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次元災害で異世界へ  作者: 真草康
ロト国編
150/181

146. アクアダンジョン深部へ Ⅰ

誤字脱字、修正いしました。

間違いが多くごめんなさい。

 四月一〇日緑曜日。

 目標は黒い波動の発生源だ。

 四層のドライエリアで目覚めた僕たちは、食事を済ませるとアクアダンジョンの五層に下りていった。

 ちなみにメビウスダンジョンと一緒でボス部屋は無い。


 五層はとんでもない世界だった。そういう世界だ。

 サンゴにイソギンチャク。ウミユリにカイメン、海藻にフジツボとそれらが巨大なんだ。

 バランス感覚がおかしくなりそうだ。

 ただ水球とクラゲの数は若干増えたけどサイズに変化はない。ただ黒い水球と黒いクラゲの比率が増えた。

 あと色では判別できないけどジェル水球だったり、粘着水球だったりと色々な水球が出現してきている。

 とにかくさわらないことが何よりだ。


 テーブルサンゴはこの程度はアリかと思えるが、イソギンチャクは高さが五〇センチメルほどもある。触手を入れると一メル以上だ。それが重力につぶれずにフラフラと水中のように、ってここはアクアダンジョンなんだけど。

 とにかく感覚がおかしくなりそうだ。

 ヒトデにウニも大きい。ウニは食べられるのか?


「以前はこれほど大きくなかったんです」

「これらの海洋生物がですか」

 ドーラさんの説明に、問い返したのはリエッタさん。

「ええ、黒い水球が発生してから、これらのものが巨大化してきたんです。

 以前よりまた大きくなったようです。

 それと疑似魔獣が多いのもアクアダンジョンの特色です」

「ジェル水球や粘着水球は?」

「それらは昔からある水球で、めんどくさいだけで害はありません。

 とはいえ戦闘中にぶつかると被害が発生する可能性が高くなるので触れないのが一番です」

「風魔法で吹き飛ばせばいいんですよね」

「はいそうです」


 最初に説明を受けた時には、わかったつもりでいたけど、現実を見ると印象が全然違う。

 ガリバー旅行記の巨人の中に迷い込んだ気分だ。それとも、不思議の国のアリスで小さくなった時の気分か。


 疑似魔獣。

 高濃度の負の魔素や魔法力の影響で、一般の生物が魔獣化したものだ。

 見かけは一般の生物とそん色ないものから、巨大化や強化や特殊スキルや属性など様々な能力を獲得した生物たちだ。

 そのため強さは千差万別だし、魔獣石は小さいが、厄介なのがその多くが毒持ちだってことだ。

 一般的には狩っても、手間がかかるだけの、ゴミ魔獣石だ。


 そしてイソギンチャク・ヒトデ・ウニは、ほぼ100%毒持ち魔獣だ。

 その上ウニは毒トゲを飛ばしてくると厄介だ。

 まあ、僕たちからしたら弱い魔獣で、毒やトゲさえ気を付ければ、それほど脅威でもない。

 サンゴや海藻などもよく見ると黒く染まっている箇所がある。魔獣化が発生しているのか、そうでなければ毒がありそうだ。


 魔法コーティングした厚手の手袋をはめているけど、さわりたくはないものだ。


「ダイオウグソクムシ……」

 そう、巨大なダイオウグソクムシが出現した。

 サイズが一.八メルって嘘だろう。

 あと強さやスキルが良くわからないんだ。ダイオウグソクムシが僕より弱いのは分かるけど、看破がぼやけてしまっている。これも疑似魔獣の特性か?


 注意深く接近して赤銀輝で切りつける。

 ガンと固い手ごたえがあったが、それでも切り倒せた。

 想定より弱かったみたいでホッとする。


 その後に遭遇した魔獣の多くがカニ、エビ、カブトガニ、シャコ、フナムシと甲殻類だった。もちろんヒトデにウニなどもいる。

 そういった手ごたえのない戦闘、真の魔獣と少々違う魔獣との戦闘が続く。

 体感的には強さが“20”から“40”程度だ。それらが三匹から五匹程度の群れで襲ってくる。

「数も相当増えました」

 ドーラさんの感想だ。


 ミクちゃんとキフィアーナちゃんがパニックに陥ったのが、巨大なテヅルモヅルの五匹の群れに襲われた時で、無数の触手の気色悪さに逃げ回っていた。

 一部のマニアには人気があるっていうのに。


 ここでも木刀と赤銀輝の使い分けだ。


 あと問題なことが判明した。

 魔獣の体表に水の被膜があるせいか粘着弾の効果が弱い。

 電撃系も周囲に漏れるのか、威力が弱い。

 有効なのが椅子や岩に氷系の射出魔法に、剣や槍に投てきなどの触接攻撃だ。

 ちなみにハイパードリームワールドなどの睡眠魔法の効果も弱い。

 

 そのような戦闘が続いて六層への階段にたどり着いた。


  ◇ ◇ ◇


 六層、またも巨大海洋生物の世界。

 水球にクラゲ、サンゴにイソギンチャク、ウミユリにカイメン、海藻にフジツボとそれらはそのままで、今度はタコにイカ、エイにサメ、アンコウにカサゴ、ウツボにオニイソメなどだ。

 本来は毒っ持ちじゃないけど毒持ちが増え、凶暴さが増している。強さや素早さもそれに伴い増している。

 看破による数値は不明だが体感的には“30”から“50”程度と五層よりやや強い。


 今度も戦闘は群れで、五匹から八匹程度、一匹と戦闘すると周囲の疑似魔獣が参戦する種々雑多な混成チームとの戦闘だ。

 一人一匹程度だからそれほどたいしたことはない。

 キフィアーナちゃんも総合は“77”――昨日の戦闘で“1”アップ――だからこの程度じゃ問題なさそうだ。


 心配なのが総合が“60”程度のドーラさんだ。

 足元が悪いし、水球やクラゲが漂うダンジョン内の戦闘は思った以上にやりにくい。黒い水球と黄色い水球の数が増えているからなおさらだ。

 基本は防御で、戦闘するにしてもできるだけ弱い魔獣に当たるようにお願いしている。


 オーッと。

 な、なんと巨大なオニダルマオコゼが岩に擬態していた。

 まじまじと見て、木刀の一太刀で倒した。

 毒は貴重なんだそうで回収した。


 六層はそれなりに広く七層の階段に到着するまでに、ドライエリアで昼食を食べ、黒い波動が駆け抜けるのを感じた。


  ◇ ◇ ◇


 七層の生態系は、六層に海魔獣が加わった世界、まあそんな感じみたいだけど、空間は広い。

 だだっ広い空間のような洞窟だ。

 ドーラさんも踏み込んだのは初めてで、地図が頼りだ。

 それに制限があるといってもレーダーと浮遊眼があればなんとでもなるし、脳内地図は記憶強化でそれなりに覚えられるから問題ない。


 それより問題なのがドーラさんがそろそろ限界だし、キフィアーナちゃんも戦闘によっては危なくなりそうだ。

「いったん戻ろうか」

「いやよ、このまま進むわよ!」

 僕の提案を一蹴しようとするキフィアーナちゃんだが。


「案内していただいてここまでわかりましたし、そうした方が良いでしょうね」

 リエッタさんも賛成だし、ミクちゃんとルードちゃんもうなずく。


 駄々をこねるキフィアーナちゃんを無理やり抱きかかえるように、<テレポート>と<ホワイトホール>を併用して階層を素早く移動――僕が安全そうな場所に一人で<テレポート>で飛んで、風魔法で水球やクラゲを拭く飛ばす。そこにミクちゃんが<ホワイトホール>で全員を運搬――しながら、一気にダンジョンの外へ、そしてロータス市に戻った。


  ◇ ◇ ◇


 リヴェーダ王との面会は直ぐに行えた。

「下層から黒い波動が湧き上がってきて、それが水球を、黒い水球に変化させているようです」

「その黒い波動の原因は」

「そこまではつかめていません」

 一応、現状報告だけはしておいた。


  ◇ ◇ ◇


 四月一三日赤曜日。

 結局、キフィアーナちゃん込みの五人でアクアダンジョンに再度潜ることになった。


「キフィアーナ様も守られるだけではなく、強くなるためにオーラン市に赴いたのです。

 もしよろしければ、鍛え上げていただけませんか」

 ヒルデさんから頼み込まれてしまった。

「キフィアーナちゃん、それでいいの」

「当たり前でしょう」

 ということだ。


「お姫様にもしものことがあったら国際問題じゃないんですか?」

 ヒルデさんにコッソリと訊いてみたけど、

「よろしくお願いします」

 頭を下げられちゃった。


 なんとなくだが、アクアダンジョンに忍び込んできたのもヒルデさんの入れ知恵? ことによったらサポートまでしてたかもしれない。そう思わせる思い入れだ。


 食料などの調達は自分たちでも行ったけど、ロト国からの提供があるから楽だ。

 そんなこんなで、各階層の再確認も込みで五層の奥、六層に下りる階段手前のドライエリアまでテレポート無しで駆け抜けてきた。

 途中黒い波動が駆け抜けるように拡散していった。


「キフィアーナちゃん、よく見てて」

 僕はキフィアーナちゃん手本になれるよにと、シッカリと両手で構える。

 目標は適当に見えたイソギンチャクだ。

「右手をシッカリと伸ばして、動かないように固定する。

 右目で狙いを定めて、右手に魔法力を流す」

 魔法力は普通に込める。

「短針魔導ガン内部の魔石に魔法力がたまるのがわかるから。

 人差指でガンのボタンを押して発射!」

 指を曲げて、バン、と撃つ。


 短針が一斉に回転しながら高速スピードで飛んでいく。

 イソギンチャクに短針が吸い込まれるように入り込み、高熱を発してイソギンチャクが崩れてなくなる。

 短針がポトポトと地面に落ちる。

 高熱を発した短針は使い物にならなくなっている。


 ちなみに発射音は短針一本一本が小分けの小さな筒の中で、マルチスピンやカタパルトなどの魔法の作用で、圧縮空気の膨張で発生するので、そんなに大きな音じゃない。

 そして魔法による加速も含んで、その反動が手に伝わるから音より反動の方が大きい。


「なにそれ⁉」

 驚愕に眼を開くキフィアーナちゃん。


「キフィアーナちゃん、まずはこれを撃ってみて」

 カートリッジを交換した短針魔導ガンを受け取ったキフィアーナちゃんが、手の中の短針魔導ガンを恐々と、そして興味深げに眺める。

 それから僕が撃ったイソギンチャクの隣のカイメンに狙いを定め、魔法力を込め始める。


 バン。


 カイメンに穴が開き、崩れ落ちた。

 それから周囲の狩りをして、キフィアーナちゃんがマシマシ――僕たちほど込められないけど――で短針魔導ガンが撃てるようになって、狩りを終了した。

 興奮気味に顔を紅潮させたキフィアーナちゃんは満足そうだった。


「慣れてくると、軌道修正や、ある程度の誘導もできるようになるからね」


 いくつかのカートリッジと魔法付与済みの短針(弾)も渡すと、キフィアーナちゃんは満面の笑みをこぼしていた。

 ちなみに渡したカートリッジと短針は全て光魔法用で、短針にはホーリーフラッシュの強化版、ハイパーホーリーフラッシュを付与したものだ。


 ここで一泊だ。


  ◇ ◇ ◇


 四月一四日青曜日、六層を突破、休憩をはさんで七層に下りる。

 これからが本格的な調査なのだが。


「キフィアーナちゃん、気を引き締めて突っ走らないようにね」

「わかってるわよ!」

 短針魔導ガンの戦闘で、ハイ状態になってしまったみたいで、要注意だ。


「わかってないじゃない。短針魔導ガンはアンタのオモチャじゃないんだから」

「わかってるってば!」

「わかってません!」

「しばらく短針魔導ガンは使わないでください。よろしいですね」

「わかったわよ!」

 ルードちゃんに、ミクちゃんの諫めは突っぱねるも、リエッタさんの諫めは聞くようだ。


 キフィアーナちゃんは、おもちゃを持った子供みたいに、魔導ガンを片手に、魔獣に突っ込んでいってしまうんだ。

 たった一つの良い点は、射線の位置に方向、味方の位置を確認したうえで、短針魔導ガンをキッチリと使いこなしている。カートリッジの交換も含んでだ。

 どんなところに才能が在るかわからないものだ。

 そうじゃなければ、持たせたままなんてありえない。

 まあ、込められる魔法力の所為で、僕たちの方が威力はかなり上なのは致し方ないけどね。


「弾も無限じゃないから、気を付けて、いや、とにかく突っ込まないでね」

 これからは安易に突っ込まれ、囲まれてしまうと厄介なことになりかねない。

「わかったって言ってるじゃない。

 これからは突っ込まないし、ショートスピアで戦うわよ」

 まあ、こんなものか。


「それじゃあ、行きましょう」

 七層に、分け入っていく。

 六層までと打って変わって空気が重い。


 グリーダーにサメ二匹にエイにタコと、雑多な群れに遭遇。

 六層より泳ぎが早くなっている。


「<ホーリーフラッシュ><ジェットストリーム>」

 黒い水球を破壊して、その他の水球を吹き飛ばす。…が、空気が重く水球があまり飛ばない。


「さあ、いっらしゃい。あなたの相手はわたしよ」

 キフィアーナちゃんが首長竜のグリーダーの前に立つ。

 まだ六層の興奮、戦闘ハイが抜けてない。

 以前の悪い癖、独りよがりの勝手な戦闘に戻ってしまっている。


 まあ、レベル的には大丈夫そうなのが何よりだ。

 念のために、僕がキフィアーナちゃんのサポートに付く。


 キフィアーナちゃんは、シッカリと<ダブルスフィア>で防御を固め、水球弾や粘着弾を弾きながら、ショートスピアで傷を負わせるが、空気の重さに体の切れがない。

 それでも徐々にダメージを刻み、弱ったところに急所の一撃を突き刺し、魔法力を込めてボルテックスで止めを刺した。

 この突っ込み癖さえ直れば、戦闘センスはいいんだけどね。

 まあ、少しは気持ちが落ち着いてきたみたいだ。


 ミクちゃん、ルードちゃんにリエッタさんは、サメ二匹・エイ・タコと戦闘をしていたが、レベル差的に、そちらはあっという間に片が付いている。


 そういった戦闘を何度かこなすと、キフィアーナちゃんの戦闘ハイが完全に収まった。

 そうなるとレベルアップで狩りをしていた時とほぼ一緒で、キフィアーナちゃんの突っ込みも収まった。

「感情のコントロールもできないようだと、戦士として失格です」

「はい」

 リエッタさんにキッチリとしかってもらった。


 濃厚な空気に慣れてくると戦闘も楽になり、順調に狩りを続ける。


 七層を過ぎ八層だ。

 空気の重さは相変わらずだ。

 情報だと森林エリアで獣や爬虫類などの魔獣も出るが、水球があって海魔獣も出現する複合エリアだ。

 海魔獣は七層と同様で、獣や爬虫が強さ“40”から“70”程度の魔獣、猿系やホッグ系が多く出るそうだ。

 気を引き締めなくっちゃ、キフィアーナちゃんが危なそうだ。


 やることに変わりはないが、密林に隠れたイソギンチャクやオニオコゼ、それにヒトデにタコなんかもどことなく罠のようで、笑っちゃう。

 それにしても森の中にイソギンチャクとワカメや昆布にサンゴがあってと、メチャクチャシュールだ。


 ドライエリアでお昼を食べていると、黒い波動が駆け巡り、拡散していく。

 まだ下のようだ。

 それにしても黒い波動は正午ごろと、深夜ごろの定時に行われるのかな。


 疑問は棚上げ、下層を目指し狩りを続ける。

 見た目のシュールさには、慣れそうもないけど、八層も順調にこなしくいく。


 九層の階段にたどり着く。

 九層も待ちそうと似たようなエリアだ。

 ただし獣魔獣の強さが“50”から“80”と、ホッグ系の上位や熊系の強い魔獣が出没する。


「キフィアーナちゃん、レベルアップやるからね」

「任せなさい」

「ヤ・ル・カ・ラ・ネ」

「お、お願いします」


 粘着弾は効きが悪いといっても、効かないわけじゃない。

 ワイヤーネットと併用で、<粘着弾><粘着弾>……<粘着弾><粘着弾>

 ギガントベア(強さ“72”)を捕縛して、身体強化したキフィアーナちゃんがショートスピアで突き刺し、<ボルテックス>で止めを刺す。


 ギガントマッチョベア(強さ“79”)、クリムゾンブラックホッグ(強さ“83”)も無事倒した。


 そして黒い波動の手掛かりは得られないまま、階段の近くのドライエリアでキャンプを張った。

 深夜に黒い波動が発生した。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] ヒルデさんは母国を国際的に破滅させるのが目的? 足手まといにならないよう一度帰そうとしたのに王族が無理矢理ついていったのは、ドーラさんから見ればこの国を救うのを妨害してるようにみえる。…
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