172. さまざまな帰還と連絡
遅くなり申し訳ございません。
数年ぶりに風邪を引き寝込んでいました。※新型コロナウイルスではありません。
またそのような時には別の不具合も発生するようで、自宅のネット回線も止まってルータの交換などとなってしばらく動けない状態が続いておりました。
風邪はまだ全快ではありませんが、頑張って登校を再会したいと思います。
皆様もお体をご自愛くださいますように。
重ね重ねご迷惑をおかけいたしました。
これからもよろしくお願いいたします。
途中リュアナッパ村にも一泊して、六月三日黄曜日にグラナダ街に戻ってきた。
設置したポインティングディバイスは、強力な魔獣が側にいて回収できなかった三個――三人分のポインティングディバイス――だけなので物的被害もたいしたことなない。
大まかなことは時空電話で報告済みだが、フォアノルン伯父様に呼ばれた。
改めて根ほり葉ほり聞かれたが、答えられることは全てみんなに報告済みだ。
その同じことを繰り返すだけだ。
それが終わったと思ったら今度はマリオン国とロト国の調査団の前でも同様のことをしゃべらされた。
「もう何回同じことを聞かれるのかしら」
「帰りたいね」
僕とミクちゃんは会議の途中からうんざりしていた。
「御子のお告げの内容と変わりはないが、より詳細な内容ですね」
伯父様からも言われたことだ。
お告げって結構あっさりとしていて詳細が分からないが、僕たちの告げたデビルズ大陸の最大な負の吹き出し口の件と、“聖徒”の称号と“白い力”のことは衝撃だったようだ。
「最大な負の吹き出し口とは何処にあるのだね」
「それは分かりません。ミクちゃん聞いてないよね」
「うん、特定するようなことは何も…」
「多分クロノス山にあるとされる“竜宮ダンジョン”のことだと思う」
僕とミクちゃんが首をひねると、答えたのはラーダルットさんだ。
「それはどのようなダンジョンなのかね?」
「実際に行ったことはなく、噂では最強の竜が住むとされるダンジョンだ」
“竜宮ダンジョン”はラーダルットさんや、調査隊に同行したその他のエルフに訊ねてもそれ以上は知らなかった。
「“白い力”は“聖徒”の称号と一緒に与えられるものなのか」
「称号は神に認められたものというのは理解できるが、“白い力”というのは一般の魔法士や騎士でも取得できるものなのか」
「“白い力”は具体的にはどのようなスキルなのか」
「“白い力”で負の吹き出し口をふさげるのならば、今から行えばいいでなないか」
ほとんどの人が“神に御子”や“神の御使い”などの一般的な尊称は知ってはいたものの“聖徒”という本当の称号は知らなかった。
ましてや“白い力”なるスキルなど知る由もなかった。
矢継ぎ早に放たれる質問に、僕とミクちゃんは何処まで答えていいのかとも思ったこともあって、タジタジとなってしまった。
まあ、“聖徒”の称号に“白い力”のことは幾人かには話をしていたので、ある程度の話はした。もちろん妖精に関しては魂魄管理者の発言通り“負の魔素と魔法力の吹き出し口の案内人”と説明した。
「大災厄に立ち向かえる力があるとは思いますが、二年後にその使い方がわかるそうです」
「僕たちも神様から聞いたばかりで確認はできていません」
結局答えたことは基本は先送りだった。
唯一正確に答えられたのは、
「“白い力”は“聖徒”の称号を頂いてから、黒い波動をまとった魔獣や黒い波動そのもののような魔獣を倒して手に入れました」
ということだけだった。
それにはヴェネチアン国とロト国は直ぐに納得したが、マリオン国は懐疑的だった。
「とにかく現在は“聖徒”を数多く育て、強くすることが重要です」
改めて思った“僕たちだけじゃダメだ”“全然人出が足りない”ということからのお願いだった。
それには全員が賛同してくれた。
もちろん自国からのお告げの連絡があってのことだ。
◇ ◇ ◇
僕は今回の旅でいつの間にか特殊スキルの『マップ』を手に入れていた。
まあ、マッピングの開始場所がグランディア湖からだからそこで取得したんだと思う。
さすがに過去の場所までは無理みたいだ。
かなり制限のある機能で移動して視認したり、レーダーで正確に認識した場所をオートマッピングする機能だ。
優れているのはテレポートの最長距離――現在はデビルズ大陸で認識阻害で正確な距離は不明だが――以内であれば浮遊眼で確認して飛べるってことだ。
以前よりもテレポートだけでなく浮遊眼も使いやすくなった。
魔法核と魔法回路はレベル20だが時空魔法はレベルが19で、テレポート13まで使用可能だ。
計算上や感覚上では二〇〇キロ程度は飛べそうなのだが、それはオーラン市に帰ってからのお楽しみだ。
遠距離でポインティングディバイスに頼る必要もなくなったってことだ。
ただし今回のように複数人でテレポートを使用する時にはポインティングディバイスを使用した方が特定の場所を認識しやすいのも確かなのでケースバイケースで使い分けも必要そうだ。
太古の語り部の隠れ里からの帰還中に気が付いた時からマッピングが広がっていくのが楽しくなっていた。
グラナダ街ではミクちゃんに付き合ってもらって周辺を飛び回ってしまったほどだ。
ちなみにミクちゃんも僕に付き合ってなのか、浮遊眼を取得してかなり遠方までテレポートを飛べるようになった。
もちろん以前から飛べたが安全確認ができずに飛ばなかったってことでだが。
浮遊眼はテレポートと併用して飛ぶ前に飛び先の安全を映像で確認するんだ。
ポインティングディバイスがあると確認できる範囲が広がるし、テレポートで飛んだ時の誤差が少なくなる。
マップはその誤差がポインティングディバイス並みに確認範囲が広がり、誤差も少なくなるんだ。
そして浮遊眼だけだとテレポートの限界の遥かに短い距離の四、五〇キロ程度までしか飛べないんだ。
もちろん飛べないわけじゃないのは先に言った通りだ。
浮遊眼とテレポートの併用で飛んだ時の誤差が確認範囲外になってしまうからだ。
ちなみにミクちゃんの時空魔法はレベル14――魔法核はレベル15で魔法回路はレベル16――でテレポートの最長距離は六〇キロ程度のはずだ。僕がそうだったもの。
◇ ◇ ◇
リュアナッパ村の人たちの三分の二ほどがデビルズ大陸に残ると決断した。
ただし村として成り立たなくなりそうで、近隣の三つの村との統合があって一つになった。
結局三村でエルドリッジ市に移住を決断した人は二一人だった。
それらの人たちは三国の調査隊の会議で質問に答えたりもしたので、マリオン国とロト国も想定以上の情報を得られて満足していた。
もちろん集中した質問は“竜宮ダンジョン”のことだ。
それに関してはやはりほとんどのことは分からずじまいだったけど、リュアナッパ村に残る長老から大雑把な位置だけは確認できた。
その後にリュアナッパ村の住人を比較的に安全と思われる、ギルガメッシュ山脈のふもと近くのミョードルナ村への移住の手伝いなどを行った。
六月九日黄曜日に三国の調査隊は、調査終了を宣言してグラナダ街を後にした。
◇ ◇ ◇
「あれっ⁉」
「セージちゃんどうしたの?」
「魔法刻印に隠された精霊文字と精霊記号が見えるんだ」
ミクちゃんと甲板で散歩をしていたら、行では見えなかった帆にマスト、それに魔導砲や流水圧縮推進の精霊文字と精霊記号がはっきりと読み取れちゃったんだ。それも意識せずに。
マップのスキルを取得したけど能力が違う。
「『個人情報』」
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【セージスタ・ノルンバック】
種族:人族(聖徒)
性別:男
年齢:11
【基礎能力】
総合:200
体力:328
魔法:1438
【魔法スキル】
魔法核:21 魔法回路:21
生活魔法:7 火魔法:20 水魔法:19 土魔法:19 風魔法:20 光魔法:20 闇魔法:19 時空魔法:20 身体魔法:19 錬金魔法:19 付与魔法:19 補助魔法:18
【体技スキル】
剣技:18 短剣:5 刀:19 水泳:3 槍技:15 刺突:10 投てき:10 体術:16 斬撃:8 回避:6
【特殊スキル】
鑑定:8 看破:10 魔力眼:10 情報操作:10 記憶強化:9 速読:8 隠形:9 魔素感知:9 空間認識:11 並列思考:10 認識阻害:7 加速:8 浮遊眼:10 思念同調:11 白い力:6 マップ:1 心眼:1
【耐性スキル】
魔法:17 幻惑:11 全毒:17 斬撃:9 打撃:12 刺突:9 溶解:8 熱:8 精神攻撃:10 酸:5
【技能スキル】
精密加工:9 教育:5 魔電加工:12 創意工夫:3 解析:1
【成長スキル】
基礎能力経験値2.36倍 スキル経験値2.36倍
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様々な訓練をしていたのでまんべんなく上がっていたけど、新たに“マップ”を得ていたけど“心眼”と“解析”が発現していた。
これが女神様のいっていた褒美ってことなのだろうか。
火魔法・風魔法・光魔法・時空魔法のレベルが“19”で、闇魔法は“17”で停滞していたけどそれらも上がっていた。
ちなみに“創意工夫”はカートリッジガンや魔導車の作成をしたことで取得したスキルだ。
驚いたことに“基礎能力経験値2.36倍”と“スキル経験値2.36倍”がアップしていた。
「なんかすごく上がってる。見てみる、『開示』」
「えー、す、すごい」
「ミクちゃんは?」
「『個人情報』『開示』」
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【ミクリーナ・ウインダムス】
種族:人族(聖徒)
性別:女
年齢:11
【基礎能力】
総合:151
体力:202
魔法:522
【魔法スキル】
魔法核:16 魔法回路:17
生活魔法:4 火魔法:15 水魔法:16 土魔法:15 風魔法:16 光魔法:16 闇魔法:12 時空魔法:16 身体魔法:14 錬金魔法:15 付与魔法:14 補助魔法:13
【体技スキル】
槍技:10 剣技:7 片手剣:7 短剣:3 水泳:2 投てき:5 体術:9 回避:8
【特殊スキル】
鑑定:5 看破:9 索敵:9 隠形:8 魔力眼:8 魔素感知:8 思念同調:9 健康判断:5 治癒波動:5 感覚強化:5 加速:6 白い力:4 浮遊眼:2 マップ:1 心眼:1
【技能スキル】
魔電加工:6 精密加工:4
【耐性スキル】
魔法:13 全毒:10 幻惑:6 斬撃:5 打撃:4 刺突:4 精神攻撃:4 酸:3
【成長スキル】
基礎能力経験値1.33倍 スキル経験値1.33倍
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ヤッパリさまざまアップしていて僕の持っている“浮遊眼”と、同じく“マップ”と“心眼”が発現して、ミクちゃんも“基礎能力経験値1.33倍”と“スキル経験値1.33倍”がアップしている。
以前は両方とも“1.21倍”だった。
「こんなのも上がるんだ」
「みたいだね」
ちなみに女神様に会っていないルードちゃんとキフィアーナちゃんもアップしていた。
二人の様々なスキルが上がっていたけど、“基礎能力経験値1.1倍”と“スキル経験値1.1倍”が発現していた。
どうやらラーダルットさんもスキルがアップ――詳細不明――していたそうだから、きっとワンダースリーやその他の人たちもアップしていると思う。
◇ ◇ ◇
航海中二度ほど島を見かけた。
ほどというのは浮遊眼で確認して、内緒でテレポートで飛んだ回数が二度で、あとは遠すぎて飛べなかったということだ。
もちろんマッピングのため、目指せ世界地図、趣味の世界だ。
最初に発見したのがクロン諸島で、現在ココランド諸島に飛んできている。
手順は、海図から島のおおよその位置を確認、<フライ>で上空に上がって、目視確認。
ミクちゃんに守ってもらいながら精神集中して『浮遊眼』<テレポート>で座標固定で『空間認識』に『看破』などの『レーダー』で索敵してからの転移で、島に到着したんだ。
改めて『レーダー』でココランド諸島を再認識する。
記憶とマップに登録すればOKだ。
魔獣を発見しても絶対に手を出さない。
クロン諸島での実験で、浮遊眼+心眼の併用のテレポート発動時で約一〇〇キロ、マップ+浮遊眼+心眼の合わせ技で三二〇キロ程度飛べるみたいだ。
もちろんテレポートの魔法陣の強化版でだ。
まあ、飛べるとは言っても心眼併用でテレポート発動時の飛び先が半径二五メルほど確認ができて安全に飛べるってことだ。
島から離れる距離とテレポートの感覚での距離感だから誤差はあるけどね。
島を記憶にとどめて船に戻るには、もちろんポインティングディバイスのお世話になっているが、ミクちゃんとの“魂の友人”と“思念同調”でも戻れそうだ。
女神様効果なのかデビルズ大陸を離れると、思念同調のスキルアップもああってミクちゃんの意識が強く感じられるようになっていた。
近いと会話ができそうな感じもするけど……チョット、ハズイような。
「ただいまー」
「セージちゃんたらまったくもー」
僕は照れて顔が熱いし、ミクちゃんも意識したのか真っ赤になっていた。
「ミクちゃんも行ってくる?」
「わたしは今度でいいわ」
荒れた海だけど耐性も上がったのか、酔わず楽しいでいる。
海魔獣との大きな戦闘は二度程度発生したが、概ね快適な船旅だ。
ちなみに“マップ”はレベル2となった。
これならばテレポートやホワイトホールの強化を行うべきだよね。
俄然やる気が出てきた。
◇ ◇ ◇
中央洋とオケアノス海を隔てる島々、オケアノス列島を過ぎ、六月の一三日赤曜日にヴェネチアン国のエルドリッジ港に到着した。
“お告げ”の所為か、エルドリッジ湾のセイントアミュレットブイの数が増えている……と思う。
大災厄への対策はいろいろと進んでいるようだ。
二泊して久しぶりにフォアノルン家の人たちとも挨拶を交わし、“海の貴婦人”でオーラン市に戻ったのは六月の一六日の夕方だった。
多分“海の貴婦人”もかなりの速度アップが行われたんじゃないだろうか。
◇ ◇ ◇
六月の一七日白曜日は市役所に報告に行った。
パパやウインダムス議員や市長たちにも改めて報告を行って、またもうんざりとしたが、まあそれはお約束だ。
あきらめて最後までお付き合いをした。
オケアノス海周辺諸国は、更なる連携を取ることになって技術提携やスキルアップなどの相互補助を行い事が締結されていた。
その他のアーノルド大陸の国や、バルハ大陸の西方国たちとも良好な関係を気づけたそうだが、バルハ大陸の西方国たちは今だにギランダー帝国との戦闘の後遺症を引きずっていて、聖徒を援助するまで行っていないそうだ。
そしてギランダー帝国は政情不安なままだ。
アーノルド大陸も南方の国が政情不安定で内紛があるそうで、そちらも悩ましい。
巨人の住むネフィリム大陸、獣人を中心とした多種多様の亜人が住むとされるエルフィード大陸、巨人と獣人などが共存するゴリアテ大陸とも連絡はとれたそうだが、良好な関係を組むまでにはまだ時間が掛かるようだ。
巨人も亜人じゃないかと思うけど、そこは放っておくとして、そんなんで間に合うのか? とも思わないでもないが、独自に大災厄の対策は立てているそうだ。
ちなみにゴリアテ大陸は巨人族は少なくなっているそうで、リザードマンが多かったとの報告がされていた。
あとはアーノルド大陸やバルハ大陸に獣人やエルフなどの亜人がいるのと同様に、ネフィリム大陸、ゴリアテ大陸、エルフィード大陸にも人族などの他の種族が少数だけど住んでいるそうだ。
ネフィリム大陸には獣人が思ったより多いそうだ。
時とともに住民や情勢に変化があるのは当然のことだが、想定外の多く、交渉には相当気を使っているようだ。
交渉の第一弾として共同戦線を張るかどうかってことで様々な意見があって、もめている。
自分の国だけを守れば大丈夫だという意見が多勢意をしめていて、共同戦線に無関心といった方がいいそうだ。
今回のお告げでデビルズ大陸にも独自で群を派遣すればいいとの意見もあって、単独討伐意見が強そうなんだそうだ。
そういった中で、以前の取引があった国は好意的で共同戦線の重要性を認識している。
逆に言えばそういった国だから取引が成り立ったんだと思う。
様々な問題を抱えているが時空電話での連絡は良好だそうだ。
船も高速になったことだし、貿易の話は盛んに行われているんだって
それと独自の文化に独自の魔法科学のようなものがあるそうだ。
興味津々だが、くつかの魔道具を持ち帰ったそうだが各国で分けて研究しているそうで、現物は見られそうにない。チョット残念だけど致し方ない。
あと中には共同戦線より商取引に興味を持った商業ギルドのような団体もあったそうだ。
◇ ◇ ◇
N・W魔研では短針魔導砲だけでなくトライガンの販売を他国まで拡大することとなった。
僕は販売拡大前に、今回覚えた精霊文字と精霊記号で更なる強化ができないか、エルガさんと相談し始めた。
エルガさんも新しい精霊文字と精霊記号には興味津々だ。
毎日創意工夫の連続で頭が沸騰しそうだ。
ちなみに風魔法の新しい精霊文字と精霊記号はルードちゃんと僕とで魔法陣に組み込んで検証中だ。
ミクちゃんは治癒魔法の強化を行っていて、N・W魔研ではその魔法陣の販売も検討し始めている。
協力関係にあっても商売は商売のようだ。
さすが商業を重んじる自由共和国マリオンマリオンの会社ってことだ。