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次元災害で異世界へ  作者: 真草康
転生編
1/181

00. 魂の世界

初めての投稿です。

よろしくお願いします。


誤字訂正しました。

犠牲者十万人の説明を、わかりやすくしました。


 白くフワフワした世界に浮かんでいた。


『俺って魂?』


 なんとなくそんな気がした。

 声が響いたけど声じゃない。なんだか直接頭に響いてきたような、そんな感じだ。


 光に包まれたような体は、周囲全体が見えるし動くことも可能だが、手や足に頭などが無いみたいだ。……否、それらしき感覚は有るようで無いような不思議な感覚だ。

 見回すと、周囲に光の玉が無数に浮いている。

 多分俺もその一人(?)なのだろう。

 感覚的にだが、足を動かして移動を考えると移動できる。

 一応正面はあるようなのだが、周囲どころか、足元から頭上、下から上からまだが、視認できる。

 甘く優しい香りがするので、鼻の機能もあるのだろう。


 見知った人(魂)だろうか、親近感を感じる魂が散見できる。

 近づいてみようとするが、制限があるようで、あまり自由には動き回れない。


 しばらく思案に暮れていると声(?)が頭の中に響いた。


『私は高次元存在で、魂魄(こんぱく)管理者の一人です。

 皆さんはこれからある世界に転生していただきます。

 これは決定事項なので(くつがえ)ることはありません』


『高次元? 魂魄管理者?』

 何言ってんだ。


 それにしても魂魄管理者って何者だ? 大きな光の塊で神々しいけど。

 幻覚? 夢か?


『皆さんは次元災害の影響で亡くなって、魂となって死後の世界に飛ばされ、選別されこの空間に集められました』


『次元災害?』


『何人もの方が“次元災害”を疑問に思われましたが、地球圏で次元災害が発生しました。

 具体的には次元を揺るがす強大な地震が発生しました。

 災害は次元空間に歪を発生し、亀裂をもたらし、重力異常も発生しました。

 次元の歪みは月の近くに異世界の物質を転移させ、それが地球に落下しました。

 皆さんはそれによって亡くなりました』


 思い出した。


 謎の重力異常の発生とともに、月の一部が剥離して地球に引っ張られ落下するとされた。


 その月の欠片が異世界物質だったなんて。


 まあ、それはともかくも、計測された重力異常だけじゃ月の欠片が、月の重力から離脱するはずはないとされたのに、不思議な現象、謎の現象とされた。

 月の欠片を、天文学者の中にはスペクトル解析から月の一部ではないという意見もあったが、それが異世界の物質だってことか。その月の欠片が地球に徐々に引っ張られた。


 潮汐力の関係で月の欠片はフラフラとしていたが、地球に落下するタイムリミットは一年半から二年程度と幅があった。


 月の欠片に三機のロケットをドッキングさせて、ロケットの噴射で軌道修正を行おうとしたが、ロケットが正常噴射せず失敗。


 保険で行った月の欠片にソーラーセイルを取り付けて軌道修正する策も、ソーラーセイルの設置に成功するも、セールが上手く広がらず、結果セールがメチャクチャになって失敗。


 どうやら欠片の周辺には、重力異常の余波が存在しているとが判明したが、すでに遅かった。


 全長二九八〇メートル、最大幅五八〇メートルの円筒状の月の欠片は巨大すぎて破壊不可能だった。

 その月の欠片が地球に直撃すれば、ジュラ紀を終わらせたユカタン半島に落下した直径一〇キロメートル以上とされるチクシュルーブ隕石のまではいかないが、それでもかなりの人類、生物が死滅するとされた。


 シェルターなどで少数の人類が生き残っても、太陽光を遮る塵に覆われた大地では作物も育たない。

 地球の平均気温が数年間にわたって数度下がれば、生き残った人たちもどうなるかわかったもんじゃない。


 その月の欠片が地球と月の潮汐力で大きく五個に分裂した。実際は細かな破片も含めると数百になる。

 そのサイズならばと保険の保険で配備・強化していた彗星迎撃システムの核弾頭を連続で打ち込んだ。

 なんとか軌道変更に成功した五つに分裂した月の欠片だが、飛び散った破片と、その前分裂した時の破片――一〇〇メートル程度から数メートル――が地球に降り注ぐことになった。

 それも地球全体に。


 細かな破片が地球に降りそそいだのは、月の欠片が剥離(出現)してから一年八か月後だった。


 観測では破片は午後から夕方にかけてが一番危ないとされた。

 ブラジルやアメリカで最初に被害があって数万人の命が失われた。

 太平洋にもいくつも落下した。百数十メートルの最大な隕石の落下で津波が発生した。

 ニュージーランドにも一つ落下で、ハワイは何とか免れたようだ。

 俺の住む日本でも……そう、同僚や営業と一緒にプレゼンの帰りに電車内から窓を見て……。

 数メートル規模の隕石でも核弾頭並み。

 隕石は見ていないが衝撃が体に走った。


 記憶はそこまでだった。


 津波の被害がどうなったのか、その後の隕石の被害も知らない。

 天文単位の次元災害ってなんだ? 想像外だ。


 二〇一三年にロシアのチェリャビンスクに落下した隕石は、大気圏突入前で直径はおおよそ一七メートル。それで広島型原爆の三〇倍の威力があった。幸いにもチェリャビンスク隕石ははるか上空で爆発して飛び散ったので、被害は少なくて済んだ。

 放射能はないが、地上に直撃していたら目も当てられない。

 五万年前にアメリカのアリゾナ州に落下したバリンガー隕石は直径三〇メートルほどで、クレーターが直径一.二キロメートルで深さが二〇〇メートルなった。

 一般的には隕石の一五倍程度サイズのクレーターができるから、バリンガー隕石によるクレーターサイズはメチャクチャ大きいものだが、それでも隕石落下は周辺を含んだ大災害だ。


  ◇ ◇ ◇


 月の欠片の破片がいつ落下するか、何処に落下するかわからないから、社会全体が恐々と通常生活を行っていた。


 俺は仕事で疲れ果て、打ち合わせで客先からの帰社中、電車で移動中に落下する隕石と遭遇した。


 たまたまとはいえ、自宅から近くを移動中だった。

 ものすごい衝撃と爆発による発光。

 隕石も薄っすらと紫色に発光しているそうだが、落下した後に、そんなこと確認できるわけはない。

 それより、家族はどうなった。隕石被害、この衝撃や爆発に遭わなかったのか……。

 会社は、同僚や先輩に後輩は……。

 仲の良かった近所のアイツらははどうなったんだろう。


 数日間だが、隕石の関係でさすがに学校は休みだった。

 中には休みだった会社もあったようだが、ブラック気味の会社に、休みという概念は存在しなかった。


 考えても答えが出てくるわけもない。


 須田雅治(すだまさはる)、二八才。

 ヒーローを夢見て格闘家を目指す(笑)も、変身ができないと知って挫折。

 人気者になろうとしたが、方法がわからなかった。

 人並みに恋愛をと思って告白したが撃沈。追撃で虐めにあいそうになるも、しばしの引きこもりの後、辛くも被害小で復帰。いい先生でよかった。

 途中ミュージシャンに一緒になってみないかと友人に誘われるも数日で挫折。いや、挫折以前に好きになれなかった。

 その後も人に勧められるままに手を出しては、違和感を感じて、嫌になってを繰り返したあげくに、しばしの引きこもり。


 お調子者で断れないのだが、結果、なんか人と頑張るベクトルが違うような違和感があってだ。

 まあ、相手も雰囲気は感じるよな。


 結局最後まで続いたのは好きなゲームだけで、ずるずると大学を過ごす。

 一応それなりの大手らしき会社になんとか就職。…と思ったがややブラック。

 配属されたのがセキュリティ関係の開発で、最後はSEだった。


 頼りになると言われて、多少頭に乗って自宅でも調査して報告。

 おだてに弱いお調子者なところは自覚しているが、おだてのままに、何かと抱え込んで、無駄に頑張っちゃって、深夜帰宅の連続。

 そのおかげなのか調べ癖がついて物知りになったような気もする。


 思い出の走馬灯が駆け抜ける……。

 あれっ、そんなに思い出す内容が無い。


 相変わらず女性は苦手で緊張してしまう。


 まあ、業務会話は無難にこなせるので社会生活に問題はない……と思っている。

 引きこもり癖があって、彼女無し。その上に器用貧乏の特技なし。ことによったら社畜……ブンブン、いやそんなことはない……と思いたい。

 それにしても俺、薄いんじゃね。


 周囲の魂もざわついた雰囲気を醸し出しているが、雅治はそれらに気づくこともなく自分の世界に没頭していた。


  ◇ ◇ ◇


 どのくらい没頭していたのだろう、魂魄(こんぱく)管理者の言葉が脳内に響いた。


『皆さんはその他の次元災害に心当たりはありませんか』


 そういえば巨大な太陽フレアで電波障害って何度もニュースになっていた。

 地球温暖化で海水の温度も上がっているのに、南極の氷は増えている。

 地球の極致付近で異常発光が頻発しているっていうニュースは二ヶ月ほど前だ。

 南米だかどこかでは夕空がピンクになったっていうのもあった。

 昨年は六月の梅雨で大粒の雹が降って大騒ぎになったのもその所為か?

 サハラ砂漠で大量の雨が降ったのもつい最近だし、火山の噴火は盛んでどこかで噴火が続いている。

 大きな鳥が飛んでたとか、雲に巨大な鳥の影が見たなっていう都市伝説が流行りだしたのは一年ほど前で、ネットでは映像も流れてた。


 どれも判断がつくもんじゃないけど否定もできない。


『それでは話を進めます』


 頭に響く声は強制力でもあるのだろう。

 意識が魂魄管理者に向かう。

 答えはもらえなさそうだ。


『皆さんは亡くなってから魂となって選別されたのち、落ち着くまで地球時間で数十日の間この空間で眠りについていました』


 死んでからの記憶が無いから眠っていたって言われても実感がない。

 それでも夢じゃない。現実だと思える。

 このフワフワ魂から、死亡は確定のようだ。

 眠っていた所為か、思ったより動揺していない。


 気持ち的には大きく深呼吸をして、神々しい大きな光の塊魂魄管理者に意識を集中して見つめる。

 そうすると魂魄管理者が、おぼろげながら形を成していく、最終的には人型、それも女性になった。…見えた?

 神々しい光をまとったムチャクチャ綺麗で気品のある女性は、まるで女神様のようだ。

 思わず気圧されてしまうと大きな光の塊に戻ってしまった。

 再度しっかりと、光の塊を眺め、女神さまを見つめる。


 ユックリと一言ごとに区切ってくれるからありがたい。

 まるでこちらの理解がわかってるみたいだ。まあ、女神様だもの。


『皆さんにはある世界に転生して、赤ちゃんから生きていただきます。

 転生する世界は太陽系の地球と同様に、空に輝く太陽があり、海があり、緑があり、自然に恵まれた惑星です』


『ただし少々問題がありまして、魔法があるのですが、魔物が存在します。

 剣と魔法と魔物が存在する異世界ゲームのような世界と言えばわかりやすいでしょう』


『えっ……、うっそー! ……やったー!』


 混乱するも歓喜が湧き上がってくる。

 気持ち的には右腕を振り上げて剣を握り、魔法をぶっ放していた。


『現実世界です。あまりゲーム世界を意識しすぎないでください。魔法を応用した科学的なものも存在します』


 妄想はダメってことだろう。

 どの程度ゲーム的なんだろう。


『いくつも質問があるようですが、管理者の一人として答えられることだけお伝えします』


 どうやら質問をした人(魂)があるようだが、その声は聞こえてこない。

 少しの間を持って、女神様が語りだした。


『先ほども申し上げましたが、月から欠片がはがれて地球に落下したのは次元災害によるもので、異世界の物質が転移して地球に落下しました。

 詳細は伝えられませんが、世界中で数多くの方が亡くなっています。

 幼い子供や、弱い魂は、そのまま地球の管理下に置かれ、数十年から数百年の後生まれ変わります。

 選別されてこの場所に集められたあなた方は地球の管理下に生まれ変わることも、また、他の世界に転生することもできません』


 被害は最低で数万人、多ければ数十万の規模だったはずだ。

 世界中これから(?) じゃないすでに終わったことか。

 とんでもない災害だ。否、月の欠片の無数の破片が落下したことを考えれば少ない人数なのかもしれない。


 転生者は約二千五百人ていっていた。

 多いのか? ベビーブームなのか?

 あれ、他の世界ってどういう場所だ、そういうのも本当にあったのか?


 そういえば外国人もいるんだろうなと思って、はたと気づいた。

 言葉が頭の中に強烈に響いてくるのはテレパシーのようなものなのだろうと思い至って、漫然と思っていた疑問が解決した気がした。

 おもむろに転生が現実として目の前に突き付けられたようだ。


『皆さんには異世界で力強く生き抜いて、天寿を全うしてください。

 それだけが魂魄管理者としての願いです』


 同じ世界に転生しない限り、家族とも二度と会えないのかと思うと家族や友人の顔が浮かんで感傷的になってしまう。……が、魂として眠らされていた所為か、しっかりと受け止めている自分がいる。

 夢にまで見ていたわけじゃないけど、それなりに憧れていた。


 頑張って異世界で生き抜いていくか。


『伝えられることは以上です』


 魂魄管理者(女神様)が一旦言葉を切って、厳かに宣言した。


『転生の儀を開始します』


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