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次元災害で異世界へ  作者: 真草康
魔法教育編
14/181

13. 魔法教育 4


「それでは魔法をつかってみましょー。パチパチパチです」

 僕はヒーナと一緒に拍手する。


「まずは風魔法のドライブリーズからとしたいところですが、学校の順番通りにデスクライトからとしましょう。チョット難しいですが魔法陣が一番小さく発動しやすいんです。

 セージ様は火魔法の素養も持ってるのでマッチは難しくないでしょう。

 リリッシュは水魔法が無いと最初はきついかもしれません」


「それではセージ様はデスクライトの魔法回路を出して、あ、開示してください」


 デスクライト(偽)を「『開示』」する。


 ヒーナがファイアーとバブリッシュの魔法回路を『開示』する。


「えー、光魔法のライトとも思ったんですが、ファイアーとバブリッシュにしました」


 二つの魔法陣を見比べてください、とヒーナは二つの魔法陣を指さす。


「ファイアーは火魔法のレベル1ですが、ママが良く使うバブリッシュは生活魔法のレベル1です。そしてセージ様がコピーしたデスクライトは生活魔法のレベル0です。

 何か気づくことはありますか」


「ファイアーの魔法陣の方が若干バブリッシュの魔法陣より大きいですが大体一緒で、デスクライトの倍の大きさです」


「完璧です。セージ様も魔法がわかってきましたね」


 当然だ。予習済みだ。

 何とかファイアーをコピーできないかな。


「魔法陣を持てるのは魔法回路のレベルまでで、魔法核のレベルとも一致します。

 個人差で魔法回路のレベルが先、または魔法核のレベルが先もありますがほぼ一緒です。

 魔法回路に関しては大体二〇センチメルでレベル“1”となり、それ以下がレベル“0”なのでかなり小さな魔法回路だと生活魔法“0”の魔法陣が描けないことがあります。

 レベル“2”で三〇センチメル、レベル“3”で四〇センチメルと一〇センチメルごとにレベルが上がると覚えてください。

 ですからセージ様は、ファイアーとバブリッシュの魔法を使うには、もっと練習して魔法核と魔法回路のレベルを上げてからになります。

 ここまではいいですか」


「はい。でも魔法回路が、たとえば一八センチメルあればファイアーの魔法陣が描けると思いますが」


 脳内の空いた魔法回路に『複写』。

 あ、できたけど…、がっかり。ぼやけてる。

 ヤッパリ触ってやらなくっちゃいけないんだ。


「そうですね。それは一般には、準備期間、練習期間として知られています。

 魔法の発動はできますが、威力が弱いとされています。

 セージ様も複写できるサイズになったら、複写して練習するといいですよ」


「それでは、セージ様はデスクライトの隣に個人情報を表示してもらえますか」


「あのー、ヒーナ先生、その前になんですが、参考までにファイアーとバブリッシュに魔法力を流して見せてもらえませんか」


「興味津々なんですねー。わかりました、大サービスですよ」

 ヒーナが両手で魔法力を流す。

「私は動きにくいので勝手に見てください」のヒーナの言葉に、いろいろと角度を変えて見せてくれればいいのに、との不満は飲み込んだ。


 セージは一旦デスクライトの魔法回路を『収納』して、席を降り、光るファイアーの魔法陣を、前と後ろから『複写』した。


「ありがとうございました。なんだかとっても興味深かったです」

 そういって席につき個人情報を『開示』する。


「はい、ありがとうございます。

 コントロールが上手になりましたねー」


「セージ様は、魔法核と魔法回路が共に“0”です。

 そして生活魔法も“0”です。

 魔法回路からすると発動できそうですが、魔法はイメージも大切です。まずは練習と思ってやってみてください」


「うん。発動しなくてもガッカリしません」

 偽装パネルだから、きっと発動しないだろうし。


「そうですね。今日は頑張って発動するまで頑張ってみましょう」


「は、はい」

 ハイテンションのヒーナに気圧されるようにうなずいてしまう。


 そこでヒーナが「『収納』、『デスクライト開示』」と唱える。


「さあ、一旦収納してデスクライトだけにしてください」


 ああ、魔法を発動する時には個人情報消えちゃうんだった。

「はい。『収納』、デスクライト開示」

『デスクライト(偽)開示』


「それでは改めまして、目の前の魔法陣を触ってー。

 そのまま、魔法陣は触ったままで、心臓の魔法核を意識してー。

 魔法力をため込んでー。

 はい、そうです。できてますよー。

 もっとためてー。

 ハイそろそろですよー。

 ためた魔法力を右手に流し込んでー。

 できてますねー。さすが天才です。

 さあ、魔法陣に魔法力をながしながらー。そうです。

 目の前に光を想像してー。

 はい、一緒に唱えましょう」


「「<<デスクライト>>」」


「ひ、光った」

 そう右手の人差指に光が灯った。

 ヒーナ先生の光の方が輝きが強い。

「やりましたねー。ファンタスティック、一発ですよー。さすがです」

 ムギューっと、僕も感激ですが、驚いたのは偽装パネルでも魔法が発動したことだ。

 いやー、ビックリ。


「でもセージ様、まだまだ練習です。

 まずは消えろと念じてください」

「「『『消えろ』』」」

 光が消える。


「それが魔法を止める感覚です。

 魔法量の残量は大丈夫ですか? まだいくつありますか」


『個人情報』と表示すると、デスクライト(偽)のパネルが消える。

 まだ“12”あります。個人情報(偽)の“10”より多いです。


「“8”あります。まだ大丈夫です」


「魔法量の減る感覚も、できれば一緒に覚えましょうね。

 毎回、個人情報を出して確認してるとたいへんですから」


「戦闘中だとみられないですもんね」


「よくわかってますねー。

 それではもう一度練習してみましょう」

「はい」

 簡単に消えた。


 個人情報を『収納』して、『デスクライト(偽)』を呼び出す。

 魔法陣核を意識してパネルに触れ、

「<デスクライト>」

 光った。


「それでは、今度は魔法力を止めると光りが消えますので、それも練習してみましょう。

 まずはデスクライトの魔法回路を収納してください」

「はい、『収納』」

 魔法力を止めるて、もうできるんだけど。

 でもここは演技で、

「このかすかに体から流れ出ているものですか?」

「はいそうです。それを止めちゃってください」

「はい」

 で、簡単に光を消す。


「完璧、パーフェクトです。

 ではもう一度光らせてください」


「<デスクライト>」


「それでは、光はしばらくそのままにしておきましょう。

 そして魔法陣核に魔法力を流さないようにします。できますか?」

「よくわかりません」

「右手に魔法量が流れている感覚がありますか、もしくはつながっているのが」

「はい、それは何となく」

「いいことです。少し右手に集中すると、微妙に魔法力が流れているのが感じられます。

 よーく集中してください」

「はい、…あ、わかりました」

「もうですか、すごいですねー、先生ビックリです。

 それではその流れを止められますか? やってみてください」

「はい、止まりました」

 うん、一瞬で止まった。

「まあまたビックリです。

 本当に止まっていますか?」

「はい」


「そうですか」

 なんだかヒーナ先生が、優秀なんですが、優秀なんですが、何ですが……、と呟いて脱力感に肩を落とす。

 なんだか申し訳ない。ごめんなさい。


 まあ、やりがい、育て害はMAXです、何て呟きも聞こえてきた。


「えー、個人差はありますが、魔法力“1”で大体一〇分くら光らせておけます。

 それと点けて直ぐ消すと魔法量がもったいないです。

 魔法発動では最低でも魔法量“1”を使うことになっちゃいますから」


 えっ、どういうこと?


「ああ、魔法陣核に流した魔法力は魔法として使用しなくても、魔法をやめた段階で消失、消費したことになるからです。

 そして生活魔法の発動に魔法陣核に込める魔法力が大体“1”です。

 個人差がありますしピッタリ“1”を消費するなんて不可能なんですけど。

 どのくらい持つか感覚的に覚えておくといいですよ。

 大丈夫ですか、何度か魔法力が流れ出てないか確認してくださいね。

 途中疲れちゃったら、流れ出てるってことですから、やめていいですからね」


「はい、大丈夫そうです」

 ああ、それで魔法実験の時に、つけても放っておいても魔法量の減少が一定だったんだ。


「それと魔法力がアップしてくるに従い、魔法力の復活の速度もアップしていきます。

 そうなると魔法力“1”でも光らせる時間が伸びます。倍以上になっちゃう人もいますが、そのころには魔法力“1”なんて誤差の範囲になっちゃうんで気にしなくなります」


 あっ、そういえば。

「ヒーナ先生!」

「はい、なんでしょう」


「魔法を発動するのに魔法回路が大きくて邪魔じゃないですか?」


「あー、いいところに気づきましたねー。

 えー、それには裏技があります。

 魔法陣核と魔法経路が魔法陣には隠れていることを教えましたが、魔法発動時に呼び出すのは魔法陣核・魔法経路・魔法陣だけあれば発動しますよね」


 ヒーナ先生の顔が、クイズですとでも言いたそうに笑っている。

 あっ、そうか。


「いい顔です。

 気づいちゃいましたかー。そうです。魔法を使おうとしたら魔法陣核・魔法経路・魔法陣だけを呼び出すんです。

 複写の応用なのですが、魔法回路から魔法陣を抜き出します。魔法回路とのリンクを保ったままなのでテクニックが必要です。

 それにはまずセージ様のように魔法陣核と魔法経路を見えるか感じ取れなくっちゃいけません。

 訓練して、理解を深め、がんばって身に着けます。

 魔法に習熟した人は皆さんできますが、それでも得意な魔法、慣れた魔法しかできない人が多いです。

 セージ様もいつかはできるようになりますよ」


 ヒーナが嬉しそうににやけている。


「更なる裏技があるんですよー」

 いたずら小僧の顔だ。


「魔法回路を呼び出すときでも、魔法発動時には、発動方向に魔法回路を向ければいいんです。

 そうするってことは、あー、もうわかっちゃましたよね」


「はい。魔法陣核と魔法経路と魔法陣をひっくり返して呼び出して、魔法の発動方向に向けます」


「はーい正解です。

 それは魔法回路でもできるので、何かに向けて魔法を放つときには、練習が必要ですがそうしましょう。

 でも大正解じゃありませーん」


 えっ、て顔になる。


「最大の要因は、魔法陣核に直接触ることです」


 えっ、が、あっ、になる。


「そうです。そうなんです。いい顔です。

 魔法回路ごとじゃ、ひっくり返しても直接魔法陣核に触れないですよねー」


 直接触ることによって魔法を込めやすくなるだけでなく、制御も楽になるし、魔法回路に残る残存魔法力なんかも無くなるし、魔法漏れなども極端に減るはずだ。

 うーん。納得だ。


「それじゃあ、がんばって練習しましょうね」

「はい」

「それと、それができるようになるともう一つの裏技、いいことができるようになります」


「な、なんですか」

 まだあるんだ。


「魔法陣をチョットだけ大きくしたり、小さくして魔法を発動できます。

 魔法力を調整するより微妙な調整や、効率的に魔法を発動できます。

 あまり大きくし過ぎたり、小さくし過ぎると魔法経路がうまくうごかなくなっちゃうんで気を付ける必要もありますが、セージ様ならできるようになるでしょう」


 サイズ調整ってコピーした図面はできたのはヤッパリ魔法回路に定着してないからなんだ。納得。うん、がんばろう。


「あれー、何か疑問がありますか?」


「えー、僕の魔法回路とママやヒーナ先生の魔法回路の大きさが違うから、魔法回路ごと大きさを変えればいいんじゃないかと」


「セージ様は本当にすごいですね。よくそこに気づきかれました。

 でもそれは、無理なんです。魔法回路はセージ様が魔法を練習すると、それにつれて大きくなるだけで、自分では変化させられません」


 ヒーナが一旦言葉を切った。


「セージ様なら気づかれると思われるので先に申し上げておきます。

 魔法陣は魔法回路に定着する前は、大きさを変化させられるので、セージ様が複写した魔法陣は大きさを変化させられます。

 研究者は様々な魔法開発でその機能を利用して魔法の開発をしていますが、それは例外です。

 何度も魔法を放つと、おのずとその人に合った魔法陣のサイズで定着します。ですから魔法陣のサイズはいじらないでくださいね」


 納得したが、ヒーナの目が怖い。

「ヤ・ク・ソ・ク・ですよ」

 まるで僕がやるみたいじゃないか。もうやってるけど。

「はい」

「本当ですね。いたずらでサイズを変化させると、自分と合わなくなって魔法が発動しなくなります。それだけじゃなく、発動しない魔法に不信感を持ってしまい、魔法をうまく使えなくなることだってあるんですから」

「はい、絶対にやりません!」


“実験”何とも甘美な響き。どうやらどうあっても、僕に試させたいらしい。否、ダメだダメだ。まずは普通に魔法を使ってからだ。


「魔法力は流れ出していませんか? 疲れたりしてませんか?」

「はい」

「本当によく持ちますね」


 一〇分を超え、一二分で光が消えた。

 その間何度もしつこくヒーナ先生に心配された。


「本当にずいぶんと持ちましたねー。定着前の魔法陣は魔法効率が悪く威力も弱く、持続時間も短いものなのですが…」

 規格外、非常識、何て呟きが聞こえてくる。

「それより疲れてないですか?」


「全然です。むしろなんだか気持ちいいくらいです」


「そうですか。魔法力の流れもわかったことですし、これからは気を付けていれば知らないうちに魔法力を使ったのがわかると思いますから、意識してだんだんとそういったことも減っらしていきましょう。

 無意識ならばですが!」


「はひ」噛んだ「…き、気を付けてみます」


「セージ様、約束をしてください」

「はい」


「魔法の練習はほどほどです。

 魔法量は“5”を切ると気持ち悪くなったり体調不良を起こすので、やらないと思いますが」


 いいですか、よーく聞いてください。とヒーナ先生が真剣だ。


「セージ様のことですから本で見つけちゃうかもしれませんし、この勉強を開始した時にも申し上げましたが、もう一度聞いてください」

 ヒーナ先生、睨まないでください。それと怖くないです。


「魔法量を“0”まで使用すると魔法量が増えるという説があります。

 確かに増えるようですが、ほんのチョットだけ魔法量が増える期間が早くなる程度です。

 二か月が、一か月くらいになるだけで、実際は気分が悪くなって気絶してしまいます。

 それは大人になっても一緒です。

 冒険者の中にはそれを乗り切って、魔法量が“0”になるまで魔法を使える人もいるそうなんです。

 中には一週間で“1”アップしたなんてデマも聞いたことがありますが、そんなのは嘘っぱち、例外だと思ってください。

 魔力量が増えるからといって、結局寝込んでしまって、魔法量を“1”上げるのに、二か月以上にかかってしまうのが現状です。

 それに魔法ばかり訓練はできませんから、普通は頑張って二か月か三か月に魔法量が“1”上がるかどうかです」


 気絶? ヤッパリ本当のことなんだ。

 前世の耐性のおかげなのか、そこまでひどくない。なんとなく慣れてきたような気もする。

 二か月に“1”増加? 僕一日とか二日で“1”増加したよね? 成長二倍じゃないの? あっ嘘っぱちが本当ってことなんかな?

 あっ、でも一日に何度も枯渇してたから? 短時間で枯渇すると増大力アップ? それとも何か……。

 あれ、でも、それだと特にヒーナの数値が多すぎる。

 ラノベの通り、魔物などを倒した経験値などでアップするんじゃないかな。

 僕も何かやった? やってないよね? ……まあ、棚上げ? あっ、魂魄管理者(女神様)の恩恵なのかもしれない。納得。


「へー、そんなのがあるんだー。気を付けますね」


「耐性があって魔法量が“4”や“3”まで大丈夫な人がいることは本当のことのようですが、そのような人はごくごくまれな人です。

 そような人たちは早く魔法量が増加するそうなので極秘、内緒にしているそうです。

 ただしそのようなことを試すにしても体力の付いた上級魔法学校に入ってからにしてくださいね」


「は、はい」

 ヒーナ先生の希薄にたじろいで、思わず返事をしてしまった。

 ヒーナ先生もやったんだ。それはそうだよね。と思うと、ウホン、チョットだけ顔を赤らめたヒーナ先生が空せきをする。


「セージ様は無意識に魔法力を使われているみたいですから、いつも個人情報に気を付けて、魔法量が約半分の“6”になったらやめるように心がけてください。

“5”になったら絶対に練習を止めてくださいね。

 それと体調によっては“7”や“6”でも、気持ち悪くなることがあります。

 チョットでもおかしいと感じたら練習は直ぐに中止です。

 いいですね」

「はい、わかりました。気を付けます」


 ヒーナ先生には、その後に同じ言葉を繰り返し何度も念を押された。

 何度も返事を返してから、やっとヒーナ先生の表情が柔らかくなった。


“5”で気持ち悪くなったことはないし、まだ“8”あります。ってママやヒーナにしたら、誤差の範疇か。

 でも“0”でも気持ち悪くなるけど、気絶なんてしないんだけど。


「それでは決まり事です」

 ヒーナが右手の小指を差し出してきた。

 僕がその小指に、そっと小指を絡ませると、ヒーナがギュッと絡ませてくる。恥ずかしいー。

 バルハライドにも指切りあるんだ。


「キッチリと約束しましたからね」

「はい」

 ど、どうしよう。……冷汗(タラー)

「本当ですからね」

「き、気を付けます」

 ヒーナの眼圧がグーンと上がって、それから指が離れた。

 心配しているのがひしひしと伝わってくる。ごめんなさい。


「もう一つ、チョットしたことがあります」

 えっ、まだあるの。もう約束しちゃったよね。

「は、はい」

 ちょっと顔が引きつってしまう。

「大したことじゃないんですが、魔法回路の魔法名称、属性、機能なんかは書き換えられますが、変更しないで下さいね」

「はい?」

 それは気付いていましたが、めんどくさいから棚上げしてました。

 それらの情報で呼び出す目次や索引的なもんだもんね。

 でも変更しないでって…?


「中には、まあ、学生の頃ですが“マッチ”を“ファイアー”と唱えて、周囲から生暖かい視線を浴びるおバカさんが必ずいます。いえ、出現します」

 気持ちはわかるが、わかるが……だなー。


「私の同級生ですが、決して友人と呼べるような仲じゃありませんでしたが、チョット改良した“ファイアー”を“ビッグバンフレア”と唱えた痛い人がいました。

 学生で魔法を改良できるのですから才能はあったと思いますが、友人になりたいとは思いませんでした。

 賢いセージ様は、やらないのはわかっていますが、念のためです」

「は、はい」

 中二はどこにでもいるもんだ。納得。

 ネーミングは新魔法開発の楽しみにしよう。うん、そうだな。


「それでは今日の授業はおしまいです。

 疲れていませんかー? というより元気いっぱいですねー。

 でもしっかりと休んでくださいね」

「はい」


「奥様、終わりました」

「セージにも無理なく、また楽しそうに指導してくれて、よくやってくれました。お疲れ様」


「ありがとうございます」


「セージは何があっても無理をしないようにね」

「はい」


「それとこの本ですが、まだ半分程度しか読めていませんが、とても面白くて、いい本ですね。また貸してくださいね」

「ママが最後まで読んでいいよ。僕はヒーナ先生から何か借りて読みますから。ねっ、ヒーナ先生いいでしょう」

 本を買うときに、僕に適した本があればパパかママからそれなりに話があったはずだ。あと持っていそうなのはヒーナしかいないと思っただけだ。それにもしかしたらッて期待もあった。

「仕方がありません。特別ですよ。それにしても本当に読書スピードが半端じゃありませんね」

「ヒーナ、魔法の本はダメですよ」

 期待はもろくも砕けた。


「はい、わかってます。といっても私の持ってきている小説のような本といえば“バルハ大陸開拓史”は読みごたえがあると思います。

“暇な花屋のひとりごと”は可愛らしいエッセイなので、多分ですがセージ様にはちょっとですね。

 あとは、あー、ありました。“ホーマー魔法学園初等クラス”という本ですが、架空の魔法学園を舞台に、学生がなんだかんだと騒動に巻き込まれては、力を合わせて解決していくというストーリーです。

 私が学生の時に愛読していたもので、たまに読みたくなるので、バッグの奥に眠っているハズです。

 それでいいですか?」


「はい。ありがとう」

 がっかりです。


「セージ様、ずっと座っていましたので、お好きな甲板を散歩しましょう」

「えっ、今日はけっこう満足したから散歩はもういいかな」

「セージ、いってらっしゃい」


 引きこもりモード一二〇%だったセージは、あきらめることにして作り笑いを浮かべた。

「はい、そうですね。今日はどんな景色が見られるかなー」


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