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次元災害で異世界へ  作者: 真草康
浮遊島上陸編
177/181

173. オーラン市とオーラン魔法学校の変化


 六月一九日赤曜日に久しぶりにオーラン魔法学校に登校した。

 そして僕とミクちゃん、ルードちゃんとキフィアーナちゃんで一学期の期末試験を受けた。

 僕とミクちゃんは転生前の知識があるし、僕には速読に記憶強化もあるから普通に合格したが、ルードちゃんとキフィアーナちゃんはいくつかの試験が不合格となってしまった。

 とはいえそれらは一般教科の簡単な計算ミスに勘違いのようなものばかりだそうだ。

 ルードちゃんは算数と社会、キフィアーナちゃんは算数の追試が後日行われることとなった。


 ちなみに物理や化学、それに科学といった理科系は魔素と魔法力がかかわることが多い。

 近距離電話(マジカルフォン)で思った“電波が地球と違う作用や特性があること”も、魔素と魔法力が影響しているってことだ。

 そのために魔法スキルが高いと体感的にも魔法感覚的にも、そしてスキル的にも現象を確認しやすい、理解しやすいことがあって魔法士は理科系に強い。

 みんなが高得点とはいかないが、及第点は問題ないレベルだ。


 翌六月二〇日青曜日には音楽と図画工作では、僕は歌と楽器ハーモニカで何とかギリギリ合格を勝ち取れた。

 図画工作はグラナダ街で四人で描いた絵を提出しただけで終わった。

 魔法の実技は免除で、形式ばかりの魔法に関する筆記試験も無事終えた。


  ◇ ◇ ◇


 学校ではオケアノス祭の準備真っ盛りといったところだが、五年生の僕たちは基本サポートをするだけだからやることは特にない。

 本来であればマリオン上級魔法学校への受験準備で魔法のレベルアップを行っているところだけどそのようなレベルは入学前からクリアしている。

 Sクラスのみんなも強くなっていて、その辺の警備兵より強くなっている。

 Aクラスの中には高レベルの生徒がチラホラいて、マリオン上級魔法学校への受験準備で魔法のレベルアップを行っている人がいる。

 噂では今年のマリオン上級魔法学校の合格レベルはかなり上になるのではないかと言われていて、戦々恐々としている生徒が多いんだそうだ。

 そのため高レベルの生徒も気が抜けないんだそうだ。


 そして“お告げ”のこともあって、オーラン市全体が大災厄へ立ち向かうため、セイントアミュレットの強化が行われている。

 様々な武器や魔道具は飛ぶように売れているそうだ。


 その影響はオーラン魔法学校でも起きていて、“神の御子”への期待もあって校内で冒険者をチラホラ見かける。

 魔法の実技練習でも冒険者のサポートが付いて、狩りの頻度が上がり、本格的な戦闘訓練とレベルアップとなっているそうだ。


“神の御子”となるための条件の一つは、最低でも総合が“30”前後となることだそうだ。

 そして最高齢が僕たちの五才上、現在一六才までと、オケアノス暦三〇四七年の大災厄の開始した年の翌年生まれからだった。

 その他にも様々な資質が求められるようだけど、神のみぞ知る、とそこまでは分からない。


 そんなこんなでオケアノス祭のパレードや、ステージ発表なども剣や槍を持っていたりと勇ましいものが多い。

 中にはトライガンを模したオモチャを取り入れているところもあるほどだ。


  ◇ ◇ ◇


「ライカちゃん、疲れているみたいだけど……」

「ありがとう。ミクちゃんたちも頑張てるし、わたしも頑張るしかないもんね」

 戦闘の苦手な生徒会長のライカちゃんへの期待も大きく、狩りの時には率先して魔獣と戦い、後輩のサポートを行っていてと頑張っているけど、ミクちゃんの目には疲労が見て取れるそうだ。

 それでも笑顔を絶やさずやるべきこと、やれることを精一杯頑張っている。


「まだ三年()あるから、今から張り切り過ぎるともたないよ」

 三年とは当然真の大災厄の幕開けのことだ。

「そんなことを言ってられないでしょう」

「……そうなんだけど」

「ライカちゃんは得意な物造りで後方支援で頑張ればいいんじゃないの」

「ありがとう」


 全員が戦闘で魔獣に立ち向かうだけじゃ生き残れない……と思う。

 古代、歴史――地球のだけど――、様々な後方支援、特に輜重隊による食糧支援は前線での戦闘よりも価値があったと評価されることもあったしね。


 その後に話を聞くと、以前の魔獣と同じ魔獣なのに若干強くなっているような気がするって教えてくれた。


 僕たちは女神様から聞いたことをライカちゃんに、そしてクラスメイトたちにも伝え、結局校長に教頭や主任先生たちにも伝えることとなった。

 まあ、学校には市からの伝達事項で連絡はあったみたいだけど、改めて伝えるとそれなりに喜ばれた。


  ◇ ◇ ◇


「「「「こんにちは」」」」

「お久しぶりです」「こんにちは」「何しに来たのよ」


 六月二二日緑曜日の夕方、オーラン魔法学校から帰宅した僕を訪ねてきたのはメビウスダンジョンを一緒に探検したネオホープのメンバーだった。

 メンバー相変わらずの双子のミランジュ(ミーちゃん)(女)とムランジュ(ムーちゃん)、兎人のロップス(ロッちゃん)(男)、半狼人のナナノナ(ナナちゃん)(女)だ。

 全員マリオン上級魔法学校を卒業して正式に冒険者になったそうだ。

 そして“聖徒”の称号を得てマリオン国から“神の御子”としても承認され、マリオン国と契約して魔獣災害で依頼のあった都市に赴いているかたわら大災厄に向けて特訓中なんだそうだ。


 ちなみにムーちゃんがミーちゃんが昨年末卒業した新成人の一五才、ロッちゃんとナナちゃんはその一つ上の一六才で、現在の総合は全員が“80”前後だそうだ。

 身長も伸びたこともあってか大人って雰囲気になって自信が垣間見える。

 もちろん四人とも鍛えているから引き締まった体をしている。

 女性陣二人は女性の色香も漂うも、年齢的には少女の可憐さも併せ持つ魅力がある。


 ちなみに冒険者のランクは“C”でカードの色は緑色で、キフィアーナちゃんと一緒だ。

 僕とミクちゃん、それにルードちゃんは“A”で白色となっている。


 話はチョット飛ぶが、冒険者ギルドではランクの見直しをした方がいいなじゃないかって話がいよいよ本格的になってきているそうだ。


「それで相談なんだけど……」

「わたしたちを七沢滝ダンジョンで鍛えてくれないかな。

 それがだめなら案内だけでも頼めないかな」

 ムーちゃんが言いよどむと、ミーちゃんが両手を合わせた拝みポーズでズバリと言ってきた。


「頼みます」「頼む」

 ロッちゃんとナナちゃんも真摯に頭を下げられてしまう。

 以前は不遜な態度もあったが、社会人(?)としての経験を経た所為か殊勝な態度に断りづらい。


「ミクちゃんとルードちゃんはどう思う」

 いつものごとくN・W魔研の仕事中のミクちゃんとルードちゃんにも同席してもらっている。


「将来的にはみんなが強くなってくれるのはうれしいよね」

「ウチも同意だ」


 現在、七沢滝ダンジョンでは総合が“100”前後まではアップする方法が確立されている。

 そういうこともあって国内だけでなく、海外からも軍隊に警備兵、それと冒険者がレベルアップに訪れてくるようになっている。

 もちろんそれなりに強くなければ失敗して大怪我をすることもあるし、死亡事故も聞いている。

 それでもレベルアップのしやすさでいえば七沢滝ダンジョンは最適なところだ。


 それに伴ってオーラン市の城壁の南北に更なる外側の城壁ができ、現在は南側に新たな城壁を建築中だ。

 南側の城壁が完成すればマリオン国でも面積だけなら有数の都市となる。

 現在は農地の拡張をどうするかということが議論の的で、鬼門であるララ草原の開拓を行うか、もしくは離れた場所に村を作るかの二択に絞られているが、三対七で離れた場所、できるだけ安全な場所に村を作る方向に向かいそうだ。


 新たに造成した東西には武具の工房とその商店。それと借家や安アパートに、木賃宿がポツポツと建ち始めている。

 市の中心部のホテルも改修したりと建築景気に沸いている。

 ただ、その反面いまだに今年の始めの嵐で壊れれ、応急処置のままの建物も残っているありさまだ。


 オケアノス海周辺諸国、特にダンジョンを持つ国ではそのダンジョンに合ったレベルアップ方法の確立に躍起になているそうだ。

 ダンジョンを複数持つヴェネチアン国では、一つのダンジョンでレベルアップ方法を確立したという情報も流れてきている。




「それじゃあ、行ってみようか」


 ってことになって、リエッタさんは忙しそうなので、ボランドリーさんやニガッテさんに応援を要請した。

 さすがに僕たちだけで七沢滝ダンジョンに行くならまだしも、僕たち子供だけのサポートでレベルアップは許可してもらえないもんね。


 ちなみにタダじゃない。

 そうはいっても“神の御子”の依頼だと大災厄対策の支援ということもあってお金も取れないので、狩った獲物はレベルアップに付き合った冒険者の物という決まりになっているのがオーラン市だ。


 七月一日赤曜日から五日間七沢滝ダンジョンに潜ってレベルアップに付き合った。

 メンバーは僕にミクちゃんにルードちゃんとキフィアーナちゃんまで同行した。

 それにボランドリーさんとニガッテさんに、ネオホープの四人だ。

 ダンジョン内の魔獣が強くなっているのは確かだった。

 その所為というかおかげというか、ネオホープのメンバーは全員総合が“100”越えをした。…といっても最高で“102”だが。


 ワイヤーネットも軽量で更に扱いやすくなっていた。

 あとは“心眼”スキルのおかげだと思うけど、負の魔素と魔法力濃度の高くなったダンジョン内でレーダーの精度が随分と上がった。

 さすがに他の層までとはいかないが、同じ層の中だとテレポートで上手く飛べるようになった。

 もちろん“マップ”も機能して、今まで通りの“記憶強化”もあるが安心感が増した。

 正確な地図を作成できそうだ。


 結果、対抗心を燃やしたのはキフィアーナちゃんだけど、総合が“111”あるので最下層に行って更に強い魔獣を倒さないといけないが、本来の目的からそれるし、サポートできるのが僕とミクちゃんにルードちゃんだけになってしまうので、キフィアーナちゃんの文句はスルーした。


 ちなみに魔法を四属性ほど取得している魔法スキルが高い警備兵は、オーラン市では順次レベルアップを行っている。

 これだけ強くなれば以前程度のモンスタースタンピードならば、魔導砲も強力になったし問題はなさそうだ。


  ◇ ◇ ◇


 七沢滝ダンジョンから戻った七月六日黒曜日、オケアノス祭は来週だ。

 オーラン市はすでに祭りモードで、飾りつけも八割ほど終わっている。


「今年は華やかそうかだね」

「うん、見てて飽きないよね」


 ミクちゃんと散歩デートで街中からオケアノス神社などを見て回っている。

 大災厄で戦時モードの昨今だけど、戦時景気のオーラン市はゆとりのある都市だ。

 それとレベルの上がった警備兵が多く、治安も良いこともあって笑顔の住民が多い。

 もちろん今年初めの災害で悲惨な目にもあったがそこは住民の底力だ。


「今まで以上に旅行で訪れる人が多いみたいだね」

「多いけど、旅行じゃないよね」

「そ、そうだね」


 旅行というかオケアノス祭見学がついでな人は半数以上はいるだろう。

 昨年からオケアノス祭の観光客は大幅に増えている。

 オケアノス海周辺諸国会議後からオーラン市への行政や、七沢滝ダンジョンの運営方法などの視察を兼ねた各国の重鎮やそれなりの役職が家族を連れてということのようだ。

 そしてそういった人たちは大概が高スキル者でレベルアップにも興味があるということだ。

 あとは商人が訪れるから、その護衛(冒険者)もいる。

 ぱっと見どんな人なのかわからない人も多いが、概ねレベルアップを目指してということだと思う。…多分。


 そのような人たちが物珍しそうにオーラン市内を闊歩(かっぽ)して知るけど、警備兵のレベルの高さもあって治安はそれなりに保たれている。

 まあ、そうはいってもオケアノス祭前後はいかがわしい人も増えるから注意は必要だ。


  ◇ ◇ ◇


 お祭りの前後にミクちゃんとはマリオン国のあちらこちらにスキルを使って、二人だけの内緒の<テレポート>旅行もしてマップを拡張した。

 できることはなんでもやっておくべきだ。


  ◇ ◇ ◇


 今年で最後となるオケアノス神様のお迎えとお見送り――注目されたが最後だと思うと感慨深いものだ――を無事終え、警備――スリに暴漢、酔っ払いを捕まえた――もしっかりとやり終えた。


 それと人が集い興奮すれば魔素と魔法力が活性化するのは当然のこと。

 海魔獣が凶暴になったこともあり、三度もセイントアミュレットブイを乗り越えて海魔獣が湾内に侵入してきた。

 魔導砲の威力が上がった警備艇との戦闘に民衆は更なる興奮に、歓声を上げたのもいつものことだった。


 それとは別にララ草原にもボティス密林から強くて凶暴な魔獣が出現し、あわや大惨事となりかけるも高位の冒険者がたまたま通りかかった――いったい誰だろう――のもあって、警備兵が駆けつけるのが間に合い、辛くも撃退した。

 うん、めでたしめでたしだ。


 そんなこんなで無事オケアノス祭も無事に終わった翌日。

「OKがもらえたんだ」

「いよいよね」

「ただ、人選がまだ終わっていないんだけどね」


 女神様のお告げ、強くなる(・・・・)ために再度デビルズ大陸に行くことを希望していた。

 どの道避けられない道だし、早めに強くなるために動いた結果だ。

 それに待っていれば魔獣は強くなってしまうしね。


「出発は二学期の期末試験が終わった後で、ボランドリーさんは同行することになっている」

「あとは警備兵の人選だけってこと」

「そうなるね」

「わたしも忘れ物がないように準備しなくっちゃ」

「ルードちゃんとキフィアーナちゃんも張り切っていたよ」

「そりゃー、そうでしょよ」


 そういうもろもろのことや手配が終わり、無事二学期の期末試験も終わって――ルードちゃんの勉強を僕とミクちゃんで見たので追試は無し――、デビルズ大陸への出発の日となった。


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