肆
日曜日。町を散策した。
造成工事も今日はお休みらしく、機械音がしない。
上に行ってみよう。
黄色と黒のロープで工事区画が立ち入れない様にしてある。
その脇を抜けて古い家の前を通り、森のなかに狭い石段を見付ける。
社に上がる階段かな?
狭く急な石段を上る。手摺の様なものが無いので転んだら大変だ。
「…綺麗」
石段を上り切り、後ろを振り向けば私の町から麓の街、そして海まで一望出来る。
海はお日様を照り返してキラキラと輝いている。
息を整えながら少しの間、海を観ていた。
森がざわつく。
風を感じて振り向くと、少し拓けた空き地の隅に…社があった。
去年の落ち葉が重なる空き地を、社に向かって歩く。
灰色の社はさほど大きなものではなかった。人が何人か入れる程度。
社は朽ち始めている。
陽と雨の積み重ねで灰色になって、歪んでいた。
元は何か書いてあったらしいところも掠れて読めない。
「“新町”の人かい?」
後ろから声をかけられた。
近所のお婆さん…多分。
「もうここにお詣りすることも無いねぇ…明日には崩されるから」
「…ここは何の神様なんですか?」
お婆さんは首をかしげ、困った様に言った。
「さぁ?昔々からあるんだよ。若い頃には社のなかに牛の首があってね、骨だけど…もう崩れちゃってるねぇ」
御神体だったのかねぇ……
「牛、居たんですか?」
「そりゃあ昔々はね。畑耕すのに使ったさ」
私は何か書いてあったところを、もう一度見た。
…やはり判らなかった。