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次元災害で異世界へ  作者: 真草康
モモガン森林編
48/181

46. 東のモモガン森林へ 2


 球状と伸長したレーダーで交互に索敵していく。

 薬草・毒草・野草摘みに木の実や果物採取は相変わらずだ。というか、レーダーでかなり取れる。


「クラッシュホッグ発見。右斜め前方約五〇メルです。

 推定強さが“42”~“43”といったところで、体長一.七メルだからやや強めのクラッシュホッグですね」

「クラッシュホッグか。珍しいな」

「ええ、ここあたりの浅い森林部では、通常ダッシュホッグですからね」

 セージの報告に、ホーホリー夫妻が興味深そうに応じる。

「体当たり時に爆発を起こして大きなダメージを食らう。回避するか?」

 水分多めの圧縮空気を体にまとい、体当たり時に熱魔法を一点に集中させて小さいながらも気化爆発を発生させる。

 強力な突進と牙に体も固くて頑丈で、厄介なイノシシ魔獣だ。


「えー……」

 僕はエルガさんやリエッタさんを盗み見る。

「セージ坊ちゃんは戦闘をご所望か。アハハハハ…」

「セージ君が強いのはわかっていますが、本当に良いのですか」

「はい」

 狩りの目的は索敵もあるが、僕の強化にスキルアップを含まれている。

 ただし、僕の強さは“36”だからクラッシュホッグには及ばない。

 でも、ステップを使った上からの攻撃を繰り返せば勝算があると思っている。

 そう、猿魔獣や鳥魔獣に種族補正があるなら、僕だって立体攻撃持ちだ。

 セージ補正があってもいいんじゃないだろうか。

 それと魔獣と戦って強くなることが面白いし、目標でもあるしだ。

 あと一緒に戦闘していて僕の魔法は、威力やコントロールが他の人たちより優れている。とくに発動速度が段違いで、これなら何とかなりそうだって思っちゃったんだ。


 準備としては僕を抜かした、四人に大きな木に登ってもらった。

 四人はレビュテーションやフライが使えるから、それぞれで勝手にだ。


 みんなが登った木とは違う木を背にして銀蒼輝を構える。

<補助:イメージ><切れ味アップ>

 付与魔法で強化している銀蒼輝を、補助魔法で更に強化する。


<身体強化>で気合を入れて、<ウインド>をクラッシュホッグの方に向かって放つ。

 魔力眼をフルに使って相手の魔法を読み取る準備も怠らない。

 ガサガサと藪をかき分け、ドドド…と地響きを立て、ブホーーンて雄たけびのような鳴き声を上げ、クラッシュホッグが突進してくる。


 目の前に迫ったクラッシュホッグは魔法力と魔素を身にまとい身体強化の他に、頭に余剰というかかなりの量の魔力と魔素を集めている。

<ステップ>

 そのクラッシュホッグを真正面から駆け上がって避ける。

 グワン、と大きな音とともに、ボンッと破裂音が響き渡る。

 木の幹が大きくえぐれる。


 僕も風魔法のレベル3のレビュテーションや、レベル6のフライは使えるけど、レビュテーションはそもそも動きが遅いし左右への移動はほとんどできない。

 フライは直線的に飛翔するにはある程度早いが、小回りが利かない。

 高速移動した時には急制動もできなく、森の中じゃ使い勝手が良くない。

 空中戦法には時空魔法のポイントやステップに、更に上位のスカイウォークなどがある。

 起動速度が重要な場面ではステップが使い勝手がいいけど、スカイウォークも使いどころによっては頼りになる。


 僕はステップの上で振り向いてクラッシュホッグの首に銀蒼輝を突き立てようとしたのだが、クラッシュホッグが幹に突き刺さった牙を抜こうとしたのか、首を振ると三〇センチメルほどあった木がメキメキと音を立てて倒れてくる。


<ステップ>

 あぶねー。

 慌てて横に駆けて木を避ける。

 木の下敷きになったクラッシュホッグは何事もなかったように、体を揺すり、木の下から抜け出す。


 みんなから見やすい位置で迎撃を目論んでいたが仕方がない。

 少々離れた場所、太い幹の前で、

<アドヒジョンウォール>

 スパイダーエイプには、いいことを教えてもらったと思いながら水魔法のレベル5、粘着壁を立てる。

 水魔法は水の性質の変化も可能で、ジェルや粘着性を持たせることが可能だ。

 粘着壁アドヒジョンウォールは水魔法でもそこそこ高度な魔法だが、毒性は無いし、スパイダーエイプの粘着液からすれば粘着性も弱い。

 毒性を加えるのなら闇魔法との複合魔法となるが、食用肉となる予定のクラッシュホッグに、毒系の魔法は禁物だ。

 銀蒼輝を構えながら、

<アドヒジョン>

 粘着球で粘着壁を強化する。

 クラッシュホッグが鼻息荒く、ブホーーン、ドドド…と強化した粘着壁に突進してくる。


<ステップ>

 真上に飛び上がるように駆け上がる。

<マルチシールド>

 背中にマルチシールドを張る。

 真下では、ビジョッとこもったような音がした後に、ブワンと、こちらもこもった爆発音。

 周囲やマルチシールドにビチャビチャと粘着液が弾け飛ぶ。


 下を見ると粘着壁が半分ほど吹き飛んでいるが、それでもクラッシュホッグを捉えている。

 ブファッブファッって鼻息が荒い。

 脱出するまでに、それほど時間はかからりそうもない。


 銀蒼輝に魔法力を流し、ステップから飛び降り、暴れるクラッシュホッグの首筋に切れ味アップの銀蒼輝を突き刺す。

 ブヒャーーンと苦しそうな鳴き声を上げる。

 そして<コールド>とクラッシュホッグの体内から凍らせる。

 しばらく暴れたクラッシュホッグは、最後はブルリと体を震わして息絶えた。


 みんなを木から降ろす。

 クラッシュホッグも冷やして、魔獣石を取り出し、邪魔な内臓を捨てアイテムボックスへ入れて終了だ。


  ◇ ◇ ◇


 その後も索敵と狩りを続けると引っかかるものがいた。

 レッドキャット、強さは“36”。火魔法を使う俊敏な真っ赤な猫魔獣だ。体調は一.一メルと猫型魔獣としては中型で、大型にはレオやタイガーなどがいる。

 本による記憶だと火魔法といっても“ファイアークロウ”と“ヒートアタック”の二つが多用されるはずだ。

 防御を固めれべ対応できるものだが、ジャンプ力があって木にも登れるレッドキャットにはポイントとの相性は今一歩だ。


<マルチシールド>

 全員がシールドを張って、

「「<ドリームワールド>」」

「<クロッドバレット>」

 黒霧に岩散弾が炸裂する。

 それを、真っ赤なレッドキャットは“ヒートアタック”で体を高熱にして跳ね返す。


「<メガアドヒジョン><ハイウインド>」

 すかさず第二段の攻撃、特大粘着球をぶつける。

 威力の弱まった“ヒートアタック”を突き破り、レッドキャットの体に粘着液が張り付く。

 一気にレッドキャットの速度が落ちる。


「<メガアドヒジョン><ハイウインド>」

 もう一度特大粘着球を見舞うと、

「<ドリームワールド>」

 リエッタさんから支援の魔法が飛ぶ。不思議なことに、僕よりレベルは高いけど魔法の連射が遅い。

 エルガさんに至ってはまだ魔法力を込めている最中だ。

 そんなことを思いながら、ここだと思って飛び出す。

 最後のあがきか“ファイアークロウ”で反撃してくる。

 だが、様々な魔法攻撃で動きが遅い。

 右側にすり抜けながらレッドキャットの頸動脈を切り裂いた。


  ◇ ◇ ◇


 その後に遭遇した魔獣は枯葉蜘蛛に黄縞毒蜘蛛やデススパイダー、ブラックマウス、ゴブリンと弱いものばかりだった。

 僕はこのままじゃダメだと思って、何度かレーダーに魔法力マシマシで索敵を行った。意識を拡大する感覚も付けてだ。

 思いっきり伸長したレーダーに猿型魔獣のビッグファングアぺが引っかかったが直ぐに索敵外になった。


 狩りを終え、モモガン森林を出る直前。

 今回の目的のレーダーを鍛えるってので、魔法力を込められるだけ込めてのマシマシで索敵(レーダー)を行ったが、特に気になるような魔獣は捉えられなかった。

 データ量に、ちょっとめまいがしてけど、僕自身を鍛えていくしかない。


 エルガさんは魔素と負の魔法力にあてられたからか、ややばて気味だけどモモガン森林に入っていたのは実質半日程度。

 最初に気にしていたほどのことはなかった。


 魔導車でモモガン川沿いの小さな集落の一角で初めての野営(キャンプ)

 ワクワクしながら準備開始。

 まずは魔導車を止めると魔導車の屋根に収納された吸魔アンテナを大きく展開すると、魔充電装置(ボルテックスチャージ)が魔法力の充電を開始する。

 朝にはフル充魔されているはずだ。


 ムカデなどを寄せ付けない除虫オイルを周囲に撒き、除虫線香――もろ蚊取り線香――を周囲四か所に焚く。

 蚊などに刺されない体になっても、食事中の虫はうっとうしい。それと寝ているときもだ。

 ムカデにも噛みつかれない体なのかわざわざ試すつもりは無いので、除虫オイルにはGJを期待しよう。


 夕食は魔獣を切った肉に塩・コショウを降って網に乗せて焼く。

 それとスープには用意していた具材に取った野草に薄く切った肉を入れる。

 見ているだけでもよだれがでてくる。

 デザートのモモガン森林で取った果物バナナにイチジク付きで、食べて大満足。

 塩・コショウなどの香辛料以外の全ての食材は森林の中で狩ったものだ。


 ちなみに野生の香辛料も生えていて採取した。胡椒って房で生るって初めて知った。

 アーモンドも見つけたけど、割れた実の種を取り出して、その種を割った柔らかい中身を()って食べるんだって、めんどいから放置した。


 団らんを満喫しながら、反省会もあったが、いつの間にか寝てしまっていた。


 小さな集落とはいえ効果の高い魔物除けのお守り(セイントアミュレット)の柱を建て、セイントネットを張った塀で防御している。

 それと魔導車やテントにもセイントアミュレットを装備しているが、それでも夜の警備は必要と、ホーホリー夫妻とリエッタさんが交代で当たった。


  ◇ ◇ ◇


 翌朝リエッタさんに起こされた。


 個人情報総合を確認したら、

----------------------------------------------------

【セージスタ・ノルンバック】

 種族:人族

 性別:男

 年齢:5


【基礎能力】

 総合:39

 体力:53

 魔法:123


【魔法スキル】

 魔法核:6 魔法回路:6

 生活魔法:2 火魔法:4 水魔法:5 土魔法:4 風魔法:5 光魔法:5 闇魔法:5 時空魔法:6 身体魔法:4 錬金魔法:5 付与魔法:5 補助魔法:4


【体技スキル】

 剣技:4 短剣:2 刀:4 水泳:2 槍技:2 刺突:2


【特殊スキル】

 鑑定:2 看破:3 魔力眼:3 情報操作:2 記憶強化:2 速読:2 隠形:1 魔素感知:2 空間認識:0


【耐性スキル】

 水魔法:3 風魔法:3  闇魔法:3 魔法:2 幻惑:1 神経毒:1 麻痺毒:1 出血毒:1


【成長スキル】

 基礎能力経験値2.14倍 スキル経験値2.14倍

----------------------------------------------------


【基礎能力】の総合が“36”から“39”に、体力や魔法や【魔法スキル】はチョコチョコとアップしていたので今回一気にアップしたわけじゃないけどそれなりにアップした。

【特殊スキル】の看破と魔力眼が“3”に、【耐性スキル】も様々上がって出血毒“1”が取得できた。

 ただ、空間認識は“0”のままだったが、付与魔法が“5”、補助魔法が“4”になっていた。

 ヤッパリ成長速度も基礎能力経験値2.14倍とスキル経験値2.14倍でチートなんだろう。


 外はどんよりとした曇り空で、今にも降りそうだ。

 日持ちする固い黒パンに昨夜のスープに肉や野草を足したもので、朝食を摂りながらの今日の狩りの打ち合わせを行う。

 ちなみにマンゴーが絶品だった。


 そうこうするうちに雨がパラパラと降り出してきた。

「雨の中でも訓練をするのか?」

「せっかくここまで来たんだから、僕はやってみたいです」

「二人はどうなんだ」

「ボクもいいよ」

「セージ君の訓練ですから」

「よしわかった、ただし雨が強くなったら中止ってことだ。それでいいか」

 ということでモモガン森林に向かった。


 テントをしまって、魔導車のフル充魔電したボルテックスチャージの吸魔アンテナを閉じ、屋根に折りたたんで収納して出発する。


 集中力が今一歩、いや、今三歩か。

 対物シールドを張って雨は防いでいるが、湿り気を帯びてジトジトした大気で服が体に張り付く。防具や服などにも撥水を付与しているが、湿気でべたつく肌でどうしようもない。

 足元はぬかるみ、草もまとわりついてくる。それと時たまヌルってすべる。

 レーダーは魔法力マシマシで昨日と同程度の索敵しかできない。


「セージ坊ちゃん、そんなに気を張ってると持たねーぞ」

「そうそう、スキルを伸ばすって目標もあるだろうけど、とらわれ過ぎる足元をすくわれますよ」

「うん、ありがとう。でも今が頑張り時だと思うから」

「やっぱ、男の子か。頑張れや」

 ガーランドさんがポンと僕の背中を叩く。

「はい」

 緊張が少しほぐれて楽になったような気がする。

 そして気が楽になると空間認識、レーダーの範囲が広がった。


 蜘蛛やネズミは相変わらず多い。うんざりする。

 邪魔だったら狩るが、基本放置だ。


「ビッグファングアぺ発見、三匹で強さは“36”、“32”、“30”かな。

 こっちの方向で距離は六五メルってとこ」

「やるか?」

「ううん、いい」

 ガーランドさんの問いに、僕は首を横に振った。

 戦闘中に足でも滑らせたらと思うとチョット怖い。

「いい判断だ。それじゃあ止めるか?」

「ううん、索敵は調子良さそうだからもうチョットやっていたい」

「じゃあ、あっちに行くか」

 ガーランドさんは僕の指さした方向、ビッグファングアぺのいない方へ歩き出す。


 今日は薬草・毒草・野草摘み、木の実や果物採取に終始しそうだと思いながら森を適当に歩き回った。

 その間セージはレーダー(空間認識・看破・検定・魔力眼・魔素感知)の感覚を鋭く、といってもあまり小さなものを感知するということではなく。より遠くの生体反応・魔素・魔法力、そして魔獣をより多く感知しようとして魔法力マシマシでだ。

 そうすると、なんだかレーダーが調子いい。

 一気にレベル上げをやってしまおうと、更に限界のマシマシ、広範囲を意識して歩いた。

 夢中になり過ぎて魔法の枯渇も起こしてしまった。

 慌ててリバイブキャンディーを口に放り込んだ。


「おいどうした。こういった森の中じゃ、緊張やストレスから体調不良を起こすからな」

「だ、大丈夫です。ちょっと集中して遠くを索敵したらやり過ぎちゃったみたいで」

「大丈夫そうじゃないぞ。休むか?」

「いいえ、しばらく立っているだけで大丈夫そうです。

 なんだか遠くを意識し過ぎちゃって、体の感覚とのバランスが一瞬保てなくなっちゃったみたいです」

 さすがに気分が悪くなったのには気づかれるのは仕方がない。

 ここ最近は枯渇にも慣れてきて、気持ち悪いが我慢できるレベルだ。

 それもリバイブキャンディーで、気持ち悪さもかなり軽減できるし、治りも格段に速くなっている。


「そんならいいが。でも、チョット小休止だ」

「はい」

 その後もリバイブキャンディーを食べながら、レーダーを使い続けた。

 小物の狩りはエルガさんとリエッタさんにお願いした。


 昼過ぎには帰路についた。

 僕は疲労から携帯食を食べながら魔導車の中で眠りについた。

 エルガさんのボヨーーンに胸の中で。

 ちなみに疲労困憊のエルガさんも夢の中に旅たった。


 夕食には狩りで取れた肉や珍しい果物が付いた。


 夜に個人情報を確認すると、空間認識が“1”になっていた。

 球形時の認識範囲も二五メルほどになっていた。

 そして、“並列思考:1”を取得していた。


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