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4話:レクレーション(後編)勝者

 ゲームは開始された。

 「サバイバル」―。

 この亜露覇高校の敷地全てを駆使して1時間頭につけたハチマキを取られずに残るのだ。

 決して殺し合いではないぞ?


 2.1人チームは竜馬の提案で科学室に潜伏する事にした。

 しかし、呂猛も夏候惇もあまりよしとしなかった。

 「普通男なら正面からぶつかるだろ!?それがなんだよこれ?隠れるだけかよ…。」

 「私はこんな姑息な手を使ってまで生き残るなんて考えられないわ!」

 2人とも血気盛んである。

 そんな2人を竜馬は説得した。

 「隠れるだけが戦いじゃないよ?時にはこうして体力を温存しとかないと後半もたないよ?」

 その言葉に2人は納得し、少しの間隠れることになった…。

 が、10分もしないうちに呂猛はうるさくなった。

 「おい竜馬!そろそろいいんじゃねぇか!?」

 早い。この男に待機しろというのは無理なのか?

 竜馬は呂猛の声の大きさを注意した。

 「ちょ、ちょっと呂猛。そんなに大きい声出したら敵に見つかるって…。」

 「そうよ!竜馬さんの言うことはもっとも…。そんなこともあなたは分からないの!?」

 夏候惇も呂猛を責めた。声が大きいが…。

 「お前ら全員こっから出てけよ…。」

 他に隠れていたチームがボソッっと言った。

 呂猛はそれを耳にした瞬間怒った。

 「なんだと!いいだろ俺たち3人がいるくらい!!」

 続けて夏候惇。

 「いや、2人でいいわ。呂猛は邪魔よ!」

 竜馬も呟いた。

 「そうだよ…。別に僕はうるさくしてないし…。」

 3人のわめきは科学室の外まで響く事になる…。

 そして教室の周りには敵が続々と…(敵役は先生、半分の生徒である)


 一方ザ・少数精鋭はグランドで連戦していた―。

 グランドでは他にも戦闘しているチームがたくさんいる。

 カズも頑張っていた。

 「えっほ、えっほ。ふぅ〜いつまで戦えばいいんだろうか…?」

 カズは今1人倒した。(敵のハチマキを取ったことを指す)

 「あぶない!」

 馬趙雲はカズの後ろにいる敵を発見し、その自慢の足で一気に相手の懐に入り込みハチマキを奪った。

 カズの後ろで残念そうな声がする。

 「ちっくしょ〜。やれると思ったのに。」

 カズは今後ろの存在に気付いた。

 そして馬趙雲に感謝した。

 「おおっと、なんや誰かいたんか。助かったで、馬趙雲。」

 「礼には及びませんよ!」

 カズは向こうで戦いが静まっていくのが見えた。

 「おっ、あそこでなんかおきとるで?」

 カズは指を指して馬趙雲に言った。

 馬趙雲はカズが指を指した方向を見た。


 そこには黒と白の2色の着物を着、顔には痛々しい傷跡がある大男がいた―。

 「お前ら、どけ。俺が一気にけりつけてやるからよ。」

 するとと敵役の生徒たちはさっとどいた。

 逃げる側の生徒達も凍りついたように動かない…。

 「俺ら教員を倒したら成績がグンとアップだとよ。」

 大男は言った。

 「では九鬼(くき)先生、俺たちと手合わせ願います。」

 数十人の生徒が九鬼の前に立ちはだかり1人の生徒が言った。

 「いいだろう、遠慮するな、本気で掛かって来い。」

 九鬼は笑って言った。

 そして数十人の生徒達は取り囲み、四方八方から一斉に飛び掛った―。

 九鬼は突っ立ていた。無抵抗だ…。

 一気に全員が攻撃した…が、びくともしない。

 「その程度か?もっと痛いかと思ったがな。」

 生徒達の顔は恐怖で覆い尽くした。

 と、九鬼はパワー全開だ!

 顔面を殴った生徒の腕を掴み、振り回し周りにいた8人を10メートル以上吹っ飛ばした。

 残った数名はウワァ―と雄叫びを上げ突っ込んでいった。

 何本もの手、足を九鬼は難なくかわし、1人を張り手で突き飛ばし後ろにいた残り全員もぶつかり、一緒に吹っ飛ばされた。

 全員ノックアウト、九鬼は気を失った生徒のハチマキを全て取った。


 …。

 「さて、次はどいつだ!?」

 九鬼は逃げる側の生徒に尋ねた。

 すると一目散に生徒は逃げ出した。

 そこにチビッコがだるそうにいた。…あ、八重桜だ。

 「ったく、めんどくせぇなぁ〜。」

 八重桜はパッと手を上げると八重桜の方向へ逃げてきた生徒の周りに氷の壁が出来上がった。

 逃げ場を失った者には敗北が待つのみである…。


 逃げる側は大混乱になった。

 カズも慌てていた。

 「馬趙雲馬趙雲!逃げ場無くね?」

 馬趙雲は冷静に辺りを見渡した。焦ったら負けらしい。

 「あそこだ。あそこに行こうカズ。」

 2人は部室に逃げ込んだ―。


 科学室に奴がやって来た。

 竜馬らの側にいたチームの1人が怯えた声で言った。

 「ふ、不良…不良だぁぁぁ!!!」

 金髪リーゼント、こんなサイズの制服あったっけ?な巨大サイズの制服を着て腰パンの男に言った。(説明文長いな…)

 「オイオイ、せっかく来たのになんだよこの歓迎はっ。」

 不良は怒って言った。

 夏候惇はそんな不良に尋ねた。

 「あなたは逃げてきたんですか?」

 「当ったり前だろ!なんたってB組の生徒だしな。心配性だな夏候惇は。」

 呂猛は馬鹿にして言った。

 その呂猛のハチマキを不良は取ろうとした。

 「危ないっ!」

 竜馬は呂猛を押し倒した。

 「竜馬!お前そんな趣味かよ!?」

 なんだこの発言…状況を把握してないようだ。

 不良は舌打ちしていった。


 「チッ、奇襲ってやつを試したんだが俺様には無理なようだな、1人残らず倒してやるとしよう。」

 「お前は裏切り者か!?」

 呂猛は不良に聞いた。

 不良が答える前に竜馬が言った。

 「呂猛、敵役もあるのわかってる?」

 「…当たり前だろ!何を今更っ!」

 呂猛は知らなかったようだ。

 他のチームは一斉に科学室を飛び出し…なんと出口にも不良の連れがいた。

 不良は黒い笑みを浮かべた。

 「全員まとめて料理してやるよ!野郎共!!やっちまえ!」

 一斉に襲い掛かってきた。

 竜馬、呂猛、夏候惇は奮戦したが、周りのチームがやられるにつれ数で上回る不良軍団に押されつつあった…。

 「敵わないのか…?」

 「ちっくしょう!こんな不良軍団に呂一族が負けてたまるかよ!!」

 「くっ、このままでは…。」

 竜馬、呂猛、夏候惇は口々に独り言を…。


 ガラガラガラ!

 閉め切ってあった科学室のドアを1人の老人が勢いよく開けた。

 「そこで暴れている不良たちよ、ちょっと生徒指導部まで来てくれんかの?」

 十四創滅だ。

 「なんだよ教頭が。」

 不良は十四創滅に言った。

 「お主たちは夜遊びの疑いがかかっとてな。ご同行してもらえんかな?」

 不良はビクッとした。つまり図星だ。

 さすがに天下の不良軍団でも教頭様には逆らえないのかしぶしぶ科学室を後にした。

 十四創滅は不良軍団の攻撃に唯一耐え抜いた3人を褒めた。

 「お主たちは凄いのぅ。あれほどたくさんのあやつらから身を守れたんじゃ、名を教えてくれんかの?」

 「呂竜馬です。」

 「…呂猛。」

 「夏候惇です。」

 また1人だけ…。

 「あと少しでふぁいなるらうんどじゃ。頑張るんじゃぞ。」

 3人の名を聞いた十四創滅はにこやかに微笑んで科学室を後にし、不良たちを連行した。

 「ファイナルラウンド…だよね?」

 竜馬は言った。


 カズと馬趙雲が逃げ込んだ部室には馬があった。

 「あぁ、騎馬がある。」

 馬趙雲の騎馬という言葉にカズは突っ込んだ。

 「騎馬ぁ?普通に馬やろ?それにしても何部?ここ。」

 「多分戦部でしょう。」

 「いくさ部〜?」

 校内放送が流れた。

 「ワシじゃ、無窮である。残り5分なのでファイナルラウンドじゃ!5分以内にワシの校長室に辿りついたものは成績アップじゃ。最後の戦いじゃ、生き残っておる者。頑張るのじゃぞ?」

 放送を聞いた馬趙雲は馬1頭を馬小屋から出した。

 「ここの馬を拝借しましょう。」

 「えっ?俺馬に乗ったことないで?」

 カズは驚いて言った。

 「これしか方法はありません。」

 「だよなぁ〜ハハハ。」(苦笑い)


 残り2分。

 校舎内を1頭の馬が駆ける―

 校長室前には敵役の生徒が大勢いた。

 馬趙雲はカズに言った。

 「拙者が突撃を仕掛けます。カズは敵が拙者に気を取られている隙に風の如くに校長室に向かってください。では!」

 そういって馬趙雲は馬を降りた。

 囮作戦の始まりだ!


 「1年B組馬趙雲、ここに見参!我こそはと思うものは掛かって来い!」

 なんとも威勢のいいものである。

 カズは頃合を見計らって校長室に行った。慣れない馬に乗りながら。

 実は2.1人チームも敵に取り囲まれながらも戦っていた。

 「早くここを突破しないと時間が…。」

 夏候惇の言葉が呂猛の耳に入った。

 「夏候惇!竜馬!ここは俺が道をこじ開ける、そこを突破してくれ!頼んだぞ!」

 呂猛はそう言って校長室の道を開けようとしたその時!

 「おぉ〜っと呂猛、あぶないでぇ!?」

 カズの馬が呂猛を蹴飛ばした。

 「うがァッ!??!」

 呂猛の体は宙を舞い、敵の生徒を巻き添えにした。

 カズも上手く馬が扱えず、

 「あ、ワ〜リィ〜。」

 とか言ったりして散々戦場を荒らしまわった末に

 「アディオ〜ス!竜馬。」 

 どこか別の部屋に突っ込んで姿が消えた。

 この隙を2人は見逃さなかった。

 「竜馬さん、行きましょう!」

 「はい、了解です。…呂猛、君の犠牲を僕達は無駄にはしないよ。」

 竜馬は校長室の扉を開けた―。


 パンパン!

 当たり前田のクラッカー♪

 補助員がクラッカーをならし、その奥には校長、無窮がいた。

 「よく、ここまでたどり着いたなぁ。1年生のお2人さん。ワシは2年ぶりの1年のゴール者に感動したよ。さあさあ、ここに自分の名前を書いてくれんかの。記録を残すのじゃ。」

 2人は殿堂入りした。(ポケモンのように…)

 その後も残り時間僅かながらもゴール者は2、3年生ばかりだがたくさんいた。

 呂猛の兄である王、虎の姿もあった。


 残り時間5、4、3…

 カズが入ってきた。制服が黒焦げだ。一体何があったのだろう?

 1…

 1人飛び込んできた。

 馬趙雲だ。全身傷だらけだが、その姿は輝いていた。

 「馬趙雲!よく入ってこれたなぁ〜もうダメかと思っていたよ。」(ギリギリ入ってきたやつがよく言う…)

 「カズもそんな姿になりつつも入って来れたんだね、おめでとう。」

 2人は握手した。これぞ、友情の証だろう。(その後竜馬がなぜ握手したのか聞いたが「雰囲気で」なだけだったことが判明したのは後の事である)


 こうして新入生歓迎レクレーションは幕を閉じた。

 というより、このサバイバルゲームが主すぎる気がしてならないのだが…。

 とりあえず、終わりったら、終わりっ!




 呂猛は校長室に入れなかったみたいである。(殿堂入りも出来なかったとか)

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