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次元災害で異世界へ  作者: 真草康
エルドリッジ再び編
103/181

100. 結婚披露パーティーとダンス

誤字訂正しました。


 八月一七日白曜日は、どんよりとした曇り。


 またもショッピングを兼ねたエルドリッジ市見学だ。

 N・W魔研の社員や、メイドさんへのお土産はママが買うってことだから僕らは気にしないことにした。

 まあ、そうはいっても、お菓子とか、お菓子とか…。


 日持ちがするものを選ばないといけないので選択肢は少ない。

 しょうゆ煎餅・瓦煎餅・飴・落雁(らくがん)・カステラ・ドライフルーツ・ビスケットにクッキー・いろんな肉のジャーキーといったところだ。

 合成保存料なんてないし、安いお土産に、高価な保存魔法を掛けたら、だれがそんなに高価なものを買うんだってことだ。

 チョコレートもあったけど、オーラン市の方がおいしかった。

 お酒も有名だっていうけど、僕は基本的には飲めないことになっている。実際飲んだことないし。


 飲酒法や酒法だけじゃなく未成年に対しての法律なんてそもそも無い。

 だから未成年だからってお酒を禁止する法律はないから、飲んじゃダメかっていうとグレーだ。

 一般的には一六才になる年から飲めるとされているけど、初等教育を卒業して働きだすと飲み始める者もいる。

 まあ、種族も違うし一律に規制ができないってのもあるみたいだ。


 アイテムボックスにも基本は時間停止の機能は無い。

 時空魔法に経過時間遅延の“保存”は有ることは有るけど、僕の時空魔法のレベル13で経過時間遅延で二〇分の一程度だ。

 時間経過に作用するっていうだけあって、レベルが低いと小さなものしか“保存”できない――大きな物を部分的に掛けられない――から狩りなどでもあまり役に立たなかった。

 やっとここまで伸ばして、使えるようになった。

 ちなみに時空魔法でもレベル6や7程度だと経過時間が四分の一~五分の一程度と役に立ちそうなんだけど、重量は二〇キロ~三〇キロ程度だ。

 それが現在のレベル13だと三〇〇キロと、狩りでも役に立ちそうな重量を扱えるようになった。

 もうチョットすればレベルも“14”になるし、個人魔法化すれば経過時間と重量は更に拡張されるはずだ。


 基本一日しか持たない生菓子が、冷蔵(コールド)で二日~三日程度もつ。それが四〇日~六〇日もつんだからすごい。

 ただお土産だって言われてもらった方も、一週間前の生菓子だって言われたら、見た目が良くても誰も食べないよね。

 時間が停止するアイテムボックスってないのかな。

 とはいえ、アイテムボックスにどうにか“保存”魔法を掛けられないか、奮闘中だ。


 そういうことで、日持ちする菓子を物色中だ。



 お菓子はかなりいっぱい買っちゃた。

 お勧めはお煎餅とドライフルーツの入ったカステラ、それに落雁だ。

 果物も買ったし、僕の分だけは生菓子もいくつか買っちゃた。

 それらをまとめて<保存>してアイテムボックスへ。


「アイテムボックス…」

 お菓子をアイテムボックスに放り込んだら、今日も付き合ってくれたゴラーさんに驚かれちゃった。

 隠してたわけじゃないから、バレちゃったって訳でもないしね。

 それに、海軍の練習場でも練習着や木刀に防具はすべて自前で、アイテムボックスから出していたんだけど、気づかなかったのか。


 レストランで昼食を食べ終えるころには曇り空もきれいな青空になって、気分も爽快だ。

 午後には図書館で光魔法の“サーチライト”を発見して、チョット浮かれて鼻歌を歌ちゃったみたいだ。

 ミクちゃんに笑われちゃった。


 ちなみにあれだけ怒っていたエルガさんだけど、またも魔法研究所に行ったんだよ。

 どうなてるんだろう。


  ◇ ◇ ◇


 八月一八日黒曜日、まあまあの天気? 暑い。これなら昨日の曇りの方が良かった。


 午前中はドナーさんはいない代わりに、ミリア姉とロビンちゃんが一緒でショッピングに振り回さ……ゴホン……充分過ぎるほど堪能した。

 何で似たようなものであんなに悩むんだろう。


  ◇ ◇ ◇


 昼食から開始される園遊会は立食パーティーで、主催は伯父様のフォアノルン伯爵だ。

 明日の結婚披露パーティーがあるので、早めに(とはいっても七時から八時程度にはだが)終わるのが一般的で、(さじ)加減も求められるんだってさ。

 貴族って面倒臭い。


 ヴェネチアン国の洋装の衣装に対して、僕たちは和装、エキゾチックな柄の着物、亜熱帯なためか軽く薄い素材の家紋付きの着物だ。

 その他にも民族衣装のような人もいるし、僕たちの装いに似た人もいる。

 要は服装は多種多様だってことだ。


 迎賓館の大ホールは明日の結婚披露パーティーの準備中なので、中ホール及び中庭が園遊会会場だ。

 中庭には防護結界張られ、紫外線カットに冷房効果を与えてあるので居心地は良いし、小さいながらもステージもある。

 出席者は全ての時間滞在する義務も無いから疲れたら引き上げることも可能だ。明日があるしね。


 食事を楽しみ、ステージの音楽演奏を楽しんでもいいし、時たま混じるジャグリングも見ごたえがある。

 婦人方にはティーパーティー用の場所も用意されている。


 パパやママについて、ウインダムス議員と一緒に挨拶回りを行う。

 これは定番のことのようで、あちらで、こちらで、旧交を温めているみたいだ。


 それが終わると僕はミクちゃんと一緒に食べ歩きに、音楽を聴いてジャグリングも見た。


「セージ、元気?」

 え、ええー。

「ボコシラさん…、どうして」

「呼ばれた」

 そりゃー分かるけど。えーと……いたいた。


「プコチカさーん、ノコージさーん」

 大きな声で思わず呼んでしまった。


 プコチカさんにノコージさんも集まってくると、なんだか周囲から注目されているような。

「おお、セージスタか。オマエは何でここにいるんだ」

 ワンダースリーのみんなは注目されるのに、慣れているかもしれないけど。ハズイし、緊張するなー。


「だって、フォアノルン伯爵は伯父様だもん」

「そうなのか」

「ことによったらセージ坊が貴族だったってことか。世の中そんなもんじゃ」

 プコチカさんとノコージさんは特に驚いた様子もない。


「それにしてもセージもいっぱしだな」

「な、なんで」

「エスコートする女性(・・)がいるってことは大人だってことだ」

「紹介してくれんかな」


「は、はい」

 そんな風に言われちゃうと、またまた緊張してきたー。

「み、み、ミクちゃんで、です」

 ダメだ噛んだ。

 あ、こういう場所だとフルネームだった。


「ミクリーナ・ウインダムスと申します。よろしくお願いします」

 カーテシーで挨拶。僕よっりミクちゃんの方がずっと大人だ。


「お嬢ちゃん、レディーじゃな。ワンダースリーのノコージじゃ」

「プコチカだ。あれがボコシラだが、またフラフラと」

 本当だ。食べ物の方にフラフラと。


 二言、三言おしゃべりをしたら、

「セージ、こういった場所では何があるかわからんから警戒は怠るなよ」

 プコチカさんが、耳元でささやいてきた。

「政変のあった国じゃ、何があってもおかしくない。

 わしらも表面上は客じゃが、警護も兼ねている。気を付けるのじゃぞ」

 今度はノコージさんからだ。


 それじゃまた、と二人はフラフラと移動する。

 ただしよく見ると隙が無い。周囲をよく観察している。


 僕も基本常時発動しているレーダーや思念同調を強く意識した。ただし浮遊眼・並列思考・加速までは現状使い道がない。


 なんだかんだで緊張してたけど、特に何にも起きずに無事終了。


  ◇ ◇ ◇


 八月一九日赤曜日、ピーカンの青空。今日一日暑そうだ。


 午前中にお城の中の神社と教会の合いのこのような神殿で挙式が始まる。

 魔法の冷房が効いた神殿は快適だ。


 高貴な人がいる場所は撮影禁止なので、ポチットムービーは本日休業だ。


 白無垢のような姿の花嫁さんを見て、

「「「キレイ」」」

 瞳をキラキラと輝かせて、うっとりと見とれるミクちゃんに、ミリア姉とロビンちゃん。

 なんでも古服といって、ヴェネチアン国も和装のような衣装の時代もあったんだそうだ。

 結婚衣装だけはその名残が残っているんだそうだ。もちろん貴族だけの習慣だそうだ。

 オーラン市も普段は洋装だけど、正装が和装ってことで、それがもう少し色濃く残っているってことだ。まるで日本みたいだ。


 ヴェネチアン国でも主神がオケアノス神のところも多い。

 エルドリッジ市もそうで、宗教観も似ている。

 政変時の亡命先がオーラン市だったのは、オケアノス神と宗教観が大きかったみたいだ。

 パパ、オケアノス神大好きだもん。


 神主の言葉を復唱しながら、愛の誓いが述べられ。

 魔宝石の指輪(お嫁さん用)と、魔宝石のネックレス(お婿さん用)の交換が行われ、誓いのキス行なわれた。

 こういったところは日本の神社とはかなり違う。和洋折衷なのか、教会みたいな風習もある。


 結婚式で魔法石や魔宝石や魔霊石を贈りあうことの始まりは以下による。


 魔法士にとって、魔宝石や魔霊石は魔法力をアップする。

 戦闘では命にかかわることで、相手の無事を願い、指輪でもネックレスでも身につけるものとして贈りあったんだって。

 地球のように左手の薬指が心臓につながる太い血管があるっていうロマンチックなものじゃなくって、相手の無事を願ってと、実質的意味合いの贈り物だ。

 それがプロポーズで贈ったり、魔法の無い人たちも贈ったりとセレモニー化して、一般化していった。

 もちろん魔法士でない、一般人は魔宝石や魔霊石を贈っても意味はない。貴金属や宝石を贈ることになる。

 男性は婚約時と結婚時に二度贈って、女性が結婚時に一度だけ贈るってのが一般的なんだそうだ。

 僕が何気なくミクちゃんにやっちゃったやつだ。ハ、ハズイ。


 これが伯父様が僕に贈ったように、恩賞や下賜という形式だと、壮健であれということになる。

 もしくはお礼などで、礼状などを添えてだと特に問題がない。


 結婚式の立会人はジルバトゥーン・ヴェネチアン皇太子殿下とそのお妃さまのプラティーナ・ヴェネチアン皇太子妃殿下だ。

 皇太子殿下といっても、フォアノルン家の継嗣のロナーさんの二四才と違って、ジルバトゥーン皇太子殿下は五〇才ほどだそうだ。

 王様は七〇才をいくつか越していて壮健でバリバリに国務をこなしているんだって、さすが身体魔法を持っているとレベルが上がるごとに寿命が延びるってだけはある。

 取得した年齢やレベルによって伸びる年齢はまちまちだけど、かなり伸びるんだって、僕は幾つまで生きられるんだろう。


 政変を乗り越えたとはいえ、完全に安定したとはいえないヴェネチアン国。

 ギランダー帝国の脅威もあって、王様は王都を離れられないってことで、このようなセレモニーの多くにジルバトゥーン皇太子殿下が参加してるんだって。

 昨日の園遊会でも思ったけど、伯爵家の継嗣の結婚式ということで、貴族の出席者も多いし、海外からの来客も多い。

 今日はジルバトゥーン皇太子殿下も参加だから、お祝いのお客様は更に増えるんだって。どれだけ多いんだろう。


 荘厳な中にも厳粛な雰囲気の結婚式が終わった。


  ◇ ◇ ◇


 迎賓館の大ホールで結婚披露パーティーが始まる。

 昨日使用した中庭は若干の模様替えが行われ、今日も使用されるんだって。


 会場に入場の際、多くの貴族や、ウインダムス家みたいな海外からの貴賓者などは名前を呼ばれ、格式の高さがうかがえる。


 ノルンバック家もマリオン国の議員ということでパパやママも名前を呼ばれながらの入場だった。

 ただ、僕は兄や姉と一緒に“そのご家族”って括りでの紹介だ。


 ちなみにヴェネチアン国のダンスパーティーは有名で、出席者のほとんどはダンスが踊れる洋装だ。

 踊れない人は民族衣装で、ダンスを断ることも可能なんだって。僕それでよかったのに。


 新郎新婦のロナーさんとニルナールさんの入場があった。

 みんながお祝いに並ぶけど、昨日も挨拶してるので簡単なあいさつ程度だ。


 最後に皇太子殿下の家族――全員ではなく数人のお子様連れ――が入場された。

 さすがに王族、扉の前にお迎え、挨拶の列ができて大騒ぎだ。

 パパとママは挨拶に行くだろうけど、さすがに僕まで行く必要ないよね。

 人がいっぱいで見えないし。

 まあ、皇太子殿下と妃殿下は結婚式の時にご尊顔は拝見したしね。それで充分。


 皇太子殿下の「本日はフォアノルン家とディンドン家の華燭の典、ご挨拶は後程に」ということで早々に列が引いていく。


 バンド演奏が荘厳なクラシック曲から、軽やかなワルツに切り替わる。

 ロナーさんとニルナールさんのファーストダンスで披露宴が開始された。


 僕も招待状が来てからダンスの練習をさせられたけど、ここで踊る勇気はない。……うーん。だけど、どうやらミクちゃんはモジモジと踊ってみたいようだ。


 ドン。

 突然背中に衝撃。

 ダンスフロアに押し出されてしまった。

「アンタも踊ってきなさい。ミクちゃん、このヘタレをよろしくね」

 ミリア姉。な、なんてことをしてくれるんだ。


 はにかむミクちゃんにカーテシーで「よろしくお願いします」と膝を曲げられてしまえば致し方ない。

「こちらこそよろしくね」

 さて、頑張るか。自信ないけど。


 基本は三拍子のワルツ。

 地球ではウインナーワルツと呼ばれ、一般のワルツよりクルクルとよく回るんだ。


 招待状からこの方、特訓してたけど、僕のできることは姿勢を正して――これが意外とキツイ――、まずはホールド。

 ミクちゃんを抱きしめて、チョットハズイ。


 身長は一二八センチメルとなったけど、ミクちゃんも身長が伸びて、ほぼ一二六センチメル。

 ほとんど一緒の身長だ。


 練習で何度も踊ったんだけど緊張する。

 曲も聴いた曲だ。


 アン・ドゥ・トロワ・アン、

 曲に合わせてステップを踏み出して踊り出す。

 ドゥ・トロワ・アン・ドゥ・トロワ……。


 ナチュラルターンを何度も回って、チェンジステップでリバースターンで回りだす。

 またもチェンジステップで今度はナチュラルターンのワンパターンの繰り返しで、フロアを大きく回りながらクルクルと回っていく。


 やっと曲が終わった。

 途中、何度かステップを踏み間違えたけど、止まらなかった。

 かなりぎこちなかったと思うけど、何とか踊り終えた。

 その他にも間違えたような気もするけど、それもまあいいか。

 魔獣よりよっぽど手ごわい。疲れた。……って、まだ踊るんですか。


「あれもやってみたい」

 な、なんですと。

 しかたない。

 二人とも身体強化持ち、体力だけは人並み以上に有る。それが恨めしい。


 アン・ドゥ・トロワ・アン・ドゥ・トロワ……。

 ナチュラルターン八回、今度は七回でチェンジステップ、リバースターン七回でチェンジステップでナチュラルターンに戻ってくる。


 もう一回今ので、リバースターン七回でコントラチェックで切り替えてナチュラルフレッカール。その場でクルクルと回転する技だ。

 あてッ。足を踏まれた。

 僕がステップを間違えちゃった所為だ。


「もう一回」

 ミクちゃんが囁く。

 はい、そうですか。頑張るか。


 アン・ドゥ・トロワ・アンでもう一回ナチュラルターンで踊り(回り)だす。

 リバースターンでコントラチェックで切り替えてナチュラルフレッカールでクルクルと。

 うん、何とか出来た。

 ナチュラルターンに踏み出して、OKだ。

 クルクル回って、チェンジステップでリバースターンと……。


 ハア、ハア、ヤッパ疲れた。主に精神的にだけど。

 二曲踊るとミクちゃんも満足したようだ。

 これで社交界もデビューしたってことか?


 トントン。…え、ナニ?

「踊っていただけないかしら」

 え、えー、新手のナンパか? …て、ダンスのお誘いか。


「僕、ヘタだけどいいの」

 初対面の子は緊張する。

 学校だと制服を着ていて、初対面でもまだ連帯感があって、あまり緊張しないで済んだけど、ドレスで着飾った女の子は別だ。


「あれだけ踊れれば充分よ」

 まだ頑張らないといけないみたい。


「よ、よろしくお願いします」

「こちらこそ」

 カーテシーをしながらクスクスと笑う笑顔は愛嬌がある。誰だろう? って疑問は棚上げだ。

 まずは深呼吸で、リラックス。


 ホールドで、……意識するな…もう一度深呼吸。


 アン・ドゥ・トロワ・アンで踊り出す。

 よしやった。

 そのままそのまま……。


 失敗しないように気合を入れたけど、ステップを何度か踏み間違えちゃった。


「楽しかったわ。ありがとう」

「こちらこそ、ありがとう。

 ごめんね間違えちゃって」

「もう少し、リラックスして踊ると、もっと楽しいわよ」

 そうですか。ユトリないんで。

「アドバイスありがとう。今度はもっと楽しんでみるね」


 もういいでしょうと思って、壁に行こうとすると、どういう訳か、避けられていた同い年の従姉妹のニルナちゃんからも、え、やるの? お誘いをされてしまった。


 それでも四曲目となると、緊張が解けたのか、思ったよりも体が動いた。

 そうはいっても、ぎこちなさなサハ仕方ない。

 ステップの踏み間違いが無くなっただけでも、GJだ。


 どうなってるんだ。

 その後に、三人と踊って解放された。


 チークタイムで恥ずかしかったけど、ミクちゃんに「一緒の踊ろ…」と真っ赤になってねだられ、一曲踊ってから休憩した。

「なんで僕ばっかり申し込まれたんだろう?」

 やっと解放されて、ミクちゃんに訊いてみたら。

「セージちゃんが上手だからだよ」


 ミクちゃんの指差す方を見ると、僕と同い年の子が、おたおたとステップを踏み間違えていた。

 しかもステップが小さい。

 それと、全ての子供がナチュラルターンだけで踊っていた。

 え、それでいいの。


 社交ダンスだと、初心者の頃は特にそうだけど、男性がリードしなとうまく踊れないんだ。

 ステップは大きくのびやかにってママやヒーナ先生に教えてもらったから、通常がそうだと思っていてけど、僕のステップは大きいみたいだ。

 大人のダンスを見ると、ステップの大きなカップルは見栄えもするし、見ていてきれいだ。

 そして大人のダンスもナチュラルターンだけで踊っている人がほとんどだ。


  ◇ ◇ ◇


 話は飛ぶが、個人情報の隠蔽スキルもそうだけど、バルハライドって時たま一〇才って時がある。

 成人は一五才からだけど、仮成人とされるのが早いと一〇才ってのがそれだ。

 冒険者ギルド登録で未成年が登録できる“お手伝い”と呼ばれて冒険者扱いをされないランクG(黒カード)の取得が、強さ(総合)でいえば“12”程度からだ。

 戦闘が行なえるか、自分の身を守る手段を持っていることが最低限の条件で、冒険者ギルドで判定されるが、これも早い人だと一〇才、仮成人からだ。


 それに倣ってかどうかわからないけど、一般的な社交界デビューも仮成人の一〇才とされているんだって。

 それが結婚式だと家族づきあいで子供連れも多い。

 社交界デビュー前の子供が何人もいるってことだ。


 ちなみに後で知ったことだけど、オーラン市もそうだけど、オケアノス海周辺諸国では、ヴェネチアン国の影響もあってダンスパーティーは盛んに行われているんだって。


  ◇ ◇ ◇


 大人に踊ってもらった後は、同年代とも踊ってみたいってことか。納得だけど……、まあ、迷惑って程じゃないし。

 またもや目の前に女の子が。あれ、君ミクちゃんの次に踊ったよね。


「セージちゃん次は私だからね」

「はーい」

 さすがに、女の子にも慣れてきたヨ。


 これって練習マシーンだよね。

 ミクちゃんと踊り終わっても、次から次へと、女の子が待っていた。


 もちろん途中に入るチークタイムの相手はミクちゃんしかいないんだけど。やっぱチークダンスっていったら、お互いの頬と頬をくっつけて、親密にピタリと体と体を寄せ合って踊るダンスだよ。

 ハズ過ぎて、上手く踊れないよね。まあ、適当に曲に合わせてユラユラしてればいいんだけどね。


 ワルツタイムの再開。

 ハア、ハア…、さすがに一五曲も踊るとヘトヘトだ。

 バンドも一旦休憩で救われた。


 僕って一番踊ったんじゃないかな。

 どんなスポーツもリズム感は大事だ。

 体術“7”のスキルはダンスにもいかんなく発揮されたみたいだ。

 ヤッパ、練習より精神集中した本番だ。

 ダンスもうまくなった気がする。


 ちなみに最高だったのは、玉砕覚悟でチークタイムにエルガさんにお願いしたことだ。

「いいよ」

 との気軽い答えで踊ったんだけど……、パンパンパン……、プハー…、何処がチークダンスなんだって…、まあ、本当に死ぬほどうれしかったってだけ伝えておこう。


 お腹が減ったので、爆食中だ。

 ミクちゃんもお皿に食べ物を取ってきてくれた。



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