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次元災害で異世界へ  作者: 真草康
ミクリーナ覚醒編
116/181

112. 転生の理由


 又もチョットさかのぼるが一〇月中旬ごろの話。

 ミクちゃんの身体魔法のレベルが“3”ということがバレたら――別に隠していたわけじゃない――、俄然ミリア姉とロビンちゃんが張り切りだした。


 何がきっかけになるかわからないけど、ミリア姉とロビンちゃんが身体魔法のレベルが“3”となった。

 訓練で勝ち取ったものだからキッチリと使いこなしている。

 それでお一日の長で、ミクちゃんの方が安定感がある。


「セージ狩りに行くよ!」

「そうそう、連れていきなさいよ」


 本人たちは更なる強さを求めているから、どうするかだ。いや、どう交渉するかだけど。

 もちろんララ草原以外というと、ボティス密林はレベル制限があるから、モモガン森林ということになるんだけど。

 あとは海岸沿いの雑草の生い茂る林や、小さな荒れ地や藪なんかとなるけど、魔獣のレベルはララ草原と似たり寄ったりで、戦闘しづらいって点を考えると警備兵以外、近寄らない場所だ。


 アップするにはエルガさんにやったと同様に、モモガン森林に行ってイノシシ(ホッグ)系の魔獣の動きを止めて仕留めさせればOKだと思う。

 どうしてホッグ系かというと、手を振り回す心配がない。魔法攻撃が限定できる。それなりの数がいて、それなりの強さを持っている。が主な理由だ。

 その他にも同様な条件を持つ魔獣がいれば、同じことが可能だ。


 ミクちゃんとロビンちゃんは、まずはパパさんやママさんに相談してみるって、粘り強い交渉を重ねているんだって。

 ミリア姉は早速ママにダメ判定を食っていたけど、こちらもくじけないみたいだ。

 こうなると止まらないのがミリア姉とロビンちゃんだ。


 ちなみにライカちゃんとモラーナちゃん、それにルードちゃんも身体魔法が3となるのも間近なような気がする。

 ルードちゃんは負けず嫌いだし、ライカちゃんとモラーナちゃんも自宅で随分と訓練をしているみたいだ。

 気持ち的なものなのか友人がレベルアップをすると、立て続けにアップするものなのだろうか。


 あと順調に小型近距離電話(ミニミニフォン)は順調に売れてきている。

 ポチットムービーもヴェネチアン国から注文が入るようになった。


 電増魔石を増産しようとリエッタさん以外に、ラーダルットさんとアランさんも挑戦中だ。

 そうなると作成がずっと早く、大量に作れるようになる。

 どうやって、ヴェネチアン国、それにギランダー帝国って大量に電増魔石の安定供給をやってるんだろう。


  ◇ ◇ ◇


 三学期の期末試験を終えた一二月一二日黒曜日。

 ウインダムス議員の口添えもあって、まずはミクちゃんの狩りが許可された。


 以前、ウインダムス議員は大災害の時に特殊な人たちが数多く生まれると教えてくれた人だ。

 姉のロビンちゃんより先にミクちゃんをってことは、何か思うことがあるようだ。

 それに感化されているのか、マールさんも何か決意があるみたいだ。


 狩りは僕にミクちゃんに、リエッタさんとレイベさんだ。


「<テレポート>『浮遊眼』」

 モモガン森林の手前を確認して飛んだ。

 僕も鍛えてないわけじゃない。まあ、総合はそれほど変化はないけど、魔法のレベルは上げている。

 時空魔法はレベル14になって、距離が伸びて四〇キロ程度、僕も含めて六人で飛べるようになった。


 歩いてモモガン森林に侵入していく、思念同調の所為か、ミクちゃんの緊張感がひしひしと伝わってくる。

 なんとなくだけど魔法力や魔素濃度が濃くなっている。

 魔獣も増えて、強力になっている可能性があるから要注意だ。


「ミ、ミクちゃん、ぼ、僕が付いてるからね」

 ダメだー。僕も緊張して思ったように口が回らない。

 レイベさん、笑わないでよ。リ、リエッタさんまでも。


「ありがとう」

 ミクちゃんが思わず僕の手をつかもうとして、途中で、やめて両手でショートスピアを強く握る。


 とにかくミクちゃんに強くなってもらわないと。


 レーダーで探すけど、こういった時に限って、ホッグ系が見当たらない。


 探すこと三〇分。

 オイオイ、メガホッグ。強さが“59”だ。


 あ、もう一匹。

 こっちは四腕熊(テトラベア)、強さは“46”とチョット強めだけど、頑張ればミクちゃんの身体強化で狩れないことはない。

 よりにもよって四本も腕がある。


「どうしたの」

「ちょうどいいのがいないんだ」


 あ、そうだ。

「リエッタさん、メガホッグを狩ってみませんか」

 何もミクちゃんにこだわることはないんだ。


 大粘着弾で身動きを封じたメガホッグはリエッタさんに、テトラベアはレイベさんに狩ってもらった。

 うん、これなら大丈夫そうだ。

 ミクちゃんの緊張もいくぶん和らいだ。


 よしこのまま行くぞ。

 気持ちを切らかえたとたん、クラッシュホッグ(強さ“39”)を発見。

 ベストだ。


「ミクちゃん、何度も練習した通りにね」

「セージちゃんも無理しないように」


<スカイウォーク>で、戦闘態勢で空中に立ってもらう。


<ハイパーアドヒジョンウォール><ハイパーアドヒジョンウォール>で絡めとって、<ハイパーアドヒジョンシート><ハイパーアドヒジョンシート>で包み込む。

 吠えようとしても口をふさいでいる。

 以前エルガさんのレベルアップの時に使った魔法名と同じだが、魔法陣を作る技術も覚えた現在、錬金魔法の変性を合成して、粘着力を強化している通常の複合魔法陣だ。

 ずいぶん苦労したけど、その甲斐があったってものだ。


「<スカイウォーク>…ミクちゃん」


 ミクちゃんがクラッシュホッグの真上にユックリと進んで固まっていた。


 スカイウォークの上に立って声を掛ける。

「ミクちゃん大丈夫」

「目の前で見ると、オオキイネ」


「やめる?」

「ううん、やるって決めたから。ありがとう」


 ミクちゃんがゴクリと生唾を飲んで「<身体強化>」。

 すでに、<身体強化>をしていることも忘れているみたいだ。

 それを体内の魔法力を高めて、身体強化Ⅱを発動させる。


 ショートスピアの高周波ブレードも綺麗に発動している。


<ハイパーアドヒジョンシート>、おとなしくしてろ。


 エーーイッ!

 こわばった顔で、真上からクラッシュホッグの首筋にショートスピアを思いっきり突き立て、魔法力を流す。


 内部で魔法が弾け、クラッシュホッグから力が抜け、崩れる。


<テレポート>でモラン村に飛んで一旦休憩。

 これで眠ってスキルアップしてもう一回狩れば、総合が“40”を超えるはずだ。

 ひとまずはミッションコンプリートだけど、もう一つ、強い魔獣に慣れるのも訓練だ。


 ユックリ休んで、早めの昼食(ミクちゃんのために果物沢山)を摂った。


 午後はブッシュキャット(強さ“35”)では多少の慣れがあったのか、深呼吸はしたけどためらいなく一撃で倒した。


 リエッタさんとレイベさんも狩りを行い、帰宅した。


 翌日、ミクちゃんの強さ(総合)は“35”になって、魔法核と魔法回路が“5”となった。

 学校から帰っても、ララ草原に二度狩りに行って、サポート無しで“25”レベルの獣魔獣を一人で狩れるようになっていた。


  ◇ ◇ ◇


 秋休み(いい響きだ)は二週間、その初日の一三月一八日黒曜日。

 そしてウインダムス議員が話をしてくれた。

 それもポラッタ家とルードちゃん一家も交えてだ。


「わしが調べた大災厄ではな、まずは大地震の発生があって。大災厄だとの啓示があるのじゃ」


「今回もあったの」


「そうじゃな。それに関しては知っているものはずいぶんとおって、議員連中なら知っておるじゃろう」


 パパやママも知ってるの、って訊ねたら、そうだって、肯定してくれた。


「そして地震は継続して、七沢滝ダンジョンのように、あちらこちらにダンジョンが発生するのじゃ」

「それじゃあ、まだ始まったばかりってことなの?」


「そうじゃな」


「ダンジョンの数はどのくらいなの」


「その記録はあるが、無いに等しい。マチマチで、あてにならんし、過去にさかのぼっても同様じゃ」


「そして生まれるのはダンジョンだけではない。

 あちらこちらで突然才能のある子供が生まれる。

 そしてその子たちが強くなって、そのダンジョンを消し去ると大災厄が終わるのじゃ」


「それじゃあ、まずは七沢滝ダンジョンを消しちゃえば」


「それはできんじゃろう」

「どうして」


 質問してるのは僕。

 みんなを集めても、どういう訳かウインダムス議員が僕を見て話すからだ。


 そして聞いた話をまとめると、ダンジョンを消すには特殊なスキルがいるらしいってことのようだ。

 それについてはウインダムス議員もあいまいで、神の力を借りるのか、契約を結ぶのか、神託があるのか、啓示なりを受けるか、とにかく神から力を受けるんじゃないかって予測をしているけど定かじゃないらしい。

 その件に関しては、ほとんど記録がのこっていないんだって。


 二三〇年前の前回の大災厄も、そのように多くの成長した子供たちが活躍で、ダンジョンを消滅させて大災厄が終了したんだって。

 もちろんダンジョンを消したのは、成長した子供たちだけじゃなく、強い大人も加わってのことだそうだ。


「ねえ、大災厄の後もダンジョンってあるよね」

「そうじゃな」

「なんでなの」

 どうやって選別されるかって聞いたつもりだけど、ウインダムス議員にはシッカリと意図が伝わったみたい。


「それはわからん。

 ダンジョンを消滅させた人たちも、そのことについてはあえて記録に残しておらんんようじゃ。あるのは推測ばかりじゃ。

 一番有力なのが神から授かった力を適切な方法で行使した時に消滅させられるそうじゃ」


「その力って、なにか情報はあるの」


「推測ばかりじゃと申したばかりじゃろう」


「そうでした。他には何か情報はありますか」


「大災厄後にも、数は少ないが新たなダンジョンが発生したりもするし、また消滅したりもしておるから、ことによったら消滅させている誰かがいるかもしれん」


 パパとママも、以前ウインダムス議員から聞いてから調べたのか、少しは知っていたみたい。

 何にしても、曖昧模糊(あいまいもこ)とした内容だけど、僕たち転生者はあちらこちらに発生したダンジョンを消滅させるためにこの世界に連れてこられたみたいだ。

 でも“転生の儀”の時にはそんなこと言って無かったよな。


 あ、ダンジョンを消滅させるのは子供たちだけじゃないんだっけ。

 そうなると強くなった人たちだけってこと?

 また、魂魄管理者(女神様)に会えるんだろうか?

 それともリエッタさんのママさんのように、お告げを受ける人がいるのかな。


「セージスタよ。お前はそれだけの力を持っていて、何かの啓示を受けていないのか」

 え、それを僕に訊く。

「ううん、なにも」

 それは本当だ。シッカリと否定できる。

 そうなると、みんなが目覚める一〇才以降に魂魄管理者(女神様)に会うのかな?


 あとは、ミリア姉とロビンちゃんが転生者ってことだと、早ければ今年にお告げがあるってことかもしれないってことだ。


「何にしても、神の意向じゃ。誰にも逆らえんし、だれにも止められん」

 ウインダムス議員の話が終わった。

 ただ、集まった子供たちには、自分で考えろとでもいうように、一人づつ視線を送った。


 僕が魂魄管理者(女神様)に会った時に何を聞けばいいのかなどの物思いにふけっていると……。


 親友に差を付けられていてしまっていたミリア姉が、

「セージ私をもっと強くなさい!」

 俄然やる気を出していた。

 ママの複雑な表情が更に複雑になってしまった。


 ルードちゃんはルードちゃんで宣言した。

「セージがそれに選ばれるんだったら、ウチも協力、いいや、ウチも選ばれるようがんばるわ」

 ラーダルットさんも強くなって協力してくれるそうだ。

「何が何でも魔大陸に行って、エルフの村を再建するんだから」

 ルードちゃんは別の理由でも息巻いていた。


 悩んだのがライカちゃんとモラーナちゃん、そしてポラッタ夫妻だ。

 魔獣がたくさんいるダンジョンを消滅させるのに、危険を伴わないわけはない。

 危ない目を合わせたくない、怪我をさせたくないってのも仕方ないよね。


 まあ、身体魔法Ⅱができるようにならないとボティス密林には連れていかないけど。


  ◇ ◇ ◇


 一三月二〇日黄曜日から、二一日緑曜日、二二日白曜日の三日間、モモガン森林の狩りでミクちゃんのレベルアップを連続で行った。

 そうすると強さ(総合)は“55”になって、魔法核と魔法回路が“7”となった。

 リエッタさんは“58”、レイベさんは“57”になった。

 そろそろ限界というか、ミクちゃんの体細胞は強化され、魔素や魔法力の扱える量や制御能力はアップしたが、戦闘技術が伴わずバランスが悪くなりすぎてしまった。

 そう、持て余してしまってるっていうのが、いい得て妙だろう。

 レベルが“10”や“15”ほど開きがあれば、遅れを取ることはないと思うけど、多少下の魔獣だとまず勝てないだろう。


 それと魔法陣は全て『複写』してももらった。

 それはリエッタさんやレイベさんもだ。


  ◇ ◇ ◇


 ミリア姉とロビンちゃんは秋休み中に、マリオン上級魔法学校で入学試験だ。

 特待生レベルで二人が合格したのは言うまでもない。


  ◇ ◇ ◇


 ミクちゃんの悩みとは別に、レベルの高さのみが気になるロビンちゃん。

「私も鍛えて強になりたい!」

 と熱烈な要望をおじいちゃん(ウインダムス議員)とママさんに訴えた。

「セージ君がいいというならばですね」


 ということで、結局、四学期に入ってから、

「鍛えなさい! お願い!」

 懇願とも脅しともとれるロビンちゃんの気迫に押され、ミクちゃん同様に魔法の勉強込みで鍛えた。


  ◇ ◇ ◇


 結局、ロビンちゃんのレベルアップに触発されたように、ミリア姉とルードちゃんまで鍛えることになった。

 そう、ルードちゃんも身体魔法が“3”になって身体強化Ⅱが何とかだけどできるようになったのだ。

 パパが神の望むようにしか世界は進まないし、逆らっては生きていけないみたいなことを言って、ママを説得したみたいだ。

 もちろん魔法の勉強込みだ。ミリア姉もさすがにロビンちゃんに置いて行かれると思ったのか、シッカリと学んでいた。


 そして、一五月中旬からはライカちゃんとモラーナちゃんも鍛えることになった。

 何にしても強くないと危ないってことだけど、強くなったらなったで、ダンジョンの消滅に神の啓示なりが有るんじゃないかってことで、家族そろって随分と悩んだようだ。

 まずはライカちゃんが強くなるって言い張って、それならば私もとモラーナちゃんも頑張るってことで、そうなったそうだ。

 ポラッタ夫妻も、すでに成人の強さを持つ娘二人が特別だってことで、納得したようだ。


 僕のテレポートも大活躍したけど、魔導車でワニ池やルルドの泉での狩りは行った。

 さずがに、ママが少なくともミリア姉はダンジョンのある七沢滝での狩りは止めてってことでそうなっている。


 学校では特別視されていた僕が、僕たち七人になったってことだ。

 そして魔法に関しては授業免除になった。

 僕たちを特別視することもなく、魔法訓練や体育の授業でも普段通り接してくる生徒には、今まで以上に懇切丁寧に教えることにした。

 図書館に行ってもあまり読む本無いしね。

 魔法はともかく、体育の授業でで僕に挑んでくる、パルマちゃんやビットちゃん、それにシエーサン君などは相手にしているだけでも楽しかった。

 ことによったら身体魔法が発現するんじゃないかって思えるほどだ。


  ◇ ◇ ◇


 一五月末に、ミリア姉が五年生の首席でロビンちゃんが次席で無事卒業した。


 その後に四学期で一年が終わった。

 僕とミクちゃんは学校の主席と次席だった。

 ミリア姉とロビンちゃんが続いて学校の三位と四位で、その下がルードちゃん、ライカちゃん、モラーナちゃんと続くが、まあどうでもいい話だ。


 一六月六日黒曜日から六週間が冬休みだ。


 冬休み中に全員、それにはラーダルットさんにリエッタさんにレイベさん、そしてヒーナ先生にカフナさんもふくめてだが、総合(強さ)が“60”前後――ライカちゃんとモラーナちゃんだけは“45”前後――になった。

 モモガン森林とボティス密林に、それ以上の魔獣がほとんどいなかったってこともあるし、無茶をしなかったってのもある。

 そのために僕は、ほとんどレベルアップしてないけどね。


 あ、エルガさんもちゃっかりと何度か狩りに付き合って強くなっていたし、ホーホリー夫妻とデトナーさんとアランさんも強くなった。

 相変わらずのマイペースに、錬金が楽になったって喜んでいたよ。

 ムギューッて……パンパンパン……、力が強くってきつくって本当に死ぬから。


 モモガン森林は魔獣が増えていて、微妙だけど強くなっていた。


  ◇ ◇ ◇


 魔導砲の開発は難航している。

 針に魔法を付与して発射するって案いいんだけど、真っ直ぐに飛ばないんだ。

 まあ、案っていってもヴェネチアン国で見たもののコピーだけどね。


 普通の投てき用の魔道具は扁平になっていて、風魔法を受けやすくなっている。

 鉄菱(ひし)や片鉄菱もそうだし、矢には魔法力を溜めやすい(やじり)があるし羽がある。

 槍には槍先は魔法力を溜めやすい金属製の刃で、持ち手の部分には金属心芯が入っていて魔法力が流しやすくなっている。

 矢も槍も先端部分が重く、飛ばすためには何も問題がない。


 それは剣やナイフも同様で、魔法力が流しやすい素材で作られている。そうでなければ魔法士の武器としては使いづらいものとなる。


 ところが細い硬質の針だと、魔法力はもちろん魔法力を流せるが、上手く風(移動)魔法でコントロールできないんだ。

 重さやバランスによるコントロールも、魔法力も一点に集中するコントロールも難しいんだ。

 もちろん飛ばして的に当てることは可能なんだけど、針が横を向いてしまうんだ。


 ライフリングだって気付いたけど、数十本の金属針の一本一に、発射時にきれいに回転させるのが至難の技なんだ。


 それでエルガさんと相談して風魔法の“スピン”や“ハイスピン”の改良魔法の“マルチスピン”――複数対象物の個別スピン――の作成を開始した。

 そう、僕がだ。

 もちろんシュナー伯父様から頂いた魔法陣が描かれたノートも参考にしてだ。


  ◇ ◇ ◇


 年末に。

 ミクちゃんにミリア姉とロビンちゃん、ライカちゃんとモラーナちゃんにルードちゃんが冒険者ギルドにも登録してランクD冒険者となった。

 パパがボランドリーさんに話を通してあるので、付き添いはホーホリー夫妻とレイベさんだけだ。

 さすがに子供とはいえ“60”間近の人を、見習いとされるランクFや、駆け出しとされるランクEにはできないんだってさ。

 ライカちゃんとモラーナちゃんは低いけどそれでもランクDのレベルは越している。


 ミリア姉とロビンちゃんが上級魔法学校に行く前に冒険者になっておきたいとの希望で登録したものだ。


 応接室で手続きを済ませ、ロビーに出てきた。

 いちゃもんを言ってくる人いないのかな。


「おい、セージスタ。最近は狩りに行ってるか」

「あ、ブラントさんおひさしぶりです」


 僕に、いちゃもんを付けてきて、戦った三人の中の一人で、朴訥(ぼくとつ)な筋肉マッチョのおじさんだ。


「かわいい子をたくさん連れて、大物でも狩ってきたのか」

「ううん、登録」

「セージスタの友達だけあってランクDか」

「うん、ランクDだよ」

 そんな判断で、ランクDでいいのって、あ、みんなランクDの色青のカードを手にしてるか。

「それなら狩りもお手の物だな」

「うん、僕から見たらまだまだだけどね」


 なんだか、こちらをうかがう異様な視線と、ひそひそ声も聞こえる。

「あの子らだ」

「ああ、ララ草原で駆け回ってる子供(ガキんちょ)たちだろう」

「ああ、俺も見た」

「俺はボティス密林で、一撃でランスダークウルフを倒してるのを見たぞ」

「俺はマッドアリゲーターだな」

「あいつらには近づくなよ」

「あたりメーダ」

 どうやら、いちゃもんはなさそうだ。

 でも、噂になってたなんて。


  ◇ ◇ ◇


 三〇六二年、今年で九才、三年生になる年だ。


 初詣でにて。

「アンタおかしいわよ」

「そうですね」

 ミリア姉とロビンちゃんは、これだけ強くなっても、どうして僕に追いつかないことに不満を持ってるみたい。

 二人で突っ込まないでよ。


 あとはソーラーレイの威力が五割り増し、レベルは10.1ってところで、強さ“30”程度の魔獣を数発で倒せる程度だ。昆虫系の光沢のあるキチン質だと反射して威力は弱くなるなんてのもあるから、もちろん全ての魔獣が一律のはずはないのは当然のことだ。


 作成方法は、レベル9.8で作成した魔法陣をまずはイメージを込めて定着させた。

 その魔法陣を『複写』して、新たな魔法陣で、またもイメージを込めて定着させてを繰り返してたらら、レベル10.1でほぼ安定した。魔法記号も随分変化した。

 さすが、エルドリッジ市の魔法研究所の職員のいうことにはウンチクがある。


 気分良く、ソーラーレイⅡの作成も開始した。魔法レベルは12で、強さ“45”を倒すことが目標だ。


 同様のことをいくつかの魔法陣でもやり始めている。

 更に強化した個人魔法(マクロ)が作れるかもしれない。

 あ、その前に基本の魔法が違ったものになるかもしれない。


  ◇ ◇ ◇


 一月一〇日緑曜日に、ミリア姉とロビンちゃんがマリオン上級魔法学校に旅立った。

 レベルアップで狩りをしたおかげでふんだんにお小遣いを持ってだ。

 もちろんブルン兄も一緒で、ママやホーホリー夫妻が同行した。

 ロビンちゃんにはママさんのマールさんと上級魔法学校生のお兄さんのディニーさんも一緒でカフナさんが同行した。


 餞別に、ミリア姉とロビンちゃんの二人には緑魔霊石をプレゼントした。

 ミリア姉とロビンちゃんの感激する姿を見られるなんて、頑張ってプテランを見つけて倒した甲斐があったってものだ。

 それと、上級魔法学校に行っても狩りをがんばるぞー、って二人で気炎を上げていた。


 ちなみにポラッタ家の上級魔法学校生のお兄さんのガルガンダルさんは、オーラン市の用意した送迎車での移動だ。

 家族による送迎が無理な生徒が多く、オーラン市が一括で生徒の安全を確保するためのものだ。


 ノルンバック家、ウインダムス家、ポラッタ家では帰宅した兄たちが、妹たちの成長に絶句して上級学校に戻っていったのは又別の話だ。

 僕にしたって、突然強化する人が増えても対応ができないから、致し方ないよね。

 ブルン兄の活性化はある程度したけど、それでも喜んでいた。

 なじみがないディニーさんとガルガンダルさんには活性化を行うには抵抗があって断ったんだ。もちろん普段から一緒で魔法力の波動になじまないとできないって、いつもの常套句でのお断りだ。


 風魔法のレベル5の“マルチスピン”で魔導砲のめどが立ったのをきっかけに、僕は七沢滝ダンジョンに挑んでみることにした。


 それと、いつもいる人がいないってさびしものだ。それが騒がしい人ならなおさらだ。


 ミクちゃんにライカちゃんにモラーナちゃんは稼いだお金は親に渡していた。

 ルードちゃんはワンダースリーの支払いにって、パパさんに渡していた。


 ちなみにミクちゃんの記憶はいまだ戻ってはいない。

 その他の子も、そのような兆しはいまだないままだ。まあ、兆しがあっても知らんぷりをするけどね。


 あとうれしい誤算が水魔法の粘着液に関することだ。

 粘着弾を使い続けていたので、僕の精霊記号の粘着弾の精霊記号が変化したんだ。

 その記号を、他の粘着系の魔法陣でも置き換えたら、粘着力がアップしたんだ。

 みんなのレベルアップにかまけて、おざなりにしていた魔法陣の作成や、実験はヤッパリ続けなくっちゃ。


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