126. 我が家、我が学校は遠く
六月一二日黒曜日にヴェネチアン国に帰還した。
ヴェネチアン国も、のほほんと、ワンダースリーにだけ諜報や破壊活動を任せていたわけじゃない。
キッチリとロートリンゲン市の魔導車の破壊工作のその後を調査していた。
魔導車の故障として騒ぎ出したのが、晴れとなった六月一〇日緑曜日のことだそうだ。
全車両が故障と判明して、破壊工作ではないかと、騒ぎ始めているところだそうだ。
ホンタース元王子は怒髪天を突くで、あまりの興奮で卒倒したそうだ。
久しぶりにヴェネチアン国に平穏なひと時が訪れたようだ。
ズーディアイン殿下の結婚式も間近なことだろう。
内密であったジーザイス・ヴァン・ヴェネチアン王とミラーニアン公爵に一応、報告もしたし、 工場で入手した魔石工具のいくつかを献上した。
これで本当に帰れると思ったんだが…。
◇ ◇ ◇
六月一三日赤曜日。
数日間の滞在を、是非にとのお願いに、しぶしぶ約束させられたことによって、何でこうなった。
滞在場所もまたも迎賓館となって、現在はキフィアーナちゃんに連れられて、馬車に揺られる僕・ミクちゃん・ルードちゃん。
そう、まだ帰れないのだ。
数日間の滞在を有意義にということで、実はミラーノ初等魔法学校に向かっているんだ。
リエッタさんに教えてもらうだけで充分だっていったのに。
そう、たった数日間といえども子供は学校に通へということだ。
たった数日間といえども、制服が用意されていた。
オーラン魔法学校はブレザーのような上着だけの制服だけど、ミラーノ初等魔法学校だと白いシャツにネクタイ、上着にズボン(もちろんミクちゃんたちはスカート)だ。
魔導車がもてはやされる昨今、馬車でのお出かけは逆にステータスになるそうだ。まあ、そんなことは日本でもあったけど。
それとルードちゃんが馬車好きなこともあるってことで、馬車での通学となっている。
一つだけホッとしたのが、時空電話でオーラン市に現状を報告してくれたことだ。
まあ、なんて報告したか知らないけど。
あと、僕だけというか、僕しか持ってないんだけど、胸には銀鷲章を付けている。
校長先生などへの、最初の挨拶の時には付けておきなさいってことらしい。早く仕舞いたい。
ちなみに僕とミクちゃん、それとルードちゃんの胸ポケットには紋章入りの万年筆が刺さっている。
こんな形式美はいらないんだけど。
「可愛らしい英雄さんたちだこと。短い間となると思いますが、ミラーノ初等魔法学校で精一杯の学校せ活を楽しんでくださいね」
ここでも校長先生は女性だ。
「ピゾリーノ先生、こちらの三人が短期留学生扱いとなる、王家のご友人の、セージスタ・ノルンバック君に、ミリアーナ・ウインダムスさんに、ルードティリア・ナルア・フィフティーナさんです」
キフィアーナちゃんと同じクラスって訊いているから、ピゾリーノ先生はキフィアーナちゃんの担任でもある。
僕の胸を見て目を見張るピゾリーノ先生に、僕もピゾリーノ先生のナイスバディ、胸にくぎ付けだった。
お互い様だよね……って、イ、イテッ。
ミクちゃんに足を踏まれた。
「よろしくお願いね」
「「「よろしくお願いします」」」
フワフワした天然掛かった雰囲気の先生だ。
これで公式挨拶は終わったので、勲章や万年筆はアイテムボックスの中だ。
それと学生証を渡された。
ちなみにミクちゃんとルードちゃん、そして僕のポシェット型フェイクバッグは、制服に合わせて新規にあつらえている。そう、僕の分もだ。
革製でカッティングして接着と変性と成型で作ったものだから、縫うような手間をかけていない。随分と手慣れたものだ。
ねだられてキフィアーナちゃんの分も作らされた。
「何でも王様ともお知り合いで、ミラーニアン公爵様の招待でマリオン国からいらっしゃったお友達です」
設定はそうらしい。
「ほんの短期間ですが一緒に勉強をすることになりました」
クラスメイトに紹介された時も、クラス中に興味の目で観察された。
居心地悪いったら無いよね。
ミクちゃんは委縮しちゃうし、ルードちゃんはにらみ返すし、僕も冷や汗をかいちゃったよ。
キフィアーナちゃんは楽しそうに笑ってるし。
丁寧に名前を名乗って、よろしくと挨拶をした。
座席はテーブル付きの階段席で、キフィアーナちゃんがコッチコッチと手招きする。
適当に手を上げて、近くに座る。
ミクちゃんとルードちゃんは恐縮してるけど、まあ、気にしても仕方がないし。
なじみの無いルードちゃんも分け隔てなく、相手をしてくれるから特に問題はないし、他に知ってる子はいないしね。
注目が高まったようだけど、致し方ない。
赤曜日の一時限目はオーラン魔法学校のクラス学習と同じようなもので、ホームルームだ。
マリオン国の勉強になったが、僕たちがマリオン国内で訪れたのは僕がキュベレー山脈に行った時のローガン町と途中でチラ見した程度のゴルオン市とオットーラ町だけだ。
ルードちゃんは幼い時には魔大陸から逃げてきたけど、物心が付いた時にはオーラン市にいたから、ミクちゃんと一緒で、陶器と貿易の街としてのオーラン市のことしか知らない。
貿易としてはキュベレー山脈から採掘される魔石貿易の中継地としても活躍している。あとは塩と漁業が有名だ。
あとは最近話題の七沢滝ダンジョンが有名なくらいだろう。
マリオン国の事は僕の本の知識だけだ。
二時限目の国語は変わり映えのしない授業だ。
三・四時限目は礼儀作法にダンスなどの社交の授業だ。
ここで気づいたんだけど、どうやら僕たちのクラスは貴族クラスのようで、ハイソな授業があるみたいだ。…というかあるんだ。
一〇才から社交界デビューだからか、女子が主だけどやる気を出してる人が多い。
お茶会が終わって、ダンスタイム。
「セージちゃん、お願いします」
「はーい」
「ちゃんとやるき出してよね」
「う、うん」
音楽に合わせてナチュラルターンで踊り出す。
チェンジステップでリバースターン……コントラチェック、ナチュラル・フレッカール……。
「久しぶりで楽しい」
「そ、そうだね」
「セージちゃんは楽しくないの」
「いや、ミクちゃんと一緒だと何をやっても楽しい…よ」
ミクちゃんが真っ赤になったのが分かるけど、こっちもハズいんだけど。
一曲を踊り終えると。
「セージ踊りなさい」
「はいはい」
「なんで、みんなこんなに熱心なの」
「ズーディアイン兄上の結婚披露パーティーで踊るために決まってるじゃない」
「ああ、丁度デビューか」
「そうよ」
社交界のデビューが大体一〇才となっている。
ズーディアイン殿下の結婚披露パーティーが社交界デビューとなる可能性が高い。
当然、そんな場所で無様なマネはさらしたくないよね。
キフィアーナちゃんと踊っていると。
「ダンスの人だ!」
誰かが叫んぶと、続いて声が上がった。
「あ、ホントだ」「うっそー⁉」
どうやら僕を見て叫んでいるようだけど、三度のパーティーでダンスをしたから身に覚えはあるけど、ダンスマシーンは覚えちゃない。
踊り終わたら三人に囲まれた。
「マリアージュ・ルージュラです、覚えてますか」
「私、リリブランシュ・ノーゼスです、今までセージスタ君と二回も踊ったことがあるんですよ。今日も踊ってくださらないかしら」
「パーライル・ライザッシュ、よろしくおねがいします」
このシチュエーション、なんとなく思い出した。顔や名前までは思い出さないけれど、雰囲気は覚えがある。
なんだか僕のところに並ぶ人が増えているような気がするんだけど。
多分、クラスメイト男子はナチュラルターンしかしないんだろう。
げんなりだけど、この程度じゃダンスマシーンは疲れないから、まあ、いいや。
それにしてもしばらく踊ってなくても、ダンスマシーンとして身についたステップは忘れないものだ。
名前を名乗ってくれるけど、誰も頭に入らない。
寂しそうなルードちゃんともしっかりダンスしましたよ。
「やっぱ、いいとこのお坊ちゃんは、教育が違うのね」
「そうかもしれないけど、従兄弟の結婚式で、無理やり覚え込まされたんだ」
「最初っからこんなにうまかったの」
「その結婚披露パーティーがファントムスフォーの襲撃事件で、あれよあれよという間に、ダンスマシーンとなってみんなと踊ってたらいつのまにかにね」
「セージって、騒動を招き寄せるたちなの。平穏って言葉知ってる」
「そんなことは無いと思いたし、平穏大好きだよ。飽きない程度にだけど」
「ウチも覚悟しておくわ」
「それって、どういう意味⁉」
「そのまんまよ!」
リズム感もいいルードちゃん。
体術“7”も伊達じゃなく、ダンスの覚えも早い。
まあ、女子のダンスの覚え始めは、男子のリードである程度は踊れちゃうから、楽ていうのもあるんだけどね。
「セージにミクにルードは付いてらっしゃい」
昼休み、キフィアーナちゃんが僕らを引き連れてサッサと教室を出る。
「今日は大叔父様に頼まれてるから、ごめんなさいね」
他にも付いてきたそうなクラスメイトいたけど、断っていた。
セルフサービスで食べたいものを取って会計するシステムだ。
さすがに内陸、魚料理はほとんどない。
キフィアーナちゃんは日替わりの肉じゃが定食で、ご飯は少なめ。
僕はカツカレー大盛りにシチューに煮込みハンバーグだ。
ミクちゃんはグラタン(大)にアボカドサラダにコンソメスープだ。
ルードちゃんは焼肉定食に野菜炒めだ。
身体能力アップに伴い、僕たちの食べる量はチョット多めだ。
会計は学生証だ。…で、観察してると学生証のデザインや色が違うし、お金を払っている人もいる
食事場所も貴族席なのか豪華な場所に案内される。
「その学生証は、ミラーニアン大叔父様が払ってくれてるから、あとでお礼を言っていてね」
「了解」「はい」
「わかったけど、ウチよく知らんし」
「まあ、大丈夫だよ。なんとかなるって。
で、話って何? 今ので終わり?」
「私もチョットは休憩が欲しいってだけよ」
「僕たちダシか」
「まあ、そんなところよ」
「でも、周り中聞き耳を立ててるんじゃないの」
「その程度はいつものことよ」
「お姫様も大変なんだな」
「そうかもね」
ミラーノ初等魔法学校の貴族クラスは二つあって、自宅学習が完璧な生徒が集まっているのが僕たちがお世話になった三年S一組で、キフィアーナちゃんのいるクラスなんだって。
なので学習も魔法中心や貴族社会の関係の授業多めのクラスらしいことを、食事中に聞いた。
貴族席だと、かたずけをしてくれるし。
「紅茶でいいわよね。人数分をお願いそれと日替わりのケーキを付けてください」
「かしこまりました」
ドリンク等のオーダーも可能だ。
ちなみに休憩は一時間二〇分と少々長めだ。
「午後には魔法の実地訓練があるけれど、みんなはどうするの」
「それって出なくていいってこと」
「頼めばそれもありかもしれないけど、出てくれた方がいいかな。
私が聞いたのは、どの程度までの魔法を見せてくれるかってこと。
セージやミクがすごいってことは聞いてるけど、見たことないし。
ルードもすごいんでしょう」
「セージはまた張り切って防護結界壊さないでよね」
「入学試験以来壊してないだろう」
キフィアーナちゃんが「ウソよね⁉」と驚いたけど、「ホントよ」とルードちゃんは無碍もない。
「ちなみに、皆さんはどの程度の魔法ができるのでしょか」
ミクちゃんがとりなすように質問する。
「レベル3が撃てたって、ふんぞり返ってる、いやな奴がいるくらいね」
「それを僕たちにボコボコにしろって」
「防護結界を壊したら自分で張るんだからね」
「わかって……、そんなことしないよ!」
「で、できるんだ」
キフィアーナちゃん、はしたなくも、顎が外れそうですよ。
「…まさかミクもルードも…」
「ええ、多分レベル“10”程度でよければ」
「もっと上位の張れるでしょ」
「それはルードちゃんだって…」
「神の御子ってそれほどまでにすごいの⁉」
キフィアーナちゃんが、さすがに小声でささやいてきた。
それも真剣に。
「いいえ、セージちゃんだけは別ですけど、私たちは私たちなりに鍛えたからです」
「ほとんどセージにおんぶに抱っこだけどね」
◇ ◇ ◇
午後の魔法実習(実地訓練)の基本は攻撃魔法の習得だ。
三年生ともなると、あくまでも一般的だと、レベル2が完全でなくとも使えると上級者とされる。
キフィアーナちゃんのいやな奴ってのがどうやら、三年S二組のクオニナーノ・ドラボーン君らしい。
例のドラボーン侯爵の長男がミーラノ市で人質になっているっていうことだったけど、その長男の子供がクオニナーノ君なんだって。
まあ、後で知るんだけど、クオニナーノ君は次男で、長男は五年生なんだって。
侯爵家からすればS一組のはずが、S二組にされたのはキフィアーナちゃんの所為じゃないかな。
「<エニーファイアー>、<ハイウインド>」
クオニナーノ君が火魔法のレベル3と風魔法のレベル2を合成した複合魔法にしようとしているけど、複数火球がまだまだ安定してないんだ。
それじゃあ、無理でしょう。と思ってみていたけどやはり崩壊した。
それでも先生たちは期待した視線で応援していた。
お爺さんのことが伝わっているのか、クオニナーノ君どこか浮いてます。
周囲から敬遠されてるみたいなんだ。
見てると真面目そうなんだけど。
「セージたちはシッカリ見てなさいよ」
ハイハイ。いいからやって。
「<ウォーター>、<ハイウインド>」
レベル1の水球が的に飛んではじけた。
ほー、それなりに頑張ってるんだ。
周囲からも拍手が上がる。
人気もあるんだ。
「ほら、今度はセージたちの番。
すごいの見せなさいよね」
「ねえ、ここの防護結界ってレベル6程度じゃ壊れないよね」
僕がキフィアーナちゃんに小声で訊ねたら、大声で叫ぶんだもん。
「ピゾリーノ先生、ここの防護結界ってどの程度まで耐えれるんですか」
「そうですね、たしかレベル8程度までは耐えられるようにしているはずですが」
「そんなことを聞いてどうされるのですか?」
「セージが、そこまでの魔法を見せてくれるっていうから」
言って無いから。
「ほう、君は?」
「ミラーニアン公爵に招かれた、マリオン国の方々で、私の友人です」
勝手に話を勧めないでよ。
「それではレベル8の魔法を見せていただけますか」
「はー、いいですけど」
レベル8っていうと、あ、あった。これが丁度いい。
「<小石竜巻>」
メニーストーンの改良魔法に、メガトルネードを組み合わせた、複合魔法だ。
それに魔法力をやや多めに込めて…。
いやー、的をあっという間に破壊して、ゴガガガゴーン、と防護結界が大きく揺れた。
キャーッ、と悲鳴も上がっている。
「<マジッククラッシャー>」
「<ビッグトリプルスフィア>」
あー、ルードちゃんが止めて、ミクちゃんがシールドを。
二人とも魔法発動が本当に早くなったよね
「セージちゃん!
先生、申し訳ありませんでした」
ミクちゃん怒らなくても、これって僕の所為じゃないよね。
それに保護者みたいに謝らないでよ。
「セージも懲りないわよね。いつものように“6”ぐらいで押さえなさいよ」
呆れ果てるのはルードちゃん。
「ほら、謝る」
「だって、先生が……はい、ごめんなさい」
ミクちゃんがにらむと怖いこと、怖いこと。
でも、先生も、生徒たちも精神魔法に掛かったかのように誰も反応がありません。いや、例外が一人。
「ほんとうに、とんでもなくすごいんだ⁉」
感嘆するキフィアーナちゃんの声が響くと、三々五々、みんなの魔法が溶けていく。
「おまえ、し、失礼しました。あ、あなたたちは何ものですか」
「えー、普通の留学生、ですかね⁉ ミクちゃんとルードちゃんはどう思う」
「さあ、昨夜に、ここに行きなさいと言われただけですから」
「でも、多分だけど普通じゃないわよね」
「セージスタ君に、ミクリーナさんに、ルードティリアさん、あなたたちはこれからは何もせず、見学をしていてください」
「「「はい」」」
ピゾリーノ先生の決定に素直な僕たちだった。
「先生、小石竜巻ってレベル8なんですか?」
クオニナーノ君がピゾリーノ先生に訊ねる。
「えー、わかりません。レベル7以上になると秘密にされている魔法が多く、発表されていない魔法が多いからです」
「それじゃあ、小石竜巻を消した魔法や、大きなシールドもそうなんですか」
「そうですね」
多くの生徒はマジッククラッシャーやビッグトリプルスフィアについては、認識していない。
そういう意味でいったらクオニナーノ君は冷静だし、魔法センスは抜群だ。
結局僕たちは見学で終わった。
僕は時々ピゾリーノ先生の偉大なる……ゲフンゲフン…いえ、見学は正しく、です。
誰かに近づいて話しかけようとすると、さりげなく避けられてしまうっていう状況だ。
ちなみにキフィアーナちゃんに、私も鍛えなさい、ってさんざん絡まれた。
断り続けるのも、疲れちゃったよ。
◇ ◇ ◇
その日の夕食後にキフィアーナちゃんが僕たちを訪ねてきた。
「私ももっと強くなれる」
「いや成りたい」
「どうすれば強くなれる」
って、またもしつこく強請られ、訊ねられてしまった。それも真剣に。
真剣だから、余計にたちが悪い。チョット辟易してしまった。
◇ ◇ ◇
六月一八日黒曜日。
ヴェネチアン国で、僕たちの対応が決定した。
まあ、対応というか、処遇というか、なんでも極秘任務にどういった褒章がいいかってことでもめてたんだって。
それで僕たちは無理やり引き止められて、学校に行くことになったみたい。
僕たち四人はヴェネチアン国の名誉貴族となって、四人とも冒険者ってことで小さな短剣、“信義の短剣”を下賜された。
その短剣には双頭の竜が外向きの下向きの紋章が飾られていて、僕たちの名前が掘られていて、魔法力を込めて完全に個人のものとした。
ヴェネチアン国ではどこでも無税となるそうだ。
六月一八日黒曜日には内々のパーティーもあって、ダンスもした。
僕たちのことは公式に披露されることはなかったが、パーティーではヴェネチアン国のために貢献したとの発表の場所でもあった。
妙に照れくさいものだ。
僕たち子ども三人が“神の御子”であり、リエッタさんがその指導者だとして、事前に参加貴族に内々に通達していたらしく、お告げの活躍でヴェネチアン国に貢献があったが今しばらくは内密に、問い合わせは王家に、とのことでパーティーでは、僕はダンスに引っ張りだこだったこと以外は、特に問題もなかった。はあ、疲れた。
ルードちゃんはダンスはかたくなに断り続け、リエッタさんも数回踊っただけであとは断っていた。
ミクちゃんも僕と踊った以外は、知っている人と踊った以外はかなり断っていた。
僕まで断れないし、僕が踊れることを知っている人が驚くほど多かったんだもの。
ちなみにダンスパーティー前に“銀鷲章”を付けるように言われたけれど、本気でお願いして辞退させてもらった。
◇ ◇ ◇
ミクちゃんはアマルトゥド侯爵夫人(ロキシーヌ様)やディンドン侯爵夫人(ネーザンス様)のお茶会に呼ばれ、まあ、僕も一緒に行ったけど、幼いミクティーヌ(ミニミク)ちゃんとの久しぶりの再会も果たして喜んでいた。
僕は帰宅直前に、結局キフィアーナちゃんの熱意に負けて、一度だけ体内魔法の最大の活性化と、魔力眼と魔素感知を補助してあげた。
◇ ◇ ◇
六月二〇日青曜日にエルドリッジ市に向けて発ち。
そして七月二日青曜日にオーラン市向けて発った。
途中荒天で、チョット船酔いに成りかけたけど、様々な耐性があるから、無事、事なきを得た。
ただ、ミクちゃんとルードちゃんはかなり酔ちゃったけどね。
それと浮遊島のテミスが遠くに見えたんだ。
イーリスを思い出して何か懐かしかった。
久しぶりのオーラン市。
本当に懐かしかった。
到着したのは七月五日白曜日だった。