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次元災害で異世界へ  作者: 真草康
ギランダー帝国潜入編
126/181

122. 首都ギーランディア内城壁戦


 五月八日青曜日の朝、<テレポート>で首都に入る。

 ワンダースリーがキャンプ地に帰ってこなかったんだ。

 メモを残してある。

 結局、打ち合わせというか話し合ったけどいい案は出なかった。

 通常は王城には入れないし、認識阻害でテレポートも難しいもんね。


 街中も負の魔素と魔法力の濃度が上がっている。

 負の魔素と魔法力やその波動のためと思われる体調不良を起こしている人が数多くいる。

 そして首都全体に活気が無い。


 浮遊眼でとにかく首都内を探索する。


「ねえ、兵隊が大勢集まって移動してるよ」

「どちらにですか」 

「あっちの方」


 どこに向かっているかは不明だけど、指差して移動を始める。


 どうやら攻撃目標は教会みたい。

 その教会を大きく取り囲んでいる。


「あの、教会を取り囲んでるよ」

「ってことは」

「多分そうじゃない」

 ビリリート第二皇子じゃないかな。

 城門の出入りは禁止されていたとはいえ、脱出せずに、まだ首都に留まってたんだ。


「リエッタさん、どうします」

「様子見で、まずはビリリート王子の場所の確認で、救助できれば救助しましょう」

「それで王城に入るの」

「それは無理でしょう。混乱させてそれに乗じてってのがせいぜいでしょう」

「それじゃあ、混乱させればいいってこと」

「そうなりますね。ただし、混乱させるなら王城を巻き込まなければ意味がありません」

「混乱させればいいんだね」

「セージちゃん、やり過ぎはダメだよ」

「わかってるってば」


  ◇ ◇ ◇


 指揮官の命令で、無言の突撃が開始される。

『隠形』『認識阻害』で接近して、

<マッドフィーリング><マッドフィーリング>

 闇魔法のレベル9、範囲攻撃の全感覚異常だ。えー、禁忌魔法だけどしょうがないよね。威力は弱めているし。

 ……バタバタと兵士が倒れて、叫び声やうめき声が上がる。

 えー、弱めてたけど、こんなに効き目があるの。

「まったくもー」

 ミクちゃんに呆れられてしまった。

「セージだからね」

 総合が“80”以上の強い兵士は、僕・ミクちゃん・リエッタさんで<ハイパードリームランド>で眠らしていく。

 ごく少数だからあっという間だ。

 ハイパードリームランドはレベル5と弱い魔法だけど、マッドフィーリングに影響されているのか、よく効いた。

 ちなみにプラーナは人間同士のことに関しては、我関せずだ。


 もう一隊に接近。

<マッドフィーリング><マッドフィーリング>

<ハイパードリームランド>…


 最後の一隊に接近。

<マッドフィーリング><マッドフィーリング>

<ハイパードリームランド>…


 魔法レベルの高い兵士や、耐性のある兵士が残ったけど、それは二〇〇人ほどいた兵隊の四分の一程度だ。もちろんワイヤーネットで捕縛した兵士を抜かしてだ。

 その四分の一のほとんども、精神集中してからだの動きが良くないし、完全に動ける兵隊も戸惑っている。

 何せ指揮官がほぼ全員、倒れてうめき声を上げているんだから。


 教会でも周囲の騒ぎを聞きつけたようで、武装集団、三〇人程度が飛び出してくる。


 ちょうどいい戦闘バランスのようだ。と思っていたら、その後も教会から武装兵が飛び出してきて、帝国兵を圧倒し始める。


 応援の帝国兵が集まってきて、かなりの騒動だ。


「そろそろやるよ」

「やり過ぎないでよね」

「わかってるって」


<フライ>

飛び上がって、高い建物の屋上に立つ。


<ハイパーエクスプロージョン><ハイパーエクスプロージョン>


<ハイパーエクスプロージョン><ハイパーエクスプロージョン>


 あちらこちらの上空に、水蒸気爆発を発生させる。


 兵士が城から詰所から、魔導車に乗って、またはトリケランやバイゴーランの竜騎に乗って、飛び出していく。


 念のために、もう一度。

<ハイパーエクスプロージョン><ハイパーエクスプロージョン>


 もうそろそろいいか。

<フライ>

 見つからないように王城に接近。

 王城の南側の内城壁に向かって、マシマシの魔法をこめ。


<ハイパービッグバン><ハイパービッグバン><スーパービッグバン>

 三つの魔法を一点に集中する。

 初めての試みだけど、両手と眉間の三か所に呼び出した魔法陣を一気に発動、合成させた。


 バババァァーーーーン。


 カオスフィールドに覆われた城が揺れる。防護結界にヒビが入る。

 並列思考が“8”で加速が“6”――魔樹の森でアップ――ともなると、四つの思考が可能だ。

 同一魔法の行使も慣れたというより、簡単になったものだとはいえそれは二つに限ってだ。

 三つはさすがに負担が大きい。頭の中が過熱したみたいだ。


 もう一度だ。

<ハイパービッグバン><ハイパービッグバン><スーパービッグバン>

 それに合わせてミクちゃんとルードちゃんが魔法力マシマシで短針魔導ガンを撃つ。


 防護結界を部分的にだが、かなり破壊できた。

 さすがに頭が重いし更に加熱したみたいだ。


 大きく深呼吸して、高ぶった精神を落ち着ける。


 ルードちゃんが、ヒビが入って大きく破壊された防護結界の内側から、修復より早く。

<スーパービッグバン>

<スーパービッグバン>

 魔法と短針魔導ガンで破壊していく。


 ミクちゃんが警備兵を眠らせていく。

<ハイパードリームランド>

<ハイパードリームランド>


 そして復活した僕が、防御力の弱くなった認識阻害効果と防護結界を持たせたセイントアミュレット柱の南側の八本のそれぞれに。


<ハイパービッグバン><ハイパーサンダーボール>

<ハイパービッグバン><ハイパーサンダーボール>

        :

        :

<ハイパービッグバン><ハイパーサンダーボール>

<ハイパービッグバン><ハイパーサンダーボール>


 そう、このくらいやらないと、いざってときに逃げられないもんね。

 最低限だよね。

 防護結界の修復ももうない。


<ハイパードリームランド><ハイパードリームランド>

<ハイパードリームランド><ハイパードリームランド>

 駆けつけてきた兵士に、正面玄関や内城壁に守備に就く帝国兵にもはおねんねをしてもらう。

 効き目は抜群だ。


『負の魔素と魔法力と、その波動の影響だな』

「ああ、そういうこと」

 闇魔法が効きやすい環境だってことだ。

 それに負の波動の影響で帝国兵が弱っていることもある。


 城を直接囲む城壁の上に三人――僕にミクちゃんとルードちゃん――で降り立つ。

 耐性のある五人の兵士――ハイパードリームランドの影響は受けている――は僕が倒して、ミクちゃんとルードちゃんが縛り上げる。

 縛り上げるといっても総合(強さ)が“100”前後の近衛兵だけだ。

 その人たちは集めて<ハイパードリームランド>と、深い眠りについてもらった。


 ついでに西のセイントアミュレット柱を魔法力マシマシの短針魔導ガンで破壊――傷をつけるだけだけど――すると、さすがエルフ、ルードちゃんもマシマシで東側を破壊する。遠くの標的もなんのそのだ。

 これでちょっとやそっとじゃ、復旧は不可能だ。

 城門をふさいだリエッタさんもすでに合流済みだ。


 レーダーや浮遊眼で認識できるけど、まだ阻害効果がある。

 あそこか。


<ハイパービッグバン><ハイパーサンダーボール>

<ハイパービッグバン><ハイパーサンダーボール>


 お城の二つの尖塔に設置された認識阻害魔石、そう、基本は認識阻害魔石だけを破壊するつもりが、尖塔だけを破壊しちゃった。

「セージちゃん」

「しかたないじゃないか」

「ミク、セージのやることだから」

 まあ、不可抗力だ。

 人がいないのは確認してからやったから問題ない。


 灼熱のカートリッジを装着した短針魔導ガンで、魔法力を込め、更に<フローコントロール>で二つの認識阻害魔石を撃ち抜く。


 レーダーや浮遊眼がクリアになった。


 正面玄関前ではリエッタさんが<ハイパードリームランド>で兵士を眠らせた後、巨大な土壁を生成している。

 戻ってきた兵士が城に入れないようにするための時間稼ぎだ。


 城はアリの巣を突いたような騒ぎだ。とはいえ、浮遊眼で見たところ、体調不良者がかなりいそうだ。

 精神を集中して、負の塊りを探すも、着飾っている人たちは王侯貴族だろう。

 それに執事や侍女たちに事務官のほとんどが、体調不良を起こしている。数は少ないが近衛兵や警備兵もだ。

 それらがレーダーを通して、または浮遊眼で見て取れる。


「オイ、セージスタ坊ちゃんさんよ。やりたい放題だな。

 まさか生きてるとは思わなかったぞ」

 一見学者風のファントムスフォーのファンティアスが、狂気を帯びた視線を投げかけてくる。

 右手にはフェンシング剣を持って、左腕には小ぶりの盾を装着している。


「ファンティアスさん、お久しぶりです。この前はたいそうなおもてなし感謝しています」


 まずい。ファントムスフォーの四人がそろってる。

 三人には、まず無理だ。


「今度はもっと感謝させてやるよ」

「いいえ、返礼をするのが先でしょう」


 どうしようと思った時に、空間が揺れ、またも人が現れた。


「セージ、一人、ズルい」

「メモを見て飛んで来たら、随分楽しそうに遊んでるじゃないか」

「ここまで急いで飛んできたのじゃが、とんでもないことになってて焦ったぞ」

 やったー、ワンダースリーだ。


「で、どいつにその負の塊りが憑依してるんだ。

 まさかこいつらじゃないよな」

「うん、この四人じゃない」

 僕は首を左右に振る。


「ねえ、みんな。僕はチョット行けそうにないんだけど、負の塊りはお願い」

「セージちゃん」

「大丈夫だって、悪い奴らはボコボコにするから」

 看破に対しての阻害効果スキルか魔石などを持っているみたいで、よくわからないけど、前回戦った限りじゃ総合は115”前後のはずだ。

“131”の僕なら油断しなければ負けないはずだけど、……ファンティアスの狂気の視線を見ると、覚悟を決めないとダメだよねとは思うんだけど……。


「でもプラーナと一緒の攻撃なんてできないよ」

「あ、そうか。それじゃあ、足止めをお願い」

「ちゃんと来なさいよね」

「わかってるって。それとこれを持ってって」

 黒いマントブラックカメレオンマント三着をアイテムボックストリアし三人に渡す。

 ロナーさんの結婚披露パーティーの確約で伯父様からもらったマントだ。


「最後のお別れはすんだかな」

「いいえ、これから一生付き合っていく相手ですから」


「「えっ…」」

 ミクちゃんとルードちゃんが瞬間沸騰したかのように真っ赤になる。


 え、ナニがあったの?


「セージスタ坊ちゃんよ。ユトリだな」

「……いえいえ…」

 ファンティアスは何を言ってるんだ?


「ここは任せて、みんなは早く行って!」

「セージ君待ってます。行きます」

「はい」「わかったは」

 リエッタさんに催促されて、ミクちゃんとルードちゃんはブラックカメレオンマントを羽織って姿を消した。


 僕は改めてファンティアスをにらむ。

 右手で太刀の赤銀輝を構え、左手には片鉄菱を持つ。

 身長も一三.五センチメルになったとはいえ、まだまだ赤銀輝は長いんだけどね。

 四思考の並列思考に加速なら何も問題ない。


 小さく深呼吸して、ギランダー帝国に来るって決めた時から覚悟はしていたはずだ!


<ハイパーエクスプロージョン><ハイパーエクスプロージョン>


 本気で魔法を放った。戦闘のゴング変わりだ。

 水蒸気の目くらましにもなる。


 兎人族の真っ白い毛皮に、見た目はややぽっちゃり系のボコシラさん――実は筋肉の塊りで、筋肉の弛緩・硬化が自由自在――は、光魔法が得意とされる女性のフォードラーラが相手だ。

 眼にも止まらない高速戦闘が開始された。


 天神族にしては小柄なプコチカさんの相手は熊人族の頑強なトムソイダだ。

 多彩な技の子供と、頑強・力の大人の戦いだ。


 発明家で長身な白髪頭のノコージさんは、ファンティアスの弟のムスティアスが相手だ。

 こちらは共に魔法前回の戦闘だ。


 そして僕の相手のファンティアスが飛び上がったところを、

<ハイパー砂竜巻>

 メガサンド+メガトルネードの複合個人魔法だ。

 ファンティアスには目つぶし程度にしかならないだろう。


<フライ>

 飛び上がって赤銀輝の二連続撃を、ファンティアスに見舞う。

 横滑りするファンティアスが、それを回避する。


 毒霧が広範囲で飛んでくる。


 それをフィフススフィアではじき、突貫して赤銀輝で切りつける。が、フェンシング剣でカウンターを放ってくる。

 素早く避けて、片鉄菱三個を投げつける。


 フィフススフィアはシールドを強化してそれを弾きながら、突っ込んでくる。

 僕のフライより早い。まるで一本の槍のようだ。


 避けるが、手を広げてフェンシング剣で切りつけてくる。

<ポイント>

 蹴ってフライを加速させて飛んだ。


 背中に数本の針が飛んできて、追撃に圧縮された高温の火球までが飛んでくる。

 さらに<ポイント>で飛んだ。


 背中をむいたまま。

火球弾ハイパーヒートマグナム><ハイパーヒートマグナム>

 振り向いて片鉄菱三個を投げつける。


 ファンティアスのフライの速度が更に上がった。


 中空で赤銀輝とフェンシング剣が交差する。

 並列思考と加速があっても、ファンティアスのフェンシング剣の技は多彩だ。

 互角に打ち合っていたつもりが、徐々に後手に回ってしまってきている。

 これが地面にシッカリと立っていれば、赤銀輝ももう少し扱いやすいんでけど、慣れない空中剣劇に、踏ん張れない所為もあって、ほんのわずかの遅れが続き、受けになってしまっている。


 片鉄菱三個を投げるも、盾にはばまれてしまう。

 魔法も放ってるけど、簡単に避けられてしまっている。


<フラッシュ>

 目くらましで、距離を取って、内城壁に降りる。


 切り込んでも、魔法を放っても、どうしても手加減してしまう。

 覚悟を決めても、どうしても覚悟が足りないみたいだ。


「セージスタ坊ちゃんは、戦闘に疲れたか」

 ファンティアスは揶揄してくるが、内城壁に降りるつもりはなさそうだ。

 空中戦が得意なんだろう。有利なところは手放したくはないようだ。


 禁呪魔法の毒魔法をぶちかましてくる。それも二つの魔法でだ。


<マジッククラッシャー><マジッククラッシャー>

<マジッククラッシャー><マジッククラッシャー>


「よく平気で、禁忌魔法を撃てるよね」

「生きるためだからな。あー、たった今はしつけのためだからな」

「しつけで殺されたら、たまったもんじゃないよ」

「ほう、この程度でセージスタ坊ちゃんが死ぬもんなのか」

「僕も、一応人なんだけど」

「そうだな、一応な。

 戯言(ざれごと)はこのくらいにして、ほら上がってこないか」

「ファンティアスさんこそ、降りてこないの」

「手癖と足癖の悪いネズミは、上からたたくことにしてるんだ」


 今度は毒と石の雨だ。


<マジッククラッシャー><マジッククラッシャー>

<マジッククラッシャー><マジッククラッシャー>


 ファンティアスが隙を突いたかのように内城壁に立ち。どこから出したのか二本のフェンシング剣で連続の突きで強襲してきた。


<ステップ><ステップ>

 上空に飛び上がって、右、後ろからもう一度右に跳んで、赤銀輝で切りつける。


 ガン!


 シールドを切り裂き、左の二の腕を切りつけたけど、固い手ごたえにはばまれた。


 えっ、と思った瞬間、お腹にフェンシング剣が突き刺さる。


 最大加速で、ファンティアスを蹴り飛ばして遠ざかったけど、突かれたお腹が熱い。

 着地してファンティアスから距離を取るように走り出す。


<メガキュア><メガキュア>…<メガキュア><メガキュア>

 まずは気になるのが毒だ。


<マジッククラッシャー><メガリライブセル>

<マジッククラッシャー><メガリライブセル>

<マジッククラッシャー><メガヒーリング>

<マジッククラッシャー><メガヒーリング>


 飛んできた魔法を粉砕しながら、治療を続ける。


 傷を目視で確認したけど、ファンティアスのフェンシング剣が鋭すぎるからか、僕がすかさず蹴り飛ばしたからか、幸いにも切り裂かれていないようだ。


 頭が重くなってきた。体がしびれる。ヤッパリ毒か。


 本当の覚悟を決めて、

<ソーラーレイⅢ><ソーラーレイⅢ>

<ソーラーレイⅢ><ソーラーレイⅢ>

<ソーラーレイⅢ><ソーラーレイⅢ>


 腰の短針魔導ガンを抜いて、魔法力を込めて、動きの止まったファンティアスを撃つ。


 ガギャーー。

 くぐもった悲鳴のようなものが上がった。


「兄貴!」

 盛大に毒を振りまいたムスティアスが、ノコージさんを振り切って駆けつけてきた。


 抱き上げられたファンティアスは、左目から血を流し、左腕には何本か短針が突き刺さっていた。


 ドーン。


 突然の轟音。魔導砲だ。

 慌てたのか、照準がメチャクチャだ。


 またも、ドーン。


<ビッグフィフススフィア>

 動きを制限されるが、強力で特大のシールドだ。


 ドォーーン。

 砲撃がビッグフィフススフィアではじける。

 ビッグフィフススフィアも二枚ほどが破壊される。


「セージスタ、次は俺が相手だ」

「ムスティアス、セージスタをやるのは俺だ」

 ファンティアスが脂汗を流しながら宣言した。

「兄貴!」

「俺だ! セージスタ忘れるなよ!」

「僕に正面から向かってくるんならいつでも相手をしてやるよ! またズタボロにしたやるから覚悟しとけよ!」


「みんな引き上げるぞ!」

 砲撃の続く中、ファントムスフォーが集合して、テレポートで消えた。


 ワンダースリーも砲撃が始まった時点で、戦闘はあきらめたようだ。

「セージスタ、大丈夫か」

「ええ」

 やせ我慢で叫んだら、毒が回ったようだ。

 プコチカさんが僕を抱えて、中庭に降りる。

 魔導砲から見えない場所だ。


<メガキュア><メガキュア>…<メガキュア><メガキュア>


「特殊な防具か魔石で守ってたのを気づかなかったのか」

「こんど、切る」


 だから弾かれたんだ。くそっ。ワンダースリーのみんなが見抜けてたのに僕だけが間抜けだったってことだ。


 ただし、さすが毒耐性“10”だ。

 立っていることはできそうだ。


「プコチカさん、僕をミクちゃんのところに連れて行ってもらえませんか」

「オマエ、この体で…」

「僕とプラーナじゃなくっちゃ、ダメなんです」

「…プラーナって」

 あ、そうか見えないんだ。

「とにかく、行くって約束したし」


「…わかった。それで場所はわかるか」

 一瞬の迷いの後プコチカさんがうなずいた。

「はい」

「それじゃ、まず治療だ。ノコージ」


 兵隊たちから隠れるために、城の中に入ってソファに寝かされた。

 そして、ノコージさんの解毒薬と治療で随分楽になった。


 ミクちゃんが前世の記憶を取り戻したからか、お互い思念同調がある所為か、おおよその場所は認識できる。

 まあ、あまり離れていないという制限はあるけどね。

 それがあるからミクちゃんも負の塊りを追っていったんだ。


 大きな認識阻害魔石を破壊したとはいえ、所々に認識阻害魔石があって、今の体調、精神集中が乱れる状態ではテレポートは無理だ。


 濃度は薄いとはいえ負の魔素と魔法力の波動が漂う城内は、カオスフィールドの濃度が増していた。


 ノコージさんの治療が続く中、僕はプコチカさんにおんぶしてもらいながら、見えないミクちゃんたちを指さした。


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