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次元災害で異世界へ  作者: 真草康
デビルズ大陸調査編
174/181

170. デビルズ大陸調査 蜃気楼

遅くなりました。


 五月一〇日緑曜日。

 リュアナッパ村のまだ体調不良や怪我人の治療を行い、僕たち全員はヴェネチアン国の調査本部に戻った。


 そして会議が開催された。


 議題はもちろんデビルズ大陸の奥地、場所も不明な太古の語り部に会いに行くかどうかだ。


 結果議会は紛糾すれども結果は出ずで、各国の判断にゆだねられることとなった。


「おまえは行きたいんだろう」

「はい」

「友人たちはどうなんだ」

「セージちゃんが行きたいというなら、私は行きます」

「ウチも一緒だ」

「わたしも行くのは当然でしょう」


 フォアノルン伯父様の問いかけに、僕たちは即答した。

 とはいえキフィアーナちゃんまでもいいのかな?


「ラーダルット殿はいかがかな」

「セージ殿が行かれるなら、行きますよ」


 ワンダースリーとガイアディアさんにもちろん嫌はなく、奥地に向かうこととなった。


 もちろん遠距離電話の時空電話(ディスタンスフォン)でパパやウインダムス議員にも連絡済みだ。

「ママにはパパが話をしておく。思う存分やってこい」

 パパに感謝だ。


 ミクちゃんも似たような事をママさんのマールさんとウインダムス議員に言われたそうだ。

 ルードちゃんもラーダルットさんと一緒にママさんと久しぶりの長い会話を楽しんでいた。


  ◇ ◇ ◇


 五月一一日白曜日朝、僕たちはリュアナッパ村に飛んでそこからデビルズ大陸の奥地に向けて出発した。


 メンバー的にはガイアディアさんの同僚の近衛第五隊長のクロアディさんが増えただけだ。

 総合も約“100”とガイアディアさんと一緒で人の良さそうなおじさんだ。

 フォアノルン伯父様に言わせると陽気だが慎重とのことで僕たちチームのブレーキ役だそうだ。

 あと何故近衛兵が他にも同行していたかというと、ガイアディアさんにもしもの時の保険でキフィアーナちゃんの護衛でもあるそうだ。

 まあ、守る側と守られる側で同じような総合値ってことが笑えるけど、戦闘技術でいったらガイアディアさんとクロアディさんの方がよっぽど強いと思うんだけど。


 それとイナンナの欠片は入手したヴェネチアン国の管理となったが、僕とマリオン国とロト国は二、三キロのサイズに割った小さな欠片を持っている。


 オルトラ婆様も正確な場所は知らないとのことだけど目標は概ね一八〇〇キロ先でデビルズ大陸の中央付近なんだそうだ。

 大雑把な場所を聞きだした後はラーダルットさんの知識と勘に頼るしかないけどラーダルットさんもデビルズ大陸の中央部も含めてそれより西側には行ったことはないそうだ。


 道なき道を進むには大変だけど僕の浮遊眼とテレポートの合わせ技で距離を稼ぐしかない。

 ただしそれもスキルが不安定になるデビルズ大陸では魔素と魔法力の安定した場所で、しかも<フライ>で飛び上がって高所から目標を視認して、目視とスキルのズレを補正する必要がある。

 空間認識が“10”で浮遊眼が“8”となっているので、遠くでもある程度視認で直接認識すると、負の魔素や魔法力濃度の高いデビルズ大陸でもテレポートと浮遊眼の合成認識がシッカリと行える。

 テレポートと浮遊眼の合成点だと誤差が多かった。

 ポインティングディバイスで飛べるんだから、シッカリと認識できればなんとかなるんじゃないかっと思って試行錯誤で気付いた効果だ。


 聞いていたように高度を上げると強風が吹き荒れていて、フライを安定させるにのは厳しく、高度を取れてもせいぜい一五〇メル程度がいいところだけどそれでも見渡すには充分だ。もちろん雨に雲や霧などなければだけど。

 そこから体内の魔法力を活性化させ、身体強化の魔法の応用で目を強化させて見てから、浮遊眼によってそのものを確認、ある程度の周辺状況の確認してという手順を踏む。


 ちなみに僕がいっぺんにみんなをテレポートさせるわけじゃなく一旦飛んで安全の確保を行う。

 ポインティングディバイスを設置してから戻ってホワイトホールで全員運ぶか、ミクちゃんとノコージさんだけを運んで二人に残った人を運んでもらうかは状況と魔法力によって判断する。


 負の魔素や魔法力の濃厚な場所は認識阻害が大きな場所なので特殊武装魔導車(ケラウノス)で移動するか、最悪身体強化で移動するしかない。

 もちろん目を強化して浮遊眼で確認しようとしても、そういう場所は認識阻害に合うので飛び先として不適当な場所でもあるから飛んでからそういう目に合うことはないはずなんだけどね。


 今回用に特別用意した大型のポインティングディバイスも使い捨て覚悟で魔法力を込めて設置していく。二週間ほどは持つだろう。


  ◇ ◇ ◇


 イナンナの元落下場所の岩場に飛ぶ。

 バレットアントはいないようだ。


「「…「<フライ>」…」」


 僕の他にラーダルットさんにボコシラさんにプコチカさん、それにルードちゃんとキフィアーナちゃんが一緒に空を飛ぶ。


「この方向だ」

 ラーダルットさんが指さす。

 三角おにぎりのデビルズ大陸、その東側に居るので指は概ね南西の方角、大陸の中心方向と思われる方を指している。

 デビルズ大陸を東西に分けるデビルズ山脈のほぼ中央にクロノス山があって、その付近に太古の語り部の隠れ里があるそうだ。

 幸いにも隠れ里はクロノス山の東側だそうだ。

 ちなみにクロノス山は相当な高山で、すそ野もメチャクチャ広いそうだ。探すのが大変そうだ。


「それだと目標はあの大きな樹になりますが、見えますか」

「エルフの視力をなめるんじゃない」

「すみません。それじゃあその樹ってことで」


 一五キロほど先の頭二つほど飛び出した樹木が目立つ。

 いったん視認して浮遊眼で固定すればOKだ。


 浮遊眼で固定するまでの認識の調整に精神集中で周囲がおろそかになってしまう。

 その間、僕たちの周囲をボコシラさん、プコチカさん、ルードちゃん、キフィアーナちゃんが守ってくれる。


 もちろん地上に残った人たちも周囲の警戒をする。


「ボコシラさん飛びますよ。目標はあの樹です」

「了解」


 ボコシラさんの手を取って「<テレポート>」で飛ぶ。


 一瞬の落下感を味わって空中に浮く。

 レーダーで周囲を警戒する。

 何匹かの魔獣を捉えるも、すぐさま襲ってくる魔獣は居ない。


 飛んだ先は予定より五〇メルほどズレていた。

 さすが負の魔素と魔法力の濃厚な場所、認識阻害効果なのか、スキル阻害効果なのかわからないけどテレポートがこれほどズレるとは。


「あそこがいいみたいです」

 ちょっとした草むらを発見してボコシラさんと降りる。

 速攻でボコシラさんが周囲の魔獣を狩りだす。


 ボコシラさんが安全を確認するとポインティングディバイスを設置する。

「それじゃあ行ってきます<テレポート>」


 イナンナの元落下場所の岩場に戻って、みんなと一緒に「<ホワイトホール>」で、ボコシラさんの末空き地に飛んで一度目の移動が完了する。


 僕とミクちゃんにノコージさんのテレポート要員は基本魔法力の温存と回復に務め、警戒や監視に戦闘などは他の人にお任せだ。


 初日は戦闘をできるだけ避けて慎重に移動した。

 順調に進んだこともあってあいまいだけどリュアナッパ村から二八〇キロほど進めた。


「今日一日移動に専念してもらったが、きつくなかったか」

「僕は何ともありません。もっといけますね。

 ミクちゃんやノコージさんはどうなんですか」

「私はみんなにカバーしてもらったし、セージちゃんほど負担も大きくないから、セージちゃんがいいんならもっとやれるわよ」

「わしも大丈夫じゃが、セージ坊は本当に規格外じゃな」


 …てへへ、と思わず苦笑いを浮かべてしまう。


 一般的には魔法の枯渇から完全復帰まで睡眠で四時間から六時間、起きているときで一二時間から一四時間で魔法が全回復するそうだ。


 それを僕は睡眠をすれば二時間半で、起きているときでも七時間半で完全回復する。もちろん体調にもよって前後する。

 以前の三時間に八時間よりも早くなっている。

 要は一日で僕の魔法値“1420”の倍を使用できるってことだ。

 しかも昼に“瞑想魔素認識法”を行うと、まあその時だけだけど回復が早くなるから、もう少し使える。


 ミクちゃんは三時間半に九時間ほどだそうだ。基礎能力経験値1.21倍、スキル経験値1.21倍の効果もあるのだろうけど、魔素や魔法力への親和性が高まったことによるものだと思う。

 魔法の完全枯渇でも気分が悪くなるけど耐えられるようになったことが大きいと思う。


 ノコージさんも早いそうで四時間弱に一一時間ほどだそうだ。


  ◇ ◇ ◇


 五月一二日黒曜日の移動二日目は、途中からサバンナのような景色、見晴らしがよくなり三八〇キロほどと昨日よりもだいぶ進んだ。

 見晴らしがよくなったこともあって、強い魔獣の警戒も楽だ。まあ、向こうからも発見されやすいということもあるが、身をひそめていればいいし、テレポートで逃げる――前方に向かって飛びこえる――のも可能だ。


 ホイポイ・ライトにセイントアミュレット、それと虫除けに隠形ネットで周囲を囲っての初のキャンプだ。

 三時間交代の夜間警備では僕たち子どもとノコージさんは最初か、夜明け前の最後の警備で負担を軽くしてくれる。気の使われようだ。


 五月一三日赤曜日の移動三日目。

 途中からまたも目標方向はジャングルに変化した。見晴らしのいいジャングルとサバンナの境界あたりを移動したので少々大回りをした。

 それでもみんなの慣れの所為か三三〇キロほど進んだ。

 目の前の大きな湖はグランディア湖というそうだ。

 これでグラナダ街からすれば直線で九〇〇キロ程度といったところ、行程で半分程ってことになる。


 ボコシラさんとキフィアーナちゃんが狩りに張り切って、ブラックグランドホッグを倒したのでごちそうだ。

 もちろん食べきれるわけはない。


「湖中にも魔獣がいるね」

「どんな魔獣?」

「強そうなのはレイクシャークで、弱くてたくさんいるのはグリーントードだね。

 何? 食べてみたいの」

「え、遠慮しておくね」


  ◇ ◇ ◇


 五月一四日青曜日の移動四日目。


「最悪だ」

「これは無理だな。ラーダルット、方角は分かるか? 進めるか?」

「方角は分かるが、場所の特定が難しいな」


 朝、濃厚な霧が立ち込めていた。

 視界は数メルしかない。

「<フライ>」

 上空一〇〇メル程度に上昇してもまだ霧は在るし、周囲一面が霧だ。


 それと突風が渦巻くように吹いているのか変な風だ。

 さすがにこの高さだと霧から、水滴状になっていて横殴りの雨のようだ。


<フィフススフィア>で防御していても足場があるわけじゃないから、<フライ>に魔法力マシマシで込めていないと飛ばされそうだ。

<フィフススフィア>で防御していても湿った空気までは防げない。

 服がジメッと湿ってくる。


 視界は数一〇〇メルほどあるけど、テレポートができる目標を見定めるなんてとてもじゃないけどできそうにない。

 それと霧(水滴)が濃い所為なのかスキルの認識阻害が増している。

 魔法も不安定――フライが風のない地上付近でも微妙にふらつく――になっている。


 それと霧でかすんでいるけど上空の浮遊島が薄紫の発光とともにおぼろげに見える。

 まがまがしい波動を放ってないから普通の浮遊島だと思われる。

 浮遊島は高度六五〇メルほどに浮かんでいるからまだまだ上空だ。

 現在の僕ならその程度の高度は問題ないはずだ。

 ただし不安定な魔法環境の上に強風が吹いているから行きづらい。

 それでもいつかは行かないといけない気がする。


「ノコージさん、あの浮遊島何か知ってますか?」

「さあ、わしじゃあわからんな。ラーダルットに聞くしかないじゃろう」


 ラーダルットさんは今は地上の霧の中だ。

 このためだけに呼ぶのもなんだな。


 グランディア湖のほとり、とはいっても魔獣避けにある程度の距離を取ってのキャンプだが、それが災いしたみたいだ。


「今日もここに泊るつもりはない。

 しばらくは徒歩での移動なる。準備をするぞ」

 プコチカさんが僕の隣に浮遊してきた。


「一人で行かないの」

「声を掛けろよな」

 ミクちゃんとルードちゃんも来てくれた。


「ごめん、気を付けるよ」


  ◇ ◇ ◇


「全員索敵には気を使い、セージスタだけに頼るなよ」

 プコチカさんが、主にキフィアーナちゃんに向かって声を掛ける。

 ムッとするキフィアーナちゃんに、苦笑いのガイアディアさんとクロアディさんだ。

 クロアディさんもキフィアーナちゃんのことは承知のようだ。


 進行方向は湖の反対側だ。

 全員身体強化で、湖に沿って進む。

 霧は晴れそうにない。


「前方強い魔獣がいるみたい」

 そんなこんなで、大きく回避して進むこと三度ほどでグランディア湖の反対側に到着する。

 少し岸から離れて小休止。


「霧は晴れてきたけど、まだだな。

 ラーダルット、この先はどうなる」


「上流に滝があってグランディア湖(ここ)より小さなトルンディア湖がある」

「滝があるってことは高台か」

「そうなるな。あとは本流を見つけて遡っていけばクロノス山付近には着くはずだ」

「先が見えてきたってことか」

「半分を少し越した程度だがな」

「道しるべがあるだけでも心強い」

「そうだな」


  ◇ ◇ ◇


 川沿いを上流に向かって歩いていくと、いずれも真っ白で隠形持ちのフォギーラビットにフォギーマウスなどの小物魔獣とチョロチョロと遭遇した。

 わかりづらくてうっとうしいということはあるが、まあそれは割愛だ。

 小一時間ほどで滝の音、そして木陰に隠れていたトルンディア滝が見えた。

 落差五〇メルほどもあるけっこうな滝だ。


 霧の薄れてきたので滝の上、それも安全地帯程度へのテレポートは何とかなりそうだ。……と思っていたら。


「何じゃありゃ」

「「…「……」…」」


 誰かの間抜けな声がした。そして残りの人たちが絶句する。


 滝の真上に二重に虹が掛かり、その上に真っ白で荘厳な建物が霧にかすんで浮かんでいた。

 初めて目にするけど蜃気楼のようだ。

 更にその上には浮遊島が浮かんでいた。


「レーテー…」

 ラーダルットさんが呟いた。


「あの建物がレーテーっていうの?」

「いや、浮遊島の名前だ」


「それじゃあ、あの建物は」

「知らん。知らないがオルトラ婆様に聞いた建物に似ているよな気がする」

「どこが?」

「白亜の神殿。その柱には翼の無い細長い竜が絡まっている、としか聞いてない」


 二階建ての真っ白で荘厳な建物はまさにその通りだ。

 翼の無い細長い竜とは地球のアジア圏で語られる竜のことで、まさに竜が柱に巻き付いている。

 宝玉を持った竜も彫られている。


 デビルズ大陸の奥地で荘厳な建物で暮らすって、太古の語り部ってどんな人だ?

 想像しようにも思いつくのは一人、いや、一柱(神)しか思いつかない。

 ただ、想像通りだとすれば行く価値はある……のかな? ギランダー帝国の子供たちを救った後には一度も女神様とは会っていない。

 それとも新たな情報がもらえるのか…。


 蜃気楼に見とれていると、ぼやけて消えてしまった。

 そして浮遊島のレーテーも頭上から移動していた。


「魔獣襲来。ディモルフォドンが八匹」

<身体強化><フィフススフィア>『加速』『並列思考』……


 翼竜型の魔獣で強さは“100”前後だ。

 蜃気楼に気を取られていて警戒がおろそかになっていた。


 ディモルフォドンからはすでに風魔法の攻撃魔法が向かってきている。


「<マジッククラッシャー>…」

 マジッククラッシャーを放つも相殺できる規模じゃない。

 その間にもミクちゃんを抱きかかえ、そしてルードちゃんをフィフススフィアの中に入れた時に、風魔法による嵐がゴーッと吹き荒れた。

 周囲の木々の枝が折れ、葉がちぎれ、石や岩が舞い飛ぶ。


 フィフススフィアに魔法力をそそぎ込みながらも、一番近場にいるラーダルットさんをフィフススフィアの中に入れることに成功した。


「<マジッククラッシャー><マジッククラッシャー><マジッククラッシャー>」


 手当たり次第にマジッククラッシャーを放って嵐を弱める。


 何とか嵐が弱まった。

 周囲の木々は枝が折れ、葉がちぎれ、石や岩がぶつかって悲惨な状況だ。


 キフィアーナちゃんをかばったのかガイアディアさんとクロアディさんが怪我をしたようだ。

 それらを並列思考で捉えるが、今はかまっている暇はない。


「<ハイパーレイ>…<ハイパーレイ>…<ハイパーレイ>」


“ハイパーレイ”とは、長ったらしかった“ハイパーホーリーソーラーレイ”の新たな魔法名だ。

 頭の中で唱えるのも面倒だよね。

 エルフの村、リュアナッパ村で魔法回路の名称を変更したんだ。


 一気に三匹の翼を撃ち抜き、体の表面を焼いただけだ。

 精神集中もそこそこのハイパーレイじゃ三匹のディモルフォドンもわずかにバランスを崩しただけだ。

 さすがに直ぐ近くまで来ているディモルフォドンに、見方まで巻き込みそうなビッグバンは放てない。


 味方の動向を確認。

 ガイアディアさんとクロアディさんが怪我をしたとはいえ軽傷(?)みたいだけどシッカリとシールドを張っている。

 嵐に巻き込まれたキフィアーナちゃんもガイアディアさんとクロアディさんに保護されている。

 他にはといてもワンダースリーはすでに反撃を開始している。


 並列思考の全てを攻撃に向ける。

「<ハイパーレイ><ハイパーレイ><ハイパーレイ>……<ハイパーレイ><ハイパーレイ><ハイパーレイ>」


「<ホーリーソーラーレイ>……<ホーリーソーラーレイ>…」

「<ホーリーソーラーレイ>……<ホーリーソーラーレイ>…」


 ミクちゃんとルードちゃんも攻撃を開始する。

 ラーダルットさんも矢を射り始める。


 ワンダースリーは反撃にディモルフォドンと戦闘を繰り広げている。

 ノコージさんが高熱の小火球弾を放ち、ひるんだディモルフォドンにボコシラさんとプコチカさんは空中戦を挑んでいる。


「<ハイパーレイ><ハイパーレイ><ハイパーレイ>……<ハイパーレイ><ハイパーレイ><ハイパーレイ>……<ハイパーレイ><ハイパーレイ><ハイパーレイ>」


 今度はマシマシで魔法力を込めた強烈な魔法だ。

 ディモルフォドンにもかなりのダメージを与えたようだ。


「<ホーリーソーラーレイ>……<ホーリーソーラーレイ>…」

「<ホーリーソーラーレイ>……<ホーリーソーラーレイ>…」


 ミクちゃんとルードちゃんも確実に一匹を見定めてホーリーソーラーレイを放つ。



 戦闘が終わり八匹のディモルフォドンの内六匹を倒し、二匹は逃げていった。


「ガイアディアさん、クロアディさん怪我は?」

「たいしたことはない」

「ああ、問題ない」

「ダメです。ねん挫と打ち身がひどいじゃないですか」


 僕の言葉に強がるガイアディアさんとクロアディさんだが、ミクちゃんの目はごまかせないようだ。


「じっとしててくださいね。

<ホーリーリング>…<ホーリーキュア>…<ホーリーリライブセル>」

 まずはガイアディアさんを治療する。

 もう一度右足首に<ホーリーリライブセル>を放つ。

 足首をひねっていて、治療しても歩くのも大変なようだ。

 鎧を身につけているとはいえ、熱帯の厚い中で金属鎧を身につけられるわけじゃない。

 キチン質と革を併用した軽装な部分鎧なこともあって、背中の打ち身もひどい。

 捻挫はミクちゃんの見立てだとかかとのじん帯が傷んでいるそうで、しばらく歩行を控えた方がいい状況だそうだ。

 背中の打ち身も感知するまでに数日を必要とするようだ。


 クロアディさんにも治癒魔法を掛けるが、クロアディさんは肩と腹部の打ち身だけのようだ。

 かなりの打ち身で痛みもひどいみたいだが、治療で動ける程度まで軽減された。

 こちらはミクちゃんの治癒魔法で全治三日とガイアディアさんと比較すれば軽傷だ。


 珍しくキフィアーナちゃんが落ち込んでいる。


 まずは滝の上に<ホワイトホール>で移動した。

 霧は薄くなったとはいえ、まだ当分は遠いところには飛べそうにない。


 休憩や昼食を取りながら二、三キロずつ慎重に飛んで三〇キロほど進み、トルンディア湖を越したところでキャンプすることにした。

 もちろんガイアディアさん治療もあって早めのキャンプだ。

 一〇〇〇キロ弱も離れるとおいそれと本部へテレポート(飛ぶ)こともできないしね。


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