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次元災害で異世界へ  作者: 真草康
魔法教育編
12/181

11. 魔法教育 2


「『個人情報』」


「セージも開けと思いながら“個人情報”と唱えてごらんなさい」

 ママとヒーナとの魔法授業の二回目だ。


「はい、個人情報」

『個人情報(偽)』

「いまセージの目の前にあるのがセージの能力です。

 説明をする前に少々待ってください」


「奥様、やはりセージ様はご存じだったようですね」

「そのようですね」

 あー、驚くところだったんだ。バレバレだ。


「ヒーナ打ち合わせた通り、内緒の物は隠して構いません。

 準備はよろしいですか」

「はい。大丈夫です」


「『開示』」「『開示』」


----------------------------------------------------

【ルージュターナ・ノルンバック】

 種族:人族

 性別:女

 年齢:35


【基礎能力】

 総合:28

 体力:59

 魔法:81


【魔法スキル】

 魔法核:5 魔法回路:5

 生活魔法:2 水魔法:5 土魔法:4 風魔法:3 火魔法:0


【体技スキル】

 剣技:2 片手剣:1 水泳:2


【技能スキル】

 交渉:2


【耐性スキル】

 水魔法:3 魔法:1 状態異常:2


【特殊スキル】

 鑑定:3 教育:1

----------------------------------------------------

----------------------------------------------------

【ヒーナーダ・ナッシュビル】

 種族:人族

 性別:女

 年齢:24


【基礎能力】

 総合:32

 体力:68

 魔法:125


【魔法スキル】

 魔法核:6 魔法回路:7

 生活魔法:1 光魔法:6 火魔法:4 水魔法:4 身体魔法:2 土魔法:0


【体技スキル】

 剣技:3 短剣:2 弓術:1 水泳:3


【技能スキル】

 教育:0


【耐性スキル】

 斬撃:1 光魔法:5 魔法:3 神経毒:2 出血毒:1


【特殊スキル】

 隠形:1 索敵:2 魔素感知:2

----------------------------------------------------


 目の前に二人の個人情報画面が表示された。

 ちなみに、左からママ、僕、ヒーナと並んでいる。


「これがわたくしとヒーナの能力です」


 おお、【体技スキル】と【技能スキル】もあるのか。

 あっ、プレートの区別の通りか。

 剣技に片手剣って、ママは元貴族。やっぱりたしなみだな。

 ヒーナはそれに比べて、レベルが高そうなんじゃないか。

 あっ、紹介されたのが半年ほど前だから、年齢もニ四になっている。

 ママも三五才だ。もっと若く見えてた。でもブルン兄の一四才を考えればこんなものか。

 ヒーナもそうだけど若く見える。そうするとモルガっていったい何才なんだろう。ブルリ、寒。


「マリオンの動乱時にはこれでもパパと一緒に剣を持って戦ったのですよ」

 ママが僕の視線に気づいて笑って答えた。


 おお、びっくり。

 まあ、ママの勘違いじゃないよな。


 ヴェネチアン高等魔法学院を卒業したヒーナの魔法スキルが五つ(勉強中の土魔法の“0”を入れると六つ)で、ママが四つ(五つ)。

 特殊スキルは、ヒーナが三つ、ママが二つ。

 まあ、なんか隠せるようだけど、魔法スキルは全部見せてくれてる気がする。

 ヤッパ、僕チートだ。


「セージも“開示”と呟きながら念じてごらんなさい」

「あ、はい、『開示』」


----------------------------------------------------

【セージスタ・ノルンバック】(偽)

 種族:人族

 性別:男

 年齢:5


【基礎能力】

 総合:7

 体力:8

 魔法:10


【魔法スキル】

 魔法核:0 魔法回路:0

 生活魔法:0 火魔法:0 風魔法:0 光魔法:0

----------------------------------------------------


 風魔法を追加したのは、“風魔法の活用の極意”を読んだ影響で、つい先ほど追加したばかりだ。


「これはすごいですね」

 ヒーナの驚愕の呟き。

 声は出ていないがママも驚いている。

「初等学校の入学前直前。六才で確認したミリア様は“生活魔法”と“水魔法”の二つの魔法の目覚めで、入学直後に“土魔法”が目覚めました。

 才能があると思いました。まあ、そこはミリア様ですから」

「そうですね」

 何やらママも自慢気だ。

「学生の頃にアルバイトで家庭教師もしましたが、才能があると請け負ったほとんどのお子様は“生活魔法”だけでした。

 中には何も目覚めてないのに何とかしてくださいなどとすがってくる親御さんまで……、えー、そうではなくて、特別に才能があるお子様でも生活魔法を入れて三つを見たのが最高でした。たしか五才でしたが、翌月には六才になるお子様だったと記憶しています。

 対してセージ様はついこの前五才になったばかり。

 総合も“7”と高めですし」

「そうですね五才程度だと大体が年齢と同じかプラス“1”程度ですから、これも内緒にしておきましょう」

「そうですね。いろいろと伸びるのが生活魔法を覚えてからか、何かのスキルが完全に目覚めてからですからね」


 その後の話を聞くと、魔法に目覚めるのが五才から七才にかけてが多い。

 最初は魔法核や魔法回路の“0”が出現して、魔法の才能が有りと認められる。魔法学校の入学資格を得たことになる。

 五才で一度確認するのが一般的で、縁起を担いで神に祈願してから個人情報を呼び出す家庭もある。

 パパみたいに信心深い人が多いってことだ。

 また、家系的、遺伝的に魔法が無かったり生活魔法しか持たない家庭だと、七才になる年の一月が入学式なので、その前年の秋祭りに神にお祈りして個人情報を確認することが多いというか、オーラン市では習慣になっている。

 一般の学校でも魔法科があるので、一般学校に入学してから魔法に目覚めても魔法の勉強ができるから、魔法学校にこだわらない家庭もある。

 また、セージのように、兄や姉がいる家庭だと、知らずに知らずのうちに知識を得て、個人情報を見てしまう子供もいるそうだ。

 どうやらセージのフライングに気づいて、魔法在りと確信しての勉強会だったようだ。

 ごめんなさい。


 えっ、これでそんななの。まいったー。

 不安ながらに準備したからよかったものの、全部見せてたらと思うと冷や汗ものだ。


「詳しくは主人を交えて相談しましょう。

 それでは予定通りに勉強を進めてください」


「はい、そうでした。

 それにしてもセージ様は風魔法があってうらやましいです。

 私が冒険者を断念したのは風魔法が無く、合成魔法による攻撃魔法が習得できなかったからですから。

 中には目覚めても全然伸びない人もいるそうですが、目覚めなかったぶんあと腐れなくスッキリと止められたのですけどね。

 セージ様は頑張れば何でもできるようになりますよ」


 一旦恨めしそうな表情になったヒーナが、それでは、と個人情報画面を説明する。


 まず開示した時には、“体力”、“魔法量”の残量が消えて、最大値のみとなる。


 体力と魔法の説明も受けた。

 体力:瞬発力、持久力などの筋力、各種耐性などの体が持つ防御力、それと魔法や魔素との馴染みやすさなどの総合値と、思っていたこととかなり齟齬があった。

 魔法や魔素になじみやすいと耐性も上がって、病気にもかかりにくいそうだ。

 魔法:体内に持つ魔法の総量と、こちらはイメージ通りだ。


【基礎能力】、【魔法スキル】、【体技スキル】、【技能スキル】、【耐性スキル】、【特殊スキル】の大項目は『交換』で上下の入れ替えが可能だが、あまり入れ替える人はいないそうだ。

 そして、小項目も左右で入れ替えが可能だ。


『開示』も『名称開示』で名称だけ開示できる。

『種族開示』で名称と種族が開示される。

 要は開示したい項目名を頭にして開示と唱えると、そこまでの内容が開示される。

 ただし【基礎能力】、【魔法スキル】、【体技スキル】、【技能スキル】、【特殊スキル】に関しては一括で、詳細の指定は不可だ。


 街に入るときには入市税の関係で衛兵によって年齢まで確認されるのが通常なので、城塞からの出入りには注意が必要だ。

 税の支払い済みが証明できずに、よくもめるそうだ。

 今回のマーリン号の入港税と入市税は、オーラン・ノルンバック船運社で一括で処理をしているとのことだった。ちなみに乗客も先に税を預かっていて、税の証明書(市や街によって異なる)を返却している。

 出かけるときには証明書の携行が必要だ。


 中には【天罰】という神罰項目が発生することがあって、それは開示時に強制開示になるそうだが、ヒーナは見たことがない。

 ママに確認したら、パパは何度か見たことがあるそうだ。

 神罰とは真逆、神の【加護】もあって、それはママは一度見たことがあるそうだ。

【重犯罪】は神社や教会で神に祈りをささげて付与されるが、付与が曖昧なため、最近ではサーバントリングによる強制労働を科すようになってきたそうだ。見た目でもわかるし。


 あとは更に個人名称を頭に付けて開示を唱えると、その人だけに見せることができるが、複数は指定不可。

『ヒーナ、基礎能力開示』とすると、名称から基礎能力までをヒーナに見せることになる。


「練習してみましょう」

 で練習することになったが、“個人情報(偽)”でうまくできてホッとした。冷や汗冷や汗。


「さて、練習前にママさんがおっしゃっていた『内緒のものは隠して構いません』って言っていたことを覚えていますか?

 総合の数値が大体“10”で二つから三つ、それから大体“10”上がるごとに一つか二つ、個人情報画面を開いて、小項目に触れて『秘匿』と念じると開示情報から外れます。

 神様や女神様の気まぐれと言われていて、できるようになる総合値に個人差があるので正確なことは言えません。

 ですから現在のセージ様にはチョット難しいので、鍛えてできるようになってください」


 ちなみに『常時秘匿』としておくことも可能で、見せてもいいと思った時には『秘匿解除』の呪文でOKだ。

 学校で教えてもらえることだそうだ。


 あっ、女神様が言ってた、一〇才で記憶が戻って能力もっていうと、このことがそうなんだって気付いた。

 ことによったら転生者特典で秘匿できる数が一つ、二つ、いや五つくらい多い可能性もある。


「それでは【基礎能力】の説明をします」

 総合、体力、魔法量の三項目しかない。


「総合は本人の体力や最大魔法量に魔法力、耐性などが加味された総合的な値です。強い武器や防具を付けても変化しません、あくまでも本人そのものの総合力で、最大値を示すものとされています。

 怪我や病気などの一時的なものは影響しませんが、怪我や病気が長引くと減少します」

 その墓にも説明を受けたが、どうやら“総合”はゲームでいうところに、個人の戦闘レベルのようなものだが、様々な能力から割り出されているらしく、数値の意味合いの正確なところはわからにそうだ。


「“体力”は体力そのもので、瞬発力に持久力、体長の良し悪しで変化します。魔法量が減って気分悪くなっても減少します」

 HPだと思えばよさそうだ。

 ただしゲームと違ってお腹が減ったり、疲労や体調不良、空腹だけでなく、魔法量の減少による体調悪化でも減少する。

 体力が“0”でも病気など、場合によっては死なないこともあるそうだが、極まれなことだそうだ。ひん死の重傷から生還だと思えばいいんだろうか。


「“魔法”の残量にはセージ様は特に気を付けてくださいね。

“5”以下になると気持ちが悪くなっちゃいますし、“0”なんてもっての外で、気絶するだけでなく、何日も体調不良で寝込んじゃいますからね」


 え、気絶、でも僕って“0”まで使っちゃってるんだけど。ナゼ? ナゼだ?

 魂魄管理者(女神様)の恩恵なのかな?


「セージ様、わからないようなのでもう一度言いますが、“魔法”の数値が“6”となったら魔法は使ってはダメですからね」

「は、はい。わかりました」

「本当に約束ですよ」

「はい」

 チョット混乱してたら、ヒーナに突っ込まれてしまった。

 気を引き締めないと。


「ここまではいいですか?

 わからないことはないですか?」

「はい、ありません。面白いでーす」

 疑問だらけだけど、現在の趣旨は個人情報の記載情報とその取扱いについてならばってことで。


「それならかったです。

 疲れてはいなですか? 大丈夫ですか?」


「大丈夫です」と二ッコリ笑う。

「集中力も素晴らしいですね。ヒーナ感激です」

 ヒーナも笑顔だ。


 ヒーナが僕を飛び越えて一旦ママを見ると、読書中のママが顔を上げてうなづく。


「続けちゃいますけど、トイレもいいですか」

「はい、大丈夫です」


 紅茶やジュースの開いたカップやグラスがモルガによって交換される。


 ヒーナはビスケットを食べて、紅茶を飲んで人心地つける。

 僕もクールダウンだ。

 ママはといえば、途中から“魔法の指輪の物語”を読んでいて、僕を見てるんだか、見ていないんだかだ。


「【魔法スキル】、【技能スキル】、【耐性スキル】、【特殊スキル】とありますが、魔法に関するものはもちろん【魔法スキル】です。

 いいですか、始めちゃいますよー」

「お願いします」


 いよいよキター! やっとキター!


「もう一度個人情報を表示してください」


 僕とヒーナが表示する。


「まずは“魔法核”と“魔法回路”のお勉強です」


 ヒーナの説明は、魔法核はスキルゲット時に読んだ内容とそれから推測したことに大差なかった。まあ誤差範囲だろう。


 魔法使いは心臓付近に、一緒とも言ってもいいそうだが、魔法核マジックコアを持っている。それによって、体内に魔法力と魔素をため込んだり、周囲の魔素を利用して魔法を発動させる。

 魔法核は人族はほぼ全員所持しているが、魔法を発動するにはそれなりのサイズが必要で、実際に発動できるのが約半数だ。

 エルフのほぼ全てが魔法の発動が可能で、ドワーフは三分の二、獣人が五分の一程度だ。

 魔法の杖や指輪などでは代用不可で、魔法の杖や指輪は発動した魔法の補助や強化でしかない。

 魔道具を使用するにもある程度の魔法核の所持が必要だ。

 そしてそれは鍛え、成長させることが可能だが、適正によるところが大きい。

 そのために魔法が使える人が約半数となる。


 魔法回路マジックサーキットも同様で、脳内かどこか不明だが、魔法陣を記憶できるプレートを所持でき、魔法力を流すことによって魔法を発動する。

 魔法核、魔法回路、魔法力の三つがそろって初めて魔法が発動する。

 魔法回路はスクロールの代用は可能だそうだが、属性を持たない魔法の発動では威力が落ちるし、魔法力も余計に消費する。一般的には魔法の杖や指輪と同様に魔法の強化に使われることが多い。例外は光魔法の治癒系や、武器強化などの特殊ケースだ。

 それとは別に真実の水晶やスクロールは犯罪の取り調べで簡易的によく使用されている。


 魔法耐性は習得した属性レベルのマイナス2、全魔法属性だとマイナス4の耐性が自動で発生する。

 半パッシブスキルで魔法耐性3だと、レベル3の魔法効果を1/6無効にできる。レベル2だと1/3(2/6)とレベル差によって1/6づつ効果が上昇する。

 半パッシブスキルとは相手の魔法を認識する必要がある。そのため、不意打ちなどによっては効果はあるし、魔法力の上乗せなどによっても効果を発生させることが可能だ。

 身体魔法は例外で直接攻撃には効果が無い。その反面、身体魔法で体内魔素を活性化することによって効果がアップする。

 逆に、怪我や病気などの体調不良で効果はダウンする。

 めんどくさいのが治癒魔法を掛けてもらう時には、意識して耐性を無効にする必要がある。気絶してもパッシブが無効になるから、治癒ができないことはないそうだ。


「セージ様も個人情報に“魔法核”と“魔法回路”が表示されていますので、魔法ができるということです。というより最近、魔法を感じたり見ていますよね」


「えっ……あ、あれがそうなんですか、ピカッと光るあれ」


「はいそうです。ホーリークリーンを受けてる時に視線が真剣です。

 ママさんのバブリッシュもよく見ていますし」


 大人の理性はどこに行った。

 そんなにも、やっちゃってたかー、と思うと情けなかった。


 バレバレです、かわいかったですよー、とヒーナが笑う。


「そこまでできるんでしたら、魔法を使いたいって気持ちはわかります。

 魔法を感じたり、見たりしたときに、体の中に何か感じませんでしたか」


「う、はい。チョットなんだかあったかいようなものがあって、体の真ん中から目に集まってたみたいでした」

 それなりに白状して、逆に情報を貰えればいいやと、開き直ることにした。


「それが魔法力で、体の真ん中に集まったところに魔法核があります。

 そうするとセージ様は見えたということですね」


「そうなんですか。チョット光った後に、なんかもやもやしたのが見えたりするだけなんだけど。

 あっ、ヒーナ先生のネックレスも光ってますよね」


「はい、それが魔法を見ることの第一歩です。

 そのまま見続ければもっといろいろなものが見えてきますが、魔宝石の輝きも見えるのですね」

 チョット、ヒーナ先生、頭痛が発生したようです。

「奥様の指輪も輝いてますか?」

「は、はい……」

「そうですか」

 ヒーナ先生が、はあ、と嘆息をする。

 そこまで見えちゃいますか、と呟きが聞こえ、頭をブルブルと振って改まる。

 僕何かやらかしちゃった? 見えちゃいけなかったの?


「それはさておいて、『デスクライト、開示』」

 ヒーナの目の前には、“デスクライト”の魔法回路が出現した。

 それも一辺八〇センチメルほどの大きな魔法回路だ。

 魔法陣はセージの物とほぼ同じだが何か違う気がする。


「これが先ほど説明した魔法回路です。中央に描かれているのが、魔法陣です。小っちゃいですねー。

 左上に書かれているのが、魔法名称でデスクライト、属性が生活魔法、機能が光明となっています」


「いいですか、よーく見ててくださいねー」


 そう言ってヒーナは魔法陣に触って「≪デスクライト≫」と唱える。


 体に集まった魔法力が右手に集まり、更に魔法回路マジックサーキットに流れ込む。

 更に魔法陣の中央の一転に魔法力が集まって一瞬光を放つ。

 そこから網目のように魔法力が広がって、魔法陣に魔法が流れて魔法陣がきらめく。

 魔法陣から出た魔法力は形態を変化させ光を帯びていて、それが指先に集まって光の球となった。


 自分で魔法を使うときには魔法を行使するために集中するからこんなにも鮮明に魔法力の流れや、変化を見たことはなかった。


「驚いていますね。見えちゃいましたねー。

 これが魔法が発動するときの魔法力の流れです。

 まあ、あまり意識しなくても魔法は発動するので心配はいりません。

 それと魔法の原理より、魔法を発動するためのお勉強の方が楽しいので、魔法を使うことを学んでいきましょう」


 ところでどんな風にみえちゃいましたかー? の問いに、


 ヒーナ先生の、体に魔法力が集まってそれが……、と見えた通りに告げた。


「えっ、そこまでですか。

 ファンタスティック。想定以上です。天才です。

 魔法を見る特別なスキルも頑張って獲得できちゃいそうですねー」


 ごめん。魔力眼は取らなかったんだ。


 ヒーナが感心しきりとフムフムとうなりだす。

 なんだか、非常識、規格外って呟きが聞こえてくるけど、きっと僕のことだよね。理由はわかるんだけど、チョット凹む。


「えー、チョット横道にそれますが、こちらを見てください」


 ヒーナがデスクライトの魔法陣に触れて魔法力を流す。

 ただ、今度は魔法の発動が目的ではなさそうで、先ほど魔法陣に魔法力が流れる直前に魔法力が集まった一点と、そこから魔法陣へとつながる配線のような経路も一緒に、魔法陣とともに光っているだけだ。


「セージ様、よく見てください。光ってますよね。

 魔法陣は魔法を発動するための術式が込められています。それには正しい手順で魔法を流し込む必要があります。

 先ほど魔法核は見えないと言いましたが、魔法陣の奥、……えーと、私はチョット動きにくいので、魔法陣を斜めからで構いませんから、よーく注意して見てください」


 何が動けないだよ、不精して。チョット動かせばあっちこっちから見られるのに。

 素直な僕は「はい」と言われた通り椅子から降りて魔法回路を斜めから見てみた。


「あはー、わかっちゃいましたねー。見えちゃいましたねー。

 魔法陣には完全な魔法核ではありませんが、核となる魔法陣核があって魔法陣の中核になります」


「まずは、意識を集中して、はいそうです。よーく見ると魔法陣核に魔法力が溜まるのが見えますよー」

 おお、魔法陣の中心の一点に魔法力が流れ込んでいる。


「ああ、見えてますねー。それじゃあ、次です」


「魔法陣核に流した魔法力は一旦が魔法陣核に溜まります。

 それから魔法経路、魔法陣を裏側で細く光ってる線ですが、見えますか?」

「うん」

「素晴らしい。その細い線を一斉に魔法力が流れて、魔法陣の円やいろんな記号にタイミングを合わせて魔法力が注がれ初めて魔法が発動します」


 風魔法の魔法陣が何にも動かなかったことが理解できた。

 あの細かな破線が裏手の魔法経路だと、そしてその中心に魔法陣核が必要だと。

 そして、魔法回路に厚みは、魔法陣核と魔法経路のためだ。


 そして意識したからか、看破か鑑定スキルのおかげか、魔法力を流さなくなったデスクライト魔法陣の中心の魔法陣核が見えるようになっていた。


「見えちゃいましたねー。さすがです。

 私は“魔法体感”が有るように魔法を体感的に感じ取る能力があります。それを利用して見えるようになったので、あまり見えないのですが、セージ様とどっちが見えるんでしょうかねー」

 やっぱ、普通の人には魔法陣核や魔法経路は見えないってことか。


「この魔法陣核を意識して魔法力を込めると魔法の発動が早く、そして威力が強くなると言われています。

 魔法経路まで見えて意識すれば、更に魔法陣への伝達速度も、威力もアップします。

 でも見えないものは意識するのは難しいので、最初っから普通は教えません。

 それに、最初っからそこまで見えないのが普通なので、そもそも意識できません。

 セージ様は見えちゃったから特別です。そのうち疑問に思っちゃうと思ったから教えたんですよ。ミリア様だけでなくオルジ様にも内緒ですよ。

 逆に見えないのに変に意識してしまうと、魔法が上手く発動しなくなっちゃいますからね」


「はい、わかりました。ありがとうございます」


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