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次元災害で異世界へ  作者: 真草康
オケアノス海周辺諸国連合発足編
165/181

161. オケアノス海周辺諸国会議


 ミラーニアン公爵や伯父様のフォアノルン伯爵の私的な会食に呼ばれた。

「セージスタ殿にミクリーナ殿、久しぶりじゃな。息災でおったかの」

 僕とミクちゃんは家族と一緒に挨拶を交わし、エルガさんとリエッタさんも出席した。

 キフィアーナちゃんも出席してダンスも踊った。


 ロト国の恰幅のいい紳士風のリヴェーダ王の私的な会食にも呼ばれた。

 こちらは、お邪魔したのは僕とミクちゃんと家族だけだった。


 どちらも内容はたいしたことはなかったけどムチャクチャ疲れた。


 ルードちゃんは「セージとミクにまかせるわ」と、かたっくるしいのは苦手ということでどちらもお断りを入れていた。


 それとは別にマリオン国の議会代表として開催した内々のパーティーにはどうしてもと、こちらにはルードちゃんはしぶしぶと家族と一緒に出席した。


 パーティーにはマリオン市から派遣された議員、かくしゃくとしたお爺さんのハルオラン代表議員に、品の良いおばさんはコロッパラ副代表議員、それと若手のオンディアス議員などが出席していた。


 リエッタさんは聖徒でもないし、そもそも国籍がヴェネチアン国だということもあって、最初から除外されていた。

 話題というより、ヴェネチアン国からギランダー帝国に行って神の御子のたちを救出したこと、ロト国のアクアダンジョンに潜ったことの聞き取り調査みたいだった。


 ギランダー帝国の報告もあった。

 調査は進んでいないけどの現状は荒れていてエラリック第一王子が帝王を継承したそうだ。

 これからはもっと綿密に調査するそうだ。


 それとは別に、キフィアーナちゃんはもう一度ルードちゃんに挑んでボコボコにされたそうだ。

 こぶしで語る友情が芽生えたんだろうか?


  ◇ ◇ ◇


 七月一八日黒曜日。

 オケアノス海周辺諸国会議の歓迎パーティーがオーラン市で大々的に催された。

 オーラン市ができてから最大規模のパティーだ。


 注目の一つはオケアノス周辺諸国の最大国、ヴェネチアン国のミラーニアン公爵と、王孫のキフィアーナちゃんだ。


 ヴェネチアン国に並んだロト国。


 ロト国の奥にで並んだアーギ国とフロン国がバルハ大陸の国だ。


 バルハ大陸とアーノルド大陸をつなぐ架け橋の国となっているパーナマ国。


 アーノルド大陸にはヴェネチアン国に次に大きなマリオン国。


 アーノルド大陸のかけ橋の窓口のオバレン国。


 マリオン国とオーレン国に挟まれた最小国のクリーット国。


 オバレン国とクリーット国の奥、キュベレー山脈のふもとのキュレッジ国。


 その九か国がオケアノス周辺諸国の九か国だ。


 頼まれてミクちゃんと出席したけど何かとハルオラン代表議員に連れまわされて頭に来ていた。


「セージスタ、チョットこちらに来てくれんか」

「忙しいからお断りします。ミクちゃん行こう」

「いいの」

「うん、あのおじいちゃん失礼過ぎるから」

 大きな声を出して、ハルオラン代表議員から離れた。


 にらみつけるような視線を感じたけど無視だ。


「セージスタちゃん、そのようなことを言うものではありませんよ」

 コロッパラ副代表議員が、たしなめに来たけど。


「あなたも一緒ですか。両親から話して、僕たちを政治の手段に使おうなんて最低な大人ですね。僕たちの前からいなくなってくれませんか。失礼します。

 ミクちゃん行こう」

「ええ」

「もう呼ばないでください。まあ、呼ばれても来ませんけど」


 僕はわざと大声で理由を述べた。

 周囲がぎょっとしていた。

 絶句するコロッパラ副代表議員を後に、僕たちはその場を離れた。


 事の起こりは、パパとママ、それにウインダムス議員とマールさんがそれっぞれ国の代表と会談をしていた時に、突然、僕とミクちゃんがハルオラン代表議員に呼ばれたんだ。

 何かと思って行ったら、「彼らが“神の御子”のセージスタとミクリーナだ」と勝手に紹介しだしたんだ。


 何言ってるんだと思っていたら、意味不明な会話、魔法の提供などの話が交わされ出して、僕たちそっちのけで魔法の約束をしだすので、僕たちは無視してその場を離れようとした。


 そしたらまた呼び戻され、同じような話が続く。

 もう一度離れようとしたら、また呼ばれたので堪忍袋の緒が切れた。


 僕とミクちゃんはパパとウインダムス議員のところに戻った。


 そこにハルオラン代表議員がきた。

「ノルンバック議員」

「何でしょう」

「お宅のせがれは何だ、会話中に恥をかかされた。この責任はどうしてくれる」

「どういうことでしょう」


「それは……」

「坊主黙れ!」

「黙るのはおじいちゃん! あなたです!」

「セージスタ! 申し訳ありません」

「パパ、謝る必要はないよ。こお爺さんがとんでもないことを約束しようとしたんだから。それも僕やミクちゃんを利用して」


「それはどういうことだ」


 映像装置を取り出し、ポチットムービーで写した映像をパパとウインダムス議員に見せた。

 映し出さされた内容は僕とミクちゃんを、魔法の教師として高額で貸し出し話だ。

 さすがにハルオラン代表議員は映像を撮られているとは思わなかったようだ。


 怒髪天を突くとはこのことだ。

「お二人とも速やかに、オーラン市から出ていってください」

 パパとウインダムス議員がハルオラン代表議員とハルオラン代表議員に厳重に抗議をした。


 パパとウインダムス議員はそれとは別に遠距離電話(ディスタンスフォン)でマリオン市及び、国の議会に厳重な抗議をも行った。

 もちろん映像も送ることを付け加えてだ。

 なんだかひと悶着あったみたいだけど、何とかなった(?)みたいだ。


 僕とミクちゃんはもちろんパパとウインダムス議員と行動を共にしていたので四人で一緒にパーティーに戻ってきた。

 とにかく


 なんでもマリオン国の中でもオーラン市の突出した技術、それと神の御子までも独占したような状態に嫌悪感を抱いている人たちがいるそうだ。

 そのような人たちとも折り合いを付けないといけないのかと、どっと疲労感に襲われた。

「ハルオラン代表議員とハルオラン代表議員の対応はウインダムス議員とパパがするから」と言われたけど、安心なんてしてられないよね。

 ちなみに魔導砲で成功しただけで、造船技術に関する技術などマリオン市が進んでいる技術なんてたくさんあるんだけど。

 もちろんその先を行くのがヴェネチアン国だ。


 そうこうすると音楽が奏でられ、ダンスが始まると、

「お願いいたします」

「こちらこそ」

 いつものようにミクちゃんとのファーストダンスだ。


「アンタって、問題と巡り合う才能の塊ね。災厄シューターと呼ぼうかしら」

 そう言うと、よろしくお願いします、とキフィアーナちゃんに頭を下げられた。

「それってひどくない」

「だって、どこに行っても騒動の中心にいるじゃない」

「そんなことはないと思うよ」

「まあ、そう思ってるのならいいわ」

 キフィアーナちゃんとダンスをした。


 正式なパーティーなので一〇才未満はいない。

 同年の子供はキフィアーナちゃんを加え僕ら三人にだけなのか? 他には七人の子供がいるけど全員年上のような気がする。


「踊っていただけますか」

 二つか三つ年上の女の子にダンスを誘われた。

「こちらこそよろしく」

 ホールドしてダンスを踊りだす。


 隣ではミクちゃんも誘われていた。


「あなたも神の御子の一人なんでしょ」

「…ええ、そうですね」

 一瞬ためらってから答えた。


「警戒しなくても大丈夫よ。多分他の子たちもみんなそうでしょう。

 ただ、あなたたちは何か特別なの?」

「……なんで?」

「みんなというか、幾つかの国の人たちが注目してるもの」

「……そうなんですか。さあ、なんででしょうね」

「ここのダンジョンの最下層まで行ったんでしょう。会議が終わったら連れていってくれる」

 どうやら何らかの理由は知っているみたいだ。

「それは約束できません。あなたの強さがわからないですし責任が持てないもの」

「わたし、それなりに強いわよ」


 そう言いながら、僕を投げ飛ばそうとしてきた。

 僕は体に力を入れ、軽く受け流しながらも自分で負担にならないように遠くに飛ぶ。


 周囲が僕に注目してダンスを止める。


「ふーん、本当に強いんだ」

「悪戯はしない方がいいですよ。それじゃあ」


 僕はパートナーから離れようとしたら、踏み込んで右手で手刀を放ってきた。

 それをバックステップでかわすと、更に追撃で手刀を放ってきた。


 遅い。


 僕は手刀をつかんで、手首をひねると、合気道の技のようにフワリと浮いて床に投げた。

 勢いがあったのでチョット強く投げてしまったいだ。


 バーン、と音を立て神の御子と名乗る彼女が床を転がった。

 女の子は広がったスカートを急いで整えて立ち上がるとこちらをにらんできた。


「大丈夫ですか? あなたくらいの強さは僕のクラスにはいっぱいいますよ」


「おぼえてなさい」

 泣きながらどこかに行ってしまった。


 ゴロゴロ……ゴツン。


 男の子がミクちゃんに転がされ、壁に頭をぶつけていた。

「失礼な人ですね。ここは仲良くダンスを踊る場所ですよ」


 かなりの勢いで投げ飛ばされたのか、同じく涙目で飛び出していった。


「身の程知らずもいいところね。

 セージとミクの強さも知らずに、こんなところで挑んだりするなんて。

 わたしにも誰か掛かってこないかしら」


「キフィアーナちゃん!」

 ミクちゃんがフンスと周囲を見回すキフィアーナちゃんを怒鳴りつける。


「けん制にチョットくらいはいいじゃない。

 どうせ総合が“50”や“60”程度しかない、オーラン魔法学校じゃゴロゴロといる程度の強さしかないんだから」

「たとえそうだとしても言いすぎだよ」

「でもその程度じゃ七沢滝ダンジョンの三層のボス、ビッグマッドバンパイアをことによったら倒せるかもしれない程度よ」

「そりゃー、そうだけどさ」


 周囲がギョッとする。特に残った子供たちがだ。

 キフィアーナちゃんはこれ見よがしにワザと大きな声でシャッべっているから始末に負えない。


「すまない。七沢滝ダンジョンとは下層でそれほど強い魔獣が出るのかい」

「ええ、三層だと通常に出会う一番強い魔獣がマッドバンパイアで強さが“50”前後です。

 それが階層を降りる階段の番人がいて、それがビッグマッドバンパイアです。

 強さは“60”を少々越していますね」


 隣で踊っていた大人の男性が訊ねてきたので、三層の情報を教えた。


「四層は」

「それは会議でお訊ね下さい。資料なども配られるって聞いていますから」

「でも君たちはもっと深く、下の階層に行ったんだよね」

「はい、一応最下層と思われる階層まで行きましたが」

「わたしは、最下層まで行ってないわよ!」

 キフィアーナちゃん、勝手に不満をぶつけないように。


「それは何層かね?」

「……一〇層です」

「わたしは八層で、今度は一緒に一〇層まで行く予定」


 チョットだけためらってから、答えると、周囲がざわついた。

 キフィアーナちゃん。答えなくていいから。


「そのような質問は会議の席で、ここは親睦を深めましょう」

 マールさんが活躍してその場を収め、ダンスが再開された。


  ◇ ◇ ◇


 七月二〇日の青曜日、午前からオケアノス海周辺諸国会議が開催された。

 マリオン国側の出席者は、ウインダムス議員が議長として出席し、代表は市長のクロノイトさん、それにパパにマリオン市から来たオンディアス議員の四人。

 それに僕・ミクちゃん・ルードちゃんにママ・マールさん・ラーダルットさんが同席している。

 もちろん秘書に書記官などの記録係なども同席している。

 それと冒険者ギルドのボランドリーさんだ。


 その他の国も子供がいるか、いないかは別として似たような人員で参加している。


 僕とミクちゃんに絡んで投げ飛ばされたのは、バルハ大陸とアーノルド大陸をつなぐ架け橋の国となっているパーナマ国の子供のようだ。

 時々こちらに視線を送り、居心地悪そうに座っている。


「大災厄の対策のためのオケアノス海周辺諸国会議を開催します」

 ウインダムス議員の開催宣言が行われた。


 オケアノス暦三〇四七年にゲブ大激震が大災厄開始とされている。

 オーラン市でも津波があって、港や船に被害が出た。


 オケアノス暦三〇五〇年にアぺプ大激震で浮遊島のイナンナが分裂した。

 モンスタースタンピードも発生した。


 オケアノス暦三〇五二年にセルケト激震があった。

 ヴェネチアン国でクーデターが発生したのもこの時で、一年未満で政権を取り戻した。


 その後は小規模の地震や、小規模なモンスタースタンピードが各地で発生が続いた。


 オケアノス暦三〇五八年の六月七日にオケアノス海に落ちて、五才で僕は目ざめた。


 オケアノス暦三〇六○年に、世界各地で地震とともにモンスタースタンピーがした発生した。

 セージが七才になる都市、オーラン魔法学校の一年に入学した年だ。


 その後に地震は続き、七沢滝ダンジョンや他国でもダンジョンが発生した。


 黒霧獣の影響でギランダー帝国で子供たちが奴隷のような目に合い、ロト国でも黒霧獣に憑依された子供が発生した。


 知らないところで何かが発生している可能性もある。


 そのような大災厄の大まかな説明があって、僕は自分の記憶と照らし合わせながら伯父様であるフォアノルン伯爵の話を聞いた。


「ここ最近“聖徒”の称号を持つとされる…」

 そう、僕たち聖徒の称号は、個人情報を開示しても、更に開示しようと思わないと相手に見えない称号だ。

「“神の御子”が出現しています」

 そのため、一般的に“神の御子”とか“神の御使い”とか呼ばれている。

 そしてその神の御子が大災厄に終焉をもたらすとされているのは歴史の本に記載されていて、それらの本は一応機密事項となっている。

 多分魂魄管理者(女神様)の意向だと思う。


「お告げと“神の御子”から聞き取ったり、様々な状況を調査をしたところ、あと、各国からの情報提供ありがとうございました。

 その結論としえ大災厄は、負の魔素や魔法力の吹き出し口が数多く発生していて、そこから黒い波動が発生するためです」


「神が準備を整えるまでか、あと数年の間、帰還は不明ですが準備期間があるようです」


「現在は神様の恩恵によって、その負の吹き出し口の多くが抑えこまれているはずです」


「大地震やモンスタースタンピードに、ここ最近の天候不順などは、負の魔素や魔法力の吹き出し口は完全には抑えきれておらず、時たま大規模に漏れ出る黒い波動の所為です」


 僕とミクちゃんが女神様から直接聞いた内容より詳しい。

 かなり情報を集めたようだ。

 それとも禁書の中に女王があるのだろうか。


「とにかくあと数年だと思われるが、神様の準備が整った段階で抑制をやめ、負の吹き出し口が全開となる。

 神の御子たちがその吹き出し口をふさぐことによって大災厄が収まります」


 フォアノルン伯爵、伯父様が僕の方を見た。


「ここにいらっしゃるセージスタ殿、ミクリーナ殿、ルードティリア殿の三人は、オーラン市で初めて神の御子となった人たちだとうかがっています。

 ヴェネチアン国にもいらっしゃって、その力でギランダー帝国の神の御子が捕らわれるという事件があって、救出に神から指名された子供たちでもあります」


 会議の出席者からどよめきが発生する。八ズイ。

 僕とミクちゃんは真っ赤になるし、ルードちゃんはむすっとしてしまう。

 周囲のざわめきはまだまだ続いている。


「それとロト国でも負の波動事件があって、その救済にこの子供たちが出動し、解決しました。

 リヴェーダ王、間違いはありませんか」


「ありません。セージスタ殿たちよ、世話になったな。感謝しておる」


 収まりつつあった周囲のざわめきは、再度大きくなる。


「それでセージスタシ殿、ミクリーナ殿、ルードティリア殿は、負の吹き出し口を見たのだね」


「「「はい」」」


「どこで見ましたか」


「オーラン市の近くに新たにできた七沢滝ダンジョンと、メルビン町のメビウスダンジョンに、ロト国のアクアダンジョンで見ました」


「三か所で最下層に行ったということですか」


「僕たちが確認した限りで更に下に行く階段がありませんでしたからそうだと思います」


「最下層に行った全員でその負の吹き出し口を確認したのですか」


「いいえ。“聖徒”の称号を持たない人が見ても見えないことはその時に知りました」


「三か所の吹き出し口で違いはありましたか」


「それについては微妙です。

 似ているようには見えましたが、並べて見たわけじゃないですから」


「似ているということは確かなのですね」


「ミクちゃん、ルードちゃん、何か違ったところ有った?」

「ううん、なかったと思うよ」

「同じに見えた」


 午前中の会議が終わった。


 午後からは僕たちや、冒険者ギルドのボランドリーさんと一緒に七沢滝ダンジョン内で撮影した映像をもとに最新のダンジョン、七沢滝ダンジョンの情報を事細かく説明していった。


 負の湧きだし口(次元の裂け目)からワイバーンが出現したことは衝撃だったみたいだ。

 そしてそのワイバーンが退治されたことにも全員がショックを受けていた。

 一応退治者の名前は伏せたけど、候補が七沢滝ダンジョンの最下層に行った数人しかいないことは確かだし、その中でも最有力候補は僕たち三人だと思われているのは確かだ。


 各国での打ち合わせや整理も考慮して午後三時に終了した。

 その時に七沢滝ダンジョンの資料を各国に渡した。


 僕とミクちゃんにルードちゃんにキフィアーナちゃんの四人はその後にリエッタさんの補習授業だ。



  ◇ ◇ ◇


 翌日も七沢滝ダンジョンの映像を見ながらの話し合いが続いた。

 ここ最近に発現したダンジョンで一番探索が進んでいるってことがその理由だ。

 多分この七沢滝ダンジョンが大災厄に立ち向かうための知識と経験が得られるのではないかということでもある。


 そしてメビウスダンジョンや、アクアダンジョンの映像も映しだされる。


 その他にはオケアノス海周辺諸国に存在するダンジョンの情報の提供もお願いすると、了承がもらえた。

 正確な情報は後からとしながらも、会議中はわかる範囲でダンジョンのことを聞いた。

 新たに出現したダンジョンもあって、七か国でダンジョンが存在していた。


 オーラン市はその情報と引き換えに、というわけでもないが、ワイヤーネットや粘着弾によるレベルアップの情報提供なども会議中に提供した。


 ボランドリーさんは今までの魔導砲で撃ちだす大型で重い魔導ネットと違い、手持ちができる軽量なワイヤーネットと粘着弾や粘着液で魔獣の捕獲して他者に経験値を取得する方法――遠隔系の攻撃魔法がない魔獣限定――も確立していた。


 大人数で狩りをすると経験値がほとんど入らないし、ダメージ度に応じて経験値を稼ぐのが難しい世界だ。

 それを僕が強力な粘着弾や、七沢滝ダンジョン内のゴーレムで、たった一人で全ダーメージを与え、止めまで刺すことを確立したことだ。

 ボランドリーさんたちは、それを他の魔獣でも工夫したってことだ。

 ワイヤーネットも最初にセージが使用した使い捨ての弱いものから改良されていて、粘着弾と一緒に使用することによって、繰り返し使用できることでレベルアップしやすくなっている。

 以前は総合が“100”になるのなんて至難の業だったのに、ワイヤーネットと粘着弾様様といったところだ。


 粘着弾や粘着液は僕が開示を許可しているけど、

「粘着弾や粘着液の魔法陣は“神の御子”からの無償提供だ」

 ボランドリーさんの言葉に周囲の視線が痛い。

 ミクちゃんとルードちゃんが僕を見るから余計に視線が集中する。


 あとは近場にダンジョンがあるとないとで、取得できる経験値に差ができ、総合(強さ)が違うってことだ。

 大災厄以降、魔獣が特に強くなったのがダンジョン内で、強さ“100”前後の魔獣が頻繁に出現するようになったのはここ最近だそうだ。

 次元の裂け目の影響がそんなところに出ていたなんて、初めて知った。


 それとダンジョン周辺では、魔獣が強く、そして凶暴化するという噂もあるそうだ。

 僕としてはその感覚は一切ないけど、これからは注意深く確認した方がいいのか、七沢滝ダンジョン付近の魔獣は現在となってみると僕よりあまりにも弱くて、判断できないような気もしないでもない。

「ねえ、ミクちゃんとルードちゃん」

「なに?」「なんだ」

「七沢滝ダンジョン近くの魔獣って強くなった?」

「さあ」「気づかなかった」

 小声で訊いてみたけど、僕と一緒だった。


「一気に経験値を得られて総合の数値が上がるが、促成栽培された強さは徐々に積み上げてきた強さとは違って、戦闘経験を積むまでは“10”~“20”程度は低いと思ってくれ」

 ボランドリーさんが注意点も伝えた。


  ◇ ◇ ◇


 七月二三日白曜日にはうわさ話や、ギランダー帝国、それにオケアの視界周辺諸国の国の情報などの情報提供があった。

 僕としても本にない情報が随分と手に入った。


 ロト国のアクアダンジョンもそうだが、大災厄後にどこのダンジョンでもダンジョン内の魔獣が強くなったそうだ。

 僕は七沢滝ダンジョンにメビウスダンジョン、それとアクアダンジョンもある意味同レベルだと思っていたけど、負の魔素や魔法力の濃度が上がることと比例して魔獣が強くなってきたんじゃないかって予想だ。

 魂魄管理者(女神様)のいっていた強くなりなさいも、このことと関係しているかもしれない。


 ダンジョンの無い国からレベルアップを確立したオーラン市に人員を派遣したいという要請もあった。


 ヴェネチアン国には魔導砲の技術提供の要請もあったが、ギランダー帝国との戦争があるかもしれない状態での技術提供は不可能だと却下された。

 ただし販売は格安で行うそうだ。


 マリオン国は共同研究・共同開発の名目で共同の研究所の設立を検討しようという、個別会談も行われた。


 オケアノス海周辺諸国は“対大災厄同盟”を締結した。


 そしてアーノルド大陸とバルハ大陸の親交の無い国や、関係の希薄な国、オケアノス海周辺諸国のうちの数か国としか親交の無い国には、対大災厄同盟への参加や強力を要請する使節を派遣することになった。

 もちろん大陸の他の国々も同様の対策が検討され、行動しいてる可能性があるから、相手の意思を尊重したうえでの同盟の参加や協力で、オケアノス海周辺諸国より緩い関係でも構わないとされた。


 今後も打ち合わせを密に続けることを全会一致で了承して会議が終わった。


 パパに至っては監視装置のホイポイ・マスターに三連射のトライガン、ポチットムービーやルルド(マジック)キャンディーなどの販促も忘れなかった。


 ちなみに精霊記号や精霊文字の改変の影響で、マジックキャンディーの回復力も二割ほどアップしている。

 真のルルド水並みになったと思う。これが真のルルド水であればもう二割ほどアップするのかな。


 ヴェネチアン国からもトライガンより一回り大きなにニードルショットというガンが紹介されていた。

 上部に短針のカートリッジを装填するタイプで、カートリッジガンやライフルより扱いやすそうだ。

 エルガさんが目の色を変えそうだ。


 会議とは別に、僕とミクちゃん、ルードちゃんにキフィアーナちゃん――わたしもセージたちとアクアダンジョンに一緒に潜ったのパーティーの一員ですの宣言で――に様々な国から訪れてほしいと要請があった。


  ◇ ◇ ◇


 七月二三日白曜日の夕方からお別れのパーティーがささやかに挙行されるはずが、盛大に挙行された。

 歓迎パーティーと違い、子供の参加者が増えていた。

 僕にミクちゃんにキフィアーナちゃんはダンスで引っ張りだこだった。

 もちろんルードちゃんとリエッタさんは不参加だった。


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