140. お試し特別クラス
申し訳ありません。
オルジ兄ですが
最終行の「三年生の終了式を終え、三年生を卒業した。」は間違いです。
四年生です、申し訳ありません。
誤字訂正しました。
一四月七日赤曜日、久しぶり、二か月と少し振りにオーラン魔法学校に登校した。
なんだか留学してきたみたいだ。ちょっと緊張する。
ミクちゃんも緊張してるみたいで、今朝僕の家に来た。
なんとなく話したそうだったので、一緒にのんびりと歩いて登校した。
校門を歩いて通るのはいつだったろうと思うほどだ。
テレポートが多かったもんね。
早めに登校したのは理由があって、まずは校長室だ。
ここ最近校長室に縁があるような。
「「おはようございます」」
「おかえりなさい」
留学帰りの挨拶を済ませる。
そして驚愕なことを聞いた。
「あなたたちも神様のお告げのことは聞いた?」
「えーと、魔法教育の強化と支援のことですか?」
逆に聞き返してしまった。
ミラーニアン公爵に教えてもらったことだ。
「そうそれよ。それでね……」
そうなんですかってことで、僕とミクちゃんはラディン先生――魔法課筆頭主任のルデン先生の双子の妹――に連れられて教室に入った。
それも新設された特別クラスの三年Sクラスにだ。かなりのビックリ。
教室は一番小さな講堂で、階段室となっている。
一番小さな講堂とはいえ、通常の教室より広い。
つまりガラガラだってことだ。
校長先生によると、Sクラスを作ったのは、遠回しに言われたけど僕が原因のようだ。
僕が鍛えたミクちゃんにルードちゃんはランクA冒険者に、ライカちゃんにキジョーはランクC冒険者にそれぞれ匹敵する。
半猫人のパルマちゃんに半兎人のビットちゃんもチョット強くなっているしね。
それのキジョーの腰ぎんちゃくの二バカのガラクーダ君にブゾン君もいる。
僕と良く試合をしていたシエーサン君に、獣人のボンハル君(狼人、男子)に、獣人女子二名のポップリーナちゃん(兎人)にギルリアンちゃん(狼人)となんとなくだけど僕と良く絡んでた人たちだ。
僕がなんとなく転生者じゃないかって思ってる、雰囲気が変化した人たちもいる。
僕たちを入れて総勢一六人で、見知った顔ばかりだ。
ちなみに特別クラスは三年生だけのお試しで、三か月間のクラスの出来によって他の学年も作っていくそうだ。
減ったAクラスにはしばらくそのままで、四年生に上がるときにBクラスから補填するそうだ。
Bクラスは四クラスもあるから多少は減っても大丈夫だろう。
午前中は、一般教科の勉強だ。
Sクラスの一般教科も一流の先生が付く。
落ちこぼれは許しません! だ。
理解できないと、放課後に補習が待っているからみんな必死だ。
とはいえ、僕にミクちゃん、キジョーと転生者にとっては国語はある程度の熟語を覚える必要があるが、社会や歴史以外に困ることはない。
僕に至っては学習系スキルがあって、すでに学習済みのチートだ。
午後はとにかく魔法の練習や勉強となる。
◇ ◇ ◇
一四月八日青曜日。
何がSクラスかというと、狩りだ。
Sクラスに入れるのは、魔法系に秀でたスキルを持っていて、尚且つ魔獣相手に狩りをやってみる心構えがある者。
更に保護者の狩りの許可と、ケガを負った時の自己責任の書類の提出が決まりだ。
校長先生に「僕とミクちゃん提出してません」ていったら、行くのはララ草原で、あなたたちは今更でしょうとあきれられてしまった。
挙句の果てが「あなたたちの狩りに付いていったら、わたくしも命が幾つあっても足りませんからね」だってさ。
まあ、僕やミクちゃんも両親に連絡済みだってさ。
集合はオーラン市の城壁の南門で、今日は終日狩りだ。
付き添いはルデン先生にラディン先生、あとは冒険者四名、多分一パーティーだ。
一六人を六人で面倒を見るんだ、たいへんだなーって思ってたら。
「セージスタ君、ミクリーナさん、ルードティリアさん、ライカさん、キジョーダン君はできればですが適当にサポートに入ってください。
見学でも構いませんし、狩りをしても構いません。周囲に気を付けながら稽古をしても構いません」
なんともユルユルなこと。
「いいんですかそんなんで」
「キジョーダン君は、まだ充分に指導は行えます。
ライカさんに関しても何とか指導はできるかもしれません。が、セージスタ君、ミクリーナさん、ルードティリアさんは、学校の範疇どころか、私たちより格段に強いですし上位のスキルを持っています」
まあ、そりゃそうだな。
「特別クラスを設けても、あなたたち三人は規格外過ぎるからです。
それと現在は残った一一人の底上げを行い、その指導方法をもとに、すべての生徒の底上げの用の指導方法を確立させることです。
セージスタ君に手伝ってもらえると非常に助かります」
僕の方法を教えろってことね。どうせそんなことだろうと思っていましたよ。
「パルマちゃんとビットちゃん、チョットいい」
「なんだニャ」「何ですか」
「以前やった狩りをもう一回やるんでけど」
パルマちゃんの目がキラキラと輝いた。
「まずは武器を見せて」
「ハイ、ニャ」「どうぞ」
どちらも鉄製のショートソードに子供用に小型の盾だ。
今回は盾には用はない。
ショートソードを抜いてみたけど、何の変哲もないショートソードだ。
扱いやすさに親がこれを持たせたんだろう。
「まずは武器からです」
パルマちゃんとビットちゃんというより、先生に説明するために、話し始める。
まあ、クラスメイトのみんなにも聞いてはもらいたいけど。
「武器はショートスピアが一番いいとお思います」
「なぜですか」
問いかけられたのはラディン先生だ。
「子供で、短い武器を持つと止めを刺しにくいのが一つ。
長すぎるのも困るので、取り回しのことを考えるとショートスピア程度が最適だということの二つですね」
「なるほど、それでどうやって止めを差させるのかね」
今度はルデン先生だ。
「パルマちゃんとビットちゃん、これね」
僕はアイテムボックスから以前使ったショートスピアを取り出す。
「魔法力を流し込んでみて」
「了解ニャ」「はい」
パルマちゃんとビットちゃんが魔法力を流し込むと、ルデン先生とラディン先生が目を細めて観察する。
「ただの切れ味アップが付与されたものです。
それじゃあ、やるよ。
ショートスピアの扱いにはくれぐれも気を付けてね」
「了解ニャ」「はい」
僕が走り出すと、二人が付いてくる。
ルデン先生とラディン先生が、手でクラスのみんなに付いてくるように合図をしながら僕たちに付いてくる。
ミクちゃんとルードちゃんは殿で、みんなを見守ってくれているようだ。
仕方がないので小さな魔獣は<ソーラーレイ>で魔獣核ごと倒し・破壊する。
先生とみんな、それに冒険者が一瞬の光に驚いている。
先生は目で、何?、と問いかけてくるけど、完全にスルーだ。
「まずはパルマちゃん」
「楽しみニャ」
「<強化粘着弾>」
ワザと声に出した。
「<強化粘着弾>……<強化粘着弾>」
「パルマちゃん」
「イヤッホー」
パルマちゃん、はしゃぎすぎ。
この辺じゃかなり珍しいブレードキャット(強さ“26”)を、<身体強化>で貫いた。
パルマちゃんも随分と身体強化が身についたものだ。
「キジョー」
「お、おう、ナンだ」
「三人でパルマちゃんの護衛よろしく」
「任せておけ」
ビットちゃんがフェイクマンティスの魔獣核を取り出していると、パルマちゃんたちが魔獣核やめぼしいものを持って戻ってきた。
「そろそろ説明していただけるかしら」
「はい」
本当はビットちゃんの魔獣の処理が終わるのを待ちたかったけど、先生たちやクラスメイトが待てないようだ。
「強化粘着弾からでいいですか」
「かまいません」
「強化粘着弾は僕が作った魔法で、水魔法の粘着液を飛ばすものですが、一般の粘着液ではこれほどの粘着性は持っていません」
「そうですね」
「僕がというより、ミクちゃんとルードちゃんと一緒に学校に提出した魔法陣は見ましたか?」
「ざーっとはだな」「ええ、わたしも」
「その魔法陣には粘着液や強化粘着液の魔法陣が載っていて、精霊記号が変わっているのを見ましたか?」
ちなみに現在の粘着系の魔法は更に強化している。強化版の二世代目だ。
「そんなのがあったのか、ラディン先生は見ましたか」
「いいえ、そこまでは確認していません」
「粘着性がアップする精霊記号が記載されています。
それを僕なりの風魔法で作ったのが粘着弾で、強化粘着弾です。
主に魔獣の動きを止めたり、抑制・制限したりする魔法ですが、弱い魔獣だとこのような使い方も可能です」
その後はとにかく強さ“20”、できれば“25”の魔獣をまずは一人で狩りをしないと、その後の強化もできないことを説明する。
まあ、ルデン先生とラディン先生もそのようなことは知ってはいたけど、そのよい方法が見つからなかったみたいだ。
もちろんそれだけの強さの魔獣を倒すだけの、体力・腕力・瞬発力が必要だけどね。
ルードちゃんとライカちゃん、それにキジョー知ってはいたけど、僕の許可なく行使も説明もできなかったようだ。
ルデン先生とラディン先生には粘着弾(レベル4)と大粘着弾(レベル6)の魔法陣を『複写』してもらって、狩りが再開した。
『複写』してもらったのは強化版の二世代目の魔法陣だ。
ハイパー化した個人魔法は『複写』できないからこんなものだ。
ちなみにソーラーレイを聞かれたけど、お答えできません、で押し通した。
キジョーはガラクーダ君とブゾン君を受け持ち補佐に冒険者が一人着いた。ガラクーダ君とブゾン君もキジョーと何度か狩りをしていたみたいで、総合が“25”に近いからも問題はなさそうだ。
ライカちゃんはシエーサン君を受け持った。ライカちゃんの魂の友人なのかな?
増えた属性の魔法陣はどうしているんだろうか。ちょっと気になるけど、記憶BANで聞けないんじゃないかって心配してしまう。
僕は更なる決心をしたのはこの時だ。
ライカちゃんにも冒険者が一人着いた。
ミクちゃんとルードちゃんが獣人の三人担当だ。
僕が担当したのは、
「セージスタ君にぜひお願いしたいんだけど」
積極的にお願いしてきたカレンセンちゃんとカトリーゼちゃんのペアだ。
二人とも僕が転生者じゃないかって思ってる人だ。
残りのパルマちゃんとビットちゃんを含む三人はルデン先生とラディン先生の担当だ。
パルマちゃんとビットちゃんが不満たらたらだったのは言うまでもない。
残った二人の冒険者は全体を見て、遊撃的にサポートに入ることになった。とはいえ、これだけの人数が一か所で狩りをするには、必要な強さの魔獣が少なすぎる。
「先生、チョット離れます」
「気を付けるように」「無理はさせないでくださいね。冒険者は」
「僕たちだけで何とかします。
ミクちゃんとルードちゃん。それとみんな、僕につかまって」
ミクちゃんとルードちゃんは僕にピッタリと。
「どうぞ、私につかまってください」
「ウチの腕につかまって」
イヤイヤ、そんなに付かなくていいから。
全員がミクちゃんとルードちゃんにつかまったのを確認して。
「<ホワイトホール>」
数キロ離れた場所に飛ぶ。
レーダーで確認した通り、魔獣が多い。ここならばいい狩りができそうだ。
僕の付与したショートスピアで交代で狩りをしてもらった。
ただし獣人のボンハル君、ポップリーナちゃん、ギルリアンちゃんは身体能力で止めをさせんだけど、カレンセンちゃんとカトリーゼちゃんはなかなか止めを刺せなかった。
仕方がないのでカレンちゃんとリーゼちゃんの二人で止めを刺してもらった。
これもありなんだろうかと疑問に思いながらだ。
もちろん基本はカレンちゃんの時にリーゼちゃんが応援、リーゼちゃんの時にカレンちゃんが応援と上手くいけば経験値は減らないはずだ。
とにかく数を狩ることを目指し、ホワイトホールで飛んでは、三人で手分けをして狩りをしたこともあって五匹ずつほど狩ることができた。
これだけ狩れば総合は“25”程度にはなるだろう。
ただこれじゃあ不満だ。
僕たちの知識の流出、何もメリットがないもん。
まあ、友人が強くなるのは問題ないし、将来を考えればうれしいことだけどさ。
ミクちゃんやルードちゃんとも相談して、負担にならない程度で手伝うことにした。
もちろん過度な要求は却下だ。
◇ ◇ ◇
そして僕は魔石付きの、要は『複写』ができる魔法陣の作成をだ。
とはいっても作成はそれほど難しくはない。
基本は錬金魔法で魔石を魔法陣核石にして、魔法陣を複写するだけだ。
魔法陣核石とたいそうな名前が付いているけど、画像記録魔石の親戚のような魔石で、魔法陣を記録するだけのものだ。魔法を発動できるものじゃない。
魔法陣核石の錬金。
魔法陣核と同じサイズの同じ属性の魔石を用意できなければ、白魔石を用意してその属性を与えることになる。
そしていよいよ魔法陣核石の錬金だが、複写して魔法陣として機能させる必要があるので、作成する魔法陣の二倍のレベルの魔法レベルが必要とされる。
一番難しいというか、制限されるのがこのことだ。
複写も錬金魔法によるイメージ複写により一回の複写で行うので、イメージ力が弱いと複写ができないとされる。
それも何度か練習すると特に問題もなく作成が可能となった。
それからはまずはレベル1の全魔法を複写した。
数が少ないから簡単だった。
◇ ◇ ◇
狩りを行った翌日の一四月九日黄曜日。
シッカリとカレンちゃんとリーゼちゃんの総合も“21”と“20”とアップしていた。
全員レベルしたのでとにかく次は身体魔法に向けての訓練だ。
午前中の一般教科に午後がその訓練となる。
◇ ◇ ◇
一四月一四日青曜日。
今回は基本はサポート無しで、みんなに狩りをしてもらった。
一応全員身体魔法ができるようになったがアクティブセルがほとんどだ。
目標はレベル2の身体強化の取得に向けての訓練の一環だ。
この日にレベル6までの魔法陣核石(複写用魔法陣)が出来上がった。
以前学校に提出したレベル8までの魔法陣の中のレベル6で複合魔法までの制限付きの魔法陣だ。
◇ ◇ ◇
一四月一五日黄曜日。
僕の作成した魔法陣をクラスメイトに無制限で『複写』してもらった。
ライカちゃん、キジョーに何人もが、複雑な表情をしながらも嬉しそうに複写していた。
本来なら、魔法回路と説明文が付くのが一般的だが、そこまでは手が回らない。
その日の午後の魔法練習で、ミクちゃんとルードちゃんに、それにライカちゃんにも手伝ってもらって、開放したすべての魔法の実演と説明を行った。
ここまで来たからにはレベル8までにしようと思っている。もちろん闇魔法はレベル6までだ。
そしてあと数セット作成してあちらこちらに配布する予定だ。
何度か神社に行ったおかげなのか、みんなの底上げにも協力した方がいいんじゃないかって気がしてならないんだ。
やっぱり、多くの人でダンジョン、次元の亀裂を消滅させるってことでいいんじゃないかな。
ミクちゃんにも相談したけど、応援してくれた。
ただし、魔法陣の複写は利益が絡むことだから気を付けてって注意された。
僕はミクちゃんを伴ってパパとウインダムス議員に説明をして相談した。
「神様からの願いなんだな」
「そうとは言えない。僕とミクちゃんが感じたことだから」
「それは願いじゃろう」
「とにかく、わかった」
そのあとはパパとウインダムス議員にお任せだ。
ただ、無料の複写は当分Sクラスだけと約束させられたし、悪用もあるからとレベル8までは作成はするけど、開放はレベル6までにすることにした。
◇ ◇ ◇
そんなこんなでしばらく平和に時間が過ぎた。
平和といっても地震は強さを増すし、オケアノス海には強い魔獣が時々出て荒れることも多くなった。
嵐も増えてきている。
全て大災厄の影響なんだと思う。
◇ ◇ ◇
僕とミクちゃんにルードちゃんにリエッタさんは、一五月に一度七沢滝ダンジョンに潜って、スキルアップを試みたが僕はほぼ変化無し、ただ三人は微量なアップがあったのでOKだろう。
それとは別に僕は、デビルズ大陸に行く方法はないかと、考えながらも実行できずにいた。
それともヴェネチアン国のダンジョンに行ってみようか、キュベレー山脈のダンジョンを探してみようか、迷っている。
Sクラスの生徒も二四人まで増え、約半分の生徒がモモガン森林での狩りを行っている。
とはいえ、僕にミクちゃん、ルードちゃんにライカちゃん、それにキジョー――総合が“41”となって、三Sではベテランとされている――と、すでに五人が経験者だから、実質増えたのは七人だ。
最低条件が身体魔法レベル3の身体強化Ⅱだからかなり厳しい。
みんなかなり頑張ってるよね。
ちなみに七人とは、シエーサン君、パルマちゃん、ビットちゃん、ガラクーダ君、ブゾン君、カレンセンちゃん、カトリーゼちゃんだ。
パルマちゃんとビットちゃんは早くから狩りをしていたということがあるが、シエーサン君にカレンちゃんにリーゼちゃんは明らかに転生者だろう。
だって身体能力が明らかに上の獣人のボンハル君にポップリーナちゃんにギルリアンちゃんが、身体強化Ⅱが取得できないのに、ある意味早すぎでしょう。
そんなこんなで一六月、冬期休暇でミリア姉とオルジ兄が帰ってきた。
もちろんロビンちゃんもだ。
ちなみにマリオン上級魔法学校の冬期休暇は夏季と同じの六週間。帰宅があるから長いんだ。
対してオーラン魔法学校の冬期休暇は四週間、一か月とやや短いし、春季と秋季は二週間ともっと短い。
夏季が長いのは亜熱帯で泳ぐため、水泳訓練なのは、周知の事実だ。