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次元災害で異世界へ  作者: 真草康
魔獣監視装置 試作品編
56/181

54. ボティス密林での救助


 デジャブ。

 数人の冒険者がボティス密林から逃げ出してきた。

「みんなは魔導車に乗って帰ってくれ」

 ボランドリーさんが険しい表情で告げる。

「あいつらは」

「ああ、ボティス密林の魔獣調査を依頼したパーティーにまとわりついてた奴らだ。行くぞ」

 ボランドリーさんとニガッテさんが救助に駆け出す。

「リエッタさんは、エルガさんを守って魔導車へ。僕も救助に向かいます」

 僕はそういい捨てると、ボランドリーさんの後を追った。

 どうもこの性格、無理しても何かと頑張っちゃうこの性格は治らないようだ。


「ブルーゲイルはどうした」

「まだ、一番近くの水飲み場だ」

 ブルーゲイルが魔獣調査を依頼したパーティー名なんだろう。

 ボランドリーさんの質問に、逃げ出してきた冒険者が答える。

 リエッタさんへ出された魔獣カウントの依頼。ホイポイ・ベータを作成することになった依頼を受けた冒険者パーティーに付きまとっていたってどういうことだろう。


 筋肉質でがっしりとしたボランドリーさんは一瞬僕を見て顔をしかめたけど、ボティス密林に入っていく。

 同様に筋肉質でがっしりとした三本角のニガッテさんと、僕が続く。


 ボティス密林の内部は湿度が高くムッとした。まるで熱帯のジャングルのようだ。……まあ、熱帯のジャングルなんて知らないけどきっとこんな感じだろう。


 獣道のような草をかき分け、踏み潰されたような道を進んでいく。

 うっそうとした茂みがあったかと思うと、ぬかるんだ地面もあって、獣道は右に左へと蛇行する。

 僕を含め、ボランドリーさんとニガッテさんも隠形系のスキル持ちのようだ。

 途中、ゴブリン六匹の群れを三人で倒した。

 そのうちの一匹は水魔法を使うブルーゴブリンだった。


「もうすぐそこだ」

 ボランドリーさんが教えてくれた。

 レーダーを伸ばすと、確かに池のようなものがある。

 小川もあるようだ。


「ボランドリーさん、体長二.四メル、翼端の幅が六.七メルほどのプテランがいます。強さは“57”~“63”前後」

 自分より強い魔獣の看破には幅がある。

 開けた場所に池、そして翼竜のようなプテランを捉えた。やや大きめだ。

 鳥魔獣補正で強さを一.二倍から一.五倍とすると驚異的な強さだ。


「そのプテランが、体長約二.五メルのレッドキャップベア四匹と戦ってるのかな?

 四匹の強さはともに“55”前後…なんか動いて無さそうな」

 レッドキャップベア、頭に真っ赤なとさかが付いたグリズリーのような凶暴熊魔獣だ。身体魔法による強靭な体。腕力が非常に強く、火魔法に混乱の雄たけびと攻撃は多彩だ。

 ボティス密林へ入るには最低でもランクDの高位の冒険者――自己責任だから強制ではない――。強さでいったら“45”程度とされている。

 それからいったらプテランとレッドキャップベアはかなり強い。


 ボランドリーさんとニガッテさんの方が強差的には上や同格だとしても、空飛ぶ魔獣は数値以上に強いっていうから、ボランドリーさんでも勝てるとは限らない。


 レーダーを前方に向けて振り回す。

「あとは、生存者もいます。

 池の中には泥ワニ(マッドアリゲーター)が五匹」

 マッドアリゲーターの強さは“35”前後。

 強靭な鎧のような皮膚、毒を含んだ粘性の泥水をぶちまけてくる。かむ力も強い。


「お前は帰れ、いや、この辺で隠れていろ」

「え、僕……了解です」

 一人で密林を戻すわけにもいかないって誰でも思うよね。

 それと救出の手伝いを申し入れようとしたら、ギロリとにらまれてしまった。


「ニガッテ、守ってやれ」

 ニガッテさんがうなずく。

 ボランドリーが密林の中を移動して、視界が開けた場所、岩の陰で身をひそめ、様子をうかがう。

 僕とニガッテさんも付いてきたけど文句は言われなかった。


「生きてる人は、手前の白い鎧と、こっちから見てその左手の女性です」

 倒れている冒険者は五人で、息があるのはそのうちの二人。

 僕がレーダーの結果を伝える。

 プテランは少々離れた折れた大木の幹の上で翼を休めている。

 レッドキャップベアはチョット密林に入った空き地、草の上で寝転んでいる。

 手間の池ではマッドアリゲーターが死体をむさぼっている。

 いつ二人が襲われるか分かったものじゃない。

 周囲の木々がなぎ倒され、地面がえぐれている、かなりの戦闘だったとうかがえる。

 ことによったらプテランとレッドキャップベアは満ぷ……。オエーッ、変な想像が頭をよぎった。…戻さなかったけど。


「ああ、そうか」

 ボランドリーさんが不機嫌そうに、ぶっきら棒に答え、そして思案する。


「黒い霧で目隠しをしましょうか」

「これだけの範囲を覆えるのか」

「わかりませんが、ある程度はできると思います」

「それじゃあ、やってくれ。それと、くれぐれもここから動くんじゃねーぞ。いいな」

「は、はい」

 隠形と情報操作の認識阻害は発動中だ。周囲を確認しても大丈夫そうだ。

「うまくいったらニガッテ、一人頼む」

「了解」

 どうやらニガッテさんは無口のようだ。


<ダークネスフォグ>…<ウインド>…<ダークネスフォグ>…<ダークネスフォグ>…<ダークネスフォグ>…<ウインド>

 右手から出した大黒霧(ダークネスフォグ)を、左手のウインドで池の方にどんどん流していく。

 ダークネスフォグは闇魔法のレベル2、ウインドウは風魔法のレベル1と使用魔法量は少なくて済む。

 まだまだ、いくらでも黒い霧の発生機として活動可能だ。

 …<ウインド>…<ダークネスフォグ>…<ダークネスフォグ>…<ウインド>…<ダークネスフォグ>…<ダークネスフォグ>


「行くぞ」

 ボランドリーさんがニガッテさんを引き連れ、救出に向かう。隠形を使ってひそやかに。

 僕は製造機のまま、様子見しながらダークネスフォグとウインドを放っていく。


 ドドドド…の地響きに、しまった、と思って黒銀蒼を持って振り向く。

 血の匂いで引き寄せられたのか、レーダー外から駆けつけてきたようだ。


 ボランドリーさんとニガッテさんに注意を向け過ぎていた。

 並列思考のおかげで、何とか飛び掛かってくる魔獣を回避する。

 ボカンと岩を破壊したのはメガホッグへのなりかけか。

 レーダーで確認できたのはデミメガホッグと種属のみ、強さを確認するユトリは無い。

 強い魔獣は看破するまでに、それなりに集中と時間が掛かる。

 メガホッグは体長三メル以上、体重も一.五トン、下手をすると二トンもあるイノシシ魔獣。ブラックメガホッグやレッドメガホッグなどの亜種がある。

 デミメガホッグはその小型版だが体長は二.二メル前後、体重も六~八〇〇キロ前後と、それでも巨漢だ。

 威嚇に衝撃波、灼熱や身体強化とそれらすべてを持っているわけじゃないが、メガホッグ特有の身体強化によく似た特殊スキルの超重クラッシュや牙攻撃は全てのメガホッグが持っている。

 全て本の知識だ。


<ステップ>

 デミメガホッグを確認しながらも、密林の中、空中へ駆け上がる。

 スカイウォークよりステップの方が発動時間が短いから、このような時には重宝する。


 気絶した二人を抱きかかえたボランドリーさんとニガッテさんの動きが止まる。

 プテラン、レッドキャップベア、マッドアリゲーターもこちらに気付いたようだ。

 ただ救いなのはプテランとレッドキャップベアは気が無いみたいだ。


 まずい、僕を見失ったデミメガホッグが二人に気付いた。

<ストーンバレット>

 デミメガホッグに石の雨を降らせる。

 これでボランドリーさんとニガッテさんの退避する時間が稼げる。


 一旦注意を向けたプテラン、レッドキャップベアは、また休んだようで動きは無い。

 ボランドリーさんやニガッテさんに、または僕の方へとマッドアリゲーターが向かってくるが、動作が鈍いからあいつらは大丈夫だろう。


 それよりストーンバレットをものともしない、怒ったデミメガホッグが僕を見上げる。

 口が開き、ブホーーン、と威嚇の雄たけび。

 僕のいた場所の空気が振動する。


 それとほぼ同時に<ステップ>で回避。

 密林の奥に駆け込む。

 その僕を、ブホーーン、ドドドド…とデミメガホッグが追いかけてくる。早い。

 空中を走る僕は、蔦や枝が邪魔してうまく逃げられない。

 その辺の樹の枝に逃げても、樹の根元からへし折られそうで、恐くて無理だ。

 ブホーン、またもや威嚇の雄たけび。

<ステップ>で回避。

 避けきれず、クラッとめまいがする。

 太い樹の後ろで一旦深呼吸してめまいを払う。

 ブフォブフォ…、ドンとの音で、<ステップ>で退避。

 (やぶ)を見つけ、その後ろを通り越して、<ステップ>で別の樹の後ろに隠れる。


 デミメガホッグの、ブフォブフォ、の鼻息が荒い。興奮が収まらないようだ。

 レーダーで周辺を確認。

 池が確認できて、大体の場所を理解する。

 ボランドリーさんたちを発見、少し向こうの茂みの陰に隠れている。

 このままデミメガホッグを引き連れていくわけにもいかないし、下手をすればボランドリーさんたちがデミメガホッグに発見される可能性もある。

 頑張るかと、自分を奮起させる。


 プテラン、レッドキャップベアは相変わらずだ。

 マッドアリゲーターは死体に戻ったようだ。

 それと死肉漁りか、不気味な鳴き声を上げる鳥魔獣のハゲワッシの群れが飛んできた。

 臭いそうで誰も狩らない鳥魔獣で、森を好むらしい。

 周囲の確認を行ってから行動に出る。


<アドヒジョンウォール>……<アドヒジョンウォール>……<アドヒジョンウォール>

 背中に粘着壁を三枚出し、ガンと音を出す。

 気づいたデミメガホッグが、ブホーーン、ドドドドと地響きを立て、突撃してくる。

<ステップ>

 タイミングを見計らって真上に駆け上がる。が、首を振り回したデミメガホッグの牙が足をかする。

 痛みに耐え、アドヒジョンウォールに突っ込んで食度が落ちたデミメガホッグに、

<アドヒジョンシート>……<アドヒジョンシート>……<アドヒジョンシート>……<アドヒジョンシート>……<アドヒジョンシート>……<アドヒジョンシート>

 粘着シートを次々とかけていく。

 すべてイメージ文字(マクロ)かした強化魔法だ。


 できれば顔に掛けて窒息させたいが、ブホーーン、と雄たけびでシートに穴が開いてしまう。

 それでも暴れまくるデミメガホッグの身動きはかなり制限できた。

 黒銀槍の槍先に、

<補助:風魔法Ⅲ><超音波(ウルトラソニック)

 と補助魔法で高周波ブレードにして、デミメガホッグの首を貫き通す。

 もがくデミメガホッグに追撃。

特大粘着球(メガアドヒジョン)>を顔めがけて放つ。

 今度は声を出せないから、窒息するはずだ。

 黒銀槍はそのままに、弱ったところを高周波ブレードにした銀蒼輝で脳天を突き刺して何とか倒した。

 リバイブキャンディーを三個口に放り込んで、リバイブウォーターも飲むと一息つけた。


<ハイパーヒーリング>

 牙にかすられた足を治療すして、足の様子を確認するが、鈍い痛みは若干残っているが特に問題なし。


 急いでデミメガホッグの首を落として、<ハイコールド>で冷やして、固めて、うん、冷凍はダメだ。

 体をアイテムボックスに収納。頭は小さなリュック(フェイクバッグ)に放り込む。

 そう、大きすぎてというより、重すぎてアイテムボックスに入りきらなかった緊急処置だ。

 もう一度リバイブキャンディーをリバイブウォーターで流し込む。


 注意深く周囲を確認して、ボランドリーさんたちのところに駆けつける。

「怪我はしてなさ…そうだな。何とか()けたか」

「はい」

 そういうことにしておこう。

 どうやらボランドリーさんとニガッテさんは索敵系は苦手なようだ。


「チョットいいですか」

「ああ」

「<生命強化>……<ハイパーヒーリング>……<生命強化>……<ハイパーヒーリング>」

 ボランドリーさんとニガッテさんが抱きかかえる二人に光魔法を掛ける。

 魔法は残しておきたいし、これ以上は戻ってからだ。


「ありがとうな、まだ魔法は使えるか、気持ち悪くなったりはしねーか」

「ええ、大丈夫です」

「たいしたもんだ、じゃ、戻るぞ」

 何人亡くなったか不明だが、遺品の回数は現時点では不可能だ。

 レーダーを使いながらララ草原に戻る。

 途中、岩の陰に隠れるように気絶していた冒険者一人を追加で救助。

「<生命強化>……<ハイパーヒーリング>」

 光魔法も同様に掛けた。


 途中ゴブリン八匹、内二匹がカラーゴブリンを僕が三分の二、残りをボランドリーさんが屠った。

 ニガッテさんはボランドリーさんからおんぶに抱っこの二人を押し付けられ、冒険者三人の防御をする羽目になった。


 途中から保護した一人、男性が自分で歩いてくれたとはいえ、ララ草原に戻る頃には、あたりは薄暗くなっていた。

 ララ草原に出て、冒険者ギルドのカムフラージュした魔導車まで戻ってくると、みんなが待っていてくれた。

 そして、みんなから、ホッと安堵のため息が漏れた。


  ◇ ◇ ◇


 ホイポイ・ベータをララ草原に設置した翌日の、一月二一日黄曜日。

 ノルンバック家というより、ノルンバック・ウインダムス魔獣対策魔道具研究所を冒険者ギルドのボランドリーさんと有角人のニガッテさんが訪ねてきた。

「ボティス密林の魔素が活性化していることは、強力な魔獣が出現していることでも明白だ。

 ホイポイ・ベータの検証は進めていくが、本番用に魔獣検出装置もそう早急に作成してくれ」

 エルガさん、マールさん、そして僕が(うけたまわ)った。

 所長がエルガさんで副所長がマールさんと僕だから。一応僕にも権限があるってことで。


 ボランドリーさんからいくつかの報告も聞いた。

 助けた冒険者の三人は、入院しているものの回復に向かっているそうだ。

 魔獣監視にボティス密林へ赴いた冒険者パーティーのブルーゲイルは六人パーティーだった。

 それに勝手に同行するように狩り赴いたのが二パーティーの一二人だったそうだ。

 二パーティーはそれぞれ魔獣に追われ、魔獣監視パーティーを巻き込んでの戦闘になった。

 逃げ出して助かったのが七人で、救助したのが三人と、何とも凄惨な話だ。

 助かったのが魔獣監視パーティー(ブルーゲイル)が二人で、あとはそれぞれのパーティーで四人と三人だ。


 救助に当たったランクCで構成されたブルーゲイルが壊滅状態だ。

 勝手に同行した二パーティーは、他パーティーの活動妨害及びトレイン行為、ブルーゲイルの四人の死亡保障に二人の活動補償と厳しい裁定が下されるそうだ。


 厳しい世界、そして厳しくしなければ生きていけない世界だと改めて思い知った。


 気持ち的に救いだったのは、マッドアリゲーターから救った二人がブルーゲイルのメンバーだったことだ。

 ボランドリーさんの予想だと、膨大な保証金が払えなければ――まあ、払えないそうだ――戦闘ができる冒険者として最悪終身奴隷の警備兵になるんじゃないかってことだ。


 その他に、冒険者で誘拐犯四人の懸賞金――奴隷落ちの販売金――の冒険者カードへの振り込みが完了したそうだ。

 誘拐犯四人でおおよそ一万五千SH(シェル)、日本円で七五万ほどだ。

 安い(やっす)、と思ったけど、犯罪終身奴隷は使い捨て。バルハライドではこんな値段だそうだ。

 ちなみに我が家に誘拐犯が侵入した時に、捕縛のために開けた、空き部屋のドアの穴の修理代――錬金魔法の木変成では修理できなかった――を払おうとしたが、お前が家族を守ったんだ、と受け取ってもらえなかった。

 エルガさんの連絡もあって捕縛できたんだからと、二人分の半分をエルガさんは嬉しそうに金を受け取ってくれた。

 この差ってナンだ! なんてちっとも、そう、ちっとも思わなかったんだから。


「あのー、買い取ってほしいものがあるんですが」

 全ての話が終わったので、僕はお願いをすることにした。

「なんだ」

「肉を引き取っていただきたいんですが」

「ほう、昨日狩った魔獣か。確かゴブリンと兎に、昆虫系だけだったんじゃなかったか」

 へー、よく覚えてるもんだ。

「もう一つあるんですよ」

 よいしょと、持ち歩いているフェイクバッグからデミメガホッグの凍った頭を取り出す。

「これの半身の肉が在りまして」

 そう、デミメガホッグの肉の量が半端なく多く。リンドバーグ叔父さんから自分で売って来いと言われてしまった。

 ちなみに毛皮はリンドバーグ叔父に引き取ってもらったので、正味半身の肉だけと、頭というか牙が価値があるらしいのだが、頭の肉と毛皮となる。

「ちょ、ちょっとオマエ、こ、これって昨日の……」

「はい、デミメガホッグです。実はチョット頑張っちゃいまして、てへっ」

 頭を抱えるボランドリーさん。

 さすがにニガッテさんも目を剥いている。


 チョットついてこい、ということで僕だけでなくエルガさんとリエッタさんも冒険者ギルドに連行された。


 エルガさんとリエッタさんが若手冒険者とされるD級冒険者(ランクD)で青カードに、僕が駆け出しとされるE級冒険者(ランクE)の赤いカードになってしまった。

 ちなみにエルガさんの【基礎能力】の総合は“30”と若干、まあ、かなり低めだが、ギルド貢献度が高いということだそうだ。


 そして買取り。

 ボランドリーさんとニガッテさんが一緒だったので、ノルンバック・ウインダムス魔獣対策魔道具研究所(N・W魔研)の自宅で所内価格で処理できない。

 全て冒険者ギルドにお任せした。

 デミメガホッグの半身の肉約ニ七〇キロが税金とギルド費用の三分の一を取られて、四三二SH(シェル)で、牙やその他が八五SHとなった。

 日本円にすると五百円をかければいいのだから、合計二五万八五百円となる。

 バルハライドでは、魔獣が跋扈(ばっこ)しているため、切り開いた土地は農地が多い。牧畜は騎乗用の馬やトリケランなどを飼育する方が優先される。

 鶏の飼育で卵はある程度で回っているが、食肉はもっぱら冒険者による狩りによるところが大きい。

 かといって希少なデミメガホッグの肉でも一キロ、一SH六〇CP(八〇〇円)と格安だ。

 マッドバニーなどだと一キロ、八〇CP程度となって四〇〇円だ。


 自由共和国マリオンでは衣食住の内、食費というより食材がメチャクチャ安く、部屋代もかなり安い。

 衣類と学習用品の本・筆記用具はかなり高いし、武器や防具などの日本では考えられないものも必要となる。

 それらを平均すると一SHが五〇〇円と見ている。

 ただし学習用品は例外で、七才から一一才までの初等学校は安く設定されているし支援制度がある。

 上級学校になると支援制度に奨学金制度もあって、良好な学習環境もまた自由共和国マリオンには存在する。


 一月二一日黄曜日の午後。

 冒険者ギルドは、ボティス密林に入るには【基礎能力】の総合値が“40”以上を推奨すると発表した。

 ボティス密林内の依頼も、場合によっては判定石による確認も行うことも併せて発表された。


  ◇ ◇ ◇


 セージは時空魔法がレベル7となって、テレポートの練習を開始した。

 時空魔法のレベル7のテレポートは、テレポートできるのは自分一人だけ。

 目標は、行ったことがある場所か見える場所。

 最大距離は一〇〇メルと距離も短い。

 それでもワクワクした。


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【セージスタ・ノルンバック】

 種族:人族

 性別:男

 年齢:5


【基礎能力】

 総合:48

 体力:71

 魔法:175


【魔法スキル】

 魔法核:7 魔法回路:7

 生活魔法:3 火魔法:6 水魔法:6 土魔法:5 風魔法:7 光魔法:6 闇魔法:5 時空魔法:7 身体魔法:5 錬金魔法:6 付与魔法:6 補助魔法:5


【体技スキル】

 剣技:5 短剣:2 刀:5 水泳:2 槍技:4 刺突:2


【特殊スキル】

 鑑定:3 看破:3 魔力眼:3 情報操作:3 記憶強化:3 速読:2 隠形:2 魔素感知:3 空間認識:2 並列思考:2


【耐性スキル】

 水魔法:4 風魔法:5 光魔法:4 魔法:3 幻惑:1 全毒:1 神経毒:2 斬撃:1 打撃:1 刺突:1


【成長スキル】

 基礎能力経験値2.14倍 スキル経験値2.14倍

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 情報操作もレベル3となって、偽装パネルも四〇枚に増えたが、特殊な利用価値が思いつかない。暇があったら考えようと思うが、現状は魔法回路の予備だ。

 現在は余っているけど、イメージ文字(マクロ)の作成で不足が考えられるからだ。

 うれしかったのが、色々なことに認識阻害の効果が発生しだしたことだ。


 個人情報(偽)も自分なりに考えて以下のようになった。

 もちろん、ボティス密林に行けることを想定してだ。

 見る人が見れば、アイテムボックスの容量も違うし、戦闘中に明らかにレベル6以上魔法は使うし、補助魔法は使うし、とバレバレだが、ある意味この辺でいいやって投げやり気味に決めたものだ。


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【セージスタ・ノルンバック】(偽)

 種族:人族

 性別:男

 年齢:5


【基礎能力】

 総合:40

 体力:60

 魔法:112


【魔法スキル】

 魔法核:5 魔法回路:5

 生活魔法:1 火魔法:3 水魔法:3 土魔法:4 風魔法:5 身体魔法:3 光魔法:5 時空魔法:5


【体技スキル】

 剣技:3 短剣:1 刀:3 槍技:3 水泳:1


【耐性スキル】

 水魔法:1 土魔法:1 風魔法:2 光魔法:1 時空魔法:2


【特殊スキル】

 鑑定:1 看破:1 魔素感知:1

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 セージが偽装パネルが判定石にも効果があることを知るのは、かなり後のことである。


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