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次元災害で異世界へ  作者: 真草康
デビルズ大陸調査編
168/181

164. デビルズ大陸調査隊出港準備

明けましておめでとうございます。

本年もよろしくお願いします。


 三〇六四年。

 僕たちは留学生とともに五年生となった。

 Sクラスの生徒は四年生もかなりの生徒の総合が“60”を越え、覚醒している生徒が増えた。


 身長も一四三センチメルとかなり大きくなった。長いと思っていた紅銀輝も気にならなくなったほどだ。…まだ長いけどね。ちなみに総合が196”だ。

 ミクちゃんは一四二センチメルと僕とほぼ一緒で、総合が“144”だ。

 ルードちゃんは一三九センチメルとやや低めで、総合が“127”だ。

 なんとキフィアーナちゃんは一四四センチメルと僕よりも高くなった。まあ、僕とほぼ一緒だけどね。総合は“102”だ。


 オーラン上級魔法学校でもSクラスが昨年より作られていて、モラーナちゃんはもちろんSクラスだ。


 ちなみに生徒会長を引き継いだのはライカちゃんだ。


 話はチョット戻って、ミリア姉とロビンちゃんは帰省早々僕とミクちゃんに、

「今年の受験生に私たちより強い人がいるじゃないのよ」

「そうそう、このままじゃ先輩として名折れよ」

 と宣言するなり、僕たちを引き連れて七沢滝ダンジョンでレベルアップを行った。

 総合が“80”弱になって喜んでマリオン上級魔法学校に戻っていった。

 慌ただしかった。


 話は飛ぶが、最近冒険者ギルドでランクの見直しの話題が良く出るそうだ。

 大人もそうだけど、子供たちまでも強くなってきたので今までのランクで収まり切れないんじゃないかってことだ。

 そしてその話題中に例としてセージ()・ミクちゃん・ルードちゃんの名前が良く飛び出すんだそうだ。ハズイ、やめてほしいものだ。


  ◇ ◇ ◇


 N・W魔研で小型時空電話(キュートフォン)の開発が完了して量産に移行した。

 開発中は小型時空電話ディスタンスフォンミニ(仮名)としていたのだが、エルガさんの猛烈なプッシュ&エルガさん的にはまともな方だとして採用された名称が小型時空電話(キュートフォン)だ。

 筐体のフォルムは丸みを帯びている。

 色もこだわりがあってミントグリーンと淡いピンクのラベンダーをエルガさんが勝手に作ったが、結局販売用はグレーが基本色となった。

「かわいいのに」等のブーイングがあったがもちろんスルーされた。

 ちなみにミントグリーンのキュートフォンは僕のアイテムボックスに収蔵してある。


 それが一月末に完成した。もちろん第一陣の量産品のプロトタイプとしてだ。

 シンクロ用の魔石も五〇個作成して増産中だ。

 シンクロ用魔石は一般の時空電話(ディスタンスフォン)とも共有できるものだが、こちらも小型化されている。

 これで各国と船とで一斉に会話が可能だ。


 小型近距離電話(ミニミニフォン)の小型で精密な電増魔石の技術を応用したからこそ短時間で成しえたことだ。


 サイズ的には、従来の一部屋――高さ二メル弱に六畳程度の広さ――を使う時空電話(ディスタンスフォン)が、各国とも小型化を目指していてヴェネチアン国の最新型では高さ一.五メルに三畳ほどサイズとなっているが、それに対して操作と制御部分はバッグ二個程度まで小さくなった。

 従来はディスタンスフォンと一体となっていた次元アンテナと、魔法エネルギーを保存する充魔石を分離した。

 次元アンテナも効率がよくなり三分の二程度、必要魔法エネルギーも減って充魔石も同じく三分の二程度となった。

 結果一.五メルに一.五畳程度の大きさとなったし、三つに分離しているので設置を工夫できるようにもなった。


 何よりも改善されたのが、環境に依存して不安定になってしまう時空電話(ディスタンスフォン)の安定性を良くしたために、わずかな調整で移動して使用できるようになったってことだ。


 各国に配布するキュートフォン二〇台も二月の中旬には完成予定で、その後も増産予定だ。

 名目上はオーラン市、エルドリッジ市の魔法研究所との共同開発のキュートフォンがけど電増魔石の関係でN・W魔研でしか製造できない代物だ。


 小型化のために集積回路とまではいかないが積層構造が複雑な電増魔石があって、魔法スキルが高く精密加工のスキルも高くないと製造できない。

 実質、僕じゃないとその特殊電増魔石が製造できないんだ。

 ミクちゃんはもうちょっとでできそうなんだけどね。


 オーラン・ノルンバック船運社とN・W魔研のマリオン支社に、そしてウインダムス総合商社のマリオン支社も試作機のキュートフォンを送ってテストしたことは言うまでもない。

 ウインダムス総合商社のマリオン支社にはディスタンスフォンがあったので比較テストも同時に行われた。


 なんだか離れていた家族が簡単に会話ができるようになって、また身近に感じられるようになった気がする。

 ただしキュートフォンを耐久テストと称して一番使ってるのはミリア姉だし、ロビンちゃんはロビンちゃんでウインダムス総合商社でキュートフォンを使ってるんだそうだ。

 魔法力が豊富な二人だから可能なことだ。


 ちなみに各国からは相変わらず短針魔導砲やワイヤーネット、それとマジックキャンディーにポチットムービーの注文が届いている。

 ワイヤーネットも随分と改良が進んでいてエルガさんは新たな製品の試作に取り掛かっているそうだ。

 正式な所員も四人ほど増え、オーラン・ノルンバック船運社の社員の奥様方のパートも相変わらずだ。


  ◇ ◇ ◇


 名目上はオーラン市、エルドリッジ市の魔法研究所との共同開発のキュートフォンの発表で準備が整ったとして、親交の無かった国へ使節を派遣することになった。

 キュートフォンより一回り大きなヴェネチアン国製の携帯型時空電話(ミラクルフォン)も同時にお披露目されてそちらも採用となっている。


 キュートフォンとミラクルフォンの発表によってネフィリム大陸・ゴリアテ大陸・エルフィード大陸への使節派遣と、デビルズ大陸と極北大陸の調査が一気に現実味を帯びて議論された。

 もちろん持ち運びが便利となった二つの時空電話の利用方法は、船内利用と相手国への提供だ。


 早急に実行に移そうという意見、見えないタイムリミットにその声が大きくなっていった。


 結果、キュートフォンやミラクルフォンの準備が整い、各国に行きわたった三月頃には各大陸への使節と、デビルズ大陸と極北大陸への調査隊を派遣することが決定していた。


 その準備でN・W魔研はキューフォンの増産で大忙しとなった。

 小型化の積層構造が複雑な電増魔石を量産できるのは現時点僕に、ミクちゃんにルードちゃん、それにリエッタさんが増え四人が忙しい日々を過ごしていた。

 現在練習中の所員がいるので、もう少しの辛抱だ……と思う。

 ちなみに増えた四人の所員はオーラン市とエルドリッジ市の魔法研究所から転職してきた人たちだ。

 狩り(レベルアップ)で総合が“50”ほどになっているから筐体造りに励んでもらっている。


  ◇ ◇ ◇


「パパ…」

「ダメだ」

 デビルズ大陸と言葉にする前に即答だった。

 とうぜんわかりきったママには聞かない。


「セージ、行くわよ」

「いいのかな」

「良いか悪いかじゃなくって、行くに決まってるでしょう」

「ミクちゃんとルードちゃん、それにリエッタさんは」

「あとで何とでもなるわよ」

 僕とキフィアーナちゃんの悪だくみも始まった。


  ◇ ◇ ◇


 魔法展覧武会。

 最近は模擬試合ではなくイリュージョンなどのショー要素が増えた。

 僕はミクちゃんとルードちゃんと一緒に、特大の<ハイパーファイアーワークス>を連発で空に放って、大歓声を浴びた。


 たまやー、かぎやー。……僕とミクちゃんの心の叫びだ。


 その魔法展覧武会が終わったころに事件、巨大な嵐が発生した。


 嵐はマリオン国を直撃して、オケアノス海に抜け、バルハ大陸とアーノルド大陸をつなぐ架け橋の国となっているパーナマ国、ロト国、ロト国の奥に有るフロン国を直撃した。


 オーラン市の多大な被害を受け多くの家屋が破壊された。

 N・W魔研の建物も屋根が壊れ、その所為もあってキュートフォンの製造が二週間ほど遅れることになった。

 その旨は直ぐに各国に連絡され、使節団や調査隊の派遣は四月初めで調整されている。

 ただし大きな被害を受けた国が多く、極北大陸の調査の延期が決定し、続いてデビルズ大陸の調査も延期された。

 そして各大陸への使節の派遣を優先し、キュートフォンの完成と準備ができ次第できるだけ三か国以上の使者で一つの大陸におもむくことで一致した。


 幸いにもオーラン市に停泊していた船舶は嵐の間、オケアノス海や他国に避難していて被害はなかった。

 漁船の多くも避難していたが、避難していなかったほとんどの漁船が被害を受けてしまった。


「これも大災厄の影響なのかな」

「可能性は大じゃないかな」

 僕はミクちゃんとそんな会話をした。

 なんでも嵐はアーノルド大陸とバルハ大陸のあちらこちらで発生したそうだ。


 そしてまたもオーラン・ノルンバック船運社の託児所に子供が増えた。

 

  ◇ ◇ ◇


 四月末の春休み。

 いよいよ使節団の第一陣が出発する。

 まずは巨人族のネフィリム大陸へだ。


 なんでも数百年前は時々だがネフィリム大陸、ゴリアテ大陸、エルフィード大陸とも往来があったそうだ。

 ただし費用対効果が見合わないとのことで、次第に往来が途絶えたそうだ。

 そんな中でも一番最後まで往来していたのがネフィリム大陸だったそうだ。


 ネフィリム大陸へはマリオン国とヴェネチアン国の船で訪問する。

 マリオン国の船には隣国のクリーット国の使者が、ヴェネチアン国の船にはロト国とアーギ国の使者が同乗した。


 マリオン市の船舶二隻がエルドリッジ市に到着して、挨拶もそこそこに二隻のヴェネチアン国の船と一緒にネフィリム大陸に向かって出航していった。

 使節団の団長はアマルトゥド侯爵、ミクティーヌ(ミニミク)ちゃんのお父様だ。


 四隻ともこの航海のために帆や船体への魔法付与を強化し、流水圧縮推進(ウォータージェット)も格段に強化した戦闘艦で速力も通常の商船の三倍が出せるんだそうだ。

 ただし巨大な充魔電装置に特殊なアンテナが必要になるので、価格が一気に跳ね上がるんだそうだ。

 帆の付与も魔法レベル10以上と、破格――僕たちにしたらたいしたことはいけど――の錬金&付与魔法士が必要なんだって。


 八月からオケアノス海周辺諸国で船舶(帆船)への魔法付与とウォータージェットの研究開発も、まあヴェネチアン国主導でだけど、共同で行われていてその成果が出たってことだ。

 なんでもヴェネチアン国の船はもっと早いそうだ。

 それと研究開発についていけなかった国は、帆船の改造をヴェネチアン国に依頼したそうだ。


 そうだとすると、きっと風魔法用の効率の良い精霊文字や精霊記号があるはずなんだけど、見せてはもらえないかな。


 ちなみに飛行船のようなものが研究開発されたことはあるそうだけど、激変する天気で雷にうたれたり、魔獣の襲撃で何度か墜落したことにより開発が中止になったそうだ。

 構造も熱気球に推進装置を付けたような飛行船で脆弱なものだったそうだ。

 それと鳥魔獣を避けて更なる上空に上がると強風が激しく、それも変化をしていて気球には厳しい環境なんだそうだ。


 ネフィリム大陸とのただ単なる往復だけなら二か月ほどで行えるそうだ。

 挨拶から始まって位置合わせを持つことも考えると往復で最低でも三か月を要する大航海だ。

 まあ、記録通りに街が存在していて、現在も貿易港として栄えているならばだが。

 交渉内容はただ一つ、大災厄を終わらせるために提携しようということだ。

 実際はキュートフォンを通して情報共有をすることだけだけだから、上手くいけば一か月で連絡が入るはずだ。

 相手に無理な申し出は一切行わないので、要求は受け入れられる、上手くいくのではと思われている。


 話は少々それるが、マリオン国とヴェネチアン国の技術が一気に上がったのは僕たちがギランダー帝国の魔導車を持ち帰ったおかげだ。

 その解析が進んで、効率の良い回路や魔石などの技術が進歩した。


 小型時空電話(キュートフォン)を大量に作成したのは船に乗せるだけではないし、相手国にも置いてくるための通信装置でもあるので交渉が増えれば増えるほど増産する必要がある。

 数百年も経てば通信技術も変化する。

 アーノルド大陸とバルハ大陸内の国ではシンクロ用の魔石を交換するだけで通信ができるが、他の大陸ではそうはいかない。


 今回はネフィリム大陸に渡すキュートフォンを三台積んでいて、船用にはミラクルフォンとキュートフォンを積むそうだ。

 ただしネフィリム大陸に渡すキュートフォンの操作卓からスイッチやダイアルなどは巨人族用に大きなものに作り直したものだ。


 巨人族といっても身長は三メル前後で、ビルみたく大きな体をしているわけじゃないそうだ。

 ただ体は強靭なんだそうだ。

 会ってみたいものだ。


 オケアノス海周辺諸国の各国では会議用の通信を確立しただけでなく、ネフィリム大陸使節団からの連絡を二四時間体制で受信できる体制を整え、使節団とのコミュニケーションを絶やさないようにする。

 使節団との通信と、会議とを混在にしないためだ。


 マリオン国やヴェネチアン国だけでなく主要都市でも、会話には参加しないが受信体制を整えているところは多い。

 オーラン市もそのうちの一つだ。


  ◇ ◇ ◇


 五月に入るとキュートフォンの作成も予定の五〇台を越した。

 そしてゴリアテ大陸とエルフィード大陸にも使節団が派遣された。

 各国とも使節団ごとに受信体制をとっているので何かと大変だ。


 オーラン市では市役所の講堂を潰した大きな一室に五台の時空電話(ディスタンスフォン)を設置している。

 そのうちの四台は、各国との会議用、ネフィリム大陸使節団用、ゴリアテ大陸使節団用、エルフィード大陸使節団用で、残る一台は個別会話を求められた時のもの、シンクロ魔石を相手と合わせて会話するためのものだ。


 その他にもマリオン国の会議用に、各国との連絡用、貸し出し用などのディスタンスフォンが別室というか、従来の部屋にある。


 ちなみに従来の各国間の連絡は、各国間で時間を取り決めて定時連絡のやり取りを行っていた。

 商業連絡や個人連絡はその時の通信によって行われ、電報みたいに通知が届けられる。

 その後に、内容によっては個別に時間調整して通信(会話)を行う。

 ディスタンスフォンを持っていなければ貸し出し用のディスタンスフォンを借用することになる。


 ただし一般庶民は外国に親戚がいるはずもない。

 いたとしても手紙という手段の方が安価なので、そちらを使用するのが一般的だ。もちろん届くまで一週間や二週間、下手をしたら一か月とか掛かることになるが。


  ◇ ◇ ◇


 光魔法を組み込んだ複合魔法陣や合成魔法陣の強化も行った。

 使用を間違えないように脳内も魔法回路の魔法名は基本同じにして、古い魔法には“没1”、とか“没2”とか付加して保管している。

 たまり過ぎると処分しているけど魔法陣の開発は相変わらず行っている。

 レーザーは今でできそうにないけど致し方ない。


 魔法陣の開発は僕だけじゃない。

 ミクちゃんの治癒魔法に、ルードちゃんには風魔法の改善をお願いしていて、成果も出ている。

 僕のお気に入りはホーリークリンの上位版、“ホーリーキュアクリン”としてミクちゃんが作った魔法で、キュアに使われている精霊記号を組み込込んで、イメージを込めて魔法を放っていたら、定着した時に新たな精霊記号に変化した。

 それを二周繰り返ししたら精霊記号が定着し、新たな魔法が完成した。

 若干だけど回復効果もある清浄魔法だ。

 おかげでルルドキャンディーの効果がアップした。

 魔法力の枯渇から四粒食べて“200”前後まで回復する。これだけ回復すればかなり戦える。

 ちなみにミクちゃんたちは僕ほど回復しない。

“170”~“180”ほどだ。


 ルードちゃんは風の精霊記号を新たに生み出し、一部の風魔法が強力になった。

 あとは対魔法攻撃用に風魔法と光魔法の複合魔法の“反射魔法(ミラーシールド)”を造っていた。

 試作的なもので反射効率が良くない。

 まだまだ改良の余地があるといって張り切っていた。


 話はそれるが、魔法の回復水の聖水にするためにはホーリーフラッシュで浄化した水に白魔石を入れてもでき上る。

 ただしルルドの泉の水にホーリーフラッシュをすると性質に変化してしまってただの正常な水になってしまい白魔石を入れてもただ単なる聖水になってしまう。


 その点ホーリークリンは性質をそのままに清浄するからルルドの泉の水に白魔石を入れておくとハイレベルの聖水のルルド水ができ上がる。

 それを錬金で固形化したものがルルドキャンディーで、商品名はマジックキャンディーだ。


 ホーリーキュアクリンはルルド水にプラスアルファをもたらすのか、はたまた全ての成分を効率よく使い切るのかは不明だ。

 僕的にはプラスアルファをもたらす的な方が今後の取り組みに意欲が増すんだけどね。


  ◇ ◇ ◇


「それじゃあ、もうチョットしたら出航ね」

 エルドリッジ市にやってきたのはヴェネチアン国の戦艦“オグマ”とやや小型な戦艦の“ムルキベル”だ。


 キュートフォンとキフィアーナちゃんとヒルダさん、それと僕・ミクちゃん・ルードちゃんを乗せてデビルズ大陸に向けて出航する。


 そう僕たちもデビルズ大陸に行けることのなたんだ。

 キフィアーナちゃん経由でフォアノルン伯爵とミラーニアン公爵の説得が功を奏したということだ。


 二隻の戦艦とはいえ船団長がフォアノルン伯爵、僕の伯父様だ。


 リエッタさんはN・W魔研の仕事もあってお留守番だけど、代わりにルードちゃんのパパさんのラーダルットさんが同行してくれる。

 デビルズ大陸生まれだというし心強い味方で、急遽レベル上げを行い総合が“99”となった。

 そして近衛第二隊長ガイアディアさん、自称僕の弟子が僕たちのパーティーに加わってくれる。キフィアーナちゃんの護衛も兼ねてだろうけど護衛の方が保護対象より弱いんだけど。

 ちなみにガイアディアさんは以前よりチョット強くなっていて総合が“96”となっている。


 あとは忘れてはいけないワンダースリーの面々も参加している。

「セージスタ元気にしてたか」

「何かと噂は聞いておったぞ」

「元気」

 プコチカさん、ノコージさん、それにプコチカさんは相変わらずだった。

「ご無沙汰してます」

「こんにちは」

「久しぶりです」

 僕とミクちゃんとルードちゃんにとっても久方ぶりの再会だ。


 キフィアーナちゃんの船は外洋艦としては小型の“海の貴婦人”だが、それはエルドリッジ市に帰還して、最新の付与魔法と流水圧縮推進(ウォータージェット)を装備するそうだ。


 他の国はとういかマリオン市からと、ロト国からも調査船が出動することになっている。


  ◇ ◇ 魂魄管理者たち5 ◇ ◇


「申し訳ありませんでした」

「不可抗力です。致し方ありません」


 魂魄管理者の責任者に謝罪したのは副責任者だ。

 そして何を謝罪したかといえば、次元の裂け目の移動中に発生した事故だ。


 次元の裂け目は惑星バルハライド上のいたるところに発生している。

 それは陸上だけでなく海上にもだ。


 それを魂魄管理者だけでなく、幼体と呼んでいるいわゆるフェアリーたちも使って陸上に移動させている。

 実際は次元の裂け目とバルハライドの相対座標を変化させているのだが何かと手順が煩雑で難しい。


 そして今回の移動中に次元震が発生して、漏れ出た次元粒子とエネルギーで大気が不安定になってしまった。

 嵐はそのために発生した。


「幼体の教育とともにできれば二年間ですべての次元の裂け目を移動完了したいですね」

「それほど加護の力が弱まっているのでしょうか」


 転生者全員が目覚めるのが後三年半で、その後の二年間が追加の加護――多くの次元の裂け目を抑制してバルハライド上に未出現とする――の期限だ。

 残五年半の加護の期限は、次元の裂け目が予想以上に大きくなり、加護にほころびが出始めている。


「このままだと幾つかの次元の裂け目は抑制から解き放たれ、バルハライドに出現するでしょう」

「次元の裂け目の移動作業を急ぎます」

「できるだけ極北大陸には移動しないように、よろしくお願いします」

「わかっております」


「幼体の教育と同調はいかがですか」

「ほぼ完了しておりますが、バルハライドで活動中の幼体の次元波動との同調が今だ完了しておりませんが、期限までには完了させます」


「再確認後に、お告げで後三年半ほどと伝えたいと思います」

「わかりました」

「それにしても私たちが直接手を下せないのがもどかしいですね」


バルハライド(この星)のことは、この星で生まれた者たちだけにゆだねられるという制約ですか」

「そうです」


「幼体はこの星で生まれたというのとは少々語弊があるとは思いますが…」

バルハライド(この星)の管理下での生まれということで間違いはありませんのでそういうことにしておきましょう」


「そうですね。前任者もそのようにして動いていたようですし…」

「私たちの手段は限定されています。手段は多いに越したことはありません」


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