特別編『回想~23002年前の記憶』
Day2.へと続く前日譚。
会話のみのSSとなっております
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アスター「ご機嫌麗しゅうございますか、殿下。」
ユーク「ご、ごご…ご機嫌麗しゅうくてございますですますですよ!」
アスター「…はぁ、殿下。また礼儀作法の練習をおサボタージュなさったようでございますね。そこは『よろしくてよ、あなたはご機嫌いかがかしら』が正解でございます。」
ユーク「え、えっと、サボってなんかありませんですますことでありますですよ!」
アスター「…。」
ユーク「…う、ごめんなさい。」
アスター「…なんてザマだ。俺の教え方がいけなかったというのか。このままだとサラー星系連合発足記念式典までに間に合うかも分からんぞ」
ユーク「うう…」
アスター「…なんてな。お前が練習サボって城脱出プランを練っていたことなんて見れば分かる。故にお前がサボった時用の策など、もう考えている。」
ユーク「んんっ!?だ、だっしゅつプラン!?な、な、な、なんで知ってるんですか!?」
アスター「第一に、まずお前が自主的に勉強することなんてない。第二に、今日のお前の目は水泳の訓練をした訳でもないのにやけに充血している。第三にこれまでお前は再三この俺に城の外に出たいなんて愚痴を聴かせてきている。そして第四に、そのポケットからハミ出だしている城内と城周辺の地図だ。加えて言うと...俺が近侍である限りお前一人で城外に出れることなんてありえんからな。胸に刻んでおけ。」
ユーク「ぬぅううううううっ!やられましたですよ!!」
アスター「やられたのは俺の方だ!約束しただろ、首都市民たちにお前が顔見せすることになる初めての式典、その日までに基本的な礼儀作法、少なくとも言葉遣いはマスターすると。一国の...いや、この星の王女たる者、その辺りはしっかりしてもらわないと困る。近侍の俺とて、立場があるんだ。」
ユーク「言葉づかいに関してはキミには言われたくありません!」
アスター「ハハッハ…それはそうかもしれないな。これは失敬した、殿下。」
ユーク「…。」
アスター「どうした、急に黙って?」
ユーク「覚えていますですか?私たちの約束、約束を破った時のルールを覚えてますか?」
アスター「あぁ、罰ゲームのことか。昔二人で決めていたっけな。一応は心得ている。」
ユーク「私は、しっかりと覚えています。私たち二人、親友のルールです。私たちの何方かが約束を破った時、破られた方は破ったほうに何でも好きな罰ゲームを貸すことができる。…私は約束を破りました。だから、どうぞ…私に、罰ゲームを!」
アスター「…俺が言えたことじゃないが、身分の差を考えろ。近侍の俺が王妃であるお前に罰を下すことなんて出来る訳ないだろう。」
ユーク「私は本気です…たしかにキミとの間にルールを決めましたから!ちゃんと罰ゲームを実行してくれないと…ケイヤク違反ですよ、ケイヤク違反!」
アスター「…何をそんなに必死になっている。その何考えているか分からない感じお前らしくもあるが、分からなすぎて逆にお前らしくないぞ!」
ユーク「…ううう、ハッキリいいます。」
アスター「なんだ。」
ユーク「…最近キミと居ると、気持ちが悪いんですよ!」
アスター「…。」
ユーク「…。」
アスター「ここまでのどストレートで直球な嫌味をかつ、人生史上最高に理不尽なセリフを、まさかお前の口から聞くとはな。今、言葉の刃が俺の胸に突き刺さったぞ。」
ユーク「いやいやいや、そういうわけじゃありません!!勘違いしないでください!」
アスター「じゃあ、一体どういう訳なんだ?さすがに訳が分からん。」
ユーク「…なんていうか、最近キミといるとなんだが私のミゾオチのちょっと上あたりがすんごくモヤモヤしますですよ。なんだかヒュンとするような不安な気持ちと腑に落ちないような感じが混ざった感じというか…。とにかく、これが胃に良くないんです!」
アスター「ほう。」
ユーク「うーーっ。アスター、あなたに問います。あなたは私の近侍なんですか!?それとも幼馴染なんですか!?」
アスター「……。それで悩んでいたというのか?」
ユーク「えぇ、そりゃもう。朝から晩まで休みなくモヤモヤモヤモヤ!あ、でもなんか…今は話しっちゃってちょっとすっきりしましたです!」
アスター「…はぁ。これは…俺に、非がある。そう、言わざるを得ないかもしれないな…」
ユーク「え。」
アスター「俺がお前と出会ったのは確かお互い物心つく前、俺は3歳、お前は1歳の頃らしいな。それから俺はお前の友人として、近侍として共に育ってきた。我ながら良き友人、よき世話係としてお前との関係を築けて行けたと思っている。」
ユーク「…相変わらず、すんごい自信ですね。」
アスター「だが、俺は15歳となり近侍として外に関わる仕事が増えた今でも、お前が指摘した通り主人にちゃんとした言葉が使えていないだとか、お前との距離の取り方だとか、幼少期と変わらない、近侍としては到底ふさわしくない態度をとってしまっていたようだ。俺自身、友人としてお前に接すればいいのか、家臣の一人として接すればいいのかわかっていなかったのだろう。そんな俺の中途半端態度がお前を苦しめてしまったようだ。本当に申し訳なかった。」
ユーク「そんな。そんな、そんなつもりで言ったわけじゃ…大丈夫です!私の胃はもう!」
アスター「…この際ハッキリしないか?」
ユーク「その、私たちの関係を、ですか?」
アスター「そうだ。もちろん職務は死ぬまで全うするつもりだが、今後俺たちがどういう形で付き合っていくのか、俺は近侍としてお前のそばに居ればいいのか、友人としてそばに居ればいいのか。それをお前に決めてほしい。」
ユーク「ううう…。私が…決めるんですか?」
アスター「そうだ、主人であるお前に決定権がある。今はな。」
ユーク「私は…、私は…」
アスター「…ユーク、安心しろ。俺はお前が何方を選ぼうと、何があろうとお前の元を離れない。それがこのアスター、生まれた時からの使命なのだから。」
ユーク「…‥。」
アスター「……。」
ユーク「……うう、こんな臭い台詞をいっちゃうのが私の親友だなんて思うと...なんだか恥ずかしくなってきますですますよ…」
アスター「なっ!人が本気で喋ってるときに!ふざけないでもらおう。ちゃんと答えてもらおうか!」
ユーク「…うーーー、こういう時こそ察してくださいですよ!しっかり答えてるじゃないですか、『私の親友』って!」
アスター「さっきからうー、うー唸りすぎだ!何度言うつもりだ!『う』だけで11回は言ったぞ!」
ユーク「クセなんです!ほっといてください!そんなことより今のは、絶対に察しが悪いキミが悪いです!」
アスター「フッ…せっかく心配してやったのに損をした気分だ。許してやろうと思っていたが、これは約束を破った分の罰ゲームが必要のようだな。」
ユーク「え。」
アスター「お前は俺を近侍ではなく、親友として扱ってくれるのだろう?ならば近侍ではなく親友の俺が、約束を破られた俺が、お前に罰を下してもなんら問題はないはずだが?」
ユーク「そ、そんなぁ…。ううううううううううううううううううう…。」
アスター「ハッハハハ。覚悟はできているか、ユーク・サラー・シルビィー。」
ユーク「も、もうっ、なんでもドーンと来いですよ!!」
アスター「よし。ならば、来月の頭の夜の予定を一日開けておけ。理由は俺と二人で礼儀作法の練習だとか、適当に誤魔化しておけばいい。」
ユーク「えっと…そ、それが罰ゲーム?」
アスター「あぁ、俺と夜の散歩に付き合え。今の時期、外は星がきっと綺麗だぞ。こんな人工の明かりなんかとは比べ物にはならないぐらいに、な。」
ユーク「アスター...。」
アスター「感謝しろよ。お前一人だとあぶなっかしいからな、今回はついて行ってやる。そして、命ある限りお前を傍で守ってやろう。そう。親友としての使命にかけてな!」
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