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次元災害で異世界へ  作者: 真草康
魔獣監視装置 正規版編
62/181

60. ボティス密林の現状


 僕はホーホリー夫妻と一緒に、毎月の一週目と三週目がワニ池とルルドの泉巡りを行っている。

 ほとんど一日で完了するが、魔獣の大量遭遇や天候不順で、二日に分けて回収したこともある。

 二週目と四周目がモモガン森林での狩りでレベルアップを目指している。

 毎回リエッタさん・レイベさん・ニガッテさんの誰かが、もしくは複数が同行している。

 モモガン森林の一泊二日の狩りにはエルガさんも同行することがある。


 その他の日が、研究開発補助、ミクちゃんたちとの訓練&たまにララ草原での狩り、あとは図書館などだ。

 ミクちゃんとライカちゃんとの早朝訓練は、黒曜日はお休みで、それ外でできる日は毎日ってなっている。

 ただライカちゃんとは狩りに行ったことはない。両親の許可がいまだに無いからだ。まあ、普通そうだよね。

 それでもライカちゃんはめげずに説得してるそうだ。

 ミクちゃんもライカちゃんの影響か、引っ込み思案なところが随分と薄れてきて、積極的になってきている。

 以前も何かにつけ真摯で真剣だったけど、それに情熱が加わったようだ。


 八月一週目のメモリーパッケージの交換は、八月二日の青曜日に出発してまずはワニ池に向かった。


 久しぶりに交換要員全員(セージ・ホーホリー夫妻・リエッタ・レイベ・ニガッテ)にボランドリーさんがそろったのは、ボランドリーさんが自分の目で実際確認したいってのと、調査個所が二か所に減ったので、もう一か所も確認すること。

 調査個所周辺の状況もつかんでおきたいし、できれば密林の奥も確認しておきたいそうだ。

 ララ草原にキャンプを張って二泊三日の本格調査だ。

 僕は危険だからって、最初はメンバーから外されたけど、今更だって主張しての参加だ。

 パパとママに渋い顔をされちゃったー。

 ごめんなさい。でも頑張るって決めてるから。


 いつもの魔導車と違い、冒険者ギルドが用意した長距離旅行用の魔充電装置(ボルテックスチャージ)を増設した二台の魔導車で街道を進む。

 ハンドルを左に切ってボティス密林に沿いにララ草原に乗り込んでいく。

 魔導車をカムフラージュしてからボティス密林に分け入り、ワニ池に。

 強化マダラニシキヘビと戦ったころから比べると、この辺りも魔素濃度が濃くなったように気がする。まあ、はっきりとそのころの魔素濃度を覚えてるわけじゃないけど、なんとなくだ。

 ゴブリンの群れを倒しながらワニ池に到着。

 マッドアリゲーター三匹を倒してから、認証合キー魔石でメンテナンスハッチを開けてメモリーパッケージ交換を行う。いつもの作業だ。


 レイベさんは魔素を感知する能力と鉄菱(ひし)の威力が上がって、強さ“35”程度の泥ワニ(マッドアリゲーター)は複数は難しい時もあるが、単体では難なく狩れるようになった。今回も一匹はレイベさんが狩った。


 リエッタさんも“ドリームワールド”だけでなく、“ストーンショット”・“クロッドバレット”・“ストーンバレット”と土と風の複合魔法も得意になった。

 リエッタさんもマッドアリゲーターを<ストーンバレット>の連射で動きが弱ったところをショートスピアで止めを刺した。


 もう一匹は僕の練習用で<ハイパーストーンショット>の餌食になった。


 リエッタさんはショートスピアを新調していて、ミスリル鋼硬Lになっている。

 ちなみに付与無しの物は割とお買い得で、自分で付与しているのは当然だ。

 僕が教えた高周波ブレードも、エルガさんの助言で補助じゃなく付与していて、一定以上の魔法力を流すと発動するようになっている。

 イメージ付与を重ね掛けすることによって、こんな制限条項を盛り込めるのかって感心した。

 もちろん僕も見習ってショートスピアの黒銀槍や、小太刀の銀蒼輝にも取り入れた。


 ただの付与だと持っただけで微妙な魔法力が流れ、威力が弱いといっても高周波ブレードになっちゃうからって、今まで補助魔法を戦闘ごとに掛けていたけど、その時間と手間が省けたので非常に楽になった。


 周辺を探索しながら徐々に奥に入っていく。

 奥に入ってもゴブリンの群れが多い、<ハイパークロッドバレット>で事足りる。弱すぎる魔獣は適当に倒しても誰も文句を言わない。

 そしてイノシシ(ホッグ)系の魔獣が増えてきた。


 それらを倒して進むと、強敵発見。


「シルバータイガー二匹。体長二.六メル前後、身体強化に俊足・俊敏、冷凍スキルは身体にまとわせたり飛ばしてくるはずです。強さは“60”前後」

 いつものように本で得たことも合わせ、情報提供だ。

 何で亜熱帯に冷凍スキルかって疑問は棚上げ、強化マダラニシキヘビだって持ってたんだから、通常仕様なんだろう。


 距離は一〇〇メルチョットあるけど、なんだか気づかれったぽい。

「二匹揃ってこっちに来ます」

「退避ー」

 僕がいくら多彩な魔法を持って格上を倒していても、機動力のある格上魔獣には危険を伴う。

 ボランドリーさんの考えは、僕らの本来の任務を優先してくれていて、全員で退避しました。

 シルバータイガーも僕たちが縄張りから出ていけばよかったのか、本気で追いかけてこなかったみたいだ。


 ワニ池に戻って、別の方向に分け入っていくと蛇系が多かった。

 小型・弱小なものはレイベさんの鉄菱(ひし)の餌食だし、僕の自家製鉄菱(ひし)の練習台だ。

 マダラニシキヘビはニガッテさんが得意な身体強化マシマシのスキルで、頑張って狩った。

 四本腕のテトラベアを倒して先に進み、レッドキャップベア二匹を発見して引き上げた。


 その後の調査は夕方までワニ池付近で、魔獣の目視確認を行う。

 データでわかっていたつもりだったが、それ以上に魔獣が現れ水を飲んでいった。

 まあ、ホイポイ・マスターはワニ池の東側を取り囲むようにチョット離れた場所に設置されているので、西側で活動する魔獣のデータは取ってない。

 それでも想定内邪無いかなって程度だ。


 プテラン五匹が遠くに見えた。

 数の多さにボランドリーさんとニガッテさんは危機感を持つたようだけど、データ的には満足したようだ。


 一旦ララ草原に戻って魔導車で進み、ルルドの泉の手前でキャンプを張る。

 メモリーパッケージの交換するとかなり暗くなってきた。

 周辺調査は明日することにして、ララ草原に戻る。


 帰って休むことも可能だが、ボティス密林の近くでキャンプをすれば夜間の調査にもなるためだ。

 除虫オイルと除虫線香は必需品。毎度お世話になってます。

 みんな刺されない、噛まれない強靭な体だけど、食事中や、就寝中はうっとうしいからね。


 食事を終えると、僕を抜かす二人組の三組で夜間の見張り&実態調査だ。

 場所が場所だけに、寝床は魔導車だ。

 魔導車の座席を広げ、そこに二人づつ。

 二人が見張りで残った一人が魔導車の間の地べたにレジャーマットを敷き、そこで寝る。

 夏の亜熱帯、むしろ外で寝た方が気持ちは良さそうだ。


 いつでも動けるように魔導車に収納された吸魔アンテナは収納したまま、広げてない。

 それでもわずかながらに魔充電は行われ、昼間のカムフラージュ用の魔法電気エネルギー程度は確保される。


  ◇ ◇ ◇


「おはよう…ございます」

 ふはー、と大きなあくびが出る。

「ああ、起きたか。もうすぐ飯だ」

「はーい」

<ホーリークリーン>で綺麗サッパリ、気分も爽快だ。

「おお、頼む」

 ということでボランドリーさんにも<ホーリークリーン>。…というか全員に<ホーリークリーン>を掛けた。

 最近の恒例だ。

 自分で“バブリッシュ”を掛けるより気持ちが良いそうだ。

 その気持ち分かります。


「夜中は何にもなかったんですか」

「たまに夜行性の魔獣が出た程度だ」

「いつものですね」

 ボランドリーさんのさも普通だという回答に、レイベさんが勘違いする。

 魔獣が跋扈(ばっこ)する場所でキャンプを張るのは初めてだからだ。

 それでも夜行性の魔獣も何度か出会っているから、言わんとすることは理解できる。

 ミッドナイトマウスにグレースライム、それにサイレントバットってところだろう。


 朝食を食べ、魔導車のカムフラージュを施したらボティス密林に入っていく。


 ここでもゴブリンが増えているのは同じこと。<ハイパークロッドバレット>で倒して前進。

 ダッシュホッグはレイベさんが仕留めた。


 ルルドの泉に到着…というか、直前で身を潜めて監視。

 珍しく猫系魔獣の群れ。

 ブッシュキャット三匹、ブレードキャット五匹が、水を飲むカラーゴブリン三匹を含むゴブリン一八匹の群れを取り囲んでいた。

 オーバーキルだろう。

 カラーゴブリンの強さが“20”前後で、ゴブリンは“10”前後から強くて“15”程度。

 対するブッシュキャットが“34”~“32”、ブレードキャットが“25”前後と圧倒的だ。

 

 颯爽(さっそう)と一匹のブッシュキャットがカラーゴブリンに襲い掛かかる。それを合図に残りのブッシュキャットとブレードキャットが襲い掛かる。

 瞬く間にゴブリンたちが駆逐されていく。

 かみ砕かれ、切り裂かれ、まず最初に魔獣石が飲み込まれていく。


「やれ!」

<ハイパーストンバレット>

<ストーンバレット>

 ボランドリーさんの合図に、僕が上空から、リエッタさんが茂みから、魔法を放つ。

 みんながいっせいに飛び出し、ブッシュキャットとブレードキャットを狩る。

 瞬く間に戦闘が終了する。


 ブッシュキャットとブレードキャットは肉はうまくないが、毛皮や牙に爪が素材として役に立つ。

 一応、ブッシュキャットとブレードキャットは内臓を処分して凍らせてアイテムボックスに、ゴブリンも魔獣石が残ったものは回収して、ある程度は一か所にまとめる。

 そしてメモリーパッケージの交換行う。


 その後はボティス密林の奥を探索、ルルドの泉で魔獣観察と、作業は昨日と一緒だ。

 ゴブリンの群れの数はさておき、特筆すべき強い魔獣はメガホッグの亜種のブラックメガホッグを見かけたことだ。

 あとはレッドキャップベアやブラックベアなどだ。

 ルルドの泉にはエサがあるものだから、かなりの魔獣が寄ってきた。

 臭くて迷惑なハゲワッシもだ。まあ、森の掃除屋だから来ないわけがない。


  ◇ ◇ ◇


 八月四日緑青曜日。

 ボティス密林調査の最終日で、一番奥に行く。

 なんでも七沢滝と呼ばれるいくつもの小さな滝が連なる急な沢があって、その最後の滝つぼから緩やかな流れになるそうだ。

 その底壺と呼ばれる最後の滝つぼが目指す場所だ。

 

 密林をかき分けて進んでいく。といっても、ワニ池やルルドの泉周辺は、高い樹木に覆われた場所で密林と呼ぶにふさわしい場所だが、この辺りは低木が多く、また(やぶ)が多い。


 ゴブリンは相変わらずだが、また低木や藪が多いからかこの辺りには昆虫系も多い。

 大縞ムカデやデススパイダーはたいしたことないから基本放置だ。

 ブラウンデスワームやレッドデスワームは地中にいるから、倒すには時間が掛かるからこちらも放置となった。


「ボランドリーさん、なんか変です」

 レーダーをいつものような球状にして周囲を確認してから、細長く伸長して振り回す。

 それを適当な感覚で行っていたら、七沢滝のような場所を捉えた。

「なにがあった」

「大抵、水場には何らかの小動物なり、昆虫がいるけど、がそれが全然居ません。

 それと死んだと思われる魔獣が数多くいます」

 ボランドリーさんが「停止」を指示して、一人で底壺に向かう。

 そういえばハゲワッシの姿も見当たらない。


 しばらくしてボランドリーさんが帰ってきた。

「猛毒のジャイアントホグウィードが群生している。

 全員スフィアシールドを張れ!」


 猛毒の揮発性の樹脂を振りまく殺人樹がマンチニールだ。

 同様に猛毒の揮発性樹脂を振りまく殺人草がジャイアントホグウィードで、その他には姿かたちは違うが猛毒植物ではギンピーギンピーが有名だ。

 ジャイアントホグウィードの毒は光に反応して毒性が増す。

 対してギンピーギンピーは風に乗せて細かな毛も飛ばすといった違いはあるけど、どれも猛毒で周辺まで毒の影響があることに変わりはない。


 僕はレーダーで制限をある程度解除して、もう一度確認。

 空間認識と鑑定や看破を組み合わせると、機能が良すぎるのは困ったもので、基本魔獣石を持つ魔獣と鳥を含む動物系に焦点を当てている。

 レーダーを球形にした時には、ユトリがあれば見知った薬草・毒草・野草なんかも確認するようにしている。

 まさかこんな落とし穴があるなんて。

 すぐさまレーダーで確認すると、底壺の周辺に群生しているだけでなく、

「ボランドリーさん、歩いてきた周辺にもぽつぽつ生えてます」

「戻るぞー! セージは索敵してジャイアントホグウィードが無い安全地帯に出たら教えてくれ。充分に安全マージンを取れよ」

「風上、五〇メル以上でいいですか」

「ああ、そんなもんだ」

 了解、として後退。

 ただし、できるだけ風上に向かってだから、来た方向とチョット違う。

 いやー、風がララ草原の方から吹いていて本当に良かった。

 それにしても草むらの中の行軍、身体強化をしていなけりゃ、相当しんどいな。


「ジャイアントホグウィードを過ぎました」

「確認するが毒耐性、主に神経毒に体制の無い奴はいるか」

 ボランドリーさんの確認に、誰もが首を振る。

 強さ(総合)が“40”以上であれば、通常は毒耐性は取得しているそうだ。


「風上に回るぞー。スフィアシールドはまだ張っておけよー」

 で、右手方向に移動。七沢滝の上流の方だ。

「この辺でいいか。セージ、手近なジャイアントホグウィードはどの辺だ」

「ここから六〇メルほどで、この方向ですね」

 ボランドリーさんの問いに、指差し教える。

「焼きつくせるか」

「一〇メルほどに近づけば何とか…かな?」

 焼きつくす。土まで熱して、根まで焼き尽くす。

「前進するぞ」

「セージはやれそうになったら、止まってくれ」

 まずは適当に前進。そこから慎重に前進。

 このあたりかなって思って、もう一歩前進して停止。

「やります」

 手を上げてみんなに合図も送る。


 大量の小さな白い花を咲かせるジャイアントホグウィードは、見るだけなら可憐できれいなんだけど。

 精神を集中して、

<ハイパーファイアーマグナム>…<ハイパーファイアーマグナム>

 距離約一二メルと、ジャイアントホグウィードに向けて魔法陣を出現させて、超高温の巨大な火球を放つ。

 

 ビッグファイアーとストームの複合魔法が、魔法文字も追加して、マクロ化でも威力を増して新たに作成した魔法陣で、レベルも“4”から“5”になって、威力も大幅にアップした個人魔法だ。


 一瞬でジャイアントホグウィードと、それを取り囲む草や樹が焼け、消滅する。

 レーダーで確認すると、根っこも無い。

「消滅しました」

 報告をすると、ボランドリーさんが水魔法で火を消す。

 火魔法の得意なボランドリーさんは、次に得意な魔法が水だそうだ。


 そのまま七沢滝の上流側から、どんどんジャイアントホグウィードを消滅させていく。

 身体強化ができるみんなにとってはだけど、狭い沢だから渡るのは問題ない。


 慣れてくると消滅速度がアップする。それに伴い苦いルルドキャンディーを食べる回数もだ。

 消火作業はマルナさんとニガッテさんも加わって、三交代で行っていた。


 何度か七沢滝を渡りながらの消滅作業をおこない底壺までたどり着いた。


 七沢滝といっても一番高いもので八〇センチメル程度で、どれが七沢滝って思えるほど大小の滝のようなものが並んでいる。

 低い滝(滝と言えるか微妙だけど)も入れると数はもっとずっと増えるし、僕が大きそうな滝を数えたところ九沢滝だった。まあ、いいけど。


「まだいけるのか」「大丈夫か」と何度も心配され、訊ねられたのがチョットうざかった。

 こういう時は、黙っててほしかった。


 ここを片付ければ、あとは底壺周辺と下流に十数か所だけだ。


 ルルドキャンディー×三を食べ、

「<スフィアシールド>、…やります」

 宣言して精神集中して、

<ハイパーファイアーキャノン>…<ハイパーファイアーキャノン>…<ハイパーファイアーキャノン>…<ハイパーファイアーキャノン>……

 ワンランク上の合成魔法を計四〇発ほど放って完了。もちろん移動しながら、途中でルルドキャンディー×三を食べてだ。


「おお」「スゲー」

 感嘆や驚きも聞こえてくるがスルーだ。

 ボランドリーさん、マルナさん、ニガッテさんが周辺を軽く消火する。


 もう一度ルルドキャンディー×三を食べた僕は、<ホーリークリーン>で全員の浄化を行う。


 そしてボランドリーさんと周辺を歩き回って取りこぼしのジャイアントホグウィードの殲滅(せんめつ)、念のため警護にマルナさんがついてきてくれたが、幸いにも取りこぼしはなかった。


 残った四人は焼けた魔獣の死体から、魔獣石の回収だ。

 僕はもうお腹がいっぱいだ。…ゲップ。


 この日は僕の体調を気遣ってくれて、周辺の調査は取りやめ、帰宅した。


 魔導車でグッスリ眠った僕は、イメージ文字(マクロ)を作るのもしんどかったので、就寝前に魔法力を使い切るだけで眠りについた。


 翌朝うれしかったのが、魔法核と魔法回路が“7”から“8”になっていたことだ。

 あとは基礎能力全般に、火魔法や風魔法、毒耐性がアップしていた。

 投てきはしばらく前に取得していて、それが“2”となった。

 まだしょぼいけどっていうより、レイベさんの投てきや物体加速がアップして強烈になっていて、追いつける気がしない。


 翌週の狩りはモモガン森林じゃなく、ボランドリーさん参加でボティス密林の七沢滝で二泊三日。

 強力になった魔法で小型のブラックメガホッグを一人で倒すことができた。

 小型といってもそこはメガホッグの亜種、強さは“58”前後だった。

 <ハイパー粘着壁Ⅱ><ハイパー粘着弾Ⅱ><ハイパー粘着シートⅡ>で捉え、レベル7の合成魔法の<ハイパーヒートキャノン>の連射で焼き、止めは高周波ヒートブレードの黒銀槍だ。

 翌朝には強さも“55”となって、いくつもの魔法もアップした。

 魔法の総量は“295”と、“300”目前だ。これは毎日枯渇で鍛えてきた、たまものっていった方がいいんだけど。


 調査ではゴブリンの集落の壊滅を行い。

 発見した魔獣は熊系やイノシシ系が多く見受けられたのは、ワニ池やルルドの泉と一緒だった。


  ◇ ◇ ◇


 エルガさんが、頭や胸に装着できる魔石装置(ファミリーマシン)の録画装置を開発したこともあり、あとから魔獣の確認が容易になった。

 商品名“ポチットムービー”でノルンバック・ウインダムス魔獣対策魔道具研究所で販売を開始した。

『“ポチットムービー” お手軽に撮っちゃうんだぞー』

 再生装置と充魔電石は一般に市販されているものでOKだ。

 それにしてもエルガさんのネーミングセンスには、まったくもー、だ。


 小型の近距離電話(マジカルフォン)は試行錯誤で奮闘中だ。

 ウインダムス家の協力もあって、どうやら一般の電増魔石は性能にバラつきがありながらも作成もできるようになった。そして一般サイズの近距離電話(マジカルフォン)の作成も出来は悪いながらも出来上がった。

 それを小型化するために苦心中だ。電増魔石も精密なものらしい。

 時たま魔石の作成を頼まれて、奮闘状況を見ているけど、謎の電増魔石の解析も良いところまで来ているみたいで、試作品が完成するのも間近かもしれない。

 ギランダー帝国の製造技術もすごいそうで、抵抗にコイルにコンデンサーと、どの部品をとっても小型で安定した部品だそうだ。


 ちなみに僕も商売を始めた。まあ、僕ってわけじゃないんだけど。

 ノルンバック・ウインダムス魔獣対策魔道具研究所(N・W魔研)の名前で、ルルドキャンディーを“マジックキャンディー”として販売している。

 もちろん僕だけの儲けにはならない。包装してきちんとN・W魔研の名前で販売している。

『あー苦い! 苦いが効く!』のキャッチコピーの下、三個セットで五SH(シェル)と、日本円で二千五百円とそれなりに高価だ。

 アイテムボックスにルルド水をしこたま持ち帰って、ルルド水を作成して、濃縮・固形化でルルドキャンディーを作成するのも魔法の枯渇、総量を増やすためにちょうどいい。

 ちなみに圧縮と魔法力の込め方が良くなったのか、ルルドキャンディーの効果がアップして僕だと三個で魔法が“110”程度まで回復する。

 リエッタさんにヒーナ先生、レイベさんだと“85”程度まで回復するから、飲む価値はあるそうだ。

 販売は冒険者ギルドで税とギルドの手間賃が三分の一、僕の取り分が三分の一で、あとの三分の一が会社の売り上げだ。


 ちなみにオーラン市ではサトウキビ栽培――もちろんサトウキビも魔石の粉末肥料で三期作だ――をしているので、砂糖はそれなるに手に入る。

 ルルド水に砂糖を混入してルルドキャンディーを作成したこともあるけど、効果が落ちてしまい、苦さはそのままで甘みもあるという異様な味だった。

 いまだに苦くないルルドキャンディーは作らないままだ。


 時たま趣味? ではないがポラッタ家のライカちゃんのパパさんの勧めを聞いてお祭りも見に行ったりもした。

 ミクちゃんやライカちゃんとの訓練や、時たまミクちゃんだけだが狩りにも付き合ているのは相変わらずだ。


  ◇ ◇ ◇


 ワニ池とルルドの泉の監視は続いた。

 九月には底壺に四台のホイポイ・マスターの設置も行い、魔獣氾濫モンスタースタンピードの監視体制も強化した。

 幸いなことに魔獣の増加傾向が高めで小康状態になった。


 優秀なランクCの六人パーティーのブルーゲイルがパーティーとして消滅したが、生き残った二人が活動をなんとか再開したってボランドリーさんが教えてくれた。

 生きて食って大変だよね。


 不気味なことに小さな地震が月に四、五回発生し続けていることだ。


 そのような状態のまま、秋、一二月二四日黒曜日、オケアノス神社の凪の日、休漁の日が過ぎた。


 セージはメモリーパッケージの交換と狩りを続けている。

 魔法核と魔法回路が“8”になったことで、個人魔法が強化できて、格上を倒すのがずいぶん楽になったことも確かだ。

 まあ、そうそう強さが“60”丁度の相性の良い魔獣がポイポイ出現するわけじゃないけど。


 また図書館に通い、イメージ文字(マクロ)を作り個人魔法を日々強化した。

 二か月に一度ほど、ボランドリーさんも参加のホイポイ・マスターの周辺調査も行っている。


  ◇ ◇ ◇


“ポチットムービー”がことのほか好調で売れているそうだ。

 給料上がるかな。


 それと“ルルドキャンディー”を“マジックキャンディー”として売り出し物も徐々にだけど、売れ出しているようだ。

 我慢して食べて生き残ったパーティーが幾つか出たことによって、冒険者の最後の頼みの綱ってことだそうだ。

 僕ってチョットお金持ちだ。


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