0.5話:宿題と神様と
2次試験、3次試験、面接と多少の苦戦はあったものの竜馬、呂猛、カズ、3人は難なくクリアしていき、合格通知も届き、いよいよ亜露覇高校の生徒となる事が決まった。
3月下旬―。
3人は各中学の卒業式を終え春休みに入り、合格者登校日となった。
この合格者登校日では高校で制服、校章等の支給や宿題が各合格生に課される。
亜露覇高校で3人は再び顔を合わせた。
「よっ、竜馬にカズ。3週間ぶりだな。高校始まったら仲良くやってこうぜ!」
呂猛は相変わらずの調子である。
「やけど、実際クラス分けは入学式やでまだ同じクラスか分からんで?」
痛いとこ突っ込むのはカズだ。
「相変わらずやな2人とも。さて、今日はまず制服とか貰いに行こうか?」
竜馬はそう言って2人を連れて制服等を貰いに体育館にある会場に向かった。
支給される会場ではナレーションの私がここに書くのも変だが肌が透き通るような白さの美人な先生が合格者に配っていた。
それを見た呂猛が言った。
「おっ!あの人は四条先じゃねぇか。噂どおりの美人だな…胸が無いのも噂通りか…。」
とりあえず一行は行列に並んで受け取った。
カズは赤面している。何もされていないのに照れているのだろうか…?
続いて呂猛が受け取った。
「先生、宜しく!」
すると返事が返ってきた。
「あ、猛君じゃない。あなたの話はあなたのお兄さん達からたくさん聞いているわよ。」
「先生、あんなやつらの話は嘘だから絶対に信じたらダメだからな!」
なんかちょっとじゃれあっていた…。
そして竜馬は―
普通だった。
校章も受け取ったが赤いことに竜馬が疑問を持った。
が、その謎を聞く前にカズが説明した。
「この赤はやっぱ競争率が3倍やでなぁ。3倍と言ったら赤!これ基本やなっ。」
竜馬は他の人も普通に知っていると思い、カズの言葉に心から感謝していた。
その後、校長(無窮)の話の後、教頭から一言があった。
「わしは亜露覇高校教頭の十四創滅じゃ。お主たちは合格した時からここ亜露覇の生徒であるのじゃ。なので今から配られる宿題は入学式までに終わらせるように。お主達を信用していないわけではないのじゃが、他人のを真似ないように1人1人宿題は違うので覚悟しとくように。」
そう言って合格者達に宿題の内容を書かれた紙が手渡された。
呂猛は小声で呟いた。
「なんで爺さんばっかなんだこの高校は…。そろそろ新任の若い先生くりゃあいいのになぁ。無理だろうけどな。」
竜馬はその意味がわからず呂猛に尋ねた。すると呂猛はこう答えた。
「名字が変な名前だろ?あれは神様だからさ。っま、基本そんなん若い人がなれるわけ無いから無理ってわけ。」
なるほど。竜馬はそう感じるのであった。
長い長い注意事項の話を経て、ようやく終わった。
違う場所にいたカズと合流し、3人で体育館を出た。
「俺の宿題九九×九九の暗記やったけど、みんなどうやったけ?」
カズは自分の宿題内容を言い、2人に聞いた。
呂猛は紙を見て笑って言った。
「俺はマグロ釣って来い5匹!だとさ。なかなかの難しい宿題だな」
カズも笑いながら言った。
「ホントやってな、こんなふざけた内容で高校やってけるんけ!?って言いたいでこれ。竜馬は?」
竜馬は自分もアホらしい内容と思って紙を見た。だが、そんな期待をするもんじゃないと思い知らされる事になるのだった。
「ん?なんだこれ?」
竜馬の第一声。そして第二声は
「な…これって。」
だった。
2人はお互いの顔を見合わせ竜馬の紙を見た。
そこには堂々と書いてあった。
【龍の首の珠】
2人とも全く分からなかった。それを察した竜馬は説明した。
「これは竹取物語の話で出てきたかぐや姫の無理な指令だよ。持ってきたら結婚するってやつ。まぁ、無理だったけどね。」
呂猛は理解できなかったが、カズは理解した。
「あれかぁ!た、確かに無理難題極まりないな…。でもこれ取ってこんとあかんのやで?」
呂猛も空気で竜馬をフォローした。
「大丈夫だろ?竜馬は今まで俺たちと一緒にクリアしたんだしな。まぁ、難しいのはドンマイドンマイ。」
呂猛のフォローのような言葉は竜馬にとって皮肉にしか聞こえなかった。(かわいそうだなオイ!)
頭が真っ白の竜馬と2人は玄関前に来た。
そこでカズと中学生くらいの水色髪の小さな少年がぶつかった。
「イタ!君、遅刻?」
カズは痛さよりも相手の心配をしたようだ。
「いや、俺は違う。」
そう言って少年が立ち去ろうとしたので呂猛は肩をつかんで引き止めた。
「おい!ぶつかっておいてなんだよその態度は!?」
「だまれよ、俺を怒るのか?」
少年が挑発的な態度だったので呂猛は怒った。
「お前、ふざけんなよっ!」
呂猛が殴りかかろうとし、少年も身構えたので竜馬は事態を収拾しようとした。
「2人とも、こんなところでやめようよ。先生も校内にいることだし、って先生来たよ?」
やってきたのは四条先生だ。
呂猛は止めようとした。しかし、少年は態度を改めなかった。
「俺は関係ないぜ?お前が止めるなら俺はやらないがな、こんな茶番。」
呂猛がムッとして一言言おうとした時、四条先生が割って粛清した。
「桜ちゃん!なんで今頃来たの?ダメじゃない。」
「先生、知り合いですか?」
竜馬はビックリして尋ねた。
四条先生も少し驚いた。
「知り合いって言うより、あなたたちの先生よ?」
「…。」
呂猛は一言も喋れなかった。
「もう!桜ちゃん校長先生が怒ってるわよ?」
「あーもう!桜ちゃんはねぇだろ!?俺は八重桜だ。」
「いいの、桜ちゃんで。さ、行くわよ。」
そう言って2人は去っていった。
全くこの亜露覇高校は恐ろしい。
あんなに若くても神様は神様なのである…。
カズは呟いた。
「桜ちゃんって…。あの先生実は女…?」
いや、男である。決して男勝りの女の子ではない!
竜馬の胸中は希望と期待で胸がいっぱいだった。
(先生は神様ばかり…。父上、母上、兄上。ぼくも頑張ります。ここで。)
まぁ、帰宅すれば宿題に絶望するのだが、そこには触れないでおきたい。(見たくないのだ)




