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次元災害で異世界へ  作者: 真草康
王都ミラーノの結婚式編
139/181

135. ミラーノ市・ロータス市学生魔法交流試合 午前


 一二月一六日緑曜日、ヴェネチアン高等魔法学院で歓迎パーティーが開かれた。

 セレモニー的要素が強く、真の交流パーティーは交流試合後ということなので、僕とミクちゃんは出席しなかった。


 ちなみにミクちゃんの友達のロキシーヌ様ことアマルトゥド侯爵夫人やネーザンス様ことディンドン侯爵夫人のお茶会に呼ばれ、幼いミクティーヌ(ミニミク)ちゃんとの再会も果たして喜んでいた。

 ミニミクちゃんも六才で、今度の一月で初等部に入学だそうだ。


 僕ももちろんとは言わないけど、一緒に呼ばれたし、ミラーニアン公爵夫人も一緒だったりとチョット人数多めのお茶会だった。


  ◇ ◇ ◇


 一二月一八日黒曜日、王都闘技場。

 ヴェネチアン国の秋休みは、マリオン国と一緒だ。


 ミラーノ市でも雲が多い。

 今日もどんよりとした日だ。


 まずは魔法展覧が行われ、その後に五試合が行われる。

 一対一が三試合で、二対二が二試合だ。


 僕とミクちゃんが最後の二対二が二試合で、相手が“神の御子”と噂される二人だそうだ。

 カルンドス・スルスフィーガ(男)と、コルコラーナ・スルスフィーガ(女)とファミリーネームが一緒でも妹じゃないそうだから、親戚じゃないかってことらしい。


 こういったイベントには学校を上げて観戦がつきものだ。

 公共の娯楽はあまり多くないので、平日とあっても学生以外の観戦者も多い。


<魔法展覧>

 本番は午後の交流試合だが、午前中は、様々な魔法が見られるようにと、対戦形式の見ていて楽しい魔法合戦、競技が行われるそうだ。

 さすが上級魔法学校、もとい、高等魔法学院が主体というだけはあって工夫されている。


 競技の発表は概要しか行われていないため、準備も完ぺきにできるものではない。

 ちなみに準備委員会があって、概要の発表後に内容を詰めたんだそうだから、みんな知らないのは当たり前だ。

 その分メンバーは多く、午後の交流試合のメンバー込みで三〇人が参加できる。

 その中でのやりくりだ。


 参加メンバーの取り決めもしていないから、状況を見て選手が選ばれることもあるし、交流試合の試合数には含めないが、それでも負けるのはしゃくにさわる。

 もちろん午後の交流試合のメンバーは魔法の温存でほとんど参加しない。


 第一競技、遊々鳥の早打ち。


 遊々鳥(ゆうゆうどり)とは、競技用に作られたもので、鳥の模型に白魔石を仕込みフライや回避などの付与が掛けられ自由気ままに飛翔する模造の鳥だ。

 ほぼ同一性能のものを作れるので競技によく使用されるそうだ。


『えー、直径三〇メルの仮設防護結界の中心に立って、周囲八か所から放たれた遊々鳥をいかに早く倒すかの競技です。

 魔法で倒しても、武器で切っても、武器を飛ばしてもなんでも有りの学生用のルールです。

 それでも普通で考えたら学生に八羽は無謀な数ですが、学生用に動きを遅くした遊々鳥ですのでご安心ください。

 それでも学生にはきついと思います』


 数が多いのは観客を意識してだし、勝敗がハッキリするからか。

 まあ、アナウンスを信じるなら、何とかなるだろう。


 女性アナウンスの説明が続く。

『対戦で行いますので、グランドの二か所で同時に行い、どちらが早かったか一目瞭然で勝利が決まります。

 魔法力の枯渇では倒した遊々鳥が多い方の勝利となります。

 同数だと最後の一匹を早く倒した方の勝利となります。

 皆さん応援をよろしくお願いします』


 二つの防護結界に入ったそれぞれの選手が開始位置に立つ。

 まずは八か所から遊々鳥飛び出し、その三秒後に審判から『開始!』が宣言された。


 観客席から見やすいように青い遊々鳥が七羽で、動きの速い赤い遊々鳥が一羽だ。

 アナウンスからすると、魔法力の枯渇の判定では、青い遊々鳥がい1ポイント、赤い遊々鳥が2ポイントで換算されるそうだ。


 ミラーノ市(ヴェネチアン高等魔法学院)生徒は身体強化とフライで一羽づつ倒していく戦法だ。

 対してロータス市生徒は、弓矢と魔法攻撃による射撃戦法だ。


 ロータス市生徒が一歩、二歩とリードして、これで決着がつくかとなった時に魔法切れとなった。残りは青い遊々鳥二羽だ。


 ミラーノ市生徒が徐々に追い上げたのだが、結果赤い遊々鳥を倒せないまま魔法の枯渇となってしまった。


『惜しかったですね。僅差でロータス市の勝利です』

『見ごたえがありました』

 年配の男性だろうか、解説もいる。


『またもや惜しかったでが、ロータス市の勝利です。

 今年はロータス市が強いですね』

『相当鍛えてきたようですね』

 二試合目も僅差だが、負けてしまった。


「俺が行く!」

 ベリッジさんが名乗り出た。

「まあ、待て。

 セージスタ君はかなり魔法にユトリがあるんだよね。

 遊々鳥の早打ちをやったら午後までに魔法は復活するかな」

 止めたのは生徒会長のグルトさんだ。


「全然問題ないですよ」

 見てて面白そうなんだもの。

「多分ミクちゃんもそうですね」

「セージちゃん!」

「ごめん」

 どうやら、ミクちゃんには面白さが伝わらないみたいだ。


『ミラーノ市側はミラーノ初等魔法学校のセージスタ・ノルンバック君です。

 対するロータス市側は…』


『初等の生徒は初めての参加ですが大丈夫でしょうか。

 まさか経験を積ませるために、才能のある生徒を出場させるなんてことはあるのでしょうか』

『いやー、それはないと思いますが…』


 アナウンスは言いたい放題だ。


『開始!』


 僕はショートスピアの黒銀槍で――思ったより遅い――一羽を突き刺す。

 片鉄菱を一つ手に持ち、

<マッハホーミング>

 で投げつける。

 簡単に二羽目を撃破。

 さすがにレベル10の魔法はやり過ぎだったか。


 もう一回片鉄菱を一つ手に持ち、

<ハイスピードフローコントロール>

 で投げつける。

 これでも簡単に三羽撃破。

 レベル5の魔法でもやり過ぎなのか。


『は、早い。ノルンバック君一瞬で二羽、三羽と倒してしまいました』


 いや、一瞬じゃないから。


『投てきで投げたのはナイフか何かでしょか』

『投てき用に作った特別製の小型ナイフの(たぐい)のものでしょう』

『投てきが得意なんですかね』

『投てきだけでなく、身体魔法か身体系のスキルかはわかりませんが、初等の生徒でこれだけ動ければ将来は相当有望ですね』


 隣はやっと一羽を倒したところだ。

 仕方がない。片鉄菱は無しだ。

 黒銀槍でユックリと倒していったけど、それでもかなり早かったみたいだ。


『ノルンバック君、早くも勝利です』


 審判からも勝利宣言が行われた。

 思ったより、つまらないというか、簡単すぎだった。


『これで第一競技の“遊々鳥の早打ち”が終わりました。

 見どころ沢山でしたが、二対一のロータス市の勝利です。

 ワタシ的にはいろんな魔法が見られて面白かったですよ。

 いかがでしたか』

『拮抗した試合も見ごたえがあって、日ごろの研鑽をうかがえるものでした。

 それにしても圧巻だったのはノルンバック選手でしたね。いやー、すごい生徒がいるものです』


『ノルンバック選手は午後の交流試合にも出るんですよ。

 これって相手の選手への挑戦状ってことですかね』

『思ったより挑戦的な子供……(ゴホン)、選手のようだね』

『そうみたいですね。これは午後の交流戦が見逃せません』


 いや、絶対に違うから。

 なんだか、ロータス市の方からビシバシと視線を感じるんですが。


  ◇ ◇ ◇


 第二競技、ハナハナデコレーション。


『この競技は八人づつの団体競技です。

 土台の散弾の箱に、三〇本の生け花をしてもらいます』


 選ばれていた選手の目が点になる。


『まあ、生け花といっても一本一.五メルもある造花ですが。…アハハハ。

 土台には四〇個の穴が開いているので何処に差しても構いませんが、錬金魔法・付与魔法・補助魔法で花を活けていただきます。

 それも強固にです。

 時間は三〇分間です』


 えー、そんな短時間に付与や補助って普通の人、もとい、それなりの魔法士でも無理だ。

 あ、接着や固化程度なら一般の魔法士でも何とかなるか。


『色合いに気を付けて、きれいに活けてくださいね。

 美的採点もあります』


『そして今度はお互いの生け花を交換して、魔法を撃って、三〇本の花だけを撃ち落してもらいます。

 距離は五〇メルで、あくまでも魔法のみの攻撃です。投てきなどの武器は使用禁止です。

 土台に傷がつくと減点です。

 早く花だけを落とした方の勝利です』


 活ける花は、土台から最低八〇センチメル離す必要がある。

 活けられない花があったり、違反の花があると減点となり、相手にポイントが加算される。

 接着してない、もしくは接着不足の花は全て撤去で、その花が五本あると、接着済みの花を一本撤去する。


 色彩や見た目の綺麗な方が3ポイント取得、そして相手の花を三本――判定員によっては二本や一本ということもある――減らして競技開始。

 もちろん減点分の花はこちらが減らされる。


 箱を傷つけると、傷の具合で一定時間、魔法の禁止となる。そして、箱を全壊させた時点で、負け。

 その条件で、すべての花――茎や葉はいくら傷つけようと問題なし――を落とすことを競う。


 三〇本を一〇人で錬金を使って付与や補助するのに一人三本だ。

 僕やミクちゃんみたいに、常に錬金と付与を扱っていて、慣れた人じゃないと難しい時間だ。

 誰だ、こんな腐った競技を考えた奴は。


 ルール説明の後、一五分の作戦タイム。


「セージスタ君、チョット相談だけど、キミは錬金魔法はできるかな」

「はい、得意って程じゃないですが」

「ミクリーナさんはどうかな」

「セージちゃんほどじゃないですが」

「申し訳ないが、この競技に出て……」


「わかりました、で、あとの八人はどの程度錬金魔法ができるんですか」

「セージちゃん、私まだ…」

「じゃあ、あとの九人は…」

「わかりました。出ます!」


 グルトさんの話を聞くと、錬金魔法の得意な生徒を用意したが、遠距離攻撃が皆無な生徒が四人。

 不安な生徒が二人。

 残りの四人も五〇メルだと自信がないとのことだそうだ。

 逆に、攻撃に自信がある人は、錬金が皆無や実用レベルに程遠い人ばかり。


 結局当初の予定の錬金六人に、攻撃二人、そして僕とミクちゃんの計一〇人となった。

 六人はそれぞれ三本づつの計一八本。

 接着、固化でできれば強固、そして耐火の三つの錬金を行うことになった。

 もちろんそれ以上のことができれば行う。

 ただし、大きなものに錬金するには時間が掛かるから、この程度が精いっぱいだろう。

 付与や補助に回せる時間も魔法力も無さそうだしね。


 僕とミクちゃんは接着だけでいい。魔法力の温存のためだ。

 それと生け花掛かりだ。

 できる範囲だけでいいとのお墨付きだ。


 それに、「セージスタ君とミクリーナさんは二本づつでいいから」と、計二二本を活けて、八本は捨てる作戦だ。

 あとは攻撃の二人に、プラス僕とミクちゃんの攻撃に掛かっている。


 アナウンスで選手紹介が終わった後、捕捉のアナウンスがあった。

『ミラーノチームにはまたもセージスタ・ノルンバック選手とそれにミックリーナ・ウインダムス選手がいます。

 そしてロータスチームにはカルンドス・スルスフィーガ選手と、コルコラーナ・スルスフィーガ選手がいますがこの四人は、全員初等部の選手で、最後の交流試合で戦うんだそうです。

 今から熱い戦いをして、午後の交流試合で戦えるのでしょうか。

 セージスタ・ノルンバック選手に至ってはこれで二試合目です。ちょっと心配です』


 どうやら、あの濃い黄色い髪の毛が印象的な二人が僕たちの戦う人たちみたいです。

 似ているからやはり親戚だと思う。

 男のカルンドス君がにらんでくるが、コルコラーナさんも気が強そうだ。

 それと僕たちより年上みたいだ。


 土台は花を挿す四〇個の穴――ジグザグに一メル間隔――の周辺は強固にできているけど、その周辺はもろそうだ。強い魔法には耐えられそうになさそうだ。


『開始!』


 花は思ったより大きい、直径三〇センチ強はあるだろう。

 要は、ヒマワリみたいな花だ。

 ただし球形の面白い花で、どう挿しても的になる。


 僕とミクちゃんは<身体強化>して、残った八本を含む、一二本を持って移動。

 ジグザグの射手から向かって後方になる二〇個の穴に錬金魔法で的となる花を接着する。

 後方中央の二個の穴を含む、前方(手前)の二〇個の穴が僕とミクちゃんの担当だ。

 見た目判定のための一〇本の花をミクちゃんの指示通りに挿す。


「ミクちゃん、三本ほどお願い」

「私が八本やるから、セージちゃんは強化に時間使って」

「了解」

 ミクちゃん八本に僕が四本だ。


 僕とミクちゃんは<接着>を使って花を穴に固定していく。これさえしておけば減点はない。

 穴に収まる部分は約四〇センチメル。

 それなりの強度で接着しないと、接着無しとなって、撤去対象だ。


 作戦では面と向かって言われたわけじゃないけど、僕とミクちゃんの花が何かあった時の撤去用ってことだ。


 そんなことさせるか。


 僕はこの程度の<接着>は、マシマシを使って一本三〇秒で固定していく。

 分担の二本を終えたところで三分経過。接着状況も確認済みだ。


 あとは後方の中央に、二本を接着して強化すればOKだ。


 まずは<接着><強化>で根元を固める。


<強化><柔軟>

<弾性><耐熱>

<耐火><反射>


 一本目が完した。

 さすがにこれだけやると一〇分ほど掛かってしまった。

 付与や補助は対象物に一回づつしか掛けられないけど、精密な錬金でもなければ、錬金は何度でも魔法を掛けることは可能だ。


 <接着><強化>で根元を固める。


<強化><柔軟>

<弾性><耐熱>

<耐火><反射>


 二本目もOKだ。


 残り五分弱。


<コーティング:ミラー><コーティング:ミラー>

 二本にいっぺんにミラーコーティングを施す。

 大きく複雑だから、それなりの時間が掛かったけど、案外簡単にできた。


<付与Ⅲ><イリュージョン>、<付与Ⅲ><イリュージョン>


 今度も二本いっぺんにキラキラを施して完成だ。

 三分ほど余ったか。


<補助Ⅲ><イリュージョン>、<補助Ⅲ><イリュージョン>

 一気に三本づつキラキラを付ける。

 いい加減だからあっという間に効果は落ちるけど、判定時間だけ持てばいい。


 ミクちゃんも一本だけは頑張ってきれいに仕上げたみたいだ。

 中央の三本が三角形に綺麗にキラキラと光ってる。

 その横で前面の三本づつが、それなりに輝いている。


 ロータスチームではカルンドス君とコルコラーナさんは、錬金の方に参加しなかった。

 攻撃に特化するみたいだ。

 それともう一人錬金に不参加だから、三人で攻撃をするみたいだ。


『ミラーノチームは随分きれいなお花に仕上げましたね。なんという魔法ですか』

『キラキラしているのはイリュージョンです。イメージ投射が非常にうまくできています。

 反射しているのはコーティングでしょうか。それにしても初等部のセージスタ君とミクリーナさんはたいしたものです』


 そりゃーそうさ。N・W魔研で日ごろから頑張っているもの。


『二人ともかなりの魔法を使っていましたが、試合は大丈夫なんでしょうか』

『さあ、そこまではわかりません』


 うん、それも大丈夫だよ。


『美的判定は、ミラーノチームの圧勝です』


 両チームともに接着不足もあり、ミラーノチームは二本、ロータスチームは三本+美的判定分の三本の計六本が撤去された。


 残りミラーノチームの二八本対、ロータスチームの二四本の射撃対決だ。


『開始!』


 チームメイト二人のの<ストーンショット>と<ファイアーマグナム>の、堅実な単発魔法の効果を眺めている。

 一発一発は確実だが、ためというか次弾が遅すぎる。


 対してカルンドス君とコルコラーナさんにもう一人の攻撃であっという間に、二〇対二〇と追いつかれた。

 どうやら僕とミクちゃんのキラキラ花は最後の楽しみに残してるみたいだ。


 ここで焦ったのか、チームメイトの魔法がそれ、土台を大きく破壊。

『ミラーノチーム、五分間の魔法停止です』


 ロータスチームの攻撃が続く。

 残り七本になって、

『ミラーノチーム、攻撃再開!』


「ミクちゃんやるよ」

「はい」


 

<多弾ストーンミサイル>

<多弾ストーンミサイル>


 僕が扱えるのが同時四発で、ミクちゃんはギリギリ二発だ。


 もちろん照準無しで撃つならストーンバレットやストーバレットⅡがあるし、僕たちならハイパーストーンバレットなどがある。


 単発的に扱えて的確に当てられるのがってことだ。


<多弾ストーンミサイル>

<多弾ストーンミサイル>


 一気に一二本の花を破壊する。残り八本。いやチームメイトが破壊して残り六本だ。

 対するミラーノチームの残りの花は五本だ。それも中央の一か所に固まっている。


『何でしょうか、あの魔法は見たことがありませんが?』

『さあ、わかりません』

 驚くアナウンサーに解説者が首をひねる。


 そりゃそうだろう。僕たちの個人魔法だ。

 まだまだ他にもあるけどね。


「<ファイアーバレット>」

「<ファイアーバレット>」


 ロータスチームは一気に五本を破壊するみたいだ。

 カルンドス君とコルコラーナさんの二人が幾つもの火球を発生させて飛ばす。


 扱いきれるのか?


「ミクちゃん」

「了解!」


<ソーラーレイ>

<ソーラーレイ>

 防護壁の強度があるから、個人魔法化したハイパー化の魔法は使用しない。

 ソーラーレイを左右に振って、二人で残った花を全て破壊する。


 カルンドス君とコルコラーナさんの火球が着弾する前に、残り六本の花が焼け落ちていた。


 その後に火球群がぶつかり、土台までをも蹂躙していく。…が、ほとんど焼けた跡も見受けられない三本の輝く花が立っていた。


『勝者、ミラーノ』

 ウワーッ、と歓声が上がる。


「俺たちは負けちゃいない。テメーはゆるさねー!」

 カルンドス君が憎々し気に、僕を指さして叫んできた。

「君!」と審判に注意されるも、僕をにらむのをやめなかった。

 いやな気分だ。


「セージちゃん、神の御子候補でも、いやな奴だね」

「うん、そうだね」

「……ねえ、変な感じしない?」

「なんか、僕も感じる」

 僕も胸騒ぎのような、ざらついた気持ちが拭えない。

 ミクちゃんもそうみたいだ。


『あのピカッと光った魔法は何なんですか?』

『さあ、見たことも聞いたこともありません』


『そうですか…(さっきから知らないことばかり、解説ですか)…』

 アナウンサーの軽蔑と失望を含んだ、呟きが聞こえた。


『えー、気を取り直しましてと……、どうやったらあの花たちは火球攻撃をしのいだのですか』

『さあ…(わしゃ、もう知らんがな)…』

『えー、そういうことわ言わないでください。どうしてですか』

『知らんものは知らんし! わからんものは、わからん!』


 ここまでは対戦成績一対一だが、ミラーノチームの雰囲気は最悪だ。

 結局僕とミクちゃんしか活躍してないからだし、僕とミクちゃんを特別視する視線や態度があからさまだ。


 第三競技、花火でボン。


 空中に浮いた的を索敵で判断して、攻撃魔法で破壊すると、キッチリとした的であれば花火のようにきれいにはじける仕組みだ。

 ダメ的を破壊すると、防護結界内に異様な匂いが漂ううというペナルティーまである。


 時間と索敵の正確性を競う競技だけど、ミラーノチームは僅差で敗北。

 一対二と僕とミクちゃんが出てなかったら三縦をくれっていたことだろう。

 さすが魔法強国というだけはある。


 午前の競技は終了した。


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