165. デビルズ大陸上陸
四月一三日火曜日にオーラン市を出航した僕たちは、
「この魔導砲も短針魔導砲なんだよね」
「そうだけど、近づくと怒られるんだ」
「キフィアーナちゃんでも」
「そうなんだ」
「セージちゃん、目つきが怖い」
「そ、そんなことないよ」
「いや、セージが獲物を狙ってる目だな」
「そ、そんなことないよ…タハハ…」
「ダメだなこりゃ」
「セージちゃんですもの」
魔導砲や流水圧縮推進を愛で、優雅な船旅をしてマリオン国の最っとも西の都市のバラジュ市に到着した。
そしてマリオン国の戦艦“ローレル”と、ロト国からの武装艦“ゴッダ”と合流した。
◇ ◇ ◇
「デビルズ大陸に向けて出航!」
四月二〇日青曜日にフォアノルン伯爵の号令でバラジュ港を出航する。
目指すはデビルズ大陸の元グラナダ街、大災厄直後のモンスタースタンピードで廃墟となった都市だ。
その元グラナダ街の港はまだつかるんじゃないかということと、モンスタースタンピードの調査も兼ねてだ。
グラナダ港に入港できなくとも付近に停泊はできる。
最悪他にも元街&港があるそうだから何とかなるだろうということだ。
デビルズ大陸はアーノルド大陸の西方に位置するし、北半球に横長に存在するバルハ大陸から見たら南西方向となる。
デビルズ大陸は、アーノルド大陸と一緒で北半球から南半球に渡って存在する大陸で、南半球側の方が大きく膨らんでいる。大雑把に表現すると三角お結びといった感じだ。
中洋海を横断すのだが中洋海は荒れる海だそうで、パパやママたちが政変で一時期避難した場所でもある。
◇ ◇ ◇
四月二一日黄曜日。
昨日は雨も降って荒れたけど、今日は雨は止んだけど風が強く波の揺れはそれ以上だ。
大型の戦艦といえども揺れる時には揺れる。
それも小刻みでわなく、ユックリと大きく上がっては、ユックリと大きく下がる。
エレベーターに乗り続けているような状態だ。
「荒れるねー、…うっぷっ……」
久しぶりに酔った。気持ち悪い……。
それでも耐性が上がったのか、戻すまでじゃない。何とかその一歩手前だ。
最初はなんでもなかったものが、こうも続くとかなりしんどい。
赤道付近で熱いし湿気があるし不快感MAXでのことだから最悪だ。
「私も……うっ…」「……ウゲッ…」「…ウエーッ…」
ミクちゃん、ルードちゃん、そしてキフィアーナちゃんと一室に集められて壁に作りつけられている簡易ベッドで横になってヒルデさんに看病してもらっている。
三人はかなりの重症だ。
「……うっぷっ…」
これは…。
『魔獣出現、総員戦闘態勢ー!』
僕が無意識のレーダーで魔獣を感知――酔いのための体調不良で魔獣名がわからず――した時には、船内にアナウンスが流れていた。
な、戦艦だから大丈夫だろう。…ウップ…。
……ウトウトしてたのか? ……相変わらず気持ち悪い。頭がボーッとする。
あ、そういえば戦闘は? ……終わったのか。
なんだか船の揺れも弱くなったような。
ミクちゃん、ルードちゃん、キフィアーナちゃんはいまだにベッドと友達状態で起きられそうにない。
気分転換に甲板にでも行ってみるか。
「チョット散歩してきます」
甲板に上がったけど曇り空、景色がいいわけでもない。
風は帆走に適したものとなって海は収まっている。
魔導砲は絶対に怒られるが流水圧縮推進の近くは比較的怒られない。
よく見てみるかと接近してよく見る。
エルガさんのように解析スキルがないから見てても全然わからない、……なんてことはない。
ここまで接近して空間認識で細部を覗き込む。そんなことをすっかり忘れていた。
レベルが上がった現在なら、空間認識をピンポイントで絞り込むと数センチメルほどとなり、それを事細かく詳細に確認できる。
要はCTスキャンやMRIみたいなことができるってことだ。
あとは機構が理解できるかってことだってことだけど、それもホイポイ・マスターやポチットムービーに短針魔導砲だけでなく、魔導車の構造も理解した現在なら理解できそうだ。
ちなみにチート装備はカートリッジライフルとガンは全員が持っていて、今回用に作成した等以下改造した武装魔導車に、大型短針魔導砲などは僕とミクちゃんのアイテムボックスに収納している。
武器も基本はミスリル硬鋼(EX)だ。
ちなみに僕の紅銀輝のハイパータイトは特殊だ。
しげしげと覗いてしまう。
ウヒヒ……、なだけニヤケテきたような……、ま、いいか。
あちらこちらから眺めてみたけど空間認識を使っているからか、何処から見ても結果は同じで全部見える。
流水ようにスクリューのような物は一切無しで、風(移動)魔法による給水と排水による反動で推進力を生む。
ただし水流の取り込み口には吸引強化の様々な刻印が、導水管は排出口に行くに従い徐々に狭まり加速支援の刻印が刻まれているし、排出口には噴出や放出の刻印が刻まれている。
そのどれもがマーリン号とは違うから、最新のテクノロジーということだろう。
導水管は絶縁されたミスリル硬鋼で摩擦係数軽減も施されているし、核刻印にはミスリル金線がつながっている。
それらを統合管理して効率よく魔法力を流し込むようになっている制御魔石が受け持っている。
そんなことを考えながら帆を見上げるとその魔法刻印もマーリン号とかなり違っているような気がする。
全てが最新だってことだろう。
ただし、そこまで見えても肝心の魔法陣、そして魔法文字と魔法記号は巧妙に隠されていてハッキリと見えない。……おぼろげには見えているんで、もうチョットって気がするんだけど。
どういかして風魔法の精霊文字や精霊記号を見てみたいものだ。
雲、どんよりしていて気持ち悪いな。
空模様に反して状態異常耐性なのか、気分は良くなっていた。
◇ ◇ ◇
五月一日赤曜日の昼、目の前にはデビルズ大陸、そして元グラナダ街とその廃墟となった港が間近に見えてきた。
ダウンしていた三人も耐性がアップしたのか元気になっている。
赤道を越えて南半球なのだが赤道に近く暑さはムッとするほどだ。
海上から見ただけで、負の魔素と魔法力だけでなく通常の魔素と魔法力が高濃度だということがわかる。
「ラーダルットさん、変化はありますか?」
「魔素と魔法力の濃度が以前の二倍近くになっているのんじゃないかな」
「そんなに」
「ああ」
見た感じオーラン市の魔素と魔法力濃度を比較すると三倍近いようだ。
多分大陸内部に入ると更に魔素と魔法力、その中でも負の魔素と魔法力の濃度が高くなることだろう。
それからすると魔獣も強くなっているってことだろう。
魔法のレベルが低いとそれだけでも魔素や魔法力酔いは必死だろう。
ちなみに上陸組は最低で総合が“40”、船の乗組員は同様に“35”という取り決めがされている。
それでもギリギリの濃度のような気がするけどね。
あとそのような低レベルな人には体内魔法力の安定化と活性化の付与魔法が掛けられた下着が配られていて、かなりの率で着用されているそうだ。
「それと大陸内部はもっと濃いぞ」
「レベルが低い人は大陸内部に入れないってことだよね」
「多分だが、そうだと思う」
更に廃墟の港に接近する。
「思ったよりきれいに波止場が残っているけど……」
「街の建物はあちらこちらが壊れちゃってるね」
石造りの城壁に囲まれているグラナダ街の建造物のほとんどが木造建築なためか、離れていても大きな破損が多くの家屋に見受けられる。
手入れをされていない樹木も部分的にだがうっそうと生い茂っていて廃墟感をより一層印象付けている。
今年がオケアノス暦三〇六四年で、三〇四七年にゲブ大激震が大災厄開始とされる。
いつグラナダ街が廃墟になったか知らないけれど最大で一七年前ってことだ。
建物も十数年も放っておけば廃墟マニアが喜ぶ代物に大変身だろう。ましては街全体が半巨なんだから。まあ、ここにそのような輩がいるかは知らないけれど。
「思っていたより小さな街ね。おやじはグラナダを知ってるの?」
「いや、オレがこの大陸から場所はもっと南のセビーリャという街だ。
そこに最後に行ったのは八年前、バルハ大陸を出た時だな」
ルードちゃんの問いかけにラーダルットさんが首を横に振る。
「デビルズ大陸の港街の多くが山脈の近くで、鉱山都市との窓口となっておったのじゃ。
どこも似たようなものじゃ」
「ガイアディアさんはこの街に来たことがあるの」
「ああ、ヴェネチアン国で昔は選ばれたものだけがレベルアップのための修行でデビルズ大陸で狩りを許されたのじゃ。まあ、ダンジョンでってこともあるが、大抵は両方でじゃな。
この街も七年前のモンスタースタンピードで廃墟になったと聞いておる」
一七年前ってのはないのか。
「その時の人たちて……」
「住人も半数以下になっていたはずじゃ。
ありったけの船で脱出したが犠牲者も多かったと聞いておる」
デビルズ大陸では何度モンスタースタンピードが発生したんだろう。
凄惨な光景が目に浮かぶ。
「ねえ、その時から経験値稼ぎの技術ってあったんでしょ。
ワイヤーネットと粘着弾みたいな経験値稼ぎの道具みたいなものがあるの?」
「大勢で勢子をして落とし穴に落とすのじゃな」
「ああ、そういうこと」
ただ単に強い魔獣にネットを掛けただけじゃなかなか足止めはできなし、下手をすれば余計に凶暴になってしまう恐れもある。
以前は僕の改良した粘着弾が無いからそれこそ足止めを行おうとすると大量の粘着液が必要だったはずだ。
そうでなければ何枚ものネットをかけて足止めするか、足を強靭な拘束具などで絡めて止めるかしなければならないがあまりにも非効率的だ。
かつては日本でも江戸時代には将軍や大名の遊びに鷹狩りなんてものがあったが、実質軍隊としての動きを学ぶ軍事教練だ。
そして同様のことは世界中で行われていた。
実質攻撃を一切しない威嚇魔法で追い込む落とし穴による経験値稼ぎは軍隊の軍事教練としても使われ、そして選ばれた人が強くなるってことだ。
近衛兵の総合の高さにはそういった秘密があったのか。納得だ。
「それじゃあ、今だにここに来るの?」
「いいや、街が廃墟となっては野営は危なすぎるからな」
「遠くに浮遊島も見えるね」
「さすが浮遊島の本場魔大陸だね」
遠くに小さく二つの浮遊島が見える。
さすがにこれだけ離れていると周囲を取り巻く薄紫色の発光現象は見えない。
あとここに来れば浮遊島に行けるチャンスがあるかもしれない。
デビルズ大陸に来たかった理由の一つというか、なんとなく行かないといけない気がするってのが本当のところだ。
ミクちゃんの視線も浮遊島に注がれているような気がする。
◇ ◇ ◇
海魔獣との戦闘もあったが、さすが戦艦というべきか補助用の小型ウォータージェットを使用して僕たちを乗せた戦艦オグマが、あちらこちらが壊れた桟橋に接岸した。
城壁に囲まれたグラナダ街は城壁の北側と南側を二本の川で挟まれた街だ。
川幅はそれぞれ五〇メル程度と、河口にしてはそれほど広くない。
城壁の外側に堀を掘って、二つの川から水も引いているので堅固な要塞だ。
「上陸支援第一、第二、第三、第四小隊はただちにグラナダ街の分担か所の調査。
第五、第六小隊は港付近の警備」
さすが軍隊、十人ほどの六つの小隊がきびきびとした動きで船から飛び出していく。
そしてその後ろからユックリと「セージ坊、一足先に見学してくるぞ」とワンダースリーが降りていく。
赤道付近なこともあって日差しが強い。
金属鎧を身に着けることは不可能で、みんなキチン質と革を併用した軽装の部分鎧だ。
手袋を付けている者も指ぬきの手袋だ。
ちなみに僕らの装備も同様にワイヤー入りのチェーン下着にチェーン服仕様のもので、指ぬき手袋もある。
肩や胸に腰、手甲に足甲の軽量部分鎧を用意していて通気性もよくしてある。
もちろん僕の付与付きだ。……けど、ミクちゃんやルードちゃん、キフィアーナちゃんの下着はミクちゃんとルードちゃんで作成して付与していた。僕はノータッチだ。
ちなみにチェーン服や軽量鎧もカラフルでファッショナブルなものに自分たちで手直ししたものを、僕が付与している。
話は少々飛ぶが、新たに赤魔霊石、青魔霊石、黄霊石も作成可能となったけど、みんなが持っている緑魔宝石の方が効果が高いから渡してはいない。
黒魔霊石や白魔霊石は魔獣石の素材がないから作ってはいないけど、作成方法は理解している。
赤・青・黄魔宝石ももうちょっとで作成できそうなところまできてるんだけどね。
“聖徒”となって実績もあって図書館である程度の禁書が読めるようになったんだ。
そのおかげで様々な霊石――緑魔宝石が作成できたこともあってチョットしたことだった――が作成できたのもそうだけど、色々と禁書文献を調べたところ金剛魔宝石といって、複合属性の魔宝石があるんだって、現在の目標はそれだ。
「なんでわたしたちは居残りなのよ。まったく」
「急がなくてもいいんじゃないかな」
「そうだよ、じっくっるゆっくりでいいと思うよ」
プンスカと怒るキフィアーナちゃんを、僕とミクちゃんがなだめる。
ルードちゃんは我関せずだ。
続いて小型な戦艦のムルキベルが接岸、同様に四つの小隊がが飛び出していく。
その頃になる戦艦オグマから小型艇二隻が降ろされ、湾内の警備とセイントアミュレットブイを設置していく。
そして小型艇はムルキベルからも一隻出動する。
戦艦ローレルと武装艦ゴッダも似たようなものだ。
時折魔法の発動や戦闘の物音がするけど、食料となる草木や小動物がほとんどいない廃墟の中には脅威となるような魔獣はいないようだ。
上陸支援部隊が安全を確保すると、工兵隊が出動する。
セイントアミュレットは港周辺にも三重に設置され、最新の魔導砲も設置され徐々に防衛拠点として港が様変わりしていく。
使えるものは使えで、部分的にだが城壁の修理や、兵舎として使用する家屋の修理も行われる。
上陸拠点は港近くの、もと商船ギルドのビルと思われる石造りの二階建ての建物がヴェネチアン国拠点で、商業ギルドの同じく石造りの二階建て建物がマリオン国(一階)とロト国(二階)の拠点となった。
修理が間に合わない不足分は近隣の住めそうな家屋を魔法で手入れをして使用するか、テントを張るかだ。
狭い船内よりも地面に足がついていた方がいいので僕たちも一般の民家と思われる木造家屋を拠点にすることにした。
「<ストリーム><エアコントロール>」
大まかなゴミを吹き飛ばし。
「<ホーリーキュアクリン>」「<ホーリーフラッシュ>」
清浄魔法できれいにすれば居住は可能だ。
少々の補修を行えば、雨漏りも隙間風も無くなったと思われる。
あとは最低限の生活環境を整えいく。
「ベッドとテーブルなんか出して」
「ハイハイ」
「偉そうに、なんでアンタが指示してんのよ」
僕が家財道具をアイテムボックスから取り出し、休憩場所とベッドルームをしつらえる。
ベッドルームといってもベッドを並べて雑魚寝ができるようにするだけだ。
熱帯地方のグラナダ街は、雨風さえしのげれば寝泊りに問題ない。
とはいえ家のあちらこちらに魔獣避けのセイントネットに虫除けは必須だ。
キッチンの整備担当はミクちゃんで、調理用品やらのキッチン用品を整備する。
僕らの隣の瓦礫となった建物の庭に手慣れた様子でテントを張ったのがワンダースリーだ。
今日は一緒に食事をする予定でミクちゃんとリエッタさんが調理担当だ。
食後に落ち着いてから、僕のアイテムボックスに収納されている小型時空電話を取り出し、パパやウインダムス議員にルードちゃんのママさんのリーデューラさんにもシッカリと無事到着の連絡を入れた。
まあ、オーラン市が朝になるまで待ったってのもある。
◇ ◇ ◇
街の安全確保を各国の兵士にお願いして元商船ギルドのビル、ヴェネチアン国お拠点の一階の広間――デビルズ大陸調査本部――に調査に関係する面々が集合した。
ヴェネチアン国側は責任者のフォアノルン伯爵とその側近、第一小隊から最四小隊の隊長と副隊長、僕たちとワンダースリーだ。
マリオン国側は責任者一行と兵士による調査チームが四組。
ロト国側は責任者一行と兵士と冒険者による調査チームが三組。
マリオン国の人たちから僕たちは、少々にらまれてるようだ。
「ヴェネチアン国の調査員ってまずかったのかな」
「いまさら言っても仕方ないでしょう」
「セージらしくもない」
「このままヴェネチアン国の国民になりますか」
「留学だけでもあたふたしたのに、ご遠慮申し上げます」
「当然です」
「なるわけないだろう」
「それは残念」
僕とミクちゃんとルードちゃんの気分は落ち込み気味だ。
対してキフィアーナちゃんは楽しそうだ。
伯父様主導の会議は進んでいく。
「探査予定に変更希望はありますかな」
「ない」
「同じく」
ヴェネチアン国が北側から北側の川まで、ロト国が川の間、マリオン国が南側の調査となっている。
どちらに向かっても元の街道は草に覆われ、周辺は草むらと森林となっている。
調査は二パーティー(二小隊)で一チームとして行動することが告げられた。
ロト国は三小隊を一チームにするのか二チームにするかは、ロト国の判断にゆだねられた。
あとはどのチームにも一人はエルフが配属されている。
その全てがラーダルットさんのようにデビルズ大陸出身者か、何らかの関係でデビルズ大陸に足を踏み込んだことがあるエルフばかりだ。
ラーダルットさん曰く、小人数だがデビルズ大陸のあちらこちらにエルフは残っているそうだ。
もちろん妖精結界に守られなければ生活できないから、それなりに妖精もいるとのことで、その対策だ。
僕たちは予想通りワンダースリーと一緒に、以前の北側の街道沿いの調査を行うことになった。
上手く道が残っていれば歩きやすいし、運が良ければ鉱山まで行ける可能性があるが、まずは草むらと森の中を進んでいくことにはなりそうだ。
全チームで僕らのチームが一番少ない。
戦闘職でないヒルデさんは海の貴婦人の船員と一緒にお留守番だから九人もチームだ。
一小隊にも満たない人数だ。
それと明日だけは街道に沿っての調査ではなく、まずは全調査パーティー(小隊)で周辺の草むらと森の調査だ。
それで問題が無ければ本格調査、役割分担の調査に移行することとなった。
「セージスタまた頼むぞ」
「セージ坊たちよ、またよろしくな」
「一緒」
「「「こちらこそお願いします」」」
ガイアディアさんは知り合いだそうだ。
ワンダースリーにとっての初顔合わせはキフィアーナちゃんとラーダルットさんだけだ。
九人のパーティーとなるのでリーダーは天神族のプコチカさん――まさか真っ白い兎人のボコシラさんじゃないよね――にお願いだ。
人族で初老の発明家のノコージさんも相変わらずだ。
その日はラーダルットさんを中心に過去のデビルズ大陸の話を聞いてお開きとなった。
グラナダ街沿岸は小型戦艦ムルキベルと武装艦ゴッダが調査につくこととなった。
◇ ◇ ◇
深夜に大きな地震と落雷があり、廃墟のグラナダで火事が発生した。
幸い火事は水魔法で簡単に消火できたが幸先の悪い調査初日だった。