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次元災害で異世界へ  作者: 真草康
魔獣監視装置 試作品編
55/181

53. ボティス密林へ


 一月六日黒曜日から八日青曜日まで、モモガン森林に狩りに行っていて帰宅したばかりだ。

 なのに「さあ、セージ君、早速ですがこれにパパッと付与してください」とエルガさんが魔石を持って詰め寄ってくる。


「ちょっと待って、落ち着いてやらないと効果が落ちるから」

 僕はノカッサとフーベをつかまえた後、ポラッタ夫妻から効果が高い付与方法を教えてもらった。


 付与魔法は魔力マシマシで付与すると、性能はよくなるが運用魔法量が増えてしまう。

 それよりも一〇〇%の付与を意識しながらも、自分の持てる八〇%程度の付与魔法を安定して付与し続ける。

 その結果一〇〇%の付与ができたと思ったところから、更に安定して付与を続けると、効果も高く、また運用魔法量も少ない魔石ができる。

 時間はかかるが実際にやってみると本当のことだった。

 難しいのは安定したイメージ、そしてブレずに安定して、一定の魔法力で付与魔法を掛け続けることだ。


 エルガさんは本チャン用――実際は試作機だそうだが、それでも本チャンと変わらないものだそうだが――にレーダー魔石用の大きな魔石を三個用意したいそうだ。

 その他には魔石レンズ用の小さな魔石が一八個。

 もちろん付与前の魔石の供給元は冒険者ギルドマスターだ。


 ジュースやお菓子を持って自室に入る。

 エルガさんが面白がって作った“面会謝絶”の札を下げてだ。


 ジュースやお菓子で一息ついてまずは、レーダー魔石の付与を行う。

 以前はただ単に付与していた時には、一個概ね二分程度だった時間が、一〇分程度掛かるようになった。

 精神集中もその間持続しないといけないから、かなり大変だ。

 慣れればもうチョット短縮できそうな気もする。


 何度か準備期間で試してきたけど、僕には並列思考があるからか、ポラッタ夫妻に教えてもらったやり方を行うと、聞いた効果より高い結果を得られている。

 今までは効果が良くて四〇%程度だったものが、五〇%程度までアップした。

 維持魔法量も減少して効率も良くなった。


 まずは一個目。

<付与:スキル付与Ⅲ><空間認識:Ⅲ><付与:スキル付与Ⅲ><看破:Ⅲ><付与:スキル付与Ⅱ><鑑定:Ⅱ><付与:スキル付与Ⅲ><情報操作:Ⅲ><付与:イメージ付与><認識阻害><付与:錬金魔法Ⅱ><定着>


 四つのスキルと、一つのイメージを重ね掛けするのに、合計一二枚の魔法陣を重ねることになる。


 スキル付与:Ⅲが付与魔法レベル5の魔法で、スキルの付与発動と合計で必要魔法量は“10”となる。

 最後の“見つかりにくくなるよう”は“情報操作:Ⅲ”の機能の発動用だ。

 必要魔法量の総合計は継続中の魔法量も考えると“70”をチョット超すほどで、膨大なものになる。

 マルナ先生のような魔法タイプの一流冒険者(ランクC)の魔法量が“140”程度とされている。


 ちなみに上級魔法学校卒業生の魔法量は“50”前後程度で、それより多少高い程度の一般の付与魔法技術者だと下手したら付与できない魔法量だ。


 モモガン森林から帰宅する魔導車の中でぐっすると眠った僕の魔法量は“166”まで増えているから二回までは大丈夫だ。


 集中して付与をする。


 さすがにこれだけの重ね掛け、出来上がったのが一一分後だった。

 レーダー魔石は、僕の球形空間認識の半径二八メルに対して、半径一五メルと満足のいくものだった。

 運用魔法量は魔法力を込めて、持続時間を確認しないといけないけど、少なそうな感じだ。


 一旦長めに休憩して、二個目、それも一個目と似たようなものでOKだ。


 同一性能と思うと緊張したんだよ。

 チョットへばり気味。


 リバイブキャンディー三個を頬張り、しばらく休憩して魔法の回復に努める。

 その後はユックリとくつろいで、精神疲労の回復も行う。


 三個の魔石にレーダーを付与し終えるのには、夕食も挟んで計二時間半掛かった。


 僕は普通の人ってのはおかしいけど、一般の魔法付与者――レベルは様々で一概では言えないが――の付与時間の三分の一から五分の一程度の時間で付与できるみたいだ。

 魔法の威力も高めだし、【成長スキル】の基礎能力経験値2.14倍や、スキル経験値2.14倍にしてもスキルアップや取得が早いし、魔法量の枯渇でも軽く気持ちが悪くなる程度で気絶もしない。

 ヤッパ異世界転生者の恩恵じゃないかとここ最近常々思っている。

 一〇才で目覚めるところを、五才で目覚めてしまって現在の僕があるのだが、まあ、いいことなんだと思うようにはしているが、ズルしてるみたいで気が引けるときもある。


 あと、気になるのが仲間となるべき約束をした女性だ。あ、今は女の子か。

 少なくとも魔法の才能が有ることは大前提だと思っている。

 魂魄管理者(女神様)(げん)だと、お互いが三年以内に生まれるはずだから最有力はミクちゃんだ。

 魔法や取得の速さは転生者を思わせるが、現在はその気配すら感じない。

 下手に話して“記憶バン”ってなったら目も当てられない。


 ここにきて二才年上だけどモーラナちゃん、同い年のライカちゃんとも出会った。

 魔法付与士の夫婦の子供だけあって二人とも魔法スキル持ちだ。

 三才上だとするとミリア姉やロビンちゃんまで入る。


 ヤッパ、相手が一〇才になって記憶を取り戻さないとダメってことなのか。それともまだ身近にいて出会っていないだけなのか。


 魔石レンズの付与は、

<付与:イメージ付与:Ⅴ><視覚><付与:スキル付与Ⅲ><情報操作:Ⅲ><付与:イメージ付与><認識阻害><付与:錬金魔法Ⅱ><定着>

 だけと少なくて済む。


 僕が作成した方が性能が良いそうだ。

 時間も一回七、八分とやや短くて済んだ。慣れたのかな?

 三個ほど付与して、あとは明日だと思って、魔法の練習とイメージ文字(マクロ)を作って眠った。


 ちなみに魔法を電気エネルギー的に変換する魔石が熱電魔石で、その電気エネルギーを保存する魔石が充魔電石で、単なる魔法エネルギーを保存する魔石が充魔石だ。

 エルガさんには熱電魔石と充魔電石の作成も依頼したいんだけど、と言われているが製造方法を調査中なんだけど不明なんだそうだ。

「ねえ、この二つの魔石って魔電装置マジカルボルテックスの核になる魔石じゃないの?」って聞いたら、他にもマジカルボルテックス本体の制御用の核魔石、魔電を流し制御する伝導魔石、魔素を吸収して熱魔法に変換する熱魔石などがそろって初めてマジカルボルテックスと言えるんだそうだ。


 吸魔アンテナで魔素を吸収し、一旦熱魔石で熱エネルギーに変換、その熱を熱電魔石で魔電エネルギー変換してから、充魔電石で魔電エネルギーを保存する。

 今回は上記の一連の流れの魔電エネルギーを蓄える充魔電の部分だけでもと、自作を目指したいんだそうだ。


  ◇ ◇ ◇


 一月一二日黒曜日。

 パパは中央議会に、ママはオルジ兄の入学の付きそい兼引っ越しに、ブルン兄は新学期に向けてマリオン市に向けて出発する日だ。

 最速の陸路からの船旅で、急いで四日ほどで着く。

 荷物は別便で発送済みだ。

 警備はいつものホーホリー夫妻(ガーランドさんとマルナ先生)だ。


 オルジ兄には入学祝に、ブルン兄にも冒険者を目指してということでフェイクバッグを贈った。魔法量が少ないからアイテムボックスⅠを付与した一番小さな奴だけど、とても喜んでくれた。


 ポラッタ夫妻伝授の技法で作成したフェイクバッグの性能はよく、時空魔法レベル4のアイテムボックスⅠの容量が一〇〇個、四〇キロ、二メル四方となるが、そのアイテムボックスを付与すると六〇個、二二キロ、一.六メル四方となった。

 以前にパパやママに贈ったフェイクバッグが四〇個、一五キロ、一.二メル四方だったから四割から五割り増しってところだ。

 維持魔法量も一日で“5”で、一回の出し入れで“0.25”と微妙に減った。

 これなら魔法量の少ないオルジ兄でも使えそうだ。

 ちなみにママのフェイクバッグは付与し直して、パパから執事のドルホさんに譲ったフェイクバッグはそのままだ。

 エルガさんリエッタさん、ホーホリー夫妻に贈ったフェイクバッグも付与しなおした。

 喜ばれたけど、自分の付与魔法の練習だとは言いづらかった。


 予定では一月一九日赤曜日が、上級魔法学校の始業式で、パパの出席する議会が開始される。

 オーラン市からはウインダムス議員も出席するし、時空電話(ディスタンスフォン)による出席もされる。いつもパパが行なっていたことだ。

 一月二〇日青曜日が入学式で、オルジ兄も晴れてマリオン上級魔法学校生となる。

 ママはマルナ先生と一緒にとんぼ返りで、パパはガーランドさんと二週間ほどマリオン市にとどまる。


 ちなみに一月一三日赤曜日がオーラン魔法学校の始業式で、ミリア姉は元気に登校していった。


  ◇ ◇ ◇


 一月一八日青曜日、魔獣監視試作機ホイポイ・ベータのⅠ、Ⅱ、Ⅲ号機が完成した。

 ネーミングそのまんまかよ。

 突っ込みどころ間満載で、

「チョット可笑しくない?」

「成功した時の縁起が良い名前だし、カッコイイ名前だよ」

 まあ、……棚上げ、じゃない、妥協だな。

「うん、そうやって聞くと素敵だね……」


 パパやママに兄たちがマリオン市に出かける直前から僕は魔法付与を盛大に続けている。

「セージ君、ここお願い」「これお願い」などのエルガさんの丸投げ依頼に、

「はーい」と下請け業者になって頑張ている。

 おかげでホイポイ・ベータの構造には随分通じて、おかげで魔電装置(マジカルボルテックス)もある程度理解できるようになった。


「難しい付与をセージ君にやってもらったから、予定より早く完成したよ」

 朱色のぼさぼさ髪に、真っ赤なメガネのどや顔。大きな胸を張って、言葉とは裏腹に、自分をほめたたえなさいって体中が訴えている。

 うん、ボヨーーンは素敵ですって褒めちゃいたい。


 冒険者ギルドマスターとの打ち合わせで、ホイポイ・ベータは概ね四時間の索敵(レーダー)や写真撮影、概ね六時間の魔充電のサイクルを繰り返して動作する。

 記録魔石(レコーダーコア)画像記録魔石(ピクチャーコア)を二〇個づつ持って、サイクリックに記録していく。

 レコーダーコアやピクチャーコアの記録が上手くいかないときには、飛び越えて動作するようにもなっている。

 概ね八日間、一週間と二日分の記録が取れるから、レコーダーコアやピクチャーコアがそれぞれ二個づつ壊れても、一週間は記録が可能だ。

 そしてレコーダーコアとピクチャーコアが詰まったユニットが、メモリーパッケージで、ユニットパッケージは交換可能だ。

 ただレコーダーコアとピクチャーコアの補充が無く、メモリーパッケージの交換パッケージは補充待ちで、未作成だ。

 これだと昼夜問わず記録すことになるけど、当初の予定の一日八時間動作よりも、多彩な情報を得られて良いのだそうだ。


 ホーホリー夫妻がいないし、エルガさんがこもりっきりなのため、狩りは時たまリエッタさんと、そしてミクちゃんとレイベさんが付きあってくれて、ララ草原で遊んでいる。

 遊ぶっていっても、気を抜くようなことはしないし、ミクちゃんを鍛えるのも面白い。

 食材集めなども楽しいひと時だ。

 まあ、ミクちゃんが頑張って疲れちゃうから二、三時間ほどで終了するんだけど。


 図書館に行って調べ物も欠かさないようにしている。


 あと、ホイポイ・ベータの作成が佳境ってこともあって、僕がウインダムス邸に行くことはなくなって、僕の家に毎日のようにミクちゃんが通ってきていた。

 たまにライカちゃんも笑顔で遊びに来る。

 入院していたお兄ちゃんもずいぶん元気になって、オーラン魔法学校の最上級生の五年生として通っていて、三年生になったモーラナちゃんも笑いながら通学しているそうだ。


 それと魔獣を倒して自信を付けた所為なのか、ライカちゃんという友達が増えたからなのか、引っ込み思案なミクちゃんがかなり積極的になってきている。


 午後にマールさんに付き合ってもらって、冒険者ギルドマスターのボランドリーさんを呼びだして、ノルンバック家でホイポイ・ベータの最終確認と最終打ち合わせを行った。


 ホイポイ・ベータは直径二.三メルの円形の地下土台に、高さ三〇センチメル、直径八〇センチメルほどの上部土台メインボックスやメモリーパッケージが乘り、太さ三〇センチメル、高さ一.二メルの観測用のレーダー魔石や魔石レンズが組み込まれた偽装樹木となっている。

 平たい円形トレーにホールのケーキが乗って、真ん中に太いローソクが立っているといったような構造だ。

 ちなみに壊れやすい吸魔アンテナは地下土台の周囲の羽部分で、ある程度は曲がっても大丈夫な構造だ。

 地下土台の中央部分に魔充電装置(ボルテックスチャージ)の本体が収納されているため、中央部がポッコリと下方に膨らんでいる。

 そして、上部土台の真ん中あたりまで地中に埋められる。

 魔充電率は多少落ちるが、安全性重視だ。

 魔充電が落ちればサイクリックが短くなるが、それはそれで少ない記録データを解析するだけだ。

 その出来もボランドリーさんにも見てもらうが、どう見ても今一歩なのは致し方ない。これからの改善項目だ。


 ホイポイ・ベータはまずは、ララ草原で一か月間の稼働実験を行うことになった。


  ◇ ◇ ◇


 一月二〇日緑曜日。

 マリオン上級魔法学校では入学式の真っ最中だろう。


 僕はボランドリーさんと冒険者ギルドの保安部長のニガッテさんと一緒にララ草原、それもボティス密林の近く、またも強化マダラニシキヘビと戦った場所付近だ。

 目的はホイポイ・ベータの設置だ。


 ニガッテさんはボランドリーさんと一緒にこれからホイポイ・ベータを検証していく、要は検査官のような人だ。

 三〇才ほどの、自信のありそうな表情に態度。ガッシリした体格と、いかにも冒険者って感じだ。太目で長い槍を手にしている。そして有角人で、三本の角が頭にある。

 有角人は筋肉質で頑健だ。肌の色は日焼けしたかのように赤みを帯びて浅黒い。

 ちなみにボランドリーさんは、その有角人のニガッテさんに負けてない。


 ボランドリーさんの武器は両手剣(グレートソード)で、ニガッテさんもそうだけど、両手のガントレットがいかにもって感じだ。

 防具は二人とも黒ミスリルという熱を持ちにくい素材のチェーンメイルを下に着て、キチン質で強化された皮鎧だ。

 黒ミスリル、恐るべし。


 ちなみにニガッテさんが三本角ってわかったのは、ヘッドギアに三つの穴が開いていて、そこから角が覗いているからだ。


 亜熱帯のこの地域、メタルアーマーだと熱くなって着れない。

 警備兵も含め、だいたいこのような装備になる。

 鎧の下には黒ミスリルのチェーンメイルはともかくも、鋼線が織り込まれた簡易チェーンシャツや下着で防備を強化する。

 黒ミスリルはヤッパリ高級品でだそうだ。

 黒ミスリルでフルプレートを作れないかを聞いてみたけど、汗で蒸れるんだそうだ。


 あとはエルガさんとリエッタさん、マールさんに護衛のレイベさんだ。

 試作機とはいえ、ノルンバック・ウインダムス魔獣対策魔道具研究所の初めての納品物件となる。

 さすがにボティス密林に近いのでミクちゃんは留守番だ。


<クロッドウォール><フローコントロール>

 特定の場所の土を使うように強くイメージして壁を作り、それを移動する。

<大変形>

 更に錬金魔法の変形魔法で、掘った土の壁を湾曲させる。

 それを三回繰り返すと、壁の中心には大きな穴が出来上がった。

「それ便利だな」

 ボランドリーさんに感心されてしまう。

 キチンナイフで伸びて邪魔な根っこを切り払う。

<成型>

 穴を錬金魔法で成型して整える。

 アイテムボックスを調整して、穴にホイポイ・ベータに出す。

 そしてまたアイテムボックスに仕舞って、穴の状態を確認する。

 それを何度か繰り返してホイポイ・ベータをシッカリと安定させる。


 ホイポイ・ベータ三台とも僕のアイテムボックスに入っているから、全員自分の武器と防具とその他の装備品を持つだけで、あとは手ぶらだ。

 ちなみに重量は一台、一三〇キロほどあるが、時空魔法レベル6、アイテムボックスⅢの容量は、六〇〇個、六四〇キロ、八メル四方、維持魔法量が一日“8”ほど掛かる。

 魔法陣の定義がそうなっているから間違いはない。……のだけれど、魔法力マシマシで作成した僕のアイテムボックスは少し多めに入る。

 ちなみにどれか一つでも制限をオーバーすると収納不可だ。


「動作状態は良好ね」

 エルガさんが動作確認した後、<大変形>を数回行って上部土台の下三分の一程度まで埋める。

 再度エルガさんが動作確認して完了だ。


 それを二〇メル置きに設置して完了だが、三台目が上手く稼働しなかった。

 埋め戻す前のホイポイ・ベータのメンテナンスハッチを開け、メモリーパッケージを抜いて、エルガさんが中の回路を確認する。

 魔法力を流して動作確認もおこなう。

「セージ君、こことここがほら」

 エルガさんが指さす個所は、ケーブルが一本外れかかっていた。

 アイテムボックスとの出し入れで、わずかな高さとはいえ何度も地面に落としたからだろうか。それとも三台目だからって、変な慣れが出て雑に扱っちゃとか。

「了解しました。<変成>…<接続>」

 錬金魔法で、あっという間に修理完了。

 エルガさんが再度動作確認をして、埋め戻して再確認。

 設置の完全完了だ。


「一時間置きに動作確認を行うから、しばらくはここ辺で待機だ」

 予定行動だけど、ボランドリーさんの指示でしばらくホイポイ・ベータから離れて様子見だ。

 できれば魔獣に近づいてほしいもんね。


 記録するデータには一応制限は設けている。

 全データを記録すると記録用の魔石じゃ足りなくなる可能性がある。

 レコーダーコアには種族・強さ・サイズ(身長・体長・体高など)・性別・年齢――人の場合は強さと年齢を記録しない――となっていて、一度記録した魔獣は概ね五分間は除外して、再度記録する。


 隠形やデータの改ざん、隠蔽などのスキルがあった場合は看破や鑑定を無効にされる場合もあるので、その時にはただ単に魔獣と記録される。


 魔石レンズによる映像は周囲六方向を捉えているが、その時の魔獣(人でも)のいる方向の静止画をピクチャーコアに記録する。複数の場合は一番強い魔獣がいる方向となる。


 ただし静止画は写っていない関係もあるので捉えた瞬間、五メル、三メルと一番強い魔獣に焦点を当てて何度か撮影して保存する。

 一応、静止画は記録データの保険な上、保存枚数も限られるので、あまり撮り過ぎないように制限を設けている。

 また、設置した時の環境で、六方向の内、岩や木の障害物で写せない方向は除外するように設定可能だ。

 この辺のことは、実験中に判明した不具合や、冒険者ギルドの意向によるもの、エルガさんやママや僕、それとマールさんの知恵や思いなどで出来上がった仕様だ。


 待機中にプラプラと散歩して狩った魔獣は代わり映えしなかった。

 カラーゴブリンと呼ばれる魔法を使うゴブリン、(ブルー)(イエロー)の二体も含め、ゴブリン系が多かった。


 ニガッテさんにはかなり驚かれたけど、僕の平常運転だから。

「噂には聞いていたが、まさかここまでだったとは」

「強くないとホイポイ・ベータの設置なんてできないじゃないですか」

「ボティス密林にまで行く気か」

「誰が運んで、誰が設置するんですか」

 ボランドリーさんは何故か諦念気味だ。


 今後もゴブリンだけだと気が滅入る。何か変わった魔獣でないかなっと。

 レーダーを思いっきり伸ばしててみるけど、小物ばかりで面白そうな反応が無い。


 そうこうしてると、ボティス密林の方がなんだかざわついてきたような気がする。

 レーダーを最大に引き伸ばしてみても三五〇メル程度。

 ボティス密林にかなり近づいて、なんとか届く距離だが、密林内部までわかるわけもない。

 ただし魔素と負の魔法力の濃密さはモモガン森林とタメを張りそうなことだけは認識できた。


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