その他の鳥魔獣の中には強さが“50”前後の鳥魔獣、人面で二本の角に牙のあるオキュペテが五匹、“40”前後が巨体で頑丈なペラゴルニスサンデルシ八匹とキングファルコン五匹、激戦の城壁での戦いに生き残った魔獣なので強い魔獣が多い。


 大型武装魔導車の中型魔導砲で戦えるのは、普通で考えれば“40”程度だ、頑張れば“50”は行けるかもしれないが、プテランやましてはビッグプテランなんてどう大型武装魔導車じゃ無理だ。


 冒険者パーティーが出動して南広場に魔獣血石(ブラッドアミュレット)を撒いて侵入した魔獣をおびき寄せる。

 そして設置されている大型魔導砲を含む各種魔導砲と、大型攻撃魔導車六台も追加で出撃して、激しい砲撃戦が開始される。


 怒号が飛び交い、魔法攻撃も行われるが、メインとなる魔導ネットが大雨に阻まれ威力が弱い。

 防御側がかなり押されていて、被害が徐々に広がっていく。


 ルドルフ()率いる第五小隊はレッドイーグルを倒した後、第六小隊と合流してブラッドアミュレットに引き寄せられなかった魔獣を退治することになる。


 小物を二匹程倒したら大物を発見。


「目標キングファルコン!」

 高速移動に強靭な体、無数の石針を風魔法で飛ばしてくる翼端が五メル以上もある超巨大な鷲の化け物だ。

高熱矢(ヒートボウ)用意!」

 強力な魔獣はその辺の武器じゃ歯が立たない。

 魔導砲にアタッチメントを装備してヒートボウをセットする。雨対策の武器だ。

 クロスボウの矢も小型のヒートボウに交換だ。


 魔導車内でシールドボックスに保管していたブラッドアミュレットを取り出し魔導車の天井に設置してキングファルコンをおびき寄せる。

 クロスボウから小型ヒートボウと魔導ネットが、向かってくるキングファルコンに飛ぶ。

 キングファルコンが避けたところを、

「ってー!」

 武装魔導車のヒートボウがうなりを上げて飛ぶ。

 グサッとキングファルコンの足の付け根に刺さったところに、第六小隊のヒートボウが翼に刺さる。

 ぐらりと揺れて落ちそうななったキングファルコンだが、何とか持ちこたえて浮遊する。高速飛行はさすがに無理そうだ。

「逃がすなー!」

 小型ヒートボウが飛び、キングファルコンの動きを封じる。

「ってー!」

 二撃のヒートボウで地上に落ちたキングファルコンを、今度は止めとばかりに小型ヒートボウが無数に襲い掛かり息の根を止めた。


 ガンッとの金属音に見ると第六小隊の大型攻撃魔導車が巨体なオキュペテによって体当たりを食らいひっくり返ってしまった。

 続けて自警団の乗る魔導車一両もひっくり返り冒険者と自警団員などが怪我をする。

「防御ー! けが人は退避させろ! それと耳をふさげ!」

 ヒックリ返ったトラック魔導車の周囲を、攻撃魔導車や大盾で囲んで防御する。 

 ヘッドギアの防音スイッチを押したので、指示はハンドサインとなる。

 ただしその前に二人ほど眠ってしまった。

 オキュペテの鳴き声には睡眠と疲労の効果がある。

 ひっくり返った大型攻撃魔導車も何とか起き上がらせて、魔導砲の数も増やす。

 第六小隊と一緒にヒートボウと魔導ネットでオキュペテでに立ち向かう。

 豪雨の中難しい作戦だがやり遂げねばならない。

 武装魔導車は部下に任せ、俺は外に出てフェイクバッグからバルディッシュを取り出し魔法力を流し込む。

 

 身体強化は武装魔導車に乗っているときから行っている。

 指輪の魔宝石も頼もしい。

 警備隊や自警団の中にも魔法戦闘が行なえるものが他にもいるので、そういった者たちは自分の戦闘力で対処する。

 ここからは個人の戦闘力にも頼らざるおえない。


 激闘の末、魔導車が一両破壊したが、

「ルドルフ、あんまり持たんぞ!」

 第六小隊長のローボルが二本の鞭でオキュペテの足を捉えた。

 そこにヒートボウと魔導ネットが飛ぶ。

「わかってる!」

 俺はバルディッシュに込められるだけの魔法力を込めて投げつける。

 バルディッシュはまごうことなきオキュペテの胸に突き刺さる。

 続いて大型攻撃魔導車のヒートボウが突き刺さる。

 キョッキュワー、と苦しそうに泣き叫ぶオキュペテだが、ヘッドギアの防音効果を乗り越えて脳内に響いてくる。

 どっと眠気と疲労感が体を襲う。

 負けるか、と体内の魔法力の循環を高める。

 ローボルがまだ鞭で踏ん張り、オキュペテを押さえつけている。

 絡まった魔導ネットに刺さったヒートボウもあって、地面に立っているといった状態だ。

 俺は落ちている槍を拾い、オキュペテの顔めがけて投げつけ、ダッシュして胸に突き刺さったバルディッシュに飛びつき思いっきり押し込んだ。


 オキュペテは断末魔の鳴き声を上げて崩れ落ちた。


「大方は片付いたようだ。南広場に行くぞ」

 転倒してた魔導車を起こし、第六小隊と一緒に移動する。

 破壊された攻撃魔導車の一両は放置するしかなかった。


 一旦補給で南広場に移動、戦闘はいまだに続いていいて激戦だ。

 南広場周囲の民家からは警報が発令された時点で退去・避難してもらっている。それは西広場周辺も同様だ。


 補給して直ぐに参戦する。

 が、その直後に、

『緊急事態発生! 強力な魔獣が城壁を破って市内に侵入しました! 至急屋内に避難してください! 絶対に外に出ないように! 絶対に外に出ないように!』


 城壁の方を見上げると、いよいよデミワイバーンのお出ましだ。

 魔獣もまた増えた。

『総員気を引き締めろー!』

 指揮官のアナウンス、檄が飛ぶ。


 ギシャヤーーー。

 ヒートクラッシャーブレスが熱を発しながら頭上を過ぎていく。

 大攻撃魔導車が破壊される。


 豪雨の中、魔導砲がうなり、魔法が飛び交う。

 魔獣の雄たけびが轟き、怒号が響き渡る。

 デミワイバーンがUターンして戻ってきて、再度のヒートクラッシャーブレスが今度は広場と魔導砲を焼く。

 またも激戦だ。


 徐々に魔導砲や魔導車も壊れていくに従い、魔獣も減っていく。

 工兵も大忙しだ。

 ブラッドアミュレットも三度撒きなおして、魔獣が逃げるのを防いでいる。

 こちらの被害者はけが人多数に、死亡者は戦闘奴隷だけだ。

 ただどうしてもデミワイバーンを傷つけることができない。


 戦闘に飽きたのかデミワイバーンが南広場を離れていく。

『動ける魔導車はデミワイバーンを追え!』

 司令官のアナウンスが響く。

「追跡するぞー!」

 第五と第六小隊が攻撃魔導車と魔導車で後を追う。

 疲れた体に鞭打って、乗車してデミワイバーンを追う。

 その後をもう一両、大型攻撃魔導車が続く。


“N・W魔研”の“マジックキャンディー”を二つ口に放り込む。

 最近市場によく出回っているものだが、モンスタースタンピードでは警備兵だけでなく、自警団や冒険者にも配布されている。

 本当に苦いが、いざとなった時には役に立つ。

 冒険者の頼みの綱になっているという話だが、警備兵でも魔獣討伐の時には所持して討伐に挑む者が多くなってきている。


 ドカンという音とともに、第五小隊の攻撃魔導車に衝撃が走って止まってしまった。

 後方を見るとビッグプテランが追ってきたいた。

 そうするとソニックインパクトの直撃を食らったということだ。


「プテランやるぞー!」

「「「おー!」」」

 誰もが疲労困憊。

 気力はあるが体が重い。


 ビッグプテランが頭上を過ぎ、大型攻撃魔導車にもソニックインパクトを放つ。

 今までの戦闘で攻撃魔導車に、当然だが恨みがあるようだ。


 後に続いた大型攻撃魔導車も止まってしまう。煙が出ているから故障のようだ。

 バラバラと出てきた警備隊員が飛び出してくる。

 それと砲をビッグプテランに向けてブラストストーンキャノンを放つ。


「お前たちは、あいつらと一緒に、悪いけどアイツを追って住民の避難を頼む。

 俺たちはこいつをやってけてから直ぐに向かう」

 大型攻撃魔導車の小隊長から声が掛かる。

「大丈夫か」

「あいつも手傷を負っているから、何とでもなる」

 見るとビッグプテランの翼の何か所かが裂け、顔半分が焼けて片目のだ。

 これなら何とかなるか。


 第五小隊の止まってしまった攻撃魔導車の面々にも残るように指示を出し、

「残りの第五小隊と第六小隊はデミワイバーンを追う」

 追跡する。


 走り出したと思ったら、デミワイバーンが良く見えない。

 索敵しても雨の所為とあちらこちらの戦闘の影響か曖昧にしかつかめない。

 右に左にと、そして攻撃を受けた家には一応声を掛けてデミワイバーンを追う。

 そうこうすると鳥魔獣と遭遇して戦闘となてしまう。トラック魔導車の一台も攻撃で破壊していしまう。


「デミワイバーンはこの方向か」

「そうだな。急ぐぞ」

 ローボルと確認しあって、オーラン上級学校を覗いて安全を確認。

 次と駆け付けたのはオーラン魔法学校だった。


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