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次元災害で異世界へ  作者: 真草康
ロト国編
155/181

151. 真の掃討戦 サイレーントリフィド


 四月二〇日青曜日。

 慣れた所為か、昨日より短針()は増やせた。

 目標は強化トリフィドラフレシアを含めて最低で五匹、できれば七匹を倒したいと思っているけど、安全第一。とにかく無理はしない、怪我をしないが最優先だ。


「いくぞー」

「うん」「よろしくお願いします」

 僕の気合の入らない掛け声に、ミクちゃんは可愛らしくうなずき、リエッタさんは丁寧にお辞儀する。

「気合入れなさいよ!」

「相変わらず締まらないわね!」

 文句をぶつけてくるのがルードちゃんとキフィアーナちゃんだ。


「<ホーリーフラッシュ><ホーリーフラッシュ>……

 <ギガンティックビッグバン><ギガンティックビッグバン>」

 自分たちの周囲の黒い水球を破壊して、次元の裂け目、目指す薄い靄を吹き飛ばす。


 リエッタさん率いるルードちゃんとキフィアーナちゃんの短針魔導ライフルが、バン、と轟く。


 黒い波動をまとった風の防護を切り裂いて、強化トリフィドラフレシアに突き刺さる。

 とはいえ、短針魔導ライフルだけで倒せるほどダメージを与えるには、短針が足りない。

 作戦は昨日と同様の二方面からのゲリラ戦だ。

 もちろんルルドキャンディーはしこたま持たせている。


 魔法力が通りやすくするためにミスリルの含有量が多めの短針を四人に作ってもらって、僕はカートリッジとその短針に<マルチスピン><貫通><切れ味アップ><強固><ハイパーボルテックス><白い力>をマシマシで付与した。

 その効果で昨日より確実にダメージ力がアップしているが、使用魔法力もアップしている。


 強化トリフィドラフレシアたちが移動して、最後尾となったトリフィドラフレシアにミクちゃんが短針魔導ライフルを撃ち込む。

 二匹を引き離したところで、僕も短針魔導ガンで更におびき出す。


「<ギガンティックビッグバン><ギガンティックビッグバン>」

 そして赤銀輝で止めを刺した。


 残り一〇匹は全て強化トリフィドラフレシアで、体高は三メル強から五メルだ。

 真の戦いはこれからだ。

 リエッタさんたちも牽制と引き付けは上手くいっているようだ。

 それと昨日とは違って、ダメージも与えている。うまくいけば小ぶりの強化トリフィドラフレシアの一匹や二匹は倒せるかもしれない。


 僕はミクちゃんに手を上げる。

 バン、と最後尾の強化トリフィドラフレシアを撃つと、最後尾の二体がこちらに向かってくる。

 引き離しには成功したけど、傷付けたのはほんのわずかだ。

 僕にとってもここからが真剣勝負だ。


 黒い波動をまとったトゲが飛んでくる。

<マジッククラッシャー>

 白い力を込めて迎撃する。


「<ギガンティックビッグバン><ギガンティックビッグバン>」

 安全距離を取ったところで、最大火力をお見舞いする。

 そうしてトゲが飛んでくる前に移動、強化トリフィドラフレシアの周囲を駆けまわる。


 ギガンティックビッグバンの防御に振り回した鞭の何本かが、半分ほど焼け落ちる。


 もう一度。

「<ギガンティックビッグバン><ギガンティックビッグバン>」

 さすがに走り回りながらだと魔法力の込め方が甘くなる。


 更に数本の鞭が焼け落ちる。


 もう一度。

「<ギガンティックビッグバン><ギガンティックビッグバン>」


 あらかた鞭は焼け落ちた。

 三面の毒々しいラフレシア花の顔(?)もかなりしおれている。

 そろそろいいか。

 フィフススフィアに白い力を再度、それもマシマシで込めて、強化トリフィドラフレシアに接近する。

 もちろん二体が重なる角度、相手が攻撃しづらい角度からだ。


 バン。

 僕から見た後ろに隠れた強化トリフィドラフレシアをミクちゃんがけん制に、射撃してくれる。GJだ。


 強化トリフィドラフレシアが先制攻撃で、短くなった鞭を振り回してくる。

 そしてわずかに残ったトゲを飛ばしてくる。


 それらを並列思考と加速で、余裕でかわす。


 バン。

 短針魔導ガンでまずは三面のしおれた花を大きくえぐる。


 またも鞭が飛んでくる。

 それを避けて、赤銀輝で鞭の付け根を……ガキッとすごい手ごたえ……、オリャーッと切り飛ばす。

<ステップ>

 三角跳びで、ガキッともう一本。

<ステップ>

 今度は三面の花を付け根から切り飛ばした。


<ステップ>


 一旦地面に下りて、距離を取る。


『レーダー』で観察。

 まだまだ生命力は豊富のようだ、

 魔獣核(石)は、三面花の付け根の下のはずだ。


<ステップ>

 大きく右上空に跳んで。

<ステップ>

 今度は左。

 鞭の動きが遅い。

<ステップ>

 今度は真上。


 真っ向竹割り……ガキンッと本当に硬い。…で大きく切り裂いて、<ボルテックス>で止めを刺した。


 一旦距離を取って『レーダー』で確認する。

 間違いなく倒したようだ。


 手を上げてミクちゃんに合図する。


 もう一匹も同様の手順で、そして慎重に倒すと、ミクちゃんが駆け寄ってきた。

 二人で魔獣石二個を取り出して、第二ラウンドの完了だ。



 ミクちゃんの射撃から第三ラウンド開始だ。

 追加で二匹を倒す。


 残り六匹と数からすれば半分だが、六メル前後が二匹、五.五メルが一匹、五メルが一匹、四.五メルが二匹と巨大な強化トリフィドラフレシアだ。


 僕はリエッタさんに手を上げ、こちらの狩りが終わったことを告げ、合流してドライエリアまで撤退した。


 今日はリエッタさんが上手くコントロールして、キフィアーナちゃんが酔っ払いこともなかった。


「だからワラウナ!」

 僕が一瞬昨日のことを思い出してクスリと笑ったら、怒られちゃった。


  ◇ ◇ ◇


 四月二一日黄曜日。

 更にミスリル多めで短針()を作ってきた。


 靄もあるし黒い波動が漂っている。

「<ホーリーフラッシュ><ホーリーフラッシュ>

 <ギガンティックビッグバン><ギガンティックビッグバン>」


 靄の中から現れたのは、二匹のサイレーントリフィド。

 体高六.五メルほど、それが二体。

 六面のラフレシア顔(花)の一つが特大で、その特大顔(花)が二つともこちらを向いた。


 KYUASHA-----。

 GYUEASHAEA-----。


 黒い波動とともに幻覚&催眠音波を発してきた。

 それも耳鳴り音を伴う強烈な音波だ。


 思わず耳をふさいでしまう。


 まずい。

 リエッタさんが、そしてキフィアーナちゃんがもうろうとして、前に歩き出してしまった。


 ミクちゃんとルードちゃんは何とか踏ん張っているが、汗を拭きだして何とか耐えているって状態だ。


 僕はミクちゃんとルードちゃんの短針魔導ライフルを奪うと、横になって一匹の巨大な顔にめがけて発射する。


 一匹の音波が止まる。

 それと、二匹がこちらに向かった歩き出して売る。


「ミクちゃん! ルードちゃん! しっかり!」

 白い力が“1”となったミクちゃんと、同様に“0”として発現したルードちゃんは汗が止まり一段落ついたみたいだ。


 ミクちゃんとルードちゃんに短針魔導ライフルを渡す。

 急いで駆け出しリエッタさんとキフィアーナちゃんから短針魔導ライフルを奪い今度は、もう一匹に向けて発射!


 解音波が止まると二人の歩みも止まる。


 短針魔導ライフルをアイテムボックスに放り込んで、もうろうとした二人を両肩に抱える。

「ミクちゃん! ルードちゃん! 一旦撤退!」

 僕の叫び声に、ミクちゃんとルードちゃんがうなずくと、後ろを向いて駆け出す。

 僕は二人に追いつくと、

<テレポート>

 一気に離脱した。


  ◇ ◇ ◇


 ドライエリアでホイポイ・ライトを設置して、キフィアーナちゃんとリエッタさんは魔導車で寝かせている。

 一応何かあれば、ミクちゃんとルードちゃんも動かすこと程度はできるし、リエッタさんが起きれば何とでもなる。

 まあ、そうはいってもドライエリアに入ってくる魔獣は弱いものしかいないから、問題になるほどのことはない。

 戦闘指揮用に作成された豪華な魔導車の中で寝かせていれば、弱い魔獣の攻撃にはびくともしないから、大抵は安全だ。


「あのサイレーントリフィドって、他のトリフィドラフレシアの魔獣石を食べて変異したのかな」

「それではなければ六匹が二匹になったことが説明付かないもんね」


 まずは話題になったのがサイレーントリフィドのことだ。

 どうやって倒せばいいのかも想像がつかない。


 キフィアーナちゃんとリエッタさんは眠っていたまま、三人で早めの昼食を摂る。


「キフィアーナちゃんとリエッタさんをよろしく」

「セージちゃん、どうするの」

「セイレーントリフィドをやっつけるに決まってるでしょう」

「あれだけ防御力の高い魔獣をどうやってたおすの?」

「……うーん…、もう一回実物を見ればトハ思ってさ」

「何にも考えたないんじゃないの! どうせそんなことだと思ってたわよ」

「セージらしい」


「ルードちゃんは、大丈夫になった」

「耐性があるから何ともない」

 いやいや、顔にまだダメって書いてあるよ。相当きつそうだもの。


「セージもっとこう、バーンとした武器は無いの」

「ライフル以上の武器は無いね」


 さすがに武装魔導車はアイテムボックスに入れてない。

 今度は魔導砲も放り込んでおこうか。と、思った時、ピン、ときた。


「ミクちゃん付き合って」

「いいよ。そのかわり無理は厳禁。絶対だからね!」

「わかった」

「約束よ!」

「わかったって」


 ホントに信用が無いってのを痛感する。

 前世の幼いころのことを基準にするのは止めてほしい。


「ルードちゃんは二人を守ってあげてて」


 僕の要望に二コリと笑うミクちゃんに、不満そうなルードちゃんだ。でも仕方ない。耐性のあるのはミクちゃんだ。


「わかったわよ! ミク、セージを頼むわね」

「わかってます」


 不平に綺麗な顔を歪ませるルードちゃんだが、ミクちゃんには気安い表情を見せる。

 ミクちゃんがそれににこやかに答える。


  ◇ ◇ ◇


 次元の裂け目の荒れた広場に、ミクちゃんと一緒に戻ってきた。

 サイレーントリフィドは次元の裂け目に戻って、鞭を伸ばして次元の裂け目に突っ込んでいる。

 何を取り込んでいるのか、吸収しているのか気になるところではある。


「セージちゃん!」

「ああ、それじゃあ予定通りに」

「うん」


 周囲を歩き回り、お目当てのものをミクちゃんと一緒にアイテムボックスに放り込んでいく。

 いくらでもあるから単純作業だ。

 ミクちゃんも『白い力』が“1”となったおかげで、シールドで黒い水球がはじけるようになったようだ。

 身体強化で荒れた広場を駆けまわってお目当てのものは相当数手に入れた。


「それじゃあ行こうか」

「うん」

「「<フライ>」」

 僕とみちゃんは手をつないで、空に飛んだ。


 空は思っていたほど高くはなかった。

 それでも八〇メルほどもある。

 僕たちは目測で六〇メルよりやや上、六五メルほどの高さに<スカイウォーク>で立った。


「ミクちゃんはあっちで、僕はこっちね」

 どっちでもいいけど担当を決める。


「<ステップ><ステップ>」


 その上に拾ってきた石を置く。


 玄武岩などの石の比重は二.七倍から三倍程度だ。

 二〇リットル入りのポリタンクサイズの石で約六〇キロの重さってことだ。


 僕の拾った石、取り出した石は一〇〇キロに、一五〇キロ程度くらいか。


「<ハイパーカタパルト><ハイパーカタパルト>、『ステップ:解除』『ステップ:解除』」


 自由落下だと三.六秒ほどが、カタパルトの加速で二秒弱でセイレーントリフィドに、ドーン、ドーン、と直撃。


 GYUEASHAEA---。


 セイレーントリフィドの悲鳴か。

 文字にすると同じような響きだが、苦しそうに聞こえる。


 そして黒い波動が来たが、威力が弱い。


「<ステップ><ステップ>」

 その上に拾ってきた石を置く。

「<ハイパーカタパルト><ハイパーカタパルト>」『ステップ:解除』『ステップ:解除』

 第二段の発射だ。

 いちいち声に出すのはめんどくさい。解除だけは脳内でだ。


 トゲも飛んできたけど、真上に六五メルだと威力が弱い。

 フィフススフィアで簡単に弾く。


「<ステップ>」

「<ハイパーカタパルト>、『ステップ:解除』」

 ミクちゃんも第一段を発射した。

 僕のように並列思考がないから一発ずつだ。



 僕の方は第八段、一六発で沈黙して、第一〇段、二〇発で生命反応が無くなった。


 ミクちゃんは医師が僕より小ぶりだったこともあり、生命反応が無くなったのは三〇発目だった。


 注意深く観察しながらまずは僕が降りて、邪魔な石をアイテムボックスに放り込んで、魔獣石を回収した。


 続いてミクちゃんが降りてきて、魔獣石を回収した。

 それと短針もできるだけ回収した。

 こんな時には空間認識に感謝だ。


「セージちゃん、やめて!」

「ああ、わかった」


 僕が次元の裂け目に小さな石を放り込んで反応を見ようとしたらミクちゃんに止められた。


 これで今回のミッションは完了だ。

 次元の裂け目の下で、チョット一休み。


「次元の裂け目の影響って、黒霧獣のように向こうからだけじゃなくって、こっち側からも干渉できるんだ」

「セージちゃん、さっきみたいに物を放り込んだり、手を突っ込もうとは思わないでね」

「ああ、わかってるってば」

 怖いから、そんなに睨まないでよ。

「戻ろうか」

「そうだね」

 僕が次元の裂け目を見上げると。

「ほら戻るわよ」

 またもにらまれた。


 次元の裂け目のことを大っぴらに話せるのは、ミクちゃんとだけだ。

 とはいえ、僕たちも『次元の裂け目』と名前を知っていて、漠然と向こう側に違う世界、違う次元があるって認識があるだけで、何もわかっちゃいないんだけど。

 ルードちゃんはどこまで理解してるのかな?


  ◇ ◇ ◇


「無事セイレーントリフィドをやっつけてきたよ」

 僕が親指を立てて自慢気にルードちゃんに報告をしたら。

 ミクちゃんも照れながら親指を立てて、「やりました」と報告をする。


「二人とも私の友達なんだからその程度で自慢しないでよね!」

 ルードちゃんは、どこか不満そうだ。


 キフィアーナちゃんとリエッタさんは気持ちよさそうにまだ眠っていた。


  ◇ ◇ ◇


 僕とミクちゃんがドライエリアに帰ってきた後の二時間後、もう夕方だけど、時計の時間でってことだけど、キフィアーナちゃんが目覚めた。


 その一時間後にリエッタさんが目覚めた。


「ドドーンと加速した石の雨を降らせて、セイレーントリフィドを倒したんですよ」

「魔獣に会った戦い方を見つければ、少ない危険で魔獣が退治できるということですね」

 ミクちゃんの報告に、リエッタさんが感心する。

 和やかな雰囲気の夕飯を食べた。


 五人で深夜に起きて、黒い波動が発生しないことを確認して本当のミッションコンプリートだけど、何年にもわたって徐々に増えてきた黒い水球が増えなくなったていうのを確認するのは無理だ。

 今までだって黒い波動で黒い水球が増えたってのは確認できてないからね。


 それでもできるだけジックリと各階層の確認をしながらダンジョンを出たのが五月二日青曜日だった。


 やっぱ、増えなくなったなんてわかんない。


 僕の白い力は“5”に、ミクちゃんは“2”に、ルードちゃんは“1”となった。

 層の確認を行いながらみんなのレベルアップも行ったけど、アップしたのはキフィアーナちゃんの総合が“98”となって耐性の感覚異常は“3”となった以外、サイレーントリフィドを倒したミクちゃんはややアップで、僕はレベル的にチョットだけアップした程度だ。

 ラフレシア関係であまり活躍しなかったリエッタさんとルードちゃんはわずかに上がった程度だった。


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